「シッ!」
「グギャァッ⁉︎」
紅魔の里近くにある森の中。
そこには、俺と、たった今俺が仕留めたゴブリン達の死体の山があり、そのゴブリン達の血で俺の周囲はほぼ真っ赤に染め上げられていた。
そしてたった今、最後の1匹の腹を持っていた刀身が黒い“刀“で切り裂いたところである。
しかし何も知らない奴から見たらゴブリンの返り血を浴びた状態の俺の方がモンスターの類に見えてしまう絵面だな…。
とまぁ今更そんなことはどうでも良いので、持っていた刀についた血を振り払って腰に差していた鞘に収める。
「んー、良い感触」
それにしてもやっぱこの武器は良いな。親父が“造った“武器の中でも少し変わった形をして最初は扱いにくかったけど、使い慣れたら普通の剣より手に馴染むし何より斬れ味が気に入った。
…まぁそれはさておきだ。
「はぁ〜」
折角戦闘が終わったのに鬱陶しい…。
んなことを考えつつも、俺は刀とは別に懐にしまっていた一個のグリップを取り出し確か“ハンドガン“と親父が言っていた武器に“形を変えさせ“左手に持ち、近くの草むらに向ける。
「おいこらそこにいる不審者。今から3つ数える内に出てこい、でないとぶっ放す。
はいい〜ち」ズドンッ
俺が銃と呼ばれる武器の引き金を引くと、これはまた良い音が響いたと思えば銃口から発射された弾丸は草むらの中に真っ直ぐ放たれた。
うん。やっぱ弓矢より断然速いし使いやすいなコレ。
そんな事を思ってると、弾が飛び込んだ草むらから勢いよく人影が飛び出す。どうやら仕留めきれてなかったらしい。
「2と3は⁉︎」
「チッ。知らねぇよそんな数字。男はな、1だけ覚えてりゃ生きていける…って死んだ親父が言ってた気がするかもしれない」
「絶対に今考えたでしょ!そもそも貴方のお父さんまだ生きてるどころかピンピンしてるでしょ!
ていうか今サラッと舌打ちした⁉︎」
「全くうるさいなボッチ娘。毎回毎回こっちが教えてもない日課のモンスター狩りの場所特定してはストーキングしてくる奴に構ってやってるだけでもありがたく思え。
それに俺が撃った弾避けられる程度には反射神経鍛えられたんだから感謝しろ」
「いきなり撃ってきた上に感謝要求された⁉︎ていうかボッチじゃないから!ちゃんと気軽に会話出来るお友達を………こ、これから作るところだから!」
今の無駄に長い間は何だよ。つうかコイツと会って割と経つ気がするが、まだボッチなのか?コイツ。
「そ、それにね私最近気付いたのよ!同じ人間の人がダメならまずは身近な犬や猫から。それでもダメなら野菜やお花相手から始めれば良いのよ!
野菜やお花も生きてるんだもの、だったら1匹か1花くらいはお友達になってくれる子が居るかもしれないじゃない!!」
「ッ〜〜〜⁉︎⁉︎⁉︎」
……え、待って?嘘でしょ?この娘、マジで言ってんの?いや、紅魔族特有の赤い目を光らせる程興奮してるからマジも大マジなんだろうけど…えぇ?
「だから私はボッチじゃないわ!いえ、例えそうでも近い内に…って、ジーク?どうして泣いてるの?」
あれ?何で目から涙が……。
「……そうか。出来ると良いな…友達。グスッ…が、頑張れよゆんゆん」
「ねぇ⁉︎私何か変な事言った⁉︎どうしていつもはしてくれない優しい対応をしてくるの⁉︎
というかそろそろ服と顔どうにかしてよ!全身血塗れだから!戸惑いと怖さが同時に襲ってきてるから!」
「ったく、俺が血塗れなんて見慣れてるだろ。いい加減それだけでギャーギャー喚くなっての」
「同い歳の男の子がモンスターの死体だらけな上に血塗れな森の中でモンスターの返り血塗れだったら誰でも驚くし怖いわよ!
それに私が指摘しなかったら持ってきた着替えも使わず顔や髪の毛についた血も洗わずそのまま帰る気だったでしょ!」
あの後俺は日課であるモンスター狩りを終えた後、今日も何故か後をついて来てたボッチ娘ことゆんゆんと共に里に戻る為歩いていた。
因みに言っておくがコイツのこの名前は渾名とかでは無く正真正銘の本名。
どうも俺が生まれ生活している紅魔の里にいる同族、紅魔族というのは生まれながらにして高い魔力を持った魔法使い集団。
…の、筈なんだがその感性がどうも普通じゃない。例を挙げると俺やゆんゆんなど一部例外を除き全員が重度の中二病であり、ほぼ全員が変わった名前をしているというもの。
そしてゆんゆん含めた全員が赤い目をしている。ちなみに俺の場合は紅魔族の御袋とそんな御袋が昔旅をしてた時に出会った里の外の人間である親父とのハーフである為か髪も、“一応“目も黒い。
しかも感性は親父譲りだった為、まことに不本意ながらそこにいるボッチ娘同様にこの里では浮いてる方なのだ。
「全く一々ウルセェなぁホント、俺の御袋かお前は。あんまうるさいと今度はバズーカぶっ放すぞ」
「やめてくれない⁉︎あのよく分からない武器追尾してくる上に爆発までするから他より怖いのよ!
というかどうしてジークはいつもそんなに攻撃的なの⁉︎私と初めて会った時もいきなり撃って来たわよね!」
「アレは気配消すのヘッタクソなお前が鬱陶しかったからなぁ、つまり近くにいたお前が悪い。
まぁ強いて言うなら親父と御袋の影響だな。あの2人俺が物心ついてしばらくしたら戦闘の為の訓練させ初めて、それから更にしばらくしたらある程度弱いモンスターから前に突き出して殺し合わせたり、御袋は自分が考えた魔法を俺が使える様に教えるのは良いんだけど偶に耐性つけさせる為に毒盛ってくるんだよなぁ。
あと洞窟の奥に置き去りにされて自力で戻って来させられたり、御袋が遠距離から魔法撃ちまくってそれさら逃げたり、時にはゴブリンとかのモンスター相手に素手で殺し合いさせられたりとまぁ……色々あったなそういえば」
「あり過ぎるでしょ!ねぇ、貴方と貴方のご両親ってちゃんと血の繋がった親子なのよね?
何でさっきみたいなモンスターとの戦闘より過酷な事自分の子供に平気でやらせてるの⁉︎」
「ちゃんと血は繋がってるっての失礼だな。……まあ今日の朝も御袋が俺を叩き起こす為に魔法撃って来てあと少し目覚めるのが遅かったら頭が吹っ飛んでたけど。」
「私さっき貴方のお母さんと会って普通に会話してたんだけど!えっ?あの人朝から自分の息子殺す勢いで起こそうとしてたの⁉︎
今後あの人に会ったらどんな顔したら良いの⁉︎」
笑えば良いんじゃないか?知らんけど。
まぁアレのお陰で最近はモンスターが出る草原とかで野宿する場合でも近くにモンスターが居たら即起きられる様にはなったけども。
まあでもこれ言ったらコイツ更に煩くなりそうだから里に着くまでは適当な話で誤魔化しておくか。
〜数分後〜
とまぁ何とかいつも通り里に戻って来られた。あの後ゆんゆんの奴が中々話題の切り替えに乗っからなくてずっと煩かったがようやく落ち着いたらしい。
本当は銃使って脅しても良かったがコイツの為に態々魔力使うのはなんか嫌だったのでなんとか我慢した。よく耐えたな俺。
「あ〜ようやく着いた。全くこちとら戦闘後で疲れてるってのにギャーギャー喚きやがって。
今度やったら本当に脳天撃ち抜くからな」
「だから怖いってば!それはコッソリ着いていったのは悪いとは思うけど…」
「なら2度とやるんじゃねえぞ。モンスター以外に変な視線が突然増えるとウザったいんだよ」
「あっ…」
それだけ言い残して俺はさっさと家に帰る。
ある程度洗い流したとはいえ、血で汚れた服はさっさと洗濯に出したいしな。
「……」
………はぁ。
「今度から…事前に来るかどうか誘う」
「えっ?」
「事前に来るか分かってた方が戦いやすいってだけだ。見えない所で勝手に死なれても胸糞悪いからな、万が一俺が悪いってなっても嫌だし。それで文句ないだろ。
言っておくが、着いて来ても安全は保証しないからな」
それだけ言い残して今度こそ俺は家に向けて歩き出す。
その間後ろから妙にむず痒い視線を感じたので出来るだけ早足で。
そして辿り着いた“愛しの“我が家。
俺の家は里の集落より少し離れた位置にあり、少し広めの庭の中に煉瓦造りの家が1つ。そして“工房“が1つある。
その工房は親父が俺が今使ってる物を含めた武器や里の外に売りに出す為の武器などを造る為に建てたそうで、中には剣や弓矢など様々な武器が置かれている。
……とまあそれはさておき。
「さてと…」
俺は庭の門の前で軽くストレッチを始める。
これから自分の家に入ろうと言うのに何故こんなことをするのか訳が分からない奴もいるだろう。
ただ、俺の家に入るということは何割か文字通り命がけも同然である。
「ふぅ〜」
例えば、一度玄関のドアを開けて向こう側に踏み入ろうとした瞬間。
ドアの先の廊下の向こう側からナイフが3本飛んでくるのである。
「ちぃっ!」
マジで“殺すつもりで“飛んできた3本のナイフをしゃがむ事で躱わす。
そして懐に手を突っ込み先程と同じグリップを取り出して銃の形にしてナイフが飛んで来た方向へ何発も撃ち込む。
だが、その弾丸は廊下の先で突如展開された魔法陣により全て弾かれた。
更にそれだけに止まらず、俺の銃撃が一瞬なら止んだ好きに魔法陣の一部に小さな穴が空いたかと思えばそこから一本の金槌が飛んで来て俺が持ってた銃を弾き飛ばす。
「くっ」
弾き飛ばされた銃を拾ってる暇なんか無いので俺は左脚に巻いていたケースからナイフを引き抜き廊下の先にいる奴目掛けて一気に跳躍して切り掛かる。
が、次の瞬間。魔法陣が消えたかと思えばその後ろにいた人物が俺のナイフを数撃躱わすと俺の手首を掴みそのまま捻りあげる。
「ッ⁉︎」
捻りあげられた手からナイフを離した俺だが右手でそれをキャッチしそのまま目の前の人物へ突き刺す為に振り上げる。
しかしその手も掴まれてしまい、そのまま膠着状態になってしまう。
「おいおい、毎度毎度モンスター狩って来て疲れて帰って来た息子に対して、本気過ぎやしませんかねぇ?
「本気でやらなきゃ“訓練“にならないでしょ?それにちゃんと貴方が対応出来る様に手加減してあげてるわ」
「ハッ!殺す気でナイフぶん投げて来たくせによく言うよ。親父や里の大人達が昔から頭がおかしいイカれ女って言ってたのはやっぱ本当だったか!」
そう、たった今襲撃して来てる黒く長い髪をポニーテールにして結び、紅魔族特有の赤い瞳をした女は、俺のお袋である。
名前は“れむれむ“。本当に息子の俺から見ても美人の筈なのに名前が残念だ。
「い“っつ⁉︎」
「残念で悪かったわねバカ息子。昔は可愛かったのに何処でグレちゃったのかしら?」
痛“って!何でこっちの考えてる事読めてんのこの人⁉︎
って、そういえば親父も昔多くの女性に言い寄られて鼻の下伸ばしてると何故か必ず察知したお袋に“喰われてた“って言ってたっけか…。
と、そんな事を考えてる間にも手に持ってたナイフを完全に離し床に落としてしまう。
「ッ!いやいやいやいや、この家のこんな環境で育って真面目な奴が育ったらそれこそ気持ち悪いっての!
いや感謝はしてるんだよ⁉︎けど魔法学校入学間近の息子にこんな事するか普通!」
「ええ、だから今回はナイフを受け止めて奪うだけで終わらせてあげるつもりだったわ。
だけど…女性に対して可愛い息子が失礼な事を言ってしまうかもしれない可能性が出て来ちゃったわ。えぇ、だから」
お袋はそこまで言うと掴んでた手を離したかと思えばそのまま一本背負を決めて俺を床に背中から叩きつけた。
「ガッ!」
そして、叩きつけられた俺が起き上がれない様にお袋は肩を強く掴み空いていた方の手の骨をポキポキと鳴らし始める。
「デリカシーのなってない息子には、女を怒らせたらどれだけ怖いか…もう一回叩き込む必要があるわねぇ」
「あっ、ちょっま」
こうして、今日もお袋に勝てなかった俺は理不尽な制裁を受けその場で意識を失ってしまった。
しかも、俺が直ぐに意識を失わない様に威力を加減されて。
これは、中二病ばかりの種族の里で産まれた俺の物語である。
因みに余談だが、この時工房に居たららしい俺の親父は。
「お?もう飯かな」
と言い、息子が死にかけていると言うのに呑気に飯の前の工房内の片付けをしていたとか。
マジでぶっ殺してやろうかあのクソ親父…!