・・・始まりは憧れだった。
それは大きな火事だった。見渡す限り廃墟であり、映画で見る戦場跡のようだった。
・・・だけどそれも長くは続かない
廃墟になった建物が炎に照らされやがて落ちてゆく
それらが落ちていく中で俺は歩き続けた。
・・・周りの人間は原型を留めていなくただ、自分だけが確かにいるそう確かな物が頭によぎった。
だが、それは数歩歩いたことで確信に変わった周りには黒こげになり動けなくなってしまった人がたくさんいた。
不思議と悲しくはなかった。だからもう自分は衛宮士郎は壊れていたのだろう。
ーーーそれが十年前の話だ。
俺はあの後、無事に助けられ、衛宮切嗣という男の養子になった。
「こんにちは、君が士郎くんだね」
そう言った衛宮切嗣はあの時たまらなく胡散臭くて、優しい声だったと思う。
「率直に聞くけど、孤児院に引き取られるのと、初めて会ったおじさんに引き取られるの、君はどっちがいいかな」
確か俺は迷わずに衛宮切嗣を選んだ。
・・・・なぜだが分からないが衛宮切嗣が言った。呪術という物に惹かれたのかもしれない。
「そうか、良かった。なら早く身支度を済ませよう。新しい家に、一日でも慣れなくちゃいけないからね」
「あっ、そうそうおじさん大切なことを言い忘れた。おじさんはね呪術師なんだよ」
そこから先はおじさんに引き取られ、藤ねえと出会って、おじさん、いやっ、爺さんと藤ねえがあまりにも料理が下手だったりと色々あり、自分でも料理をするようになったり、藤ねえが極道の娘さんだと聞いてびっくりしたりと色々なことがあった。
だがっ、それも長くは続かなかった。
月が夜のほとんどを照らし、そして不気味に光る中
「僕はね、子供の頃正義の味方になりたかったんだ」
そう爺さんは言った。初めは何じゃそりゃと思ったが顔が今にも死にそうで疲れていたから真面目に聞いた。
「何だよ、それ。なりたかったって。あきらめたのかよ」
「うん、残念ながらね、ヒーローは期間限定でね大人になると名乗るのが難しくなるんだよ」
そう言った爺さんの瞳は子供と同じくらい純粋だった。
「なんだ、それならしょうがないな」
「うん、本当にしょうがない」
「なら、俺がその正義の味方ってやつになってやるよ」
「本当かい」
「ああ、本当だ」
「そうか、安心した、、、、、」
そう言った後、爺さんはゆっくりと屋敷の柱に背中を預け安心したように眠った。
爺さんが死んだ後、俺は1人になった。いやっ1人ではない。藤ねえもいるし何より藤ねえのお父さんが所属している極道の人たちが度々世話をかけてくれた。
だが、本当に正義の味方になりたかったといえば、嘘になるかもしれない。だって俺は正義の味方という物を知らない、それに、何をするべきなのか分からない。
それに爺さんが呪術師と聞いてなりたいと思ったが、呪術というのは頭に刻まれた物であり、士郎は他と違うから僕にはさっぱり分からないと言っていた。
ただ習っていたのは体内の中にある呪力を物や体に込めて強化するだけ、だがそれも上手くはいかない。
「痛っーーーー」
目の前の鉄パイプに呪力を込めようとするが、丸々一本強化しようとすると体に剣が刺さるような痛みが走る。
「はあー、」
すぐさま鉄パイプに添えていた手を離し腕の状態を確認する。無事ではあったが心に不安は残る。
爺さん、いや衛宮切嗣が言っていた正義の味方とは何なのか
俺は本当にそれになるのか なれるのか
そもそも呪術とは何なのか、衛宮切嗣の他とは違うはどういう意味なのか
たくさんの疑問が浮かび上がりやがて収束した。
「やっぱり、俺って中途半端なんだな」
暗い土蔵はそんな中途半端な俺の呟きもしっかりと響かせてくれた。