転生した女(オレ)って話【美少女といちゃつきたいのに俺が美少女なせいでイケメンしか寄って来ん】   作:りりらりら

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第四話|「俺はオレでお前は誰?」【二重の世界と3人の主人公】

 

 

 

 

 

 

 

 

第四話「俺はオレでお前は誰?」

・二重構造世界と3人の主人公

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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いやーそれにしても驚いた。

 

まさかこの世界が、俺が実写映画で主演を務めていたあのラノベ世界だったとは、そしてこんなところで【俺】と再開するとは。

 

 

「失礼…アメリア嬢。いくらあなたとはいえ、ここは神前。私は一応第一王子ですので…」

 

「おぉ、俺ってそんなあからさまに嫌な顔もできたんだなぁ」

 

「おれ…とは?」

 

 

もう少しこの美形を眺めていたいが、他の聖女候補たちの視線や周りの大人たちの視線が痛い。

 

まぁ良識ある大人として、ここは一旦引くか。

 

俺は近衛兵達をさりげなく振り払いながら、自然に美しい所作でお辞儀をし、ゆっくりと後退して元の場所に戻った。

 

 

「失礼しました王子…。なにぶん病み上がりなものですから、少し意識が朦朧として、実家の犬と見間違えてしまいました」

 

「今なんて??」

 

「彼女犬を飼ってたの?」

 

「知らないけど、王子を犬と間違えるってどんな無礼よ」

 

「なんかさっきと声違う…?」

 

「やっぱり落ちた時当たりどころが悪かったんじゃないの?」

 

「アメリア様…あんな方だったかしら」

 

「……………」

 

 

他の候補は何やら文句を言ってるが、まぁ、なんか収まったみたいで良かった。

 

俺としたことが、この程度のことで取り乱すとは。

 

たかが、いきなり死んで美少女になり変わる形で蘇って知らん変な世界で生きることになったと思ったら男と婚約させられていてしかも謎の責務を負わされていてその上その世界が俺の知ってる二次元の世界だっただけで。

 

こんな程度のことで。

 

うん。

 

何も言わないでおこう。

 

お、遠くでアリオが泡吹いて倒れてる。

 

いくら王子が神にも見紛うほどの美形だからってそんな…首を垂れてつくばうことなんて…。

 

……あれ失神してるだけだな。

 

 

「では、これで聖女候補の正式な認定と謁見を終わる。急な召集にお集まりいただいたこと、もう一度感謝を」

 

「……なんか薄まったわね。あり得ないはずの8人目が出てきたってのに」

 

「まさか王子を犬扱いする病み上がり令嬢がいるだなんてね」

 

「あれが噂の、残虐姫…」

 

「噂通り…いや噂通り…?なの?」

 

「残虐っていうか、残念?」

 

「……………」

 

 

皆口々に好き勝手なことを言う。

 

……いや言い過ぎじゃね?横に本人いるんですけど??てか、がっつり近くに居るんですけど??なんなら真横なんですが???

 

すごいな、これが社交界。こんなガキの頃から堂々と人前で嫌味を言えるとは…。

 

少しは親と事務所に仕込まれて鍛え上げられた社交の鬼である子役を見習え?あいつらちっちゃいガキのくせに好感度の魔人だぞ。

 

 

「お話中失礼しますわ」

 

 

そう言って、先程紹介されていた少女が、段を降りて俺たちの前でふわりと優雅にお辞儀をした。

 

この佇まいと振る舞い、確かにそれだけで一目置きたくなるような何かがある。なぜそう思うのかは分からない。本当に分からない。

 

それは微笑みかもしれないし、手の置き方かもしれない、あるいはそこまで設定さ(決めら)れていないのかも、なんて。

 

彼女こそ、いるはずのない8人目。あり得ないイレギュラー。この場の主役。色んな意味でな。

 

こいつこそ【主人公】。そして、そのキャラは…。

 

 

「ああ、ずっとずっと会いたかった」

 

「え?」

 

「本物の生リリィ!!!」

 

 

そう、この会の序盤からだんまりを決め込んでた一際麗しい美少女、白色がかった金髪をたおやかに垂らしたオーシャンブルーな瞳のまるで女神のような輝きの少女、リリィのオタクだ。

 

リリィはラノベ内の恋愛ノベルゲーム、「聖なるロマンス」略して聖ロマの主人公で、プレイヤーの分身となるキャラ。らしい。

 

現実にはそんなゲーム無いし、作品内作品だからやたらややこしい。そもそも恋愛ノベルゲームなんてレトロなゲームやったことないし。

 

俺がそんなことを思っている間、リリィはさっきまでの肩身の狭そうな居た堪れない表情から一転、ひたすら困惑の顔をしていた。

 

それもそのはずだ。ただでさえ庶民出身のなか、名のある貴族の令嬢の集まりにぶちこまれて、さらには見ず知らずの初対面の女の子に会いたかった!なんて言われてるんだからな。

 

何かの罠だと疑いたくなるだろ。

 

 

「あの…アトナ、様でしたか?その、し、失礼なのですが、どこかでお会いしました…でしょうか」

 

「いいえ、でも、そうね。直接会ったことは無いけれど、私はずっと、一番近くで貴方を見ていたのずっとずっと、貴方を応援していた」

 

 

本来ならここで主人公であるアトナこと、転生者のマイによるモノローグが入るから、読者、視聴者的には違和感なく進むんだが…。

 

作中キャラ視点だと不審極まりねぇー…。

 

怪しさ限界突破過ぎるなこいつ、まぁキャラブレ的には俺が言えたことでもないが。

 

仕方ないだろ、原作のラノベを編集して、コミックス版と原作を上手いこと継ぎ合わせた台本だったから、6人のライバルキャラの内1人でしかないアメリアの出番は少なかったし、どんなキャラか覚えてないんだよ。

 

 

「リリィ、大丈夫よ。この世界では…この人生こそは、私が!貴方を一番に幸せにしてみせる!イケメン達には譲らないんだから!」

 

「!?」

 

 

そうそう、ここで映画だと主人公のモノローグが重なって、オープニング曲が流れ始めるんだよな。

 

しかしやっぱり、側から見るとただの頭おかしい美少女だな。

 

見た目は演じてた女優の、えっと…名前が出てこないが、あの子によく似ている。

 

 

「ところで」

 

「ん?」

 

 

急にこの世界の主人公こと、アトナが俺の方に向き直った。

 

 

「アメリア様、でしたっけ、この後お時間、よろしいですか?」

 

「え、あ、俺…じゃない、私?」

 

 

思わず動揺して一人称がブレた。

 

 

「ええ、貴方です。アメリア様」

 

 

なぜそんな圧を感じる微笑みを俺に向けているのか。

 

分からないが、逃げるわけには行かないみたいだ。なぜこんな面倒なことに…。

 

 

「濃い…濃いわ、なぜ今日はこんなに変人ばかりと会うのかしら」

 

「まさかの新人もそっちの方なの…?」

 

「明日は槍でも降るのかしら」

 

「神はご乱心なされているの?光の加護は変わった人を選ぶの?つまり私も…??」

 

「リリィさん、貴方また何かしました?」

 

「えっ!?わ、私は何も!」

 

 

いや、思えば全然自業自得だな。お嬢さん方、なんか、ほんと、ごめんな。

 

 

 

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「すみません、急にお呼びたてして」

 

「いや…まぁ、いいんだけど」

 

 

あの後、ようやく解散となったため、教会を出て、裏手にある綺麗な庭園に来た。

 

司祭と思わしきおじさんは、眉を引き攣らせながらも、快くこの場を貸してくれた。

 

まぁ、そりゃ神に選ばれたはずの聖女候補達があんな風だと神前で見せつけられては、あんな顔にもなるだろう。にしてもすごい顔だったが。

 

 

「…アメリア様」

 

「は、はい」

 

 

なんかこの子、顔は可愛いんだけど妙に圧があるんだよなぁ。

 

 

「この際単刀直入に聞きます。あの妙な行動、奇怪な言動…」

 

 

それお前が言うのか??

 

 

「間違いありません、あなた、私と同じ転生者…ですよね!」

 

 

やっぱりそう来たか…。いや、なんとなく分かってたけど。

 

当たり前だが、原作ラノベにはこんな設定も展開もない。

 

どう返したものか…否定する?いや、俺はそもそもラノベ知識が薄い、知ってるのはせいぜい映画の範囲の大まかな設定と、若干実写化に伴い変更されたキャラ設定くらいで、それすらもうろ覚えだ。

 

そんな知識量でこの世界を快適に生き抜くには限度があるし、俺には果たすべき使命もある。

 

つまり、ここでこの【主人公】を味方に引き入れるのは、かなりうま味なのでは…?

 

 

「…はい。そうです。私も転生者なんです。実はうっすら、貴女もそうなんじゃないかって思ってたところなんです」

 

 

ニコリと、全くの自然な雰囲気をアピールしながら、俺は不審がられないようそう言った。

 

 

「やっぱり!わぁ、良かった!この知らない世界で1人は心細かったんです」

 

 

嘘つけ、お前序盤から結構エンジョイしてただろ。死も転生もあっさりと受け入れてたしな。

 

 

「ところで、やっぱりあなたも【聖ロマ】のファンなんですか?推しは誰ですか?どうしてアメリアに転生したんですか?あ、アメリア推しだったりします!?私はリリィ推しで!リリィが本当の幸せを手に入れられるようにしたくって!ほら、原作だとどのルートでもあんまりにあんまりな結末でしょう?だからこの世界ではリリィを攻略対象のイケメン達から守るって決めてて、それで」

 

「おーーーちょちょちょ。ストップストップ」

 

「はっ、すみません。私ったら癖で…」

 

「い、いいんだよ」

 

 

デビューしたての頃の写真集のサイン会を思い出すな…。

 

 

「その、悪いんだけど、私はあんまりその…聖ロマ?の知識がなくて、この世界に転生してからも分からないことだらけで…良かったら貴方の知ってることを教えて欲しいのだけれど」

 

「! そうだったんですね。それは大変だったでしょう…。分かりました!私の知ってることで良ければなんでもお教えします!」

 

「ありがとう」

 

 

素直ないい子だ。

 

助かった。これで情報が集まるぞ。頼むから出し渋ったりしないでくれよ。

 

まぁ、俺自身実は男だとか、色々隠してることはあるけどな。

 

仕方ないだろう。実はお前も作品の中の存在にしか過ぎない、だなんて言えるはずがない。どこの悪役だよ。

 

 

「いえ!お気になさらず!あ、私は元日本人で、マイって名前でした。つい最近この世界に来て…今はこんなモブ悪役に転生したんですけど、そちらはネームドキャラなので大変…そう…」

 

「?」

 

 

急にマイは言葉を詰まらせ、何かを思い出したかのようにハッとしたかと思うと、突然俺に詰め寄った。

 

 

「大変!貴方、アメリアについてもあまり分かって無いんですね?」

 

「え、ええ。まぁ」

 

「じゃあ、今すぐ帰って、自室の窓際にある机の引き出しの二段目、鍵のついた場所を開けてください!そこにアメリアの日記が入っているんです。私から聞くより一番手っ取り早いです。鍵はクローゼットの奥の青い靴の底に隠されてます!早く、急いで!そしたらまた明日ここでお会いしましょう」

 

「え、なんで急に…ここで話してくれた方がはや…」

 

「いいですから!ご自身の目で確認して欲しいんです!」

 

 

なんでだよ。ここで話してくれよーめんどくさいな。厄介ファンってのはこう、変なところでこだわりが強いんだよなぁ。

 

これ以上は引き下がっても無駄そうなので、俺は未だに放心状態のアリオを連れて馬車で帰宅した。

 

そして言われた通り、簡易的な小さいクローゼットを開け、中を探すと、一足だけ奥にしまい込まれていた、明らかに履くにしてはサイズが合わない青い靴を見つけた。

 

その底を見ると、確かに小さな金色の鍵がぴったり埋め込まれていた。

 

俺はそれを抜き取り、窓際の机に向かった。

 

ドレッサーとは違う、書き物用の机には、いくつかデスクのように引き出しがついていて、その二段目にだけ鍵が掛けられている。

 

 

「子ども机によくあるタイプだ…」

 

 

そう呟きつつ、そっと鍵を開け引き出しの中を見ると、そこには大切に使い込まれている風の、クリーム色の日記帳があった。

 

引き出しの中から、どことなく、嗅いだことのある花の香りがする。確か、エリックの家の庭で嗅いだような…。

 

と言うか結構量あるなこれ、一体いつから書き始めたんだ?まぁ、幸い読書は嫌いじゃ無い。好き好んで読むほどでもなかったが、自分のSNS投稿のコメント欄を見るよりはマシだった。

 

そっと日記を手に取ったその瞬間、ドクンッと、感じたことのない、激しい動悸が突然俺を襲った。

 

 

「な、んだ…?お嬢ちゃん?まさか、見られたくないのか?まだ、俺の中に、この体に居る…のか?」

 

 

俺は床に座り込み、考えをまとめるため、必死に息を整えようとしたが、突然のことで動揺してしまい、ついには息が切れて、気を失ってしまった。

 

そして夢を見た、ような気がする。

 

 

 

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そこはただ広い草原が広がっていて、目の前に一つだけ丘があった。

 

心地よい風と、草の揺れる音。晴れているのに太陽はどこにもない。

 

俺は進んだ。心なしか、いつもより目線が高い気がした。

 

なんだか、もうすっかり懐かしく思える視線の高さだった。

 

下を見ると、自分の靴を履いていた。俺の、藤咲瑞稀の、姿になっていた、気がする。

 

実を言うとそこまで気にしていなかった。この俺が、俺の姿を気にしないだなんて、この夢はその時点で奇妙だった。

 

俺は歩き続けて、一つの丘を超えた。

 

その下には、ポツンと一つの白いベンチが置かれていて、そこにはオレが座っていた。

 

いや、【アメリア】が、そこにいた。

 

背もたれに体を預け、無気力に、青い空と碧い草原を眺めている。

 

俺は思わず駆け寄った。なぜか分からないが、どことなく久しぶりに家族と再会したかのような気分だった。

 

 

「アメリア!だよな…?」

 

 

声も俺の本来のものに戻っていた。久しぶりに聞いた、もうどこにもいない、存在しない死んだ男の声。

 

よく考えれば、なぜ生前の姿が夢に出てくるのか不思議だ。

 

これは一体誰の夢なんだ?

 

俺が声を掛けると、アメリアはこちらをゆっくりと振り向いた。しかしなんの反応も示さずに、また元のように空と草原を眺めだした。

 

 

「おい、聞いてるのか?無視かよ」

 

「………」

 

「おいって!」

 

 

アメリアの肩に触れた瞬間、普段のオレの声とは違う、明らかに拒絶の意図がある、暗く冷たい声が聞こえた。

 

 

「出て行って」

 

 

アメリアの声だ。

 

アメリアが冷たく言い放ったその瞬間、突然空は暗く染まり、草原の風がこちらに牙を向いたかのように俺目掛けて一斉に向かって来た。

 

俺はいきなりのことに対処できず、咄嗟に…。

 

 

 

 

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「うわぁあああああ!?」

 

 

と情けない声を出すしか無かった。

 

そして目を覚ました。床で寝ていたからか、体のあちこちが痛い。

 

 

「……アメリア」

 

 

アメリア…あいつ…。

 

くっっそ冷たかったな!?そりゃ勝手に身体使われていい気はしてねえだろうけど!俺だってなりたくて女になったんじゃねぇよ!

 

全く、こっちは心配してたってのに…?心配?俺は何を心配してたんだ?

 

…まぁいいか。とりあえず、お嬢ちゃんはこの体にまだ残ってるってことでいいんだな?部屋にじゃなくて今度は身体に引きこもりとはね…。

 

あ、そうだ日記。日記は…。

 

恐る恐るもう一度日記に触れてみると、何も起こらなかった。

 

見られたくないわけじゃないのか…じゃあなんでお嬢ちゃんと会えたんだ?まさかあれはただの夢…?

 

いや、今はとりあえずその事は置いておこう。今は日記が最優先だ。

 

より一層アメリアへの関心が強まった俺は、あの少女が何者かを探るため、割と分厚い日記を読み進めた。

 

 

 

 

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6月7日 天気 晴れ

 

今日から日記をつけることにします。偶然、書庫で何も書いていない白い本を見つけて、使用人に聞いたところ、紛れ込んだ日記帳だと言われました。何か運命を感じたので、貰っていいかと聞くと、快く承諾してくれました。ありがとうロバート。とても素敵な日記帳です。そういえば、今日は私の誕生日でした。相変わらず夕食にはお父様はいらっしゃらないけど、心なしか私の好きなものが並んでいたような気がします。でも、誰かが「おめでとう」って言ってくれたら、良かったのに。

 

 

6月9日 天気 晴れ

 

毎日日記を書くと言うのは難しいものです。特に書くことがない日は何を書けばいいのでしょう。考えていたら2日も空いてしまいました。ロバートに聞くと、自分のことを書けば良いのだと。それは素敵なことですが、私には書くほどのことはないのです。友達も、家族も、私には関わりの薄い人達ですから。でも森の動物達は私の唯一の話し相手です。以前お母様に、動物と話すのは気味が悪いから止めろと言われましたが、そんなことを言われても、私はいつも気味が悪いと言われていますし、いつもひとりぼっちだから、特に気にしなくて良いと思うのです。

 

 

6月30日 天気 快晴

 

日記を長い間書けなくてごめんなさい。この間すごいことがあったんです。なんと、本当に動物達とお話が出来たんです!嘘じゃありません。街の人々や社交界の方々は私のことを嘘つきの変わり者だと言いますが、私は本当に動物達と話したんです。教会へ行ってみたら、司祭様が、私には「言語の加護」があるとおっしゃいました。言語の神ランジェロスといえば、化身である神獣が教会のシンボルにもなっています。まぁ、どうやらこの地域独特の風習のようですが。なぜお父様の土地は王都から近いと言うのに辺境の田舎のような場所なのでしょう。今日はもっと書きたいのですが、もう寝ないと、明日また書きますね。

 

 

7月1日 天気 晴れ

 

神々の化身である神獣はたくさんいます。この国の子供達なら、誰でも一度は好きな神獣を選ぶものです。私は愛の神ローヴの神話が好きでしたし、ローヴの神獣も可愛くて好きでした。わぁ!本当だ。私のことを文字に書いて表すのも悪くないですね。文字の中でなら、私は普通の子になれます。ありがとうロバート。

 

 

7月10日 天気 曇り

 

私は生まれつき魔力があって、魔法が使えました。この世界では血筋が魔法の全てです。大抵は、その血筋は貴族にあります。偶に突然血筋がなくても魔力が芽生えることもあるそうですが。この田舎では魔法はそこまで浸透していなくて、私は幼い頃から心無い噂に悩まされていました。社交界でも、領民からの名声がなく力のない私は格好の噂の的だったんです。彼らは誰かを貶める噂が大好きなんです。光の神、偉大なる主神よ。この世に聖なる光をもたらす聖女には、どうしたらなれるのですか。リギートロス。偉大なるリギートロス。加護があっても、私は世界に愛されているとは思えないのです。

 

 

7月20日 天気 曇り

 

初めてあの方に会った日のことを書こうと思います。あの方、王子様。私と歳の変わらない、素敵な方。私が初めてお会いしたのは、とある夜会。遠目から眺めていました。相変わらず、私は壁の花でしたから。でも、そんな私に、大勢の人を掻き分けてまで、あの方は声をかけてくださった。そこにいては松明の炎でドレスに穴が空いてしまうと。優しくて、お強くて、美しい。あの方と結ばれることができたなら、どんなに幸せでしょう。でも、あの方は将来聖女と結ばれるのです。光の加護を持つ、聖なる巫女。この国にある伝統。聖王国として守るべきしきたり。この国を守る主神たるリギートロスの加護を強めるため、光の神に選ばれた少女を王女にしなくてはならない。そうしてこの国は栄えて来たのです。だから、私は、ただ遠くから祈るだけでいいのです。あの方の幸せを。

 

 

9月2日 天気 雨

 

久しぶりにこの日記のことを思い出しました。加護とは、一体何なのでしょう。加護は、魔法使いの中でもさらにごく少数しか持たない貴重なもので、大抵、1人につき一つです。私は長い間言語の加護と連れ添って来ました。そう、そのはずなんです。なのに、どうして?加護とは、何なのですか。神は何を選んでいるのですか。

 

 

9月3日 天気 雨

 

私ももう11歳になります。お父様の計らいで王国立魔法学園に入れていただけることになりました。その日も段々と近づいて来ます。今日もまたお父様が魔道警備隊の方とお話ししていました。あの顔に黒い蔦の模様がある不気味な人。実を言うとあまり好きではありません。粗暴な話し方ですし。歳も変わらないように見えて大人のようですし。いけませんね、日記とは言えこんなことを書くなんて。これでは人のことを言えません。

 

 

 

 

 

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「これは…」

 

 

何となく、この日記には違和感がある。時系列が合わないと言うか、分厚いのに、読める内容はこの7つだけ。

 

どれだけめくっても、どのページもこの7つを繰り返している。

 

魔法…アメリアも魔法使いだったのか。と言うことは、これは意図してアメリアが内容を隠しているんだな。

 

鍵も念入りに隠していたくらいだし、そこまでしててもおかしくはない。

 

どこまで実際に書かれた内容かは分からないが、所々で皆が口にしていた、アメリアに纏わるよくない噂と言うものが、少しわかった気がする。

 

俺の主要な目的の一つ、アメリアを救う。これは数多の女を救うのと同じか、それ以上に骨が折れる。

 

前世で泣かせた分だけ女を救えとか言ってくるのも大概だが、そのための身体の持ち主も救えとか言ってくるのも大概だよなぁあの神。

 

どっちが本当の狙いなんだか…ま、俺はモテモテハーレムのためならなんだってするけどな。

 

とりあえず、これを持って明日あいつに会いに行くか、マイだかアトナだか、どっちでも良い。

 

そういえは、あいつが主人公のラノベはどんなストーリーだったかな。

 

えーと、確かタイトルは…長過ぎて忘れた。

 

略称だけならわかる。「ノベ最」だ。

 

主人公のなんとかマイは、クリックで背景からアイテムを集めて、それにより現れる選択肢で攻略していく式の、人気恋愛ノベルゲームの世界に転生するんだが、このノベルゲームってのがやばくて、どのルートもキャラに殺されたり野垂れ死ぬデッドエンドと、フラグが折れて攻略不可になるバットエンドまみれの周回必須ゲーで、必死にトゥルーエンドに辿り着いても別にそこまで救いがあるわけじゃない。ハッピーもノーマルもない。報われるのは全ルート各一つだけあるトゥルーだけ。なんでそんなのがラノベ内世界では人気なんだか、謎なんだよな。

 

ま、そんな世界に転生したは良いけど、何でか全ルートの最初にだけ共通して登場して即退場、と言うか始末されるモブ悪役令嬢に転生してて〜結末を回避しつつ〜推しのノベルゲーム主人公を幸せにするためにイケメン達から守るとか言いつつ結局逆ハーになる〜みたいな内容だった気がするな、確か。若干違う気もするが。

 

フラグをぶった斬る系の悪役令嬢もので、権力と財力お化けの攻略対象達に対抗するためにやたらと努力して成り上がる主人公が人気だったはずだ。

 

舞台挨拶で見たところファンは女性層が流石に多かった。まぁ流行りだったしな。気持ちは分からんでもない。

 

しかし問題は俺がその世界にいると言うことなんだよなぁ。

 

ん?待てよ。このままだと…俺もその舞台の学園に入学することになるのか?

 

原作では物語の舞台は主に学園だと聞いていた。

 

俺は必死に記憶を辿る。確かに撮影セットは学園風だったような。

 

確か王子も学園に通っているんだったか?いや、それは映画だけの設定で、原作だと…ああもう!ややこしいな!

 

ラノベの設定は思ってたより覚えてたが、その肝心なノベルゲームとやらがよく分からん。設定的にイケメンが出てくるらしいが。

 

まぁ、俺には関係ないな。俺の目的はあくまで女を幸せにすることであって、どこに行こうとそれは変わらない。

 

アトナも入学するだろうし、あの子に助けを借りればアメリアもその内救える…はず。

 

俺はストーリーに巻き込まれないようにイケメン達を避けつつ、可愛い〜女子学生達とキャッキャウフフしてればいいってことだろ?

 

余裕だな!!

 

ストーリーのフラグ?アメリアがいないと成り立たない状況?どうでもいいね!もう1人の主人公よ、あとは任せた。逆ハーでも何でもするといい。

 

あともう1人の主人公ちゃんは、うん。頑張ってくれ!

 

ま、2人ともイケメンが嫌になったら俺のところに来てもいいけどね?

 

そしたらまとめてお持ち帰りしよう。

 

この世界、女の子は大抵可愛い。モブだろうと関係ないね。俺はオレのままでもハーレム目指しちゃうか?

 

アメリアは思ってたより冷たいし、なんかこっちのこともどうでもよさそうだった。ならこっちだってキャラ崩壊お構いなしに俺らしく振舞ってやる、ふははは!

 

こうして俺は学園入学に向けて決意を新たにするのだった。

 

しかし、この時に思っていたほど、事態は簡単ではなく、運命は数奇な方へ傾き始める。

 

 

 

 

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王都にある王宮の一室。夜空が月を浮かべている様を、1人の少年が見つめていた。

 

 

「光の神…」

 

 

王家の紋章が刻まれた手袋を夜空にかざしながら、王子は1人、記憶とはかなり違った印象のあの少女を思い返していた。

 

王家の紋章に描かれた光の神の化身たる神獣。その獣は他の神獣より圧倒的に強く、他の神の力を許さないことで有名だ。

 

 

「王家に伝わる加護。王族と王国の正統な司祭のみが授けられる【加護を見抜く加護】もしこれが偽りでないのなら」

 

「アメリア、なぜお前は俺と同じように…」

 

「加護を"2つ"持っているんだ?」

 

 

 

 

 

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時を同じくして、夜の月が照らす男がもう1人。

 

夜闇の中でも赤く光るその瞳、鮮やかなそれの片目は人のものには見えず、瞳孔が細く縦に伸びるそれはまさにドラゴンのような、爬虫類のそれに近い。

 

しかし男の姿は人であり、端正な顔立ちをしている。一目で貴公子だとわかる高貴な佇まい。粗野な振る舞いとはとても結びつかないような儚げで気品に溢れる外見。

 

月のように白い肌で、黒く長い髪はどこまでも夜風にたなびいている。その様は、人の形をした夜そのもの。

 

しかしそんな優美な姿で黒い装いを纏い、踏みつけにしているのは、まさしく異形の巨大なモンスター。

 

容赦なく、すでに動かないそれにもう一度強く足を振り下ろし、男は地に降りる。

 

染み出た新鮮な赤い血に降り立ち、変色した赤黒い返り血を纏うその男は、夜空を見上げて不敵に笑う。

 

 

「光は死んだ。この国には、光に代わる新しい加護を授けてやる」

 

 

そう言い放つと、一転。視線を天から引き離し、その白い顔からは笑みは消え去った。

 

 

「俺が」

 

 

鋭い眼光をたたえ、人ならざる片目を隠すかのように眼帯をはめると、男は夜闇に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







謎の男の正体とは…次回、学園編が始まるのか…?





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おまけ



・ラノベのタイトル「ノベルゲームの全ルート登場悪役令嬢に転生って、登場シーン最初だけ!?」通称ノベ最。今後藤咲はこのタイトルを思い出すことはない。と言うことは誰も知ることがないので、おまけとして公開。ちなみに主人公の名前は、旗折 舞(はたおり まい)。


・アメリアの一人称は私。藤咲の一人称は俺。アメリアin藤咲の時は一人称オレ。






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