クールメイドと王子と拾い物
Side ???
君主である聖王エメリナ様は誰にでも隔たりなく慈愛を振り撒き、
それでいてドが付く程の人格者にして聖人、あまりに優し過ぎて倒れるのではないかと気がやきもきします。
それは問題ありません、問題は……弟君であるクロム王子の方です。
血気盛んで短絡的、人一倍正義感が強くて融通が効かない困った御方。
イーリス王家の証たる"聖痕"を右肩に宿し、その上重度のお人好しでもあります。
妹君のリズ様もそんな兄君に感化されている傾向があり、御兄妹揃って融通が効かないというか我が強くて頑なに譲れない一面があります。
二人のお目付役でグレートナイトのフレデリク様もクロム様至上主義で、クロム様の為す事を全て肯定してしまうので
更にはクロム自警団と言う義勇軍を結成し、有力な人材を掻き集め──気付けばエメリナ様公認の自警団へと発展していたのです。
そして
戦とは無縁の
それこそが
真紅の髪を三つ編みに纏め上げ、ヴィクトリアン風のメイド服を着ています。
それと普段は三白眼な為、同僚や後輩達、メイド長からも恐れられていますがこれがデフォルトなので特に気にしていません。
何故そんな立場なのかって?全部、お馬鹿者なクロム様達をフォローする為ですよ。
野党共を相手取って甲冑や衣服、身体の節々に生傷を作って凱旋してくるので、衛生兵や我々
なのでエメリナ様に進言したのです、クロム自警団に身を置き、クロム様達の一助になる事を。
畏多くも生意気な発言に罰せられる事を覚悟したのですが、慈悲深いエメリナ様はそれをやんわりと許可して下さりました。
彼女の従者である天馬騎士団団長・フィレイン様は
※
そんな経緯もあって
当初のクロム様は
他にもソシアルナイトのソワレ様やペガサスナイトの癖に御自身の天馬をお持ちでないスミア様、トルバドールで貴族の御令嬢であらせられるマリアベル様と女子会を開催してスミア様がクロム様を慕っていらっしゃる事や、マリアベル様がリズ様に変な虫が寄り付かない事を公言したりと。
クロム様とは幼き頃からの間柄で戦士のヴェイク様からは何かと勝負を申し込まれたり、ソワレ様と同じソシアルナイトのソール様は食事の食べ過ぎて時々腹痛を起こすので薬を作って譲渡したり、魔道士のリヒト様とミリエル様と魔導の話で盛り上がったりと……あ、グレートナイトのカラム様は存在感が薄いのでいかんせん認識するのに困難したりしましたね。
まあそんな日々を送りながらも国内の草原で巡回を行っています、猪突猛進なクロム様を諌めたり、リズ様と共にお花を摘んだり、フレデリク様と模擬訓練を励んだりと……巡回の合間に休憩を挟みながら巡回を続けていきました。
この所大陸各地で胡乱な動きがあり、
そんな最中、西の大国──ペレジア王国が徐々にイーリスに侵入して来ていると言う話が挙がったのです。
ペレジアは何やらきな臭い動きが目立つ上、邪神を崇める教団が存在すると噂で聞いた事があります。
現国王のギャンレル氏の悪政に怪しげな教団、兎に角ペレジアと言う強大な壁を前にエメリナ様は心を痛めていると思うでしょう。
巡回を続ける中、リズ様が声を上げられました。
何事かと思い
整った顔に掛かる美しい銀色の短髪、闇に覆われた様な漆黒のローブを身に纏っていらっしゃる。
「ねえお兄ちゃん、大丈夫かなぁ…?」
「ダメかも知れんな…」
「そ、そんなぁ!」
一応確認してみましたが脈がありましたし、心臓の鼓動もはっきりと聞こえていました。
少なくとも死体ではありませんし、何らかの理由で遺体として投棄されたわけでもないでしょう。
では何故彼はこんな草原の真ん中で倒れているのでしょう?
頭の中であらゆる可能性を考える中、彼の口から「……う……」と言う声が漏れる。
「あ…!」
「気が付いたか?」
「こ、こは…?」
「平気?」
「あ、ああ…」
「こんな所で寝ていると風邪を引くぞ。……立てるか?」
漆黒のローブを纏う銀髪の青年はクロム様の手を取って立ち上がる、そして「あ、ありがとう、クロム…」と戸惑いがちに彼は感謝を申し上げます。
……って、さりげなくクロム様の名をご存知の方の様ですが、クロム様御本人は記憶に覚えがない御様子。
青年自身、何故クロム様の名を知っているのか戸惑っていて、御自身の名も分からないようです。
まさか記憶喪失では!?と驚くリズ様、しかしフレデリク様は何故クロム様の名を知っていたのかと青年を疑い、記憶喪失を否定しています。
因みに
「だが本当の話だったら、このまま放り出すわけにもいかないな。人々を助ける──俺達はその為に此処にいるんだ」
「それは……確かに仰る通りなのですが、賊共の一味である疑いがある以上、気を許すのは危険です」
「なら……取り敢えず、此奴を捕まえて町に連れていくか」
「ええっ!?ちょ、ちょっと待って…!」
「心配するな。話は町で聞いてやる、さあ来い!」
というわけで記憶喪失(仮)の身元不明の青年を捕縛し、近隣の町へと連行する事になりました。
予め暴れられないよう、手首を縄で縛っておきました。
これから自分はどうなるんだと悲観する青年にクロム様が「イーリス聖王国の敵でないと分かれば、その場で自由になれる」と後押しする。
首を傾げる青年の反応を見る限り、どうやら本当に御存じない御様子。フレデリク様がイーリス聖王国の事を説明し、改めて自己紹介をする事に。
「俺はクロム、このちんまいのは妹のリズだ」
「ちんまい言うな! 私、リズね、覚えてよね!でね、えーと……私達はイーリスを守る自警団なのだー!」
子供らしく天真爛漫と答えるリズ様、天使みたいで尊いです…。
「それからこの小難しい男はフレデリク、鉄仮面の様に表情が読めない女はスカーレットだ」
「一言多いですよクロム様。聖王国に仕える
「自警団副長のフレデリクと申します。……立場上、どうして先ず疑いの目から入ってしまう事をお許し下さい。貴方を全く信用していないわけではありませんが、調べる事は調べますので、そのおつもりで……」
クロム様達御兄妹とは逆に、フレデリク様は青年に気を許しておられません。
自警団の中では人一倍硬い石頭な上、規律にも厳しい殿方ですからね。
時折、爽やかな笑みで怒気を纏う事がある為、事あるごとに度々張り合うクロム様やヴェイク様も下手に逆らえませんからね。
「えっと……僕の名前は……ッ! ……そうだ、ルフレだ……これが僕の名前だ」
靄が晴れ渡っていく様に、彼は──ルフレ様は自身の名を思い出した様です。
変わった名前だなと思いつつも、クロム様はルフレ様にもう直ぐに町に着く事を知らせる。
確かに前方を見渡すと、町の光景が確認出来ます。
賑やかな声が聞こえて、子供達の遊ぶ光景があって、黒煙が立ち上って……。
………黒煙?
首を傾げる
クロム様はその言葉を聞いて驚きます、って、町が火で溢れているではありませんか。
ペレジアの連中かと踏み、
ルフレ様の処遇はどうされるのか、と言うフレデリク様の問いは町の方が優先だと言うクロム様の言葉に一蹴されます。
駆け出すクロム様、その後にリズ様とフレデリク様が追い掛けます。状況を判断して、
「…!?どうして…?」
「身元不明とはいえ、拘束した人間を放置する程、
ですが状況が状況、不用意に彼を巻き込む事はクロム様は勿論の事、エメリナ様も由としませんから。
「では、
ルフレ様に逃げる事を促した後、
……此度の戦がルフレ様の、そして我々の運命を変えるなど、