私の最推しがクラスメイト?! ガチ恋なのをいいことに好き放題やられてるんですが、この超性格の悪いVTuberからどうやって逃げればいいですか.....?   作:顔のない女@人外ものメインで書く人

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第47話 最推しの友人、坂本鈴奈

 個室に滑り込み便器を抱えて中身をぶちまける。

 けどその感覚はこれまでにしてきた嘔吐とは、何かが決定的に違っていた。

 

 自身の吐瀉物など決して見ないのが私の流儀だが、込み上げてくる鉄臭さに恐る恐る中を覗き込む。

 

「これは……」

 

 便器の中は吐瀉物などほとんどなく、ほんの少しだけ水が赤黒くなっていた。

 

「藤崎さん、大丈夫――って、血? 血を吐いたの!? 今すぐ先生呼んでくる!」

 

 次から次へと。

 …………ドアくらい閉めとけばよかった。

 

 どうやら坂本さんは私の口元を拭った手と、便器に突っ伏している私を見て、血を吐いたと理解したようだ。

 

「や、やめてください!!!」

 

 私は震える声で彼女を制止した。

 

「え?」

「今私が学校を休んだりしたら、文化祭が台無しになるんです!だから……ダメ、です……」

 

 ダメだ。

 無理やり立ち上がろうとするが、視界がぐにゃりと歪む。一度自身の体調不良を意識してしまったせいで、全身から急速に力が抜けていく。

 

「……仕方ないなぁ」

 

 すると坂本さんは見ていられなくなったのか、小さく溜息をつくと、私に肩を貸してくれて、そのまま洗面所まで引きずっていってくれた。

 私はそこで必死にうがいをし、鉄の味を洗い流す。

 

「……ありがとうございます」

「嫌なら言わなくてもいいけど、血を吐いたりとかはよくするの?……もしかして病気とかだったり?」

「病気かどうかは知りませんが、原因は分かってます」

「聞かせてよ」

「これは......ただのストレスですよ。私は他人が大嫌いですから」

 

 

 

 ---

 

 

 

 私は今の自分をありのままに曝け出した。

 その方がこの不快な体調不良から少しでも、解放される気がしたからだ。

 

 人に触れられるのも、話しかけられるのも、本当は耐え難いこと。

 それでも文化祭に参加すると決めてしまったから、真面目に取り組もうとしていること。

 それはそれとして、まさかのこんな形で私の体に負担がかかってしまったこと。

 恩がある月宮さんのために、やり遂げたいと思っていること。

 

 月宮さん&弦巻さん(馬鹿二人)と私の間にある複雑な事情は伏せ、余計な質問をさせないように、一方的に吐き出すように話した。

 

「じゃあ私のことはどう思う? さっきまで普通に会話してたと思うけど」

「……他人に優劣はつけません。私はみんな嫌いです」

「なら詩音は?」

「…………友達、です」

「そうなんだ。片耳イヤホンでずっと通話するくらいなんだから、藤崎さんはだいぶ詩音のこと気に入ってるんだね」

「それは……」

「ごめんごめん。面と向かって他人扱いされて、意地悪したくなっちゃったんだ。そんなことより今日は帰りなよ、良かったら駅まで支えていってあげようか?」

「……」

 

 坂本さんの意外な提案に、私は目を瞬かせた。

 

「嫌ならいいけど」

「いえ……一方的に突き放すようなことを言ったのに、なんで私にそんな提案をしてくるのかと驚いただけです」

「だって他人に触られたり話したりするのも嫌だけど、自分から関わっていこうとしてるわけでしょ? なら結局、私達の始まったらばかりの関係が終わるわけでもないよね」

「……そうですね」

「確かマキちゃんは文化祭終了までの期限付きって言ってたっけ。藤崎さんのその話でどういう意味かようやく分かった気がするよ」

 

 そして坂本さんは私にそっと手を差し伸べてくれた。

 

「じゃ、これからしばらくの間、改めてよろしくね。事情は把握したから期間中、いいように私を使ってくれていいよ」

「......はい」

 

 変な人だ。

 でも月宮さんが友達として、この人と長く続いたのも理解できる気がする。

 っていうか月宮さんの周りは変人だらけだ。

 類は友を呼ぶとはよく言ったものかもしれない。

 

 そして月宮さんが今入院しているのは、不幸中の幸いだと言わざるを得ない。

 一度でもこんな醜態を見られれば、彼女は間違いなく私の参加を止めるだろう。

 

 文化祭に行かなくて済むならとても喜べるけど、おそらくその後祭りを楽しめなかった彼女の機嫌が悪くなるのは目に見えているので、結局休むなんて選択肢は既にない。

 

 月宮さんのために文化祭を成功させるなら、彼女には当日まで安静にしていてもらうのが一番都合がいいだろう。

 

 私は坂本さんの細い肩に体重を預けながら、帰り道を歩いていく。

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