転生した女(オレ)って話【美少女といちゃつきたいのに俺が美少女なせいでイケメンしか寄って来ん】   作:りりらりら

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3話まで読んでいただきありがとうございます。
構成通りに書けるよう頑張ります。






第三話|「俺じゃねぇか!!!」【めくるめく前世の記憶】

 

 

 

 

 

第三話「俺じゃねぇか!!!」

・巡る前世

 

 

 

 

 

 

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あっという間に、街中の人々が様子を見に戻ってきた。

 

幸い店は無事だとか、犯人はどこだ?とか口々に言いながら。

 

やはり皆、先ほどの青年は見えていないらしかった。

 

そして一人が言った。

 

 

「もしやそのお顔、アメリア様では…?」

 

 

その瞬間、皆が黙って、一斉に俺の顔を見た。

 

それもそのはず、今の俺はフードが取れて綺麗なお顔が丸見えだったから。

 

 

「な、何を!この方は…その」

 

 

後のことを思ってか、アリオが必死に取り繕おうとするが、もう既に遅く、皆口々に様々な憶測を口走る。

 

まぁ、この見るからに階級社会では、貴族への不満ばかりだろう。あれこれ理由をつけて俺を悪人にしたいのはよくわかる。

 

芸能人だって同じ立場だったからな。

 

 

「いいの、アリオ」

 

 

ここは俺が引き受けた。

 

大丈夫、冷静になった俺はアドリブだってお手のものだ。

 

 

「ええ。その通り、私はアメリア。この地の領主の娘」

 

 

で、合ってるよな…?

 

 

「今の騒ぎ、解決したのはこの私です。犯人は姿を隠し、逃げおおせました。誰か、この中で犯人の顔を見たものは?」

 

 

まぁ、現状一番怪しいのは被害者の近く、つまり現場にいる俺だが、証拠が無ければ領主の令嬢に楯突くなんて出来まい。想像ではなんとでも言えるがな。

 

そして解決したというアピールも大事だ。

 

 

「居ないのですね?なら、公正な情報が出るまでは要らぬ噂や根も葉もない事は言いふらさないように」

 

「う、嘘をつけ!あんたの噂は聞いてるぞ!」

 

 

ん?

 

 

「結局全部あんたの仕業なんだろ!自作自演だ!」

 

 

なんだあの男。全く、野郎は声がでかいからダメなんだ。

 

 

「そ、そうよ!そのローブ!犯人は黒いローブだった!私は見たのよ」

 

「俺も…」「私も見た」「そういえばローブを着てた」

 

 

え、まじか。いや、確かにローブ着てるけども。これってこの世界の旅人衣装なんだろ?

 

 

「落ち着きなさい。ローブの人間など他に大勢いるでしょう。その者たち皆を疑うつもりですか?私のこれは密かに領地を視察に来るため。むしろ騒ぎを起こさないための姿です」

 

「嘘だ!騙されないぞ!」

 

「そうよ、どうして治安部隊が来ないの?」

 

「裏で手を回してるんだろ」「こんな茶番をしてなんの意味があるの?」

 

「俺たちの気持ちなんて貴族に分かるか」「税金でいつも贅沢をして」

 

 

俺の有り合わせの諭しでは、一度爆発した不満は収まらず、皆口々に好きなことを言っては俺を貶した。

 

いくら不満が溜まっていたとは言え、こいつら、やけにガッツあるな。

 

領主の娘にあれこれ言って、後が怖くないのか?どうせ権力じゃ勝てないのに。

 

昔の俺にも居た、不屈のアンチを思い出す。どうせ開示すれば負けるのに。

 

メンタルさえ強ければ、アンチ程度が俺に傷一つ付けられるものか。

 

俺を攻撃したってあんたがモテるわけでも、お前の貯金が増える訳でもないってのに。アンチってのはやたらしつこい。

 

こっちが言い返さないのをいいことに、いつまでも好き放題言いやがって。芸能人がテレビそのままの性格な訳ねーだろ、ウケがいいように取り繕ってやってんだよ。

 

でもまぁ、一部のやつを除いてな。そのうちの1人は俺に言った。

 

「ファンを大切に」ってな「たまには批判も聞いてあげて」だって?

 

冗談じゃない。あんな奴らに俺の何が分かる。文字通り住む世界が違うんだ。分かり合えないならそれまで、歩み寄ったって変わらない。

 

ああ、なんか昔を思い出すとイライラしてきた。

 

 

「俺たちの金を返せ!」「税金泥棒!」

 

 

ほらな、アンチはすぐ話題を変える。

 

昔のことを根掘り葉掘り蒸し返して、さっきの事件のことなんてそっちのけ。

 

ああ、なんか…もう……。

 

 

「うるせぇ!!」

 

 

思わず俺まで爆発した。冷静さを失った俺はもうダメだ。

 

民衆は一様に押し黙り、ざわざわと周りと顔を見合わせている。

 

 

「お、お嬢様…」

 

 

アリオも涙が引っ込んで引いている。

 

 

「さっきから聞いてればぐちぐちと!俺が助けてなければこの子は死んでたんだぞ!いや、俺が死ぬかもしれないのにこの子を助けたんだ!命懸けで!」

 

「それを見てるでもなく一目散に逃げただけのお前らが色々言うな!貴族が金持ってるからなんだ!それ相応の働きをしてるだけだろ!じゃあなんだ?どうすれば満足なんだ?え?」

 

「自分たちもパンをお腹いっぱい食べたい?その後は?ふかふかの布団?それから次は?綺麗な服、もっと美味しいパン、もっと豪華なベット、もっともっと綺麗な服、結局望むことは同じだろ?人間なんだから欲望はみんな同じ、同じ欲で動いてんだよ、それを止められるのか?止められるならなんでそんなに怒ることがある?」

 

「結局お前らも俺たちも同じ人間なんだから、誰が権力も金も持とうが同じなんだよ!俺たちとお前たちの違いはたった一つ!」

 

「ただの運だ!」

 

 

俺はズバッと言い切った。つい頭に血が上って、なんせ恐怖に震えながら走って、なんとか人を助けた末に言われるのが生まれの恨みだなんて、あまりに信じられないだろ。

 

 

「ええ…」「ちょっとそこまでは言ってない…」「あまりに暴論では」

 

「いくら領主様と不仲な引きこもり姫とはいえ、ここまでお怒りだと私たちも危ないのでは…」

 

「領主様に言い付けられたら…」「大丈夫だろう…あまりに不仲で有名なんだから」

 

「こんなに感情的だとは…」「昔はもっとお淑やかで大人しい方だったような」「それいつの話?引きこもりがちで何事にも無頓着な冷たい方だと聞いたけど」

 

 

皆さすがに引いたのか、ざわざわとあれこれ言い合いながら、段々と俺の周りから離れていった。

 

人があまり居なくなった通りで、俺は頭を抱えた。

 

ああああ……ついつい感情に任せて色々言い過ぎた…。

 

最後にはスッキリ解決もしなくて、ドン引きさせて周りから離れさせるって、どんなDQNだよ…。

 

ほんと最悪…俺はこんなにダメだったか?……まぁこんなもんだったか。

 

いや、考えてみればそれもこれもあの謎刺青男のせいだろ!勝手に重要証拠持ち帰りやがって!

 

ぜってぇ許さねえ。

 

 

「お嬢様…」

 

「あ、アリオ」

 

 

さすがにアリオもドン引きだよな。

 

 

「いいんです、お嬢様。お嬢様は今まで我慢しすぎていました。たまにはあのくらい素直になられた方が、健康上よろしいかと」

 

「お、おお。そうか」

 

 

なんか知らんが納得してるな…?

 

 

「それに、この事件は明らかに黒魔術が関わっています。だから治安部隊も表立って来ないのでしょう。先程まであったローブも人形も、消えています。恐らく駆けつけたのは白煙部隊でしょう」

 

「白煙部隊?」

 

「私も有名な噂でしか聞いたことがないのですが、訳ありの実力者たちで構成された、魔道警備隊の隠密行動部隊。大きな混乱を招く事態を秘密裏に解決するため、事件の痕跡を何もかも煙に巻いたように消し去ってしまう。言ってしまえば、もみ消し要員だと」

 

「なんだその傍迷惑な奴らは…」

 

 

おかげで俺が疑われて民衆の信頼を失ったじゃないか。まぁ半分は俺のせいだが。

 

 

「まさか、顔に刺青があったりするのか?そいつらは」

 

「え?い、いえ。そこまでは。なぜそう思うのですか?」

 

「いや、いいんだ。それなら」

 

 

うーん。じゃあさっきのあいつは白煙部隊なのか?でもその話だと、そいつらに会うのは簡単じゃなさそうだな。ここは一旦忘れて気を収めるしかないか。

 

しかし刺青の男…覚えたからな。

 

 

「にしても、お嬢様。良かったのですか?」

 

「ん?何が」

 

「いくら混乱を招く事態を避けたいとはいえ、黒魔術の関与を民衆に打ち明けていれば、光の加護を受けた聖女候補であるお嬢様が疑われるなんてことありませんでしたのに」

 

「…………」

 

 

そ・れ・を・早く言えよぉーーー!!!

 

民衆の混乱とかどうでもいいわ!あの刺青男の思惑がなんであれ、俺は俺のことが一番なんだよ!!

 

後なんだよ聖女って!さっきも言われた気がするけど、なんなんだよそれ!

 

 

「全く…お嬢様は抱え込みすぎです。ん?」

 

 

俺が悲嘆に暮れるその時、遠くから1人の青年が走ってきた。

 

格好からするに、普通の街の住人だろう。メガネで、茶髪をあちこちに跳ねさせた、いかにも身だしなみに頓着がない風貌だ。

 

しかし案外光るものを感じる。どことなく優男で、イケメンと言われればそうだが、言われるまでは意識できない。そんな感じのやつ。

 

まぁ、言うまでもなく俺の方がイケメンだな。

 

 

「あ、あの。アメリア様…ですよね」

 

 

喋り方まで緊張したような普通の青年だ。オドオドと落ち着きがないが、真っ直ぐこちらを見つめている。

 

 

「そうだけど」

 

 

俺はさっきの醜態のこともあり、吹っ切れてそっけなく返した。

 

もうどうにでもなれ、どうせ俺の人生はとっくに終わってるんだ。お嬢ちゃんはこの体に戻ってくるかも分からないしな。

 

全く自分でも都合のいい思考力だと思う。

 

 

「その、彼女を治療…なさるんですよね。あ、す、すみません。他に言い方が見つからなくて。聖女の御技は魔法とは違うと知ってはいるんですが。どうしても、見てみたくて」

 

「……ま、良いけど」

 

「お嬢様!?」

 

 

ほとんど何言ってるか分からんが、とりあえずこの子を目覚めさせるにはその、なんとか聖女パワーを使えばいいって事だな。

 

やり方とか全く分からないけど。

 

 

「お嬢様…いいのですか?民衆にいたずらに力を見せては教会に背くことに…」

 

「いいだろ。別に」

 

 

その教会とやらも俺には関係ない場所だ。頼むから知らない組織をこれ以上増やすな…。

 

こうなればヤケクソだ。今の俺には羞恥心からか、冷静さが微塵も残っていない。

 

 

「お前、聖女の御技についてどこまで知ってる?」

 

「は、はい!確か、額に手を当てて、奪われた体内のオドを空気中のマナから補填すると」

 

 

ふーん、なるほどー。

 

 

「その通り。じゃ、早速やってみるか」

 

 

知ったような口ぶりで言ってみたものの、本当に上手くいくのか…。

 

俺は言われた通りの手順でやってみた。後はフィーリングで補完。

 

まず少女の額に手を当て、目を閉じ、意識を手のひらに集中させる。

 

すると、なんだか分からないが、空気中から鈴が転がるようなシャラシャラ、リンリン、と言うような奇怪な音が聞こえたような気がし、その後すぐに目を閉じていても分かるほどの光が溢れ出た。

 

それが収まった頃、恐る恐る目を開けてみると、少女はまだ気を失っていた。

 

なんだ、失敗か。そりゃそうか。と思っていると。

 

 

「ん……」

 

「あっ」

 

 

なんと金髪の少女はゆっくりと目を覚ました。

 

 

「す、すごい!これが聖女の御技…黒魔術に対するただ一つの手段!」

 

「ふふ、まぁね。お…私にかかればこんなもの…」

 

「いや待て、お前今なんて?」

 

 

聞き捨てならない情報が耳に入り、問い詰めようとしたその時。

 

 

「ア、アメリア様…?ほ、本当に?私を救ってくれたのですか?」

 

「あ、ああ。そうなんだけど。いや、それどころじゃ」

 

 

間が悪く少女が感謝を述べようとしていた。

 

しかし、よく考えてみると、この街に来た目的は端的に言うと女を幸せにすると言う最大の目的のためであることを思い出した。

 

そこで、今ようやく大きな一歩を踏み出したことに気がつき、俺は一周回って落ち着きを取り戻した。

 

 

「…っ、私、感激です!まさかあのアメリア様に救っていただけるなん…てっ…!?」

 

 

そんな感動的な俺と少女とのやり取りに水を刺したのは、メガネの青年だった。

 

そいつは俺と見つめ合っていた少女を弾き飛ばして、俺に詰め寄った。

 

 

「アメリア様…こんな俺に、ダメ元で聞いた俺にも寛大に御技をお見せくださるなんて…噂なんてやっぱり嘘なんですね」

 

「俺、ずっとずっと前から、アメリア様が聖女候補に選ばれる前からずっと、ふさわしい人だって、アメリア様以外に聖女はいないって思って…」

 

 

いや、何横から入ってきて喋り倒してるんだよ。俺と少女の感動のシーンを邪魔するな。

 

俺が望んでるのは「キャー!素敵ー!抱いてー!」って可愛い女の子から言ってもらうハーレムなんだよ!男はお呼びじゃないっつぅの!

 

しかもなんだその顔は、赤面するな!まるでお前が俺に惚れてるみたいだろうが!

 

 

「…っ、お、お邪魔みたいですわね、私…今日のことは…嫌な記憶ですから、忘れることにします。もちろん、救ってくれたことは胸に秘めて。ご機嫌よう!ありがとうございました、アメリア様!」

 

「あ!ちょっと!」

 

 

待ってくれー!行かないでー!まだ名前も聞いてないのに!

 

 

「あ、俺、そんなつもりじゃ…名前も名乗らずにすみません」

 

「いや、いい」

 

 

お前の名前なんてどうでもいいんだよ。野郎なんかより女の子の方がいい…。

 

 

「え、こんな無礼を許してくださるんですか…!?ア、アメリア様…っ」

 

 

いや、違う違う。なんなんだよこいつはもう…。

 

 

「改めて、俺はフランクリンです。ルパート・フランクリン。あの、今日店に来てくれましたよね」

 

「は?店?」

 

「はい。フランク 生活雑貨っていう店で…最近父から継いだんです。今日いらっしゃってくれたのがすごく貴重な縁に感じて…」

 

「しかも時計まで買っていただいて。やっぱり貴族が庶民を軽んじてるって皆は言いますけど、俺は必ずしもそうじゃないって思ってて…あ、すみません」

 

「さっきの演説も…その…すごく、良かったです。抱いていたイメージとは違って、その、なんだかドキドキしました」

 

 

あれが演説に聞こえたのかお前は…。というかさっきから謎に照れるんじゃない。

 

 

「はぁ、とにかく、お前は知っちゃいけないことまで知ってる気がする。どこか話せるとこまで案内してくれないか」

 

「あ、じゃ、じゃあうちに来ますか。今日はもう店は閉めますから」

 

「まだ午前だけど…いいのか?」

 

「は、はい!もちろん!全然構いません!」

 

 

なんか、すごい熱量だなこいつ。

 

 

 

 

 

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「ど、どうぞ…粗茶ですが…」

 

「お嬢様、私が毒味を」

 

「いいって、飲まないし」

 

 

俺はとにかく早く話をしたかった。

 

まぁ、あからさまにメガネの青年はしょんぼりしたが、どうでもいい。

 

 

「お前、あれが黒魔術の事件だって知ってたな?」

 

「はい…すみません。今日、アメリア様がうちにいらしてくださったので、店にいる間は緊張で動けなくて、でも、どうしてもお買い上げいただいたお礼が言いたくて追いかけたんですけど、何せ足が遅くて…」

 

「それで追いつく頃には通りで騒ぎが…で、でもアメリア様が身を投げ打って少女を助けてくださいました!」

 

 

見てたのかよ!

 

 

「だったら民衆との言い合いでそれを言ってくれたら良かっただろ?」

 

「その…はい…すみません」

 

 

……ま、その声量と振る舞いじゃ、とてもそういうタイプじゃないか。

 

 

「まぁ、いいよ。なんで犯人が黒魔術を使ってるって分かったんだ?」

 

 

近くに居なかったらあの棒切れの人形を見てないはず。

 

 

「その…実は黒魔術と聖女の御技についてすごく個人的に興味があって、色々自分なりに詳しいというか…」

 

「あの光を吸い取ってるの、あれは人の体内のオドを吸い取っていましたよね?俺は初めて見たんですけど」

 

 

うん、俺も初めて見た。

 

 

「魔女や魔術師でもない人からあんなことができるなんて、黒魔術以外にあり得ません」

 

「証拠が無くなっていましたし、恐らく魔道警備隊も気付かれていないだけで来ていたんですよね?聖女候補なら、加護で人の魔法に敏感ですから、もしや虚空に話しかけていたのはそのせいでは?」

 

「え、ま、まぁな。ただの民衆にしては、詳しい…な?」

 

 

へぇー、そうなんだー。だからあいつと会話してたの誰にも見えてなかったのかぁ。

 

なんか色々解説してくれるな、こいつ…思っていたより結構助かるぞ?

 

 

「やっぱり!魔道警備隊の知られざる部隊ってやつですかね?1000年に一度レベルの貴重で強力な魔法を持ってる人がザラにいるって噂ですよね!すごい…憧れるなぁ」

 

「そして黒魔術による影響を唯一回復することのできる聖女の加護!国にたった4人しか居ないその力を持つ聖女候補…今、俺はそんな人と話すことができているなんて…神様に感謝しかありません!」

 

「おお、そうか…」

 

 

言動がちょっと怪しくなってきたところで、アリオがそっと俺に耳打ちした。

 

 

「お嬢様、もうお帰りになった方が…」

 

「そ、そうだな。馬車も待たせてるし、今日は色々あって疲れた…」

 

 

俺たちはルパートをあれこれ言いくるめて今日は帰ることにした。決して今日のこと、その真相は他言無用だということを念押しし、あの金髪おさげの少女もなんとか探し出して、同じように念押しするよう頼んだ。

 

 

こうして、長いようで短いような一日が半分終わった。

 

 

 

 

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馬車の中で、アリオが言いづらそうに口を開いた。

 

 

「お嬢様…お気付きだとは思いますが、今回の件はどのようにしようと旦那様や奥様の耳に入ってしまうかと…」

 

「ん?まぁ、そうだろうな」

 

 

俺はその真意に気づかないまま。軽く返事をした。お嬢ちゃんにとって、家族がどんな存在だったのか。今の俺には知る由もなかった。

 

結局、あの女の子は幸せになったのか?

 

とは言え、俺が助けに入らなきゃ、あの子は死んでただろうし、あんな棒切れに人の命が奪われていたことに変わりはない。

 

今日のところは目の前で人が死ななかっただけで良しとするか。

 

もしかしなくてもこの世界…かなり物騒なのでは…?

 

 

 

 

 

|

 

 

 

 

屋敷に戻り、俺はベットに仰向けになって寝転びながら、天井を見つめてゴロゴロしていた。

 

とうとう家族に呼び出されたりすんのかな…怒られたりとか?だる…。と、そんなことをぼんやり考えていると、外から慌ただしい声と数人の戸惑うような困惑の滲んだざわめきが聞こえ、思わず身体を起こす。

 

おっ、ついに呼び出しか…?と、考えた時、聞き慣れた声がいつもより荒いノックと共に聞こえてきた。

 

 

「お、お嬢様!失礼します。大至急、お伝えしたいことが」

 

「ああ、入れ」

 

「失礼します!」

 

 

入ってきたアリオは予想通り、焦ったような困惑の表情で、そんなにか?と俺は少し不審に思った。

 

家族会議になるにしても、そこまで困らなくても、まさかこの家では家族会議ってのはよっぽどのことなのか?

 

と、そこでようやく少しだけ身構えた俺は、予想だにしないことを聞かされた。

 

 

「至急、王都の大聖堂に集まるようにと、聖女候補達に通達が…!」

 

「は?」

 

「なんでも、聖女候補が1人…増えた、とか…」

 

「ん??」

 

 

いや、そんな重大そうに告げられてもな…。それがどんな風に重大なのか、いまいち俺には分からないんだよ。

 

なんか深刻そうに真剣な顔してるけど…。聖女候補が増えるって、そんなにやばいことなのか?

 

 

「お困りになるのも無理はありません。戸惑う気持ちはわかりますが…今はとにかく、至急、とのことですので、参りましょう」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

 

なんかいまいち身が入らないというか、感情が追いつかないが、とりあえず今は流れに身を任せておくか。

 

 

 

|

 

 

 

 

なんだか今日は移動が多いな…まあ生前に比べたら全くそんなことはないが。

 

ロケに撮影、雑誌に広告、CM、テレビ…一番波が来てた時は、一日が一年に感じるくらい詰め込まれてたもんだ。

 

と、こんな関係ないどーでもいいことを考えているのには訳がある。

 

それは…。

 

 

「…………」

 

 

この重苦しい状況に耐えられないからだよーっ!

 

今、俺は王都という言うまでもなく国で一番栄えたどデカい都市に来ている。

 

国の需要機関や企業の本社とかがある、そんなイメージの都会とは違う、ファンタジーな大都市。

 

来た時はめちゃくちゃワクワクした。だってあの景色…まさかこの目であんなロマン溢れる魔法の世界を見られるなんてな。

 

しかし、そんな期待に胸が躍ったのも束の間、これまた馬鹿でかい白い教会のような建物、王都の大聖堂に一歩踏み入ると、皆が俺を冷たい目で見た。

 

そこにいたのは6人の裏若きまるで宝石のように色とりどりな美少女達と、1人の薄い金髪の、緑色の瞳をしたイケメン。

 

格好から察するに、と言うか1人だけ段差の上からこちらを見下ろしている奴。あのいけ好かない男は王子かなんかだろう。

 

そして集められているのが聖女候補達、と言ったところか。

 

にしても、俺は遅刻でもしたのか?なんでったってそんな蔑むような目で俺を見る?やめろ、そう言うストレートな悪意には弱いんだよ!

 

昔を思い出すだろ!

 

 

「…ようやく皆が集まってくれたようで良かった。改めて、あまりに急な通達にも関わらず、この場にこうして集まってくれたことに王国代表として感謝を。そして理由は通達の通り」

 

「予言にある言葉、7人の聖女候補から、王国の母、第一王子の妻となり、やがて王女となる者を選ぶ…それが我が国が創世記より長らく守ってきた伝統。しきたりの一つ。しかし此度、新たな光の加護がこの地に降り立った」

 

 

途端にざわめく聖堂の人々、聖職者や、恐らく聖女候補と思われる少女達の側仕え達、王子の近衛兵士や側近までも皆、困惑のどよめきをあげている。

 

しかし、俺には何一つピンとこない。

 

 

「静かに!この王家、ルーベルシュタイン家の名の下に、確かに光の加護はこの地に8つある。そして、今、予言とは異なれど、しきたりに従い、聖女候補達に新たな候補者を謁見しよう」

 

「アトナ・エトランゼ!」

 

 

大層な紹介の後、王子の後ろからどうにも居心地悪そうに出てきたのは、思っていたよりずっと地味な、けれどめちゃくちゃ美少女な、小柄な少女。

 

ダークブラウンのドレスに身を包み、同じような髪色と瞳。一つの三つ編みを左肩に流している。

 

そこで、視界が一瞬ぐらついた。何か、強烈な違和感に似た何かが脳内に溢れ出す。

 

いや、違和感ではない、なんだこれは?気持ち悪い…なんでだ?前にもどこかで、この光景を…いや、こんなことあったはずが…。

 

待てよ?いや、そうだ。前にもあった。確かそれは…。

 

 

 

|

 

 

 

「水崎さーん、水崎透輝さん。お久しぶりです」

 

 

俺を芸名で呼ぶ懐かしい声。

 

 

「お、〇〇〇〇ちゃん。久しぶりー!共演とか何年ぶり?」

 

 

名前は思い出せないが、顔はそこそこ可愛くて、声もいい感じだった気がするな。この子。

 

 

「あはは、もうずいぶん久しぶりですね。今作のヒロイン役の〇〇〇〇です。水崎さんの主演作に出られるなんて光栄です!」

 

「いやいや、主演はそっちもでしょ?ダブル主演作なんだからさ、あれ、役名なんだっけ?」

 

「はい、私はアトナ・エトランゼ役です」

 

 

 

|

 

 

 

そうだ。思い出した。この強烈な違和感の正体は、既視感。

 

あの衣装も、あの顔も、全てがそっくりだ。俺の記憶の中にある、ラノベが原作の、転生系実写映画。

 

この大聖堂に集まるシチュエーション、序盤の引きの一つ、この後ヒロインのモノローグからオープニングに入り、主題歌と共にあらすじが語られる。

 

その内容は…。いや、そんなことより。

 

俺は感情に突き動かされるまま、足を踏み出した。

 

まだ王子が、いや、【シルヴァン】が、何かを話している。それでも俺は歩みを止めない。

 

周りにいる人々がざわめき始める。少女達も疑念の表情でこちらを睨んでいる。

 

俺はその間もズカズカとシルヴァンに向かって歩みを進める。

 

俺はただ一点、その一点だけを見つめていた。

 

そう、【俺の顔】だ。

 

いよいよ目と鼻の先、と言うところで、遠慮がちに両腕を王子護衛の近衛兵に捕まれ、それ以上は進めなかった。

 

しかし俺の目はその顔から一才離れない。

 

そして叫んだ、いや、つい大きな声になったんだ。

 

王子は困惑の表情とも、ただ素直に驚いているとも取れる顔でこちらを見つめている。

 

その目、その輪郭、その鼻筋、全てが、その全てが。

 

 

「俺じゃねぇか!!!」

 

 

そう、俺だ。俺でしかない。待ち侘びた。愛しい俺の顔、この世の何より美しい俺だけの顔。

 

実写化の時にしたメイク、ウィッグ、衣装何もかもそのままだ。いや、なんと言うか、確かに微妙に違うところもある。

 

映画のあれはどう考えてもアジア系の顔立ちである俺がヨーロッパ風のファンタジー世界で金髪王子を演じるが故の違和感が滲んでいたが、こっちは全てが調和し、現実に存在する王子そのものだ。

 

いや、存在するから当たり前だけれど。

 

それにしても美しい、ああ、俺の顔は世界が産んだとびきりの芸術品だなぁ。永遠に見ていられる。

 

 

「ア、メリア…嬢…その、そろそろ、離れてくれないか」

 

「ん?」

 

 

照れている!俺が!この角度、この火照り、その手、片手で口元を覆う仕草!何もかも完璧じゃないか!

 

さすが俺の顔、なんといじらしい表情!それさえあればどんな女もイチコロだ。

 

 

「アメリア様…全然離れないじゃない。王子が離れろと仰ったのよ?」

 

「そうね…それにさっきの、あの叫び、どう言う意味なの」

 

「どうでもいいけど、さっさと離れなさいよ…」

 

「アメリア様、どこかお怪我なさったのかしら?頭とか」

 

「クスクス…そうね、大きく打ったのね。きっと、足元ばかり見て池に落ちて、底の岩にでも打ってしまったのではないかしら」

 

「…………」

 

 

そんな美少女達の雑談も、今の俺には目に入らない。今の俺の瞳に映るもの、それはただ一つ。

 

この美しい美しい俺の顔、それだけ。

 

 

「はぁあー…っ…。美しい…」

 

「…っっ…〜〜!?」

 

 

声にならない声で照れを加速させる俺も美しいなぁ。

 

後ろで、恥から両手で顔を覆い尽くし、1人この後の顛末を憂うアリオのことは、その時の俺には知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









ようやくここまで書けた…。本当に構成力がなくて、そのうち辻褄が合わなくなるんじゃないかと不安です。





|おまけ


ルパート・フランクリン
・ちょいキャラなのに結構喋った。オタク気質がある生活用品店の1人息子。父が亡くなり、母と同じところへ行ってしまったため最近店を継いだ。魔法研究者を志していたがなる術がなく断念。研究対象とその関連物にはかなり執着し、貪欲になったり割と図々しくもなれる。





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