風都の探偵の左翔太郎は同じく、只者ではない探偵の鞍馬六郎と出会う。

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なんとなく書いてしまったものです。
本作は仮面ライダーでウリなアクションは皆無のコメディを目指したものです。



無駄なT / 尺を稼げ

「はぁー」

 

 とある地方の都市の風都。

 その街の探偵左翔太郎は疲れた顔でタイプライターで事件の記録書と報告書を書いていた。

 それは数週間前に遡る。

 

 

 

 その事件は単純であった。

 ある富豪の当主の風邪がなかなか治らない、医者に見せても普通の風邪と言われたが三ヶ月近く風邪を引き続けている。さらに近所で化け物の目撃例が頻発していて探ってほしいという、屋敷の執事長を通した当主からの依頼であった。

 翔太郎が働く鳴海探偵社事務所はそういった事件の駆け込み寺として風都の噂では有名で時々県外からも相談があった。

 その富豪は他に探偵を雇ったらしく、屋敷で事件について、翔太郎達と雇われた別の探偵、当主の妻、娘、息子、執事長、メイドを混じえての改めて話し合いをしている最中であった。

 その最中に当主の妻がくしゃみをした。

 後に原因はフィリップの服についていた事務所で飼っている猫のミックの毛が空調が起こした風で舞い、当主の妻の鼻に入ったということであったらしいが、そんなことはどうでもいい。

 当主の妻はくしゃみをした際にあるものを落としたのだ。

 翔太郎達以外はUSBメモリかと思ったが、翔太郎達知っている者は知っている『ガイアメモリ』しかも、人が咳をしている絵が描かれ、その咳が『C』と象られていて小さく『COLD』――つまり、風邪と書かれていた。

 

「奥さん……あなた」

 

 空気が凍結し、動いているのは翔太郎と左腕を押さえて目を泳がしている当主の妻だけだった。

 翔太郎が当主の妻が押さえている右腕の袖を捲るとコネクタが露出した。

 違和感はするが、ここまで簡単に解決するとは思って見なかった。

 だが、ここで予想を絶する自体になることも思ってもいなかった。

 

「果たしてそうでしょうか?」

「あんたは――」

 

 翔太郎は目を向けると別に雇われた探偵が立っていた。

 

「今解決されると困るんですよ」

「なんでだ……あんた、もしかして――」

 

 ガイアメモリは簡単に手に入るものではない。

 ミュージアムは壊滅しているもののそれらの残党は少なからず存在はしている、他にもEXEのようにガイアメモリを集めている集団は未だに存在している、大きい物ならば財団Xのようにガイアメモリ製造のノウハウを持った組織もある。

 もしかしたら、それらからの手先が探偵に扮して当主の妻のサポートするために来たという可能性も十分にある。

 

「翔太郎……この人はちょっとある意味有名な探偵で犯人の仲間じゃないと思う」

「フィリップ? そうか、もっとこの事件は――」

 

 翔太郎は探偵として自信がないわけではないし、幾つもの事件を解決はしている。

 だが、師匠の元所長の鳴海荘吉に遠く及ばないところもあるということを自覚している。

 自分以上の探偵がいるのは当然いるということは思っている。

 この探偵は自分が持っている情報と量は大差ないはずであるのだが、何かに気付いたというのだろうか。

 だとしたらこの探偵只者ではない

 

「じゃあ、あんたはどんな――」

「いいですか? この番組は24、5分番組。この先戦闘やエピローグを十分尺を割いても、あと数分は尺を稼がないといけないのです」

「………はぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 翔太郎は驚愕した。

 この探偵は一体何を言っているのだろうか?

 早く解決することの何が悪いのだろうか

 

 

「翔太郎」

 

 フィリップが翔太郎の肩を叩いた。

 どうやらもっとなにか知っているらしく、それを伝えようとしていた。

 

「この人は鞍馬六郎――どんな数分で終わるような簡単な事件でも番組枠いっぱいまで引っ張ることで有名な探偵だよ。ちなみにただいま七分」

「番組? なんだそりゃあ?」

「とにかく、時間が余ってるからどうにかしないといけない状況なんだよ翔太郎」

「はあ?」

 

 フィリップは熱弁するが翔太郎はついていけなく混乱の色が濃く顔に出始めていた。

 

「この事件――俺が24分持たせる」

 

 そして、呆れる翔太郎をよそに六郎は話を続けた。

 

「そもそもカイアメモリは本当に奥さんは使ったのでしょうか?」

「カイアじゃなくて、ガイア」

「ここの料理はだれが?」

 

 六郎の質問に手を上げたのは執事とメイド達。

 どうやら彼らが当番制で日替わりでそれぞれ別の人達がやっているらしい。

 

「犯人はメイド長あなただ!」

「どういうことだ? 確かに料理に何かし込むならば執事長についでやりやすいだろうが」

 

 翔太郎が六郎の推理を聞くことにした。

 どんなものかは知らないがそこそこ有名な探偵ならば推理力が高くないはずがないだろうと思っていたからだ。

 

「あなたはこの屋敷の当主が大好きだった! だけど、相手は既婚者。手に入らなければいっそ……」

「あの……私は結婚しているんですが……子供も三人います」

 

 動機がいきなり消滅して六郎が黙る。

 翔太郎は「大丈夫かこいつ」というような視線を浴びせ続け、フィリップは腹を抱えて隅っこでうずくまっていた。

 メイド長は犯人にされたら困るどころじゃなくて

 

「それに狙い通りに、風邪にするようなものってあるんですか? 簡単に手に入るんですか?」 

「しかし、できなかった…………今の家族も愛しているから」

「おい!」

 

 翔太郎はズッコケた。

 メイド長は「当主様のことは別に男としては……」っと小さい声でつぶやいていた。

 彼らを知ってか知らずか六郎は顔色を変えずに執事長へと目を向け直した。

 

「被害者の部屋の近くの部屋は誰が使っていますか」

「奥様とお嬢様が」

 

 執事長は六郎の質問に答えると六郎はまたもや推理を続け、その指をある人物へと示す。

 その指の先に犯人がいることを主張していた。

 

「犯人はお嬢さんあなたですね。なかなか巧みなトリックを使ったようですね」

「え? なんでですか?」

 

 当主の娘は目を丸く見開き、わたわたしていた。

 翔太郎は「今度はなんだよ」という感じに

 

「そう、病は気からといいます」

「はあ?」

 

 頭首の娘は空気を口から漏らすように力がなかった。

 翔太郎も同情していた。

 

「隣の部屋から被害者に向けて『お前は風邪だ』っと囁き続けたのです」

「はい?」

 

 当主の娘は戸惑いを隠せない顔で六郎を見た後に翔太郎に視線を配る。

 どうやら、六郎よりはまともな人間だと思われているのだろうと翔太郎は考えたがとても悲しくなってきていた。

 

「それはロックのように……そう毎晩毎晩オールナイトで」

「あのお……この屋敷の壁は防音をしっかりやっているのですが」

「そもそも、そこまで騒がしければ他の人も気付くだろ」

 

 当主の娘と翔太郎のツッコミに対して六郎は窓の外を見つめていた。

 外には手入れされた庭と翔太郎のハードボイルダーと六郎が乗ってきた車があった。

 

「ところで、このメモリって奥さんしか使えないんですか」

「話しそらした……原則的には特定の個人しか使えないが詳しく調べないことは誰が使用者かはわからない」

 

 その質問にはフィリップが答えた。

 六郎は窓から視線を向き直すと立ち上がって、ピンっと人差し指を続けて推理という名の時間稼ぎを続ける。

 

「もし、奥さんが使用者としましょう――――なんやかんやで奥さんを操って、このメモリを使わせた真犯人がいる!」

「なんやかんやってなんだ?」

 

 フィリップは「ふっ」っと息をついた。

 翔太郎はもしかして何かに気付いたのかと期待の眼差しを向ける。

 

「翔太郎、なんやかんやは――――言葉通りになんやかんやだよ………く」

 

 フィリップはまた腹を抱えて床に伏せていた。

 顔はよく見えなかったが耳まで真っ赤になっていた。

 

「だから……」

「ところで、奥さんに動機は?」

「それは……」

 

 党首の妻もその子供たちも、執事長、メイドも言葉を詰まらせて下に俯いた。

 それを見た探偵たちは「何かある」と勘付き、六郎はいち早く玄関へ向かい、翔太郎はそれを追いかけた。

 六郎は屋敷の外に駐車しているハードボイルダーに勝ってに乗っかっていた

「館の人々が言葉を止める原因、俺は外からを調べることにした」

「おい! 独り言いいながら勝手に人のバイクに乗ろうとするな。俺も行く」

 

 

 

 

 こうしてむさ苦しく一つのバイクに男二人で跨って街へと向かう。

 六郎の案内で連れて行かれたのはサンタクロースの仮装をした男の前だった。

 配っているチラシは化粧などのセールスのチラシであった。

 

「サンタちゃん? じゃない? 誰だ?」

 

 サンタクロースの姿をしているが、翔太郎の知り合いよりは若い。

 顔は濃く、身長もそこそこ高めの体格の良さ目の男。

 そもそも、この街は知り合いが住んでいる風都ではない。

 

「この幸運のパウダーを――」

 

 六郎が千円札をすっと差し出すと男の顔が変わる

 

「あの当主は執事の娘と……」

「さて、この化粧水は――」

 

 また、六郎が千円札を再び差し出す。

 

「このことは誰も言わないが屋敷の人ならば誰もが知っているらしい」

「おいおい――ん?」

 

 驚いている翔太郎に割って入るようにコック姿の男が千円をサンタに渡す。

 

「あのこの街一番のホテルレストランの看板メニューに隠し味を出すにはどうすればいいのか教えてくれ」

「それはな、風都のワインを――」

「何者なんだこのサンタ」

 

 探偵二人は新たな情報を得て屋敷へハードボイルダーを走らせ再び向かう――――肩車しながら。

 

「この情報で調べるべき者が増えた。この事件の全容が見えてきた気がする」

「いいから普通に乗れ!」

 

 

 

 

 

「もういいです」

 

 帰ってきた二人を止めたのは当主の妻の悲痛な声だった。

 六郎は翔太郎の肩から、ハードボイルダーから降りていく。

 途中翔太郎が「痛!」っと叫んだ。

 

「正直、私にもなんでこのメモリを持っているのかわかりません。ですが、このメモリから何らかの誘惑を感じてしまいます」

「奥さん…………そうですか、もっと調査をしますが詳しい話をあとで…………フィリップ、さんざん乱されたが検索を頼む」

「待ってください!」

「なんだよ……」

 

 さすがにこれ以上めちゃくちゃにされては困る翔太郎だが一応聞く。

 

「戦ってくれないと尺が…………」っと六郎がつぶやく「やっとわかりましたよ。犯人は執事長あなただ!」

「いやいやいや」

 

 執事長に歩み寄る六郎を止めるように翔太郎が後ろから手を伸ばすが、テクテク歩いて行く六郎の肩をかすっただけで止められなかった。

 当たり前なのかもしれないが六郎に接近されている執事長ももじもじと足元が落ち着いていない。 

 

「なら、この執事さんが奥さんになんやかんやで催眠術をかけたのです」

「もうちょっと考えて――おい!」

「さっきから足をもじもじさせているからそこにあ…………?」

 

 六郎がめくった執事のズボンの裾の足首に近い位置にコネクタがしっかり刻まれていた。

 それを六郎と翔太郎は顔を見合わせて二度目した後、ゆっくりと執事長の顔を見つめる。

 

「執事さん?」

「バレてしまったか……」

 

 執事の足首にはコネクタ、手に握られているのは『H』の絵が描かれ『HYPNOTISM』と書かれているガイアメモリ。

 ガイアメモリのスイッチを執事長が押すとガイアウィスパーが辺りに響く。

 

「うぉおい。嘘だろ!」

 

 

 

 なんやかんやはガイアメモリだった。

 

 

 

 事件は簡単にまとめると、執事長は娘に手を出した当主を許せなかった。

 また、それを半ば見逃していた気弱の当主の妻を逆恨みして当主夫婦を殺さないまでも苦しませようとしていたのだ。

 メモリをばらまいている集団からガイアメモリを入手して、自分はHのメモリ、党首の妻を催眠術で操っているうちにコネクタの処置とCのメモリを使わせて当主を襲わせていた。

 催眠術と時々だけ使わせることでメモリの毒素による暴走を適度に抑え、そろそろというところで濡れ衣を着せて逮捕させようとし陥れる計画だった。

 少々回りくどすぎるが、執事長も毒素によってメモリの力を使ってみたいという誘惑があったのだろう。

 この後は執事に襲われたもののなんやかんやで解決した。

 

 

 ――っという旨の情報を整理しながらライターを打ち込む翔太郎は頭を掻き毟る。

 

「って! なんでアンタがいるんだよ!」

 

 いつもの事務所には翔太郎、フィリップ、所長の亜樹子とそして六郎がいた。

 しかも六郎はコーヒーを飲むながら探偵小説を読みながらくつろいでいた。

 

「間違って犯人扱いした人へのお詫びの品を探しにだって」

「律儀だな……俺の探偵の本を勝手に読むな」

「いい本ですね」

「どうも……って返せ!」

 

 一通り叫んだ後にふっと翔太郎にとある疑問が浮かんだ。

 

「あんた、あそこまで必死に引っ張ったのは本当に尺稼ぎのためか?」

「それだけじゃありません。奥さんの目を見た時感じたものが……」

「本当かな?」

 

 首を傾げながら亜樹子は六郎とハーフボイルドの翔太郎を見つめていた。

 翔太郎は本をおいてから六郎の方をカッコつけるように振り向く。

 これを意識してやるのが翔太郎のハーフボイルドの所以なのかもしれない。

 

「アンタはもしかして、なかなかのハー……お、おい。なんで固まってんだよ」

 

 ツンツンと六郎を指で付くが少しゆらつくだけで。

 六郎以外の翔太郎もフィリップも亜希子も戸惑いはしているが普通に動いている。

 パンッとフィリップは何かに気付いて手を叩く。

 

「翔太郎エンディングに入ったからだよ。海外のモノのパロディーだよ」

「…………もう好きにしてくれ」

 

 翔太郎の目はどこか冷めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 余談だが

 当主はその後、長ネギを使った有名な民間療法で完全回復したらしい。

 そのことを聞いた翔太郎は何かを思い出して頭を抱えていた。




多方面にごめんなさい。
クロスとしていいかどうかわかりません、悪いところも多いと思いますが。
何卒よろしくお願いいたいします


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