マブラヴガールズガーデン You're Under Arrest 作:マブラマ
講談社ブースの裏手では、緊迫した空気が流れていた。
グレーテルは通信端末を耳に当て、短く、しかし鋭く指示を出した。
「アネット、聞こえるか?」
《……聞こえてるよ。どうしたの、グレーテル?》
「『墨東作戦』を発動する。すぐにステージを降りろ。裏口から抜け出せ。合流地点は講談社ブース北側の緊急車両待機ゾーンだ」
通信の向こうでアネットの声がわずかに緊張した。
《……了解。すぐに行く》
グレーテルは端末を切ると、すでに準備を整えていたスタッフたちに視線を向けた。
「時間がない。オベレーグの起動準備を急げ」
ノヴァセレス行政府が緊急時に使用する大型アドトラックが、ブース裏の待機エリアにずらりと20台並んでいた。
各車両の側面には、大きな白文字でこう書かれていた。
『Auf dem Weg zu einer Ära der Versöhnung zwischen Adel und Bürgertum』
―――「貴族と平民の融和時代へ」
表向きは融和施策の広報車両として配置されていたものだが、その内部には完全に武装されたMG〈オベレーグ〉が1機ずつ、厳重に固定されて隠されていた。
グレーテルが先頭のアドトラックに乗り込むと、すぐにコックピットに滑り込んだ。
慣れた手つきで起動スイッチを入れ、システムを立ち上げる。
低く唸るような起動音が響き、モニターが次々と明るくなった。
「全機、起動確認。墨東作戦、フェイズ1移行」
他のアドトラックからも、次々とオベレーグの起動報告が入ってくる。
その頃、アネットもステージの袖から密かに抜け出していた。
千束のコスプレのまま、裏口のスタッフ通路を全力で走り、指定された待機ゾーンに到着する。
「グレーテル! 来たよ!」
「遅い。早く乗れ」
アネットは息を切らしながら、割り当てられたアドトラックに飛び乗り、オベレーグのコックピットへと滑り込んだ。
長刀を主武装とする灰色と緑の迷彩柄の機体が、彼女の意志に応じて静かに目覚める。
「ふぅ……やっぱりこの感触、懐かしい……」
アネットは操縦桿を握り、通信回線を開いた。
「アネット・ホーゼンフェルト、オベレーグ起動完了。いつでも行けるよ!」
グレーテルが全機に指令を出した。
「全機、聞け。会場内に侵入したウォーデン型MGは反融和派のテロリストである可能性が極めて高い。我々は『融和の象徴』として、この場を鎮圧する。被害を最小限に、かつ迅速に。……いいな?」
アネットが通信越しに笑った。
「了解! 久しぶりの本気オベレーグ……張り切っちゃうよ!」
20機のオベレーグを搭載したアドトラックが、次々とエンジンを唸らせて動き始めた。
“貴族と平民の融和時代へ”というスローガンを背負った車両群は、コンテスト会場の混乱の中心へと向かっていく。
Fortgesetzt werden