☆10と☆0は付与できる数が限られているのですから、こんな木っ端小説に使うべきではないと思います。
真夜中の捕り物から一夜明けて、集められた押収物を検めるために私たちは憲兵隊基地へ向かった。
とは言っても不知火たちは基地で
この世界にも装備妖精はいるし、提督も
無理に興味がないものを任せた結果、部品が抜けてて使えませんじゃ洒落にならないし。
しっかし、ニ代目ジムニーなんてどこで手に入れたのかしら? こんなの宇宙刑事でしか見たことないわよ。
「先輩、運転に集中してください」
「
「支給品は頑丈なだけでレンズの精度がよくありません。そもそもどうして伊8へメガネをかけさせたのですか? 武蔵のようにHMDでもないのに」
「不特定多数に喧嘩売るな」
転生者の私が言えた口ではないけど、この子もとんでもなく変わった出自の持ち主だ。
何しろこの子は異世界のドイツっぽい国出身の魔法使いで、この世界を観光中に大本営技術局のマッドどもに拉致されて艦娘にされてしまったのだから。
潜水艦娘というのはどこからともなく魚雷を取り出して使うのだけど、スタッフの打ち合わせ不足からか伊8だけは本から魚雷を召喚するという変わったスタイルを取っている。
それは原作での話で、この世界の伊8でそんな真似ができるのは彼女しかいない。そりゃホンモノだもの当然よね。
この事実は海上歩兵警務隊の隊員しか知らないし、他人に話しても信じようとしないわ。またマッドどもが騒ぎ出しても困るからそれでいいけど。
押収物(マフィア):コカイン粉末二キログラム、高品質乾燥大麻一〇キログラム、銃火器約三〇〇挺(対戦車火器含む)とその弾薬、船員が所有していた銃器や乾燥大麻多数。
押収物(暴力団):金のインゴット四〇個、現金五千万円(後に盗品と判明)、銃器多数(構成員所持)。
目の前に広げられた押収品を見て私たちは言葉を失った。
麻薬はもう慣れっこだけど、持ちこまれた銃の種類の豊富さか尋常じゃないのだ……。
「警察と戦争でもする気だったんでしょうかね?」
「既に一般市民が違法に拳銃を手に入れれるような状態だというのに」
遠巻きに感想を述べる憲兵たちを尻目に、私とハチは案内の憲兵へ押収品の一つを指差して、許可を貰ってからそれを手に取った。
ハンガリーのC50って対物ライフルがあるじゃない? 前はリンクスって名前だった奴。あれと瓜二つだけどもこれは別モノで、これの名前は──
「対深海棲艦ライフル、“M7”」
「これは民間には出回っていないわ。アメリカ軍から盗まれたもののようね」
「そりゃ本当か? だとしたら一大事じゃないか」
私の見た目年齢より上ぐらいの案内役が、それを聞いてひどく狼狽えた顔を見せた。憲兵なんだから最新火器ぐらいはもう少し勉強しなさい。
「それが一〇挺。対戦車火器の割合を考えると──」
アメリカのM7ライフルって言ったら、前世だったら対人用のアサルトライフルを指すわ。でも深海棲艦が現れたせいで兵器体系が大きく変わって、『艦娘じゃない歩兵が対戦車火器以外で深海棲艦と戦えるように』作られた特殊なバトルライフルにナンバーが与えられたのだ。
歩兵が同じ人間を殺すため、あるいは装甲を撃ち抜くために生み出し普及させた弾薬が深海棲艦には効かなかった。奴らを一匹撃破するのにRPGとか対戦車火器のクリーンヒットか、もしくは私たち艦娘の艤装とさして変わらない大砲が必要だった。
『もし深海棲艦を突撃銃で倒せるなら、世界の海は艦娘ではなく水上オートバイに乗った歩兵が守っていただろう』なんて言われてるぐらいには、敵に対人火器が通用しないのは長年の課題だった。
コスパ抜群な艦娘の投入開始から九年、今からほんの二年前に人類はようやくオカルトじゃない対抗手段を手に入れたってわけよ。
それがどうして悪名高いメキシコの麻薬カルテルに流出してるのよ……!
「先輩」
「……これは個々の犯罪者へ売りさばく目的じゃなくて、特定の団体からの
捕まえたヤクザが密漁する時の安全確保ぐらいだったらまだいい方だ。国内に潜んでるテロ組織がこれを求めた可能性だってあるもの。
◆◇◆◇◆◇◆
逮捕したヤクザの取調は憲兵の仕事。押収物をリストにまとめて憲兵隊へ今後の捜査方針の提言をしたら、そのまま本部へ直帰よ。
私たち『海上歩兵警務隊』も艦娘だから、一般的に鎮守府だの泊地だのと言われている基地は海岸線にあるのが望ましい。犯人検挙のために高速船を持ってるからなおのこと。
だいたいの提督はひとつの鎮守府に何人か所属艦隊ごと集められて、そこを本拠地として移動拠点である艦娘母船(鎮守府艦)を動かしてるの。つまり専用の母港を持ってるのはある意味特権なのよ?
そうそう、元ネタの鎮守府があった所だからって、国防海軍の横須賀基地や呉基地に艦娘の鎮守府を置いてるわけじゃないわ。深海棲艦の攻撃で破壊されて無人になった場所を国で買い上げたり、あるいはその辺を妖精の力を借りて埋め立てて土地を確保してるの。妖精様々ね。
海上歩兵警務隊の隊員はそこら辺の艦隊とは少し変わっている。
ふつうは提督と艦娘に装備妖精で全部だけど、ここではそれに加えて『side:金剛』のように人間の作業員が大勢。
漫画作品で提督以外の軍属が出てくるのはあれ固有の描写だそうたけど、『ストライクウィッチーズ』をイメージしていたのかしら?
「よう隊長! おかえり」
「オカエリヤデー」
「この車少しエンジンのかかりが悪いわよ。頼むね」
整備士やその手伝いの妖精に車を預けて、私たちは司令官の執務室へと足を運んだ。
妖精があまりにも万能すぎるのもあって、艦隊運営に普通の人間が関わっている場所はここを含めてごく限られた数しかいない。
先にも言ったけど妖精は『自分が最初からできること』以外を学習する意欲が低い。でも普通の艦隊は艦娘の基本装備しか扱わないからそれで間に合ってしまうから問題にならないの。
ここにいる人たちは四大鎮守府の黎明期から司令と一緒に働いてて、横須賀鎮守府ではもう必要ないからと警務隊立ち上げ時に丸ごと引き抜いてきたのよ。
まあ普通に艦隊やってた頃と比べると、艦娘の割合が少なくなってるのだけど。
途中でハチと別れて執務室へ。
「ボスー、入るわよ」
『どうぞ』
扉を開けば規格化された提督の執務室とはかけ離れた、いやに狭く“事務室”感がすごい部屋が目に入る。一般的な提督の仕事部屋って無駄に広いのよね。
決済ずみ書類が山積みの執務机を挟んだ先に座っているのが、私たちの司令官“敷島 真市”海軍大佐。
戦時昇進で大佐になってるけど、自力で三十代前半までに中佐にはなってるエリート軍人よ。リアルブライト艦長ね。*1
提督のほとんどが海上歩兵庁の特務士官で、妖精さんいわく『艦隊指揮に必要だから』と新人がいきなり少佐になってるの*2。今となっては士官教育を受けてない名ばかり将校が提督のほとんどを占めている。
それと比べれば、その辺の大佐提督とこの人の階級とでは重みが違うのがわかるでしょ?
「押収物の中で何か問題になるものはあったか?」
「対深海棲艦ライフルが一〇挺も混じってたわ。
「確かにそれはヤバいな」
深海棲艦の防御を抜けるっていうのは、艤装稼働状態の艦娘にも有効って意味でもある。
あれを生身の人間でやったら防弾装備でもケガは免れないし、なにより重くて動きにくいわ。
もし艦娘へダメージを与えられる武器が犯罪者の間で普及したら、もう戦車の正面装甲でもないと耐えられるものがなくなるでしょうね。
「国際防衛機構総司令部と軍令部に要報告だな。他には?」
「“日高山脈にヒグマ確認、登山は要検討”」
「……ふむ。了解した、下がってくれ」
「りょーかい」
海上歩兵警務隊はなぜ生まれたのか?
それを説明するには、まず深海棲艦の出自とそれにまつわる大きな戦いについて語る必要がある。
第二次世界大戦で戦没した軍艦の怨念だの旧敵国に対する憎悪が具現化した亡霊など様々な仮説が唱えられる深海棲艦だが、この世界においては『別の世界から亜空間ゲートを使って流入している生物兵器』である事が分かっている。
北方棲姫が初めて発見された際『対話が成立するのではないか』と考えられ、話し合いによる平和的解決を目指してAL海域に向かった提督と艦隊は悲惨な末路を辿っている。
この一件以降、深海棲艦とは共存共栄は不可能であるという結論が国連から公式見解として発表された。
五年前。世界各地の亜空間ゲートへ多数の艦娘艦隊を突入させ、深海棲艦を根本から叩くという大規模反攻作戦が行われた。
特にハワイ諸島近海にある最大級のゲートを担当する日米連合艦隊の規模は目を見張るものがあり、一〇万を超える艦娘と数百を数える提督。そしてゲート付近でそれを支える多数の支援部隊で海は埋め尽くされた程である。
だがゲートへ突入した艦隊は待ち構えていた敵勢力によって壊滅、連合艦隊は総戦力の九割強を喪い作戦は大失敗に終わった。
日本側は保有艦娘の三分の二を失なっただけでなく、戦争初期から鎮守府を率いてきたベテラン提督を多数喪失。士官教育を省略した速成提督でその穴埋めを行わざるを得なかった。
本題はここからだ。
我々の世界の平和な日本でもベテランの警察官や自衛官が時おり罪をおかして問題となるが、この世界は長年の世情不安で人々がモラルハザードを起こしている。
虫の息だった暴力団は息を吹き返し、テロリストが兵器を売りさばいて犯罪は凶悪化の一途を辿っていた。ここはいつから西部警察の世界になったのか。
彼ら反社会的勢力が目をつけたのが、艦娘志願者またはその保護者には多額の“特別傷病手当”が支払われるという制度だ。いちど艦娘になれば現代科学では元の体に戻せないため、その慰謝料が事実上の身請け金として支払われるのだ。
反社はそこに目を付け、弱みを握った女や自身の支配下に置いた半グレを軍へ送り込んだのだ。
一方の海上歩兵庁も深刻な艦娘不足から候補者の身元を精査せずに採用し、人間として未熟な提督や速成軍人と合わさり鎮守府の腐敗は一気に進行してしまった。
当時まだ対深海棲艦ライフルは実用化されておらず、万が一艦娘が暴れた場合は憲兵隊や陸軍でも制圧は困難だと容易に想像がついた。
政府並びに軍としては、その万が一が起きる前に対策を打たなけれならない。
ゆえに艦娘には艦娘をぶつけるという単純な方法で、重武装の凶悪犯もまとめて検挙できる特殊部隊を作る案が浮かび上がった。
四年前の一〇月二八日、数少ないベテラン提督の一人である敷島中佐(当時)と配下の癖は強いが歴戦の艦娘たちを丸ごと転属させる形で海上歩兵警務隊はついに誕生した。
執務室から隊員艦娘のオフィスへ移動し、同僚兼姉妹艦に迎えられた陽炎は自身のデスクへと突っ伏した。
「どしたん?」
「“日高山脈にヒグマ確認、登山は要検討”」
「……となると、艦娘を伴った犯罪者が北海道で確認されたのか」
ティーバッグの緑茶を姉へ差し出しながら磯風が言う。普通の人間では制圧が難しい艦娘をヒグマに喩えているのだ。
ただ現時点では公安警察と憲兵隊の監視のみであり、警務隊に北海道まで遠征しろという命令は出ていない。
「いやになっちゃうわ。北海道はただでさえ
「そんな隊長へこちらからも残念なお知らせです」
不知火は一枚の書類をそっと陽炎の目の前へ置いた。
「ビスマルクが逃げました」
「は?」
「呉第五鎮守府所属の粗●ンに前から引き抜きを掛けられていたようです。裏で根回しを進めておき、敷島司令が承認印を押さざるを得なくして今朝に……」
ビスマルクは判子を貰って一言、『愛のない提督はこうやって艦娘から逃げられるのよ』と吐き捨てたらしい。
「うがぁぁぁあのパンモロ戦艦! 鉄血の横乳アネキの責任感の強さを見習えぇぇぇっ!」
「また陽炎が訳わからんこと言うとる」
そういえばハーメルンにおける艦これのトレンドを知らないですね。
過去に艦これを書いてた時期はPixivとニコニコ動画ばかり見ていましたので。