マブラヴガールズガーデン You're Under Arrest 作:マブラマ
数日後
ノヴァセレス・エンタメフェスは、諸々の事情を整理し、改めて再開された。
先日の不幸な事件で中断されたコスプレコンテストも、関係者一同の強い希望により、仕切り直しの上、改めて開催されることになった。
コスプレコンテスト特設ステージ
会場は前回よりやや緊張した空気に包まれていたが、それでも大勢の観客が詰めかけ、色とりどりのコスプレイヤーたちがステージを彩っていた。
司会台に上がったのは、アマネではなく――青い長い髪をなびかせた可愛らしい少女だった。
柊校舎MGチーム『シリウスシュガー』のメンバー、月ヶ瀬ちゆる。
彼女はマイクを握り、深呼吸をした後、明るくも丁寧に話し始めた。
「みなさん、こんにちは。改めまして、本日はお集まりいただきありがとうございます。……先日の不幸な出来事で、多くの方にご心配とご迷惑をおかけしました。しかし、私たちは諦めません。このフェスを、皆さんの笑顔を守るために、もう一度やり遂げたいと思います」
ちゆるの澄んだ声が会場に響くと、観客席から温かい拍手が沸き起こった。
控え室の隅で、アマネが肩を落として座り込んでいた。
「うぅ…アマネの出番が奪われたぁ…」
その隣で、ファルカが苦笑しながら慰めていた。
「まあ、今回は特別だから……」
審査員席今回は豪華な顔ぶれが揃っていた。
審査員長:ザルトゥーム学園 学園長 フランツ・ハイム
審査員:ユーロ・タワー校舎 元政治将校 ヨハネス・ツヴァイクレ
審査員:ユーロ・タワー校舎 生活指導教師 アルノルト・レーベン
審査員:柊校舎教師兼メイズ研究同好会顧問 リィズ・ホーエンシュタイン
審査員:柊校舎教師 ファルカ・ミューレンカンプ
審査員:ユーロ・タワー校舎 新任校長 ホルツァー・ハンニバル
審査員:ユーロ・タワー校舎 新任女性教頭 マライ・ハイゼンベルク
フランツ・ハイムがマイクを握り、厳かながらも温かい声で挨拶した。
「先日の事件は、誠に遺憾でした。しかし、このフェスが持つ意義を、私たちは決して忘れません。貴族と平民が、笑顔で同じ舞台に立てる――それこそが、未来への第一歩です。どうか、今日一日、存分に楽しんでください」
リィズは審査員席で優雅に微笑みながら、隣のツヴァイクレに小声で囁いた。
「先生、今回はちゃんと真面目に採点してくださいね?」
ツヴァイクレが眼鏡を押し上げて答えた。
「無論だ。……ただし、君の知り合いには少し甘くなるかもしれないがな」
アネットはステージ袖で、興奮を抑えきれずに拳を握っていた。
「よし……今度こそ、ちゃんとコンテストを楽しむぞ!」
グレーテルが隣でため息をついた。
「前回みたいに暴走するなよ」
イングヒルトがくすっと笑った。
「アネット、千束コスプレ、今日はさらに気合いが入ってますね」
ハリエット、ミリアム、ケイトの三人も、改めて気合いを入れ直していた。
月ヶ瀬ちゆるが、再びマイクを握り、明るく宣言した。
「それでは、改めまして――ノヴァセレス・エンタメフェス コスプレコンテスト、
二次審査……スタートです!」
会場に、再び大きな歓声が沸き上がった。
先日の暗い影を払拭するように、より一層の熱気と笑顔に満ちた、本当の意味での「再開」が、今、始まろうとしていた。
観客席にて――コスプレコンテストが再開され、ステージ上で次々と参加者がパフォーマンスを披露する中、観客席のやや上段、VIPエリアに近い席で二人の女性が静かに会話を交わしていた。
一人は凛とした金髪の才色兼備美女、アイリスディーナ・ベルンハルト。
もう一人は、黒髪を優雅に纏めた、鋭い眼差しの女性、ベアトリクス・ブレーメ。
アイリスディーナはステージ上のアネットの姿をじっと見つめ、静かに呟いた。
「立派になったな……アネット。教導指揮官としての私が教えることは、何もないな」
ベアトリクスが隣で小さく笑った。
「そんなことないわよ、アイリスディーナ」
アイリスディーナが視線を少しだけ横にずらした。
「『アインザッツグルッペン』をチーム再建し、新たに『ヴェアヴォルフ』を新設させた貴様が言えることか?」
ベアトリクスは肩をすくめ、余裕のある笑みを浮かべた。
「その代わりに『ユーロ・ナイツ』や『ユーロユーゲント』を解散させて統合したのよ。
今日ぐらい、楽しみましょう」
アイリスディーナが小さくため息をついた。
「そうだな……議長としてのお前はどうなんだ?」
ベアトリクスはステージに視線を戻し、静かに答えた。
「教師としてのあなたの意見を聞きたいわ」
「お前から言え」
「そう? じゃあ正直に言うわね。――――アークトゥルスは『希望の象徴』よ。彼女達は未来の光よ。でも、それ以前は……ユニティ・エッジ単体ではカス揃いね」
アイリスディーナが苦笑した。
「相変わらず過激だな、お前は」
ベアトリクスがくすっと笑い、優雅に髪を指で払った。
「ふふ、いいじゃない?」
二人はしばらく無言でステージを見つめていた。
やがて、アイリスディーナが小さく呟いた。
「……あの頃は、まさかあの子たちがここまで来るとは思わなかった」
ベアトリクスが静かに頷いた。
「ええ。私たちも、ようやく後ろを振り返れるようになったのかもしれないわね」
ステージ上では、アネットが元気いっぱいにパフォーマンスを披露していた。
その姿を、かつて彼女たちを導き、時に厳しく対峙した二人の先達は、静かに、しかし温かい目で見守っていた。
アイリスディーナが最後に、独り言のように言った。
「……よく頑張ったな、アネット」
ベアトリクスが微笑みながら小さく手を叩いた。
「これからも、期待しているわよ」
ノヴァセレス・エンタメフェスの夜は、まだ深く続いていく――。
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