マブラヴガールズガーデン You're Under Arrest 作:マブラマ
ノヴァセレス・エンタメフェスの会場は、熱気と興奮に満ち溢れていた。
「わぁ……! すっごい人!! 大人から子供までいっぱいいる! ほんとに大通りの一部を貸し切って、イベント会場にしてるんだ!」
ユニティ・エッジのメンバー1が目を輝かせて周囲を見回した。
「これが漫画とアニメ、ゲームの祭典―――『ノヴァセレス・エンタメフェス』!!」「にひひ、この日のためにパンフを穴が空くほど見て、巡回ルートを練ってきたんだよね!」
「屋台もいっぱい出てるね……! フィッシュ・アンド・チップスに、クロック・ムッシュ、ソーセージにパスタもあるよ! あとでいこっ!」
「賛成~っ」
三人が盛り上がっていると、背後から明るい声が飛んできた。
「ソーセージもそうだけど、カリーヴルストが凄く美味しいよ! あと、チーズハットグに、牛串! 勿論、焼き鳥も! あとは、あとは……」
「え? あなたは……」
アネット・ホーゼンフェルトは、にこっと笑って胸を張った。
「アネット・ホーゼンフェルトよ。ユーロ・タワーの卒業生の一人。今は教師として教鞭に立ってるわ!」
「アネット……オベレーグに乗った平民パイロットの!?」
「えへへ、知ってるんだ。あたしの事…でも、その前にこのイベントを楽し尽くそうよ! ね?」
アネットの無邪気な笑顔に、メンバー1は内心で冷や汗を流した。
「(いい人だけど、敵に回したらダメなタイプね……)」
そこへ、少し離れたところから落ち着いた声が響いた。
「みんな、今回は遊びに来たんじゃないんですよ……このフェスに参加するのは――」「『アークトゥルスとしての役目を果たす』……そうでしょ?」
クラウディア・ヴァーグナーが驚いて振り向くと、そこにいたのは笑顔を浮かべたアネットと、穏やかな表情のイングヒルトだった。
「え? はい! あなたは確か……オベレーグに乗ってたアネット・ホーゼンフェルトさんですか?」
「そういうアンタはクラウディア・ヴァーグナーね?」
クラウディアは一瞬、背筋を伸ばして敬礼に近い姿勢を取った。
「あの、私……アネットさんの活躍や功績を見て尊敬しています! 平民生徒がキャバリエに乗れるようになったのは、あなたのおかげです!」
「いやいや、あたしだけじゃないよ。ね? イングヒルト」
「もう、アネットったら生徒に手を出さないでくださいね」
「え!? そんな事絶対にしないよ!」
「ふふ、アネットはそんなことしないって分かってますよ」
「からかい上手のイングヒルトさん?」
「それ、馬鹿にしていますよね?」
「いやいや、してないよ!」
アネットは笑いながら手を振った後、改めてクラウディアたちに向き直った。
「……ノヴァセレス地区の平民出身のとある豪商が主催して、屋外型の漫画、アニメ、ゲームの祭典が2日間開催されることになったのはみんな知ってるよね? 実はあたしとイングヒルトもイベントの警備として来ているんだ」
「警備、ですか?」
「うん! だって楽しいじゃん! 色んな漫画やアニメ、ゲームのコスプレが見れるんだよ! リコリス・リコイル、ジョジョ、イニD、MFゴースト、昴と彗星、ガンダムシリーズ。―――そしてVTuber事務所のあおぎり高校まで豪華勢揃い! どう? 見たいよね? 見たいよね?」
クラウディアは圧に押されながら苦笑した。
「(……卒業生なのに無邪気すぎますよ)えっと……そ、そうですね」
イングヒルトが優しく微笑んで一礼した。
「クラウディアさん、初めまして。私はイングヒルト・ブロニコフスキーでアネットの同級生です。過去に『地主貴族』として振る舞っていましたが……没落してからは貴族生徒たちから無視されたり陰口を叩かれたりもしました。今はアネットやグレーテルさん、シルヴィアさんのおかげで、こうしてここにいられるんです」
クラウディアは言葉に詰まった。
「(重い……何て返せばいいの?)」
アネットが明るく手を叩いた。
「『貴族・平民の文化交流に参加することで、融和をアピールする』……まさにネスカフェアンバサダーって感じだね!」
「アネット、それではネスカフェの代表という意味になってしまいますよ」
イングヒルトが小さく突っ込みを入れると、アネットは笑い飛ばした。
会場のあちこちで企業ブースが賑わい、派手なコスプレイヤーたちが行き交う中、アネットは満足げに頷いた。
「最初は『ノヴァセレスとエンタメフェスってイメージが合わない』って思ったけど、現地を見れば雰囲気が合ってると思ったよ」
クラウディアは少し目を輝かせて言った。
「あはは、このイベントが開催されるようになったのは、昨今推進される貴族平民融和施策の影響なんですよ。アネットさん達のユーロ・タワー時代のこと、是非聞きたいです!」
「いいけど、話が重いよ?」
「アネット、やめましょう? ね?」
「……ま、あとでゆっくり話すよ」
その時、イングヒルトがアネットの袖を軽く引いた。
「ホント、盛り上がってますね。―――アネット、ほら! あそこ、GT-Rが展示されてますよ! R35ですよ!」
「え、マジ!? ここMFゴーストのブース?」
「86GTも! 片桐夏向仕様の! 86番のゼッケン貼られてますよ!」
「ヤバい。興奮してきた……クラウディアもおいでよ!」
「え? いいんですか?」
「クラウディア、アネットさんのお誘いだよ。行くしかないでしょ!」
「(私達より楽しんでる……)」
イングヒルトがくすっと笑いながらクラウディアに視線を向けた。
「R35、カッコいいですよ。ふふ」
アネットはすでに半分走り出しており、クラウディアたちは慌ててその後を追った。
華やかなイベント会場に、過去の戦いを越えた者たちと、今を生きる後輩たちの笑い声が混ざり合っていく。
融和の象徴とされる『アークトゥルス』と、かつてその道を切り開いた『シュヴァルツェスマーケン』の先輩。
二つの世代が、同じ祭りの空の下で交差していた。
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