私の最推しがクラスメイト?! ガチ恋なのをいいことに好き放題やられてるんですが、この超性格の悪いVTuberからどうやって逃げればいいですか.....?   作:顔のない女@人外ものしか書けない人

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第21話 友達の家族が強すぎて、隠し事ができない話 (月宮:視点)

「もう茜ったら……女の子を連れてくるなんて言ってたから安心してたのに、普通に恋人じゃない。いやだわ〜♪」

「やっぱりCongratulationsだったんだね。っていうかそうじゃないと学校に行かないもんね」

「だから何回言わせるんですか!!! 友達ですよ、と も だ ち っ ! !」

 

 茜の悲鳴じみたツッコミが空しく響く中、私はただひたすらに気配を消し、目の前のハンバーグに集中するふりを続けた。

 

 現在は4人で食事中だけど……私が会話に入る隙などない!

 

 下手に割り込んだら処される!!

 詰んだ!!!

 

「それにしてもチャンネル登録者100万人オーバーの子をお持ち帰りなんて、やるわね〜」

「恋人なら何かそれっぽいことしたんでしょ どう? どう?」

「してませんよ……」

 

 やがて茜は全ての反論を諦めたように『……はぁ』と深いため息をついて立ち上がった。

 

「風呂沸いたみたいなので先に入ってきます。月宮さんは申し訳ないんですが、2階の奥の部屋で待ってて下さい。暫くしたら上がって交代するので」

「えっ、あぁ……うん、分かった」

 

 そう言って茜ちゃんは浴室へと去っていった。

 

「その……じゃあ私も失礼――」

 

 私も続くように席を立とうとする。

 ――が、二つの視線が矢のように突き刺さり、私の動きを縫い止めた。

 

「あら、まだ失礼しなくてもいいのよ? リビングでゆっくりしていきなさいな」

「そうそう、聞きたい事ならいっぱいあるんだし」

 

 どうやら、お二人は逃がしてくれないようである。

 こんなことなら、茜に『一緒にお風呂に入ろう?』とでも提案すればよかった。

 

 でもそんな事したら、ガチ恋の茜ちゃんに何されるか分かったものではない。

 一度無理やり押し倒されてるんだし。

 

 ……やっぱりその選択肢はないかな。

 

 私は観念し、ゆっくりと椅子に座り直した。

 

「その……お手柔らかにどうぞ…………」

「そうね。じゃあ簡潔にフェス?っていうのかしら?、そこで何があったのか話してくれる?」

「……それくらいなら」

 

 

 

 私は当たり障りのない範囲で事の顛末を話した。

 フェスでのこと・カフェでの出来事・そして偶然にも同じ学校に通っていて、友達として一緒に過ごす時間が増えた事とかも。

 

「恋されてるのを分かってて友達になるなんて、貴女も変わってるのね〜。こっちは助かるからいいけど」

「っていうか、まだ何か隠してるでしょ。隠さず話して」

「え?」

 

 明日菜ちゃんの真っ直ぐすぎる瞳が、私の心臓を射抜いてくる。

 

 ……茜が風呂から戻ってくる可能性を考えてだいぶ端折ったとはいえ、もうかなりの内容を喋ったはず。

 私達の関係は別に長くないし、もはやネタ切れのレベルでこれ以上話すことなんて無いけど……

 

「お姉ちゃんが推し相手とはいえ、ただの友達のためだけに学校に通い続けるわけない」

「………………」

「――実は付き合ってるんでしょ?」

「付き合ってないよ」

 

 私は食い気味に否定した。

 

「……なんか詩音さんの話、嘘くさいんだよね。じゃあ友達以上恋人未満ってこと?」

「茜ちゃんとはただの友達だし、それ以上でもそれ以下でもないかな」

 

 というか、女の子同士で付き合うって何……?

 その発想はどこから生まれてくるのだろう。

 茜もそうだけどもしかしてこの家族は、同性愛的なことにも抵抗がないタイプなのだろうか?

 ……いや、私も茜のガチ恋を承知の上で友達をやっているのだから、別に抵抗はないけど……

 

 なんて考えていた時だった。

 

「なら()()とかもしてないか〜」

「もちろん、して……」

 

 ――ない。

 そう続けようとした言葉が、喉の奥でつっかえた。

 

 脳裏にあの朝の光景が、鮮烈にフラッシュバックする。

 床に押し倒され、手を拘束され、抵抗の隙もなく舌を捩じ込まれた、あの暴力的なキス。

 屈辱的だったはずなのに思い出しただけで、身体の奥がじわりと熱を帯びる。

 

「ないよ…………」

 

 ちょっとだけ震えた声で返事をしてしまった。

 私は動揺を悟られまいと、目の前の麦茶のグラスに手を伸ばす。

 冷たいガラスの感触が、火照った指先に心地よかった。

 

 そして顔を上げた瞬間――私は絶望した。

 

 そこには悪魔の笑みを浮かべた明日菜ちゃんが、ぶいれいんの公式サイトを開いたスマホを、これみよがしに見せつけていたのだ。

 画面には去年クリスマス用に収録した、私の限定ボイスの購入ページが煌々と輝いている。

 

「詳しくぜーんぶ喋ってくれるよね、詩音さん?」

「いや、あの…………本当にキスとかしてなくて…………」

「ママ、一緒に聞く?これ」

「いいわね。私はそういうの知らないし、面白そう」

「わああああああああああああ!!!!!」

 

 ――友達の家族に私のボイスを聞かれるとか、どんな羞恥プレイだよ!

 絶対に無理ッッ!!……嫌すぎる。

 

 だけどあの日のことを話すのも、同じくらい恥ずかしい……

 

「ホント、本当に何も無かったから! 私のこと信じてよ!!」

「あっ、買っちゃった」

「ぎゃあああああああ!!!!!!」

「何もしないって誓ってあげるから、ちゃんと話してよ。ねぇ早く」

「茜は基本お風呂で呆けてるから長風呂だけど、あんまり時間を使っちゃうと、ねえ……」

 

 …………茜ちゃん含めたこの三人、本当に良い性格をしているようだ。

 方向性は違うけど、確かに血の繋がりを感じられる。

 

「もう!! 分かった!!! 話すから!!」

 

 

 

 ---

 

 

 

 結局私は学校で再会を果たした日の出来事を、二人に洗いざらい白状した。

 

 それは私が茜ちゃんを声で操ったこと、

 仕返しに押し倒されて無理やりディープキスを決められてしまったこと、

 そして茜ちゃんはその後すぐに、私の事を避け出したこと、

 私はバスを使って逃げようとしていた茜ちゃんを捕まえて、秘めてる想いを全部喋らせた後、学校に通い続けるよう約束を結んだこと……などなど。

 

 思い出したくもない記憶を、私は早口でまくし立てた。

 

「ちょっとお姉ちゃんシバいてくる」

 

 全てを聞き終えた明日菜ちゃんが、静かに椅子から立ち上がった。

 

「ちょっと待ってえっ! そんなことしたら茜ちゃんが何するか分かんないよ!」

「そうそう。無駄に行動力だけあるんだから、あの子」

「確かに……」

「それにいいじゃない。犯罪スレスレみたいな事をやったとはいえ、結果は全部上手くいってるんだから」

 

 母親の言葉に、明日菜ちゃんは渋々といった様子で座り直した。

 

「でもキスかぁ。絶対お姉ちゃん上手かったでしょ。人と話すこと以外なら基本何でも出来ちゃう人だし」

「まぁ……うん、気持ち…………良かったかな」

「そうだよね。私も一回お姉ちゃんとシた時に、頭おかしくなるかと思ったもん」

「え?」「ん?」

「あ、今のナシ。忘れて。かなり小さい時の話だから」

「…………お母さん、貴女たちの話を聞いてると怖くなっちゃうわねぇ〜」

 

 その時、ガチャリとリビングのドアが開いた。

 

「月宮さん、2階に行ってなかったんですね」

「あ……うん」

「次、使っていいですよ。お風呂」

「分かった。じゃあ今から入っちゃうね」

 

 ……ようやくこの空間から解放された。

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