薬師アレンとエルフのリズレ 作:ルゥー創作するのは間違っているだろうかー
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「似合ってない」
リズレは即答した。
だが傭兵たちはまるで聞いていない。
「いやでも本当にすげぇよな!」
「封印崩壊を押さえ込むとか伝説級だぞ!?」
「しかも単独!」
話が勝手に育っていく。
リズレは露骨に顔をしかめた。
「違う。私は——」
「風だ!」
突然、一人の傭兵が興奮したように言った。
「見たんだよ俺! 崩壊しかけた時、風が一気に吹いて!」
「そうそう! あの瞬間、封印の揺れが止まった!」
「空気まで変わったんだ!」
リズレは言葉を失う。
確かに風は使った。
だがそれは、生き残るためだった。
崩壊の熱と砂煙を逸らし、視界を確保しただけ。
封印を止めたつもりなどない。
なのに、目の前の連中は完全に“英雄譚”として完成させている。
フィオネは面白そうに頬杖をついた。
「へぇ、そんな感じだったんだ」
「他人事みたいに言うな」
「だって見てないし」
軽い。
軽すぎる。
シェリアは壁際で静かにため息を吐いた。
「証言記録とほぼ同じね」
「記録にするな」
リズレが即座に返す。
しかしシェリアは冷静だった。
「もう中央まで回ってる。修正は無理」
「無理じゃない」
「似顔絵付きで?」
その一言で、リズレが黙る。
傭兵の一人が誇らしげに紙を掲げた。
「これ俺が描いた!」
「下手だな」
アレンがぼそっと言った。
「えっ」
「鼻の位置がおかしい」
「そこ!?」
フィオネが吹き出した。
「アレン、気にするところそこなんだ」
「似てないと困るだろ」
「いや認めるんだ」
リズレは頭を抱えた。
空気がおかしい。
シェリアまで口元を隠して少し笑っている。
その間にも傭兵たちは盛り上がっていく。
「中央じゃもう“銀風の英雄”って呼ばれてるらしいぞ!」
「酒場で聞いた!」
「子供が真似して木の棒振ってた!」
「やめろ……」
リズレの声が本気で嫌そうだった。
フィオネが楽しそうに覗き込む。
「二つ名まで付いたんだ」
「最悪だ」
「かっこいいじゃない、“銀風の英雄”」
「全然よくない」
アレンが薬草を棚に戻しながら静かに言う。
「有名税だな」
「払った覚えはない」
「でも勝手に請求される」
フィオネがまた笑う。
リズレは深く深くため息を吐いた。
すると突然、外からまた別の声がした。
「こちらに英雄様がいると聞いた!」
全員が止まる。
リズレだけが真顔になった。
「……増えた」
アレンは静かに窓の外を見る。
武装した旅人、商人、見物人。
薬屋の前に、人が集まり始めていた。
フィオネは楽しそうに立ち上がる。
「わぁ、人気者」
「お前のせいだろ絶対」
「半分くらい?」
シェリアが冷静に補足する。
「八割」
「そんなに?」
リズレは額を押さえた。
静かだった薬屋は、いつの間にか“英雄の隠れ家”になりかけていた。