「███」な私の特技は他人を不幸にすることです 作:.。.。.。.。
カン。
舞台の上で拍子木が鳴る。
そこへ正座する白と紫の混じった長髪の少女
名前は
袖口を揃え、死人のように白い肌をした手を膝上に置き一礼する
「――えぇー。
百鬼夜行、いえ..このキヴォトスには昔から妙な噂ってものが付き物ですよね。
「狐が化けただの、夜道で影が増えただの、
井戸から笑い声がしただの。白い服を着た幽霊だの
まァ、そういう話を集めて喜ぶ困った生徒も居るわけで
......例えば、わたくしみたいなのが
いやー?冗談ですよ、冗談。最近は冗談ですら通じない方が多くなってしまいまして、ますます苦労と白髪がねぇ..増えるばかりなんですよねえ..
って、私のこれは地毛でしたね」
ヒナギクは和綴じ本をぱらりとめくり
着物の懐から扇子を取り出して自分を扇いだ
「さてさて、今日のお噺は『不幸誘』ていうことで
まあ、皆さんもご存じ。私たち人間っていうのはいろんな体質を持った人があふれかえっているわけなんですよ。私がいくつか例を出すとするならば
雨女、晴れ女、疫病神に福の神
私も少ーしばかり、言われていることが有りましてね
こう見えてもわたし、ちょっとばかし人に不幸を呼ぶ体質でして」
誰もいないはずの観客席がギシギシと軋む
「いえ、そうは言っても大した事でもございませんよ。朝起きれないとか、お気に入りの肴を地面に落としたとか、大切なものを無くすとか。そう言った細かなこと
しかしまあ..それが重なり続けると次第に大きなことになる
塵も積もれば山となる、そう誰かが言いましてね
だんだんと名前を呼ばれなくなり
話を仕掛けても無視されたり、挙句の果てにはその場にいない存在として扱われちゃうんですよねぇ、これが
人間っていうのは、便利な生き物でしてね___」
「あれ、手前さん?こんなところに一人で何をしてるんですかぁ?」
「おや、シュロさんじゃないですか。どうでした?私の演目」
「手前は今来たばかりなんでなぁんにも聞いてないですね」
「そうですか。まあ始まったばかりですけれどね」
扇をたたんで懐に戻し、手を叩いた
勝手に劇場全体のライトが点灯してヒナギクは高座から降りて観客席に座る。
「今度新しい方の劇場で出演するので練習してたんですよ」
「ふぅん」
「知ってますか?シャーレの先生が特殊部隊とロアの特定と解決に動いているらしいですよ。...私、すこーしばかり興味が有りまして」
「ああぁ..知ってますよ、手前もコクリコ様から聞かされましたから。くねくねでしたっけ?また無茶なことしますよねぇ...」
シュロがその横に座る
ふとヒナギクはどこからともなく一枚の紙切れを掴む
掴んだままシュロの方に腕を伸ばして見せた
「ん?」
「私も、先生方に頼んでみようかと思いましてね」
それは葉書よりも一回り小さいくらいの再生紙で画質の悪い写真が白黒で印刷されていた。白黒というか、カラー写真だったものを無理やり白黒にしたかのような。少なくとも、ここ最近印刷されたり撮影されたような写真ではないことは確かだった
「...手前さん?これぇ..なんですか?」
「実はですね、私の友人が先日失踪しましてね。この写真とメモ書きが机の上に置かれていたんですよ。探しに行ってくるとだけ書かれていましたね」
「...念のために聞いておきますが、これを見ただけで手前が呪われるとかは」
「ないと思いますよ。知りませんが」
中学生高学年?の生徒たちを写した写真
着物を着ている事と、建物の風貌的にはおそらく百鬼夜行の中にある中学校で間違いはなさそうだった。雰囲気的には卒業式だろうか
写っている女の子は判別が難しいが笑顔を浮かべているようにも見える。だが、なぜだかわからないがその目の部分には真っ黒に塗りつぶされたような跡がある。
誰かが友達を撮影したのだろうか?それならモザイクのような黒い跡の意味が分からない。何かの切り抜きか、それに近しい意味合いを持つ写真なのか。ただわかるのは見てて楽しくはない、ただただ不気味な写真だってこと
「私の友人も都市伝説とか怖い話が大好きでしてねぇ..今先生方がそういう仕事に着手しているなら私も頼んでみようかなあと」
「手前さんも中々難しい人ですね」
ただ気になるだけだという
友人が何を調べて、この写真の何を見て、どこに消えてしまったのか。生きているのか死んでいるのか、結末を知りたい
「こうしちゃいられません。早速、シャーレにでも赴きましょう」
「手前は遠慮しておきますねぇ。手前さんの遊びに巻き添えされるのは御免ですから」
「いえいえ、これは遊びじゃないですよ。いわば第一話の導入です」
「怪異ってのは、誰かが興味を持った瞬間から生まれますから」
写真をしまい、劇場の出口の扉を開く
「きっと見つけてくれますよ」
そう言って劇場の扉を潜った
劇場内部に残ったシュロが感じたのは、僅かな黴臭さと埃っぽさに、何とも言えない不気味な無音だけだった
「....はあ、コクリコ様に何言われても知りませんからね」