倦怠期夫婦中学生(仮題)   作:全肯定逆張りおじさん

10 / 12
第九話 お父様、それは試練ではなく遊びでは?

 妃花の父は、穏やかな人である。

 

 イギリスの伯爵家の二男。

 

 元教師。

 

 柔らかな金髪に、澄んだ青い目。

 

 日本語は丁寧で、紅茶を淹れる所作など、見ているだけでこちらの背筋が伸びる。

 

 そして、母と恋愛結婚するために、旧華族の本家を相手に結果を出し、認めさせ、最終的に事実上の婿入りまでした男。

 

 つまり。

 

 上品で、優しくて、芯が強くて、かなり面倒くさい人である。

 

「金田君」

 

「はい」

 

「今日は、君に少し試練を受けてもらいたい」

 

 ワタシは、その瞬間に立ち上がった。

 

「お父様」

 

「何かな、妃花」

 

「何をする気ですか」

 

「そんな怖い顔をしなくてもいい」

 

「怖い顔にもなります。試練とは何ですか。決闘ですか。フェンシングですか。乗馬ですか。まさか銃ですか」

 

「銃は出さないよ」

 

「出す候補にはあったような言い方をしないでください!」

 

 場所は、ワタシの家の客間。

 

 本家ではない。

 

 普段暮らしている方の家だ。

 

 とはいえ、一般家庭よりはだいぶ広い。

 

 玄関は広いし、庭もあるし、廊下は長いし、父の趣味で置かれた英国風の家具がいちいち高そうだ。

 

 その客間に、ワタシと金田君と父と母がいる。

 

 母は、父の隣で優雅に紅茶を飲んでいた。

 

 止める気配はない。

 

 むしろ、楽しそう。

 

 なぜ?

 

「お母様」

 

「なあに、妃花」

 

「止めてください」

 

「どうして?」

 

「お父様が金田君に無茶ぶりをしようとしています」

 

「まあ」

 

 母は口元に手を当てて笑った。

 

「お父様は、昨日からとても楽しみにしていたのよ」

 

「楽しみに?」

 

「ええ。金田君が来るからって、倉庫を開けたり閉めたり、庭を見に行ったり、古い道具を磨いたり」

 

「お父様?」

 

 ワタシは父を見た。

 

 父は、すっと視線を逸らした。

 

「庭に出ようか」

 

「逸らしましたね」

 

「庭に出よう」

 

「今、明確に逸らしましたね?」

 

「金田君、行こうか」

 

「はい」

 

「金田君も素直に頷かないで!」

 

 金田君は、いつも通り落ち着いた顔で立ち上がった。

 

 ただ、少し緊張している。

 

 ワタシにはわかる。

 

 背筋は伸びているけれど、指先がいつもより少し固い。

 

 それだけで、ワタシの警戒度は上がった。

 

 金田君を緊張させるとは、いくらお父様でも許されない。

 

 いや、父親なので仕方ない部分はある。

 

 でも許されない。

 

「妃花」

 

 金田君が小さく言った。

 

「大丈夫」

 

「大丈夫ではないわ。あなた、緊張しているでしょう」

 

「少し」

 

「ほら」

 

「でも、大丈夫」

 

「その大丈夫が一番信用ならないのよ」

 

「妃花がいるから」

 

「っ」

 

 やめなさい。

 

 親の前でそういうことを言うな。

 

 父が微笑んでいる。

 

 母も微笑んでいる。

 

 何この空間。

 

 包囲網?

 

「……監督します」

 

 ワタシは言った。

 

「金田君の試練なら、ワタシが横で監督します」

 

「妃花、手は出さないようにね」

 

 父が言う。

 

「必要に応じます」

 

「出す気だね」

 

「金田君の安全が最優先です」

 

「それは頼もしい」

 

「頼もしいで済ませるな!」

 

     *

 

 庭には、すでに色々と用意されていた。

 

 薪割り台。

 

 薪。

 

 斧。

 

 手袋。

 

 古い革のトランク。

 

 庭のテーブルには銀のポットと茶器。

 

 その横に、なぜか工具箱と木材。

 

 ワタシは、しばらく無言でそれらを見た。

 

 試練?

 

 試練とは?

 

 これでは、休日のお父様わくわく体験コーナーでは?

 

「お父様」

 

「何かな」

 

「これは?」

 

「第一の試練は薪割りだ」

 

「現代日本の中学生に要求する技能ではありません」

 

「でも、イギリスの屋敷には暖炉がある」

 

「使用人がいます」

 

「もちろんいる」

 

「ではなぜ金田君が薪を割る必要が?」

 

 父は、きらきらした顔で言った。

 

「楽しいから」

 

「今、言いましたね?」

 

「いや、家族を守る者として」

 

「今、楽しいからと言いました」

 

「聞き間違いではないかな」

 

「お母様」

 

「聞こえたわ」

 

「お母様!」

 

 母はにこにこしている。

 

 止めない。

 

 むしろ共犯。

 

 まさか。

 

 この二人。

 

 金田君と遊びたかっただけでは?

 

 いや、まだ決めつけるには早い。

 

 父は父なりに、金田君を試そうとしているのかもしれない。

 

 娘を任せる相手として、体力や判断力を見たいのかもしれない。

 

 そう。

 

 そうに違いない。

 

 だからワタシが守らなければならない。

 

「金田君」

 

「うん」

 

「斧を持つ時は腕だけで持たないこと。手首を捻らないこと。刃が食い込んだら無理に抜かないこと。足元を見ること。お父様に煽られても乗らないこと」

 

「煽らないよ」

 

「その笑顔がすでに煽りです」

 

「妃花、父親に厳しいね」

 

「金田君絡みなので」

 

 父はなぜか嬉しそうにした。

 

 なぜ嬉しい。

 

「金田君、まずは構えからだ」

 

「はい」

 

 父が金田君に手袋を渡す。

 

 金田君は素直にそれをはめた。

 

 父は隣に立ち、斧の持ち方を教え始める。

 

「肩に力を入れすぎない。斧は振るというより、重さを落とす。薪の中心ではなく、割れ目を見る」

 

「はい」

 

「足はもう少し開いて。そう。いいね」

 

「ありがとうございます」

 

 ……。

 

 お父様。

 

 楽しそう。

 

 とても楽しそう。

 

 いつもの穏やかな父ではある。

 

 でも目が違う。

 

 これは教師の顔だ。

 

 いや、教師というより。

 

 息子に庭仕事を教えるのを夢見ていた父親の顔だ。

 

 金田君は息子ではない。

 

 ワタシの旦那である。

 

 いや、中学生。

 

 でも契約上は。

 

「では、一度やってみよう」

 

「はい」

 

 金田君が斧を構える。

 

 少し固い。

 

 当然だ。

 

 斧なんて普通の中学生は持たない。

 

 ワタシは一歩近づいた。

 

 父がちらっと見た。

 

「妃花、見守り」

 

「見守っています」

 

「手を出さない」

 

「必要に応じます」

 

「それは手を出す返事だね」

 

 金田君が息を吸う。

 

 斧を上げる。

 

 振り下ろす。

 

 かん、と音がした。

 

 刃は薪に入った。

 

 だが、割れない。

 

 斧が薪に食い込んだまま止まった。

 

「あ、惜しい」

 

 父が言った。

 

 惜しい?

 

 惜しいではない。

 

 刃が食い込んでいる。

 

 金田君がそれを抜こうとして、少し力を入れた。

 

「待ちなさい」

 

 ワタシは即座に前に出た。

 

「妃花」

 

 父が言う。

 

「これは金田君の試練で」

 

「これは金田君の手首保護案件です」

 

「でも」

 

「でもではありません」

 

 ワタシは金田君の横に立った。

 

「金田君、手を離して」

 

「大丈夫」

 

「大丈夫ではないわ。手首を痛める可能性があります」

 

「ゆっくりやる」

 

「離しなさい」

 

「妃花」

 

「離しなさい」

 

「はい」

 

 金田君は手を離した。

 

 よろしい。

 

 ワタシは片手で斧の柄を持ち、もう片方で薪を押さえる。

 

 軽い。

 

 斧ごと薪を少し持ち上げ、薪割り台に軽く落とした。

 

 ぱかん。

 

 薪が綺麗に割れた。

 

 庭が静まり返った。

 

 父が割れた薪を見た。

 

 母が口元を押さえて笑っている。

 

 金田君が言った。

 

「妃花、すごい」

 

「当然よ」

 

「今の、どうやったの?」

 

「持ち上げて落としただけよ」

 

「薪ごと?」

 

「薪ごと」

 

「すごい」

 

「当然よ」

 

 父が、少し困った顔をした。

 

「妃花」

 

「はい」

 

「これは金田君の試練で」

 

「完了しました」

 

「金田君が完了していない」

 

「金田君の安全を守りました」

 

「それはそう」

 

「では問題ありません」

 

「……そうかな」

 

 母が微笑んだ。

 

「あなた、予想通りね」

 

「予想通り?」

 

 ワタシは母を見る。

 

 母は紅茶を飲むような優雅さで言った。

 

「妃花が金田君を守りに入るところまで、あなたは見たかったのでしょう?」

 

「お父様?」

 

 父は目を逸らした。

 

「半分くらい」

 

「半分!?」

 

「いや、金田君に薪割りを教えたかったのも本当だよ」

 

「教えたかった?」

 

「うん」

 

「試練ではなく?」

 

「試練でもある」

 

「遊びたいだけでは?」

 

「……少し」

 

「お父様!」

 

 金田君が、割れた薪を見ながら言った。

 

「俺、もう一回やってみたい」

 

「金田君!?」

 

 ワタシは振り返った。

 

 金田君は真面目な顔だった。

 

「次は捻らない。力を抜く。お父さんの言った通りにやってみる」

 

「……」

 

 お父さん。

 

 今、金田君はワタシの父を「お父さん」と呼んだ。

 

 自然に。

 

 普通に。

 

 いや、礼儀としては問題ない。

 

 むしろ良い。

 

 でも、なんか。

 

 なんか。

 

「金田君」

 

「うん」

 

「楽しいの?」

 

「うん」

 

「……」

 

 父が横で嬉しそうにしている。

 

 母も楽しそうにしている。

 

 金田君も、少し楽しそう。

 

 ワタシは。

 

 ワタシは何?

 

 金田君を守るつもりで来たのに。

 

 なんか、父と金田君が仲良く薪割りをしている。

 

 何これ。

 

 ワタシの旦那なのに。

 

「一回だけよ」

 

 ワタシは言った。

 

「ワタシが横で見ます。変な力が入ったら止めます。お父様は妙なテンションで煽らないこと」

 

「わかった」

 

 父がにこにこ答えた。

 

 全然わかっていなさそう。

 

 金田君がもう一度斧を持つ。

 

 今度は、少し力が抜けている。

 

 父は、今度は静かに助言した。

 

「そう。落とす感じで」

 

 金田君が斧を落とす。

 

 ぱき、と薪に亀裂が入った。

 

 完全には割れない。

 

 でも、かなり良いところまで入った。

 

「おお」

 

 父が嬉しそうに声を上げた。

 

「良くなったね」

 

「ありがとうございます」

 

 金田君も、少し笑った。

 

 その笑い方。

 

 ワタシの前の顔とも、山岸君たちといる時の顔とも少し違う。

 

 大人に褒められて、素直に嬉しい顔。

 

 ……。

 

 ムカつく。

 

 いや、ムカつくのは変だ。

 

 お父様が金田君を褒めた。

 

 金田君が嬉しそう。

 

 良いこと。

 

 良いことのはず。

 

 でも。

 

 ワタシの旦那なのに。

 

     *

 

 第二の試練は、古い革のトランクだった。

 

「次はこれだ」

 

 父が、庭の端に置かれた大きなトランクを指差した。

 

「紳士たるもの、必要な時に荷物を持てることも大切だ」

 

「お父様」

 

「何かな」

 

「それも現代では相手の意思確認が必要です」

 

「もちろん。無理に持ってはいけない」

 

「ではなぜこの重そうなトランクを用意したのですか」

 

「これは昔、私がイギリスで使っていたものだ」

 

「思い出話に入りましたね」

 

「この革の感じ、良いだろう?」

 

「お父様」

 

「金田君、見てみるかい?」

 

「はい」

 

「お父様!」

 

 父は完全にトランクを見せたかっただけだった。

 

 金田君はしゃがんで、真面目にトランクを見る。

 

「かっこいいです」

 

「そうだろう?」

 

 父の顔がぱっと明るくなった。

 

 なんなの。

 

 可愛いか。

 

 いや、父を可愛いと思いたくない。

 

 でも今のは完全に、コレクションを褒められて喜ぶ人だった。

 

「開けてもいいですか?」

 

「もちろん」

 

 金田君が金具を見ている。

 

 父が横から説明する。

 

「これは古いタイプの留め具でね。少し癖がある」

 

「ここを押してから?」

 

「そうそう」

 

「開いた」

 

「上手いね」

 

 楽しそう。

 

 二人とも楽しそう。

 

 なんなの。

 

 ワタシの金田君なのに。

 

 いや、お父様のトランクだから、お父様が説明するのは当然。

 

 金田君が聞くのも当然。

 

 当然だが、なんか気に入らない。

 

「金田君」

 

「うん」

 

「楽しい?」

 

「うん」

 

「……そう」

 

「妃花も見る?」

 

「見るわ」

 

 ワタシは金田君の隣にしゃがんだ。

 

 トランクの中には、古い旅のタグや、革の仕切り、小さな布袋などが入っていた。

 

 確かに、少しかっこいい。

 

 言わないけれど。

 

「これを玄関まで運んでみよう」

 

 父が言う。

 

「やはり試練に戻るのですね」

 

「一応ね」

 

「一応」

 

「金田君、無理なら無理と言うことも大切だ」

 

「はい」

 

 金田君が持ち手を握り、持ち上げようとした。

 

 重そう。

 

 かなり重そう。

 

「持てます。でも長くは無理です」

 

「良い判断だ」

 

 父が嬉しそうに頷く。

 

 金田君はワタシを見た。

 

「妃花」

 

「何」

 

「一緒に持ってくれる?」

 

 その瞬間、ワタシの中の怒りが三割くらい鎮火した。

 

 よろしい。

 

 非常によろしい。

 

 自分だけで背負おうとしない。

 

 ワタシに頼る。

 

 契約五番の精神に適合。

 

「もちろんよ」

 

 ワタシは反対側の持ち手を握った。

 

 軽い。

 

 だが、普通に持つと金田君ごと持ち上げる可能性がある。

 

 なので力を合わせる。

 

 高さを合わせる。

 

 歩幅を合わせる。

 

「行くわよ」

 

「うん」

 

「段差」

 

「見てる」

 

「右に寄って」

 

「うん」

 

「手首は?」

 

「痛くない」

 

「よろしい」

 

 父が後ろから、にこにこ見ている。

 

 母もにこにこ見ている。

 

 何?

 

 何なの?

 

 なぜそんな顔?

 

「妃花」

 

 母が言った。

 

「とても良い連携ね」

 

「当然です」

 

「嬉しそう」

 

「嬉しくは」

 

「嬉しそう」

 

「……少しです」

 

 玄関までトランクを運ぶと、父が拍手した。

 

「素晴らしい」

 

「拍手が軽いです」

 

「いや、本当に良かった。金田君、一人で無理をしない判断ができるのは大事だ」

 

「ありがとうございます」

 

「それに妃花も、ちゃんと金田君の力に合わせていたね」

 

「当然です。金田君が浮いたら困ります」

 

「浮くんだ」

 

「力加減を誤れば」

 

 父は少し笑った。

 

「頼もしいね」

 

「そういう問題ではありません」

 

 金田君が言った。

 

「妃花が合わせてくれたので、持ちやすかったです」

 

「金田君」

 

「うん」

 

「親の前で褒めなくていい」

 

「だめ?」

 

「だめではないけど、処理が面倒」

 

「処理」

 

「ワタシの心の」

 

「そっか」

 

「納得しない」

 

 父と母が、また笑っている。

 

 この二人。

 

 完全に楽しんでいる。

 

 父は金田君と遊べて嬉しい。

 

 母はそれを見て楽しい。

 

 ワタシは金田君を守るつもりだったのに、いつの間にか家族交流に巻き込まれている。

 

 これは。

 

 これは、かなり危険な流れである。

 

     *

 

 第三の試練は、紅茶だった。

 

 庭のテーブルに移動すると、父はいそいそと銀のポットを手に取った。

 

 いそいそ。

 

 そう、いそいそ。

 

 試練を与える威厳ある父ではない。

 

 紅茶セットを金田君に見せたくて仕方がない父である。

 

「金田君、紅茶を淹れたことは?」

 

「ほとんどないです。ココアの方が多いです」

 

「妃花がココア派だからね」

 

「はい」

 

「では、今日は基本からやってみよう」

 

「はい」

 

「お父様」

 

「何かな」

 

「目が輝いています」

 

「紅茶は楽しいからね」

 

「試練はどこに?」

 

「紅茶の中に」

 

「詩的に誤魔化さないでください」

 

 父は茶葉の缶を開けた。

 

「まず、ポットを温める」

 

「はい」

 

「茶葉の量は、人数分とポットのために少し」

 

「ポットのため?」

 

「そういう言い方をすることがある」

 

「へえ」

 

 金田君が真面目に聞いている。

 

 父が嬉しそう。

 

 非常に嬉しそう。

 

 母が小声で言った。

 

「妃花、お父様、本当に楽しそうね」

 

「お母様が止めないからです」

 

「だって、あんなに楽しそうなお父様、なかなか見られないもの」

 

「金田君はワタシの契約相手です」

 

「ええ」

 

「お父様の遊び相手ではありません」

 

「でも、金田君も楽しそうよ」

 

「……」

 

 ワタシは金田君を見た。

 

 楽しそうだった。

 

 かなり。

 

 金田君は、知らないことを教わるのが好きだ。

 

 工具の本を読むのも好きだし、手芸を教えた時も不器用ながら真面目に覚えた。

 

 今も紅茶の淹れ方を父から教わって、少し目が明るい。

 

 腹立つ。

 

 可愛い。

 

 いや、違う。

 

 腹立つ。

 

「妃花」

 

 金田君が言った。

 

「なに」

 

「妃花の好みも、あとで教えて」

 

「知っているでしょう」

 

「ココアは知ってる。紅茶はまだ少し」

 

「……」

 

 よろしい。

 

 ワタシに聞いた。

 

 最終的にワタシの好みへ戻ってきた。

 

 大変よろしい。

 

「紅茶は、甘いお菓子がある時は砂糖なし。ミルクは少し。蒸らしは短すぎると嫌」

 

「うん」

 

「ココアほど牛乳を入れないこと」

 

「うん」

 

「香りが飛ぶから」

 

「覚えた」

 

「よろしい」

 

 父が、横でとても満足そうにしている。

 

「金田君は本当に覚えが良いね」

 

「ありがとうございます」

 

「妃花の好みを聞く姿勢も良い」

 

「当然です」

 

「っ」

 

 やめなさい。

 

 お父様の前で当然ですとか言うな。

 

 母が口元を押さえている。

 

 笑っている。

 

 この家の大人たち、強すぎる。

 

 金田君が紅茶を淹れる。

 

 手つきは丁寧だ。

 

 ただ、少し蒸らしが短い。

 

 でも初回としては悪くない。

 

 父が香りを見て、嬉しそうに頷く。

 

「少し軽いけれど、初めてなら十分だ」

 

「ありがとうございます」

 

「では、妃花に出すなら?」

 

 金田君はカップにミルクを少しだけ入れた。

 

 砂糖は入れない。

 

 そしてワタシに差し出す。

 

「妃花」

 

「いただくわ」

 

 飲む。

 

 少し軽い。

 

 だが、ミルクの量は完璧。

 

 砂糖なしも合っている。

 

「……及第点」

 

「よかった」

 

「次は蒸らし時間を十秒長く」

 

「うん」

 

「ミルクは合格」

 

「覚えた」

 

「忘れたら?」

 

「もう一回聞く」

 

「よろしい」

 

 父がしみじみ言った。

 

「いいね」

 

「何がですか」

 

「金田君が妃花の好みを覚えていくところ」

 

「お父様」

 

「昔、私も君のお母様の紅茶の好みを覚えるのに苦労した」

 

 父が母を見る。

 

 母は微笑む。

 

「あなた、最初はミルクを入れすぎたものね」

 

「懐かしいね」

 

「でも覚えてくれたわ」

 

「当然だよ」

 

 何を見せられているの?

 

 ワタシの両親のロマンス回想?

 

 金田君の前で?

 

 金田君が真面目に聞いている。

 

 やめなさい。

 

 参考にしようとするな。

 

 いや、参考にしてもいいけれど。

 

 ワタシの好みはちゃんと覚えなさい。

 

「金田君」

 

 父が言った。

 

「相手の好みを覚えるのは、ただ記憶することではないんだ」

 

「はい」

 

「今日は甘いものがあるから砂糖を抜く。疲れていそうなら少し甘めにする。寒そうなら温かいものを早めに出す」

 

「はい」

 

「つまり、見ることだ」

 

 金田君が、少しだけ頷いた。

 

「いつも、やってます」

 

 父が金田君を見る。

 

 ワタシも見る。

 

「妃花のココアも、そうなので」

 

「……」

 

「怒ってる時は少し甘め。疲れてる時は熱すぎないように。寒い時は牛乳多め」

 

「金田君」

 

「うん」

 

「親の前」

 

「うん」

 

「そういう生活密着型の刺し方はやめなさい」

 

「刺した?」

 

「刺したわ」

 

 母が、うふふと笑った。

 

 父は満足そうだった。

 

「妃花」

 

「何ですか」

 

「良い人を選んだね」

 

「っ」

 

「お父様!」

 

「五歳の時からだけれど」

 

「お父様!!」

 

     *

 

 第四の試練。

 

 いや、もはや試練と言うのも馬鹿らしい。

 

 第四の遊びは、工作だった。

 

 父は工具箱と木材を持ってきた。

 

「最後に、簡単な椅子を組み立てよう」

 

「お父様」

 

「これは試練ではない」

 

「では何ですか」

 

「工作だ」

 

「開き直り!」

 

「金田君、こういうものは好きかな」

 

「好きです」

 

「だと思った」

 

「金田君も乗らない!」

 

 金田君は、少しだけ楽しそうだった。

 

 かなり楽しそうではなく、少しだけ。

 

 でもワタシにはわかる。

 

 これは好きなものを前にした金田君だ。

 

 工具。

 

 組み立て。

 

 木材。

 

 父の趣味が完全に金田君へ刺さっている。

 

 父はそれを見抜いている。

 

 この人、金田君と遊ぶために、金田君の好きそうなものまで用意してきた。

 

 策士。

 

 上品な策士。

 

「妃花もやる?」

 

 金田君が聞いた。

 

「当然やるわ」

 

「うん」

 

「お父様と二人で楽しそうにしないで」

 

「……」

 

 金田君が少し目を開いた。

 

 父も母もこちらを見る。

 

 しまった。

 

 今、かなり本音が出た。

 

「違うわ」

 

「妃花」

 

「違う」

 

「何が?」

 

「今のは、契約上の監督義務に基づく発言よ」

 

「そう?」

 

「そうよ」

 

 母が柔らかく言った。

 

「妃花、寂しかったの?」

 

「違います」

 

「金田君を取られたみたいで」

 

「違います!」

 

「あなたの金田君なのに?」

 

「っ」

 

 ワタシは母を見た。

 

 母は微笑んでいる。

 

 この人。

 

 時々、本当に容赦がない。

 

 父が少し申し訳なさそうにした。

 

「妃花、すまない。君を仲間外れにしたつもりはないんだ」

 

「仲間外れではありません」

 

「うん」

 

「ワタシは、金田君がお父様と楽しそうにしているのを見て、少し気に入らなかっただけです」

 

「それを寂しいと言うんじゃないかな」

 

「違います」

 

「妃花」

 

 金田君が言った。

 

「うん?」

 

「俺は妃花と一緒がいい」

 

 全員が静かになった。

 

 ワタシも止まった。

 

 金田君は、何か変なことを言ったつもりがない顔で続ける。

 

「お父さんと薪割りするのも、紅茶を教わるのも楽しい」

 

「……ええ」

 

「でも、妃花が横にいる方がいい」

 

「……」

 

「危ない時、止めてくれるし」

 

「……」

 

「妃花が見ててくれると、安心する」

 

「金田君」

 

「うん」

 

「今、親の前」

 

「うん」

 

「殺す気?」

 

「ごめん」

 

「謝るな!」

 

 父が、わざとらしく咳払いした。

 

「金田君」

 

「はい」

 

「君は時々、とても真っ直ぐに強いことを言うね」

 

「すみません」

 

「褒めているよ」

 

 母が微笑む。

 

「妃花、よかったわね」

 

「お母様!」

 

「顔が真っ赤よ」

 

「室温です!」

 

「庭よ」

 

「日差しです!」

 

「夕方よ」

 

「もう!」

 

 ワタシは木材を持った。

 

 危ない。

 

 折るところだった。

 

「作ります」

 

 ワタシは言った。

 

「椅子を作ります。早く」

 

「うん」

 

 金田君が説明書を開く。

 

 父が部品を並べる。

 

 母は紅茶を注いで見守る。

 

 ワタシはネジを分類する。

 

 いつの間にか、完全に家族の休日になっていた。

 

 金田君が板を持ち、ワタシが支える。

 

 父が横から言う。

 

「そこの向きは逆かな」

 

「この穴がこっちなので、たぶん合ってます」

 

 金田君が言う。

 

 父が覗き込む。

 

「ああ、本当だ。金田君の方が正しい」

 

「ありがとうございます」

 

「金田君」

 

 ワタシは低い声で言った。

 

「お父様と息を合わせすぎでは?」

 

「板の向きの話」

 

「そういう問題ではないわ」

 

「妃花、こっち持って」

 

「持つわ」

 

 持つ。

 

 持つけれど。

 

 なんか悔しい。

 

「妃花、力少しだけ」

 

「こう?」

 

「うん。上手い」

 

「褒めるほどではないわ」

 

「でも上手い」

 

「……よろしい」

 

 父が、それを見てにこにこしている。

 

「お父様、何ですか」

 

「いや、君たちはちゃんと一緒に作るんだね」

 

「……」

 

「壊すこともあるだろうけれど、こうして作ることもできる」

 

 急に父親の顔をするな。

 

 さっきまで全力で遊んでいたでしょうが。

 

 そういう重いことを急に言われると、怒れなくなる。

 

 金田君が、ネジを締めながら言った。

 

「妃花は、作るのも上手いです」

 

「金田君」

 

「料理も手芸も掃除も」

 

「今は言わなくていい」

 

「あと、壊さないようにするのも上手くなってる」

 

「っ」

 

 ワタシは持っていたネジを落としかけた。

 

 金田君が受け止めた。

 

 父と母の前でそれを言うな。

 

 いや、嬉しい。

 

 かなり嬉しい。

 

 でも言うな。

 

 処理が追いつかない。

 

 父は、静かに言った。

 

「そうか」

 

「はい」

 

「金田君がそう言うなら、そうなんだろうね」

 

 やめて。

 

 お父様まで優しい声を出さないで。

 

 ワタシは怒る場所を失った。

 

 屈辱。

 

 いや、これは屈辱ではない。

 

 でも、かなり困る。

 

     *

 

 椅子は完成した。

 

 小さな木製の椅子。

 

 庭で使うにはちょうどいい。

 

 少し脚ががたついたが、金田君が調整した。

 

 父が座ってみる。

 

「うん。良いね」

 

「壊れませんか」

 

 ワタシが聞く。

 

「妃花が座っても大丈夫だと思うよ」

 

「ワタシ基準?」

 

「強度試験としては最上級だ」

 

「失礼です」

 

「褒めているよ」

 

「半分くらいですね」

 

 金田君が言った。

 

「次に来た時も使えますか?」

 

 父の顔が、ぱっと明るくなった。

 

「もちろん」

 

「金田君」

 

 ワタシは言った。

 

「もう次の話をしているの?」

 

「うん」

 

「お父様も乗らない」

 

「次は棚でも作ろうか」

 

「お父様!」

 

 母が笑う。

 

「楽しみね」

 

「お母様まで!」

 

 この家、全員金田君に甘い。

 

 いや、ワタシもか。

 

 違う。

 

 ワタシは契約に基づいて適切に甘いだけ。

 

 両親は完全に遊びたがっている。

 

 父など、金田君に小さな軍手まで渡している。

 

「次回用に」

 

「ありがとうございます」

 

「受け取らないで!」

 

「使うから」

 

「使うの!?」

 

「棚、作るなら」

 

「もう作る気なの!?」

 

 父が満足そうに頷いている。

 

 母が嬉しそうに見守っている。

 

 金田君が楽しそうに軍手を見ている。

 

 ワタシは。

 

 ワタシは何?

 

 保護者?

 

 監督?

 

 正妻?

 

 中学生。

 

 いや、それは今どうでもいい。

 

「お父様、お母様」

 

「うん」

 

「はい」

 

「金田君を構うのは許可します」

 

「許可制なんだね」

 

「許可制です」

 

「ありがとう、妃花」

 

「ただし」

 

 ワタシは金田君の袖を掴んだ。

 

「ワタシ同席です」

 

「もちろん」

 

「事前申請制です」

 

「申請書を書くのかな」

 

「書いてください」

 

「本当に?」

 

「本当に」

 

 父が少し考えてから言った。

 

「件名は『金田君との棚作りについて』でいいかな」

 

「本気で書くつもりですね?」

 

「もちろん」

 

「お母様、止めてください」

 

「楽しそうだからいいのではなくて?」

 

「お母様!!」

 

 金田君が小さく笑った。

 

 ワタシはそれを見た。

 

「金田君」

 

「うん」

 

「何を笑っているの」

 

「妃花の家、楽しい」

 

「っ」

 

 やめなさい。

 

 それは良すぎる。

 

 ワタシの家を楽しいと思ってくれるのは、かなり良い。

 

 だが、それを今言うな。

 

 父母が嬉しそうにしている。

 

 ほら。

 

 お父様など、もう完全に金田君を次回も招く気だ。

 

 母も焼き菓子の相談を始めそうな顔をしている。

 

「……金田君」

 

「うん」

 

「楽しかった?」

 

「うん」

 

「お父様と遊ぶのが?」

 

「妃花と、お父さんと、お母さんと」

 

「……」

 

「みんなで」

 

 ワタシは黙った。

 

 それなら。

 

 まあ。

 

 許す。

 

「ワタシを差し置いて楽しそうにしないで」

 

「うん」

 

「でも、楽しいのは許すわ」

 

「うん」

 

「お父様と仲良くするのも許す」

 

「うん」

 

「お母様に可愛がられるのも、まあ、許す」

 

「うん」

 

「でも」

 

「うん」

 

「ワタシの旦那だということは忘れないで」

 

 場が静かになった。

 

 金田君が目を少し開いた。

 

 父が咳払いした。

 

 母が、ぱあっと顔を明るくした。

 

「妃花」

 

「何ですか」

 

「もう一回言って」

 

「言いません」

 

「とても良かったわ」

 

「言いません!」

 

 金田君が小さく言った。

 

「中学生だけど」

 

「今それを言わない!」

 

 父が笑った。

 

 母も笑った。

 

 ワタシは全然笑えない。

 

 いや、少し笑いそう。

 

 でも笑わない。

 

 これは大事な主張である。

 

     *

 

 帰り際。

 

 父は金田君に紅茶の茶葉を渡した。

 

「練習用に。今日のものより扱いやすい」

 

「ありがとうございます」

 

「次に来た時、妃花の好みに合わせて淹れてみよう」

 

「はい」

 

「お父様、次回の予定を当然のように入れないでください」

 

「申請書を書くよ」

 

「そこは素直!」

 

 母はワタシに、小さな缶を渡した。

 

「妃花にはこれ」

 

「何ですか?」

 

「ココアよ。マシュマロも入れておいたわ」

 

「お母様」

 

「紅茶ばかりでは不公平でしょう?」

 

「完璧です」

 

「でしょう?」

 

 金田君が少し笑った。

 

 父も笑う。

 

 母も笑う。

 

 玄関の空気が、あたたかい。

 

 あたたかすぎる。

 

 金田君が、ワタシの家に自然にいる。

 

 父に茶葉をもらい、母に笑われ、ワタシに袖を掴まれている。

 

 それが、なんだか。

 

 腹立つくらい。

 

 嬉しい。

 

「金田君」

 

「うん」

 

「帰るわよ」

 

「うん」

 

「お父様、お母様。今日はありがとうございました」

 

「こちらこそ」

 

「また来てね、金田君」

 

「はい」

 

「お母様、ワタシもいます」

 

「もちろん、妃花も」

 

「ついでみたいに言わないでください」

 

 父が言った。

 

「金田君」

 

「はい」

 

「次は棚作りだ」

 

「はい」

 

「お父様」

 

「申請書を書く」

 

「よろしい」

 

 よろしいのか?

 

 まあ、よろしい。

 

 玄関を出て、門まで歩く。

 

 金田君は、父からもらった茶葉と軍手を持っている。

 

 ワタシは母からもらったココアとマシュマロを持っている。

 

 なんだこの夫婦の贈答品みたいな分担は。

 

 いや、中学生。

 

 でも契約上は。

 

 門を出たところで、ワタシは手を出した。

 

 金田君は何も聞かずに握った。

 

 よろしい。

 

「金田君」

 

「うん」

 

「今日の契約更新よ」

 

「うん」

 

「一、お父様の試練は遊びの可能性が高い」

 

「うん」

 

「二、遊びであっても危険物の使用はワタシの監督下」

 

「うん」

 

「三、お父様と金田君が遊ぶ場合、ワタシの同席必須」

 

「うん」

 

「四、お母様の観戦力は高いので警戒」

 

「うん」

 

「五、金田君はワタシの両親と仲良くしてよい」

 

「うん」

 

「ただし」

 

「うん」

 

「ワタシを差し置いて楽しそうにしすぎないこと」

 

「難しい」

 

「難しい?」

 

「妃花も一緒に楽しめばいい」

 

「……」

 

「それなら差し置かない」

 

 ワタシは金田君の手を握り直した。

 

 力は入れすぎない。

 

 今日は薪を割ったが、金田君の手は割らない。

 

「及第点」

 

「よかった」

 

「かなり良い答えよ」

 

「うん」

 

「次の棚作りも、ワタシが同席します」

 

「うん」

 

「ワタシも作ります」

 

「うん」

 

「お父様に金田君を独占させません」

 

「うん」

 

「お母様にもです」

 

「うん」

 

「あなたはワタシの契約相手です」

 

「うん」

 

「お父様の工作友達ではありません」

 

「それは少しなりたい」

 

「金田君?」

 

「でも妃花と一緒に」

 

「……よろしい」

 

 夕方の道を歩く。

 

 金田君の手が温かい。

 

 父は金田君と遊びたかった。

 

 母はそれを眺めて楽しみたかった。

 

 金田君は普通に楽しんだ。

 

 ワタシは、最初は守らなければと思った。

 

 父が無茶ぶりをする。

 

 母も止めない。

 

 だからワタシが金田君を守るのだと。

 

 でも、途中で気づいてしまった。

 

 あの二人、金田君と遊びたいだけだ。

 

 金田君のことが好きすぎる。

 

 今か今かと、一緒に遊べるタイミングを狙っていたのだ。

 

 そして、それに気づいたワタシは。

 

 少しムカついて。

 

 少し寂しくて。

 

 かなり嬉しかった。

 

「金田君」

 

「うん」

 

「今日、楽しかったのは許します」

 

「うん」

 

「でも、帰りはワタシとです」

 

「うん」

 

「ココアもワタシに淹れます」

 

「うん」

 

「紅茶を覚えても、ワタシのココアを疎かにしないこと」

 

「牛乳多め」

 

「よろしい」

 

「マシュマロ三個」

 

「非常によろしい」

 

「紅茶はミルク少し。お菓子がある時は砂糖なし」

 

「……」

 

「蒸らしは今日より十秒長く」

 

「……よろしい」

 

 危ない。

 

 また刺された。

 

 父から試練を受けたはずなのに、結局一番刺してくるのは金田君である。

 

「金田君」

 

「うん」

 

「今日は、父と母に付き合ってくれてありがとう」

 

「楽しかった」

 

「それは聞いたわ」

 

「妃花の家、好き」

 

「っ」

 

「お父さんもお母さんも、優しい」

 

「……」

 

「妃花が大事にされてるの、わかった」

 

 ワタシは、少し立ち止まった。

 

 金田君も止まる。

 

「……そう?」

 

「うん」

 

「お父様は面倒くさいわ」

 

「うん」

 

「お母様は容赦がないわ」

 

「うん」

 

「でも」

 

「うん」

 

「大事には、されているわね」

 

「うん」

 

 金田君は、静かに言った。

 

「俺も大事にされて、嬉しかった」

 

「……」

 

「妃花の大事な人たちに」

 

 ワタシは金田君の手を少し強く握った。

 

 強く。

 

 でも痛くないくらい。

 

「金田君」

 

「うん」

 

「今のは、かなり有効」

 

「うん」

 

「処理に時間がかかります」

 

「ココアまで?」

 

「ココアまで」

 

「わかった」

 

 ワタシたちはまた歩き出した。

 

 今日の試練は、試練ではなかった。

 

 父の遊び。

 

 母の観戦。

 

 金田君の家族交流。

 

 ワタシの嫉妬。

 

 そして、少しだけ未来の予行演習。

 

 次回は棚を作るらしい。

 

 お父様はきっと本当に申請書を書く。

 

 お母様はきっと焼き菓子を用意する。

 

 金田君はきっと楽しみにする。

 

 ワタシは、たぶん文句を言う。

 

 でも。

 

 次は最初から混ざる。

 

 ワタシの旦那なのだから。

 

 夫婦なので。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。