私の最推しがクラスメイト?! ガチ恋なのをいいことに好き放題やられてるんですが、この超性格の悪いVTuberからどうやって逃げればいいですか.....?   作:顔のない女@人外ものメインで書く人

50 / 50
第50話 獣の習性とは

 人とはどうしてこうなのか。

 他人とはどうしてこうも、生理的な嫌悪を催す存在なのだろうか。

 

 ――これはただの文化祭。

 仕事ではなくて、遊びと殆ど変わらないというのに。

 

「私の父は病気で亡くなってしまって、母は一人でとても大変そうでした。それで私は私を育てて産んでくれた母に恩返しをしたくて、料理を始めるようになったんです」

「素敵♡」「うんうん」「……」

「それで母や妹、そして友人達が料理を美味しいって言ってくれるのがキッカケで私は将来、料理人になりたいって考えました」

 

 私の思考は、どす黒い澱にゆっくりと侵食されていく。

 

 分かっているつもりだ。

 そう、自分でも分かっている。

 これは普段の人嫌いの性質に重ねて、連日の体調不良と、空腹と、鳴り止まない喧騒が私を尖らせているだけだ。

 

 だが、それでも尚あまりある。

 

「そうだ!良かったら皆さんも、今度家に遊びに来てください。この楽しい時間のお返しとして、とびきり美味しいご馳走を用意しますから!」

「行きます!♡」「私も!!!」「……これ、チップです」

 

 私は過去に受けた虐めを通し、理解したはずだ。

 

 他人とは騙すべきものであり、隙あらば陥れるべきもの。

 弱肉強食はもちろんのこと、貧富の差が大きい現代社会において、それは絶対不変の真実であることを。

 

 やられる前にやれとはよく言ったものだ。

 狩る相手は誰でもいい。

 まずは虐められる前に、こっちの味方を増やし相手に対し虐めをふっかけ、敵を駆逐して自分の居場所を作る。

 それが小学生の頃の私が辿り着いた、数ある結論の一つ。

 

 人は共通の敵を作ってこそ、更に人間関係を深めていく。

 

「ありがとうございます。また、明日も来てくださいね」

 

 では目の前の獣共はどうだろうか?

 何を思って、こんな安っぽい嘘に頬を染めているのか。

 

 きっと今の私とこうして対面できる人達は、温室育ち(神に愛された人)――絶対的強者なのだ。

 他者を虐める側に立てる者であり、それがこの社会を通して、一般的な人としての在り方。

 

「藤崎()()の好きな食べ物とかある?……良かったら今度持っていこうと思うんだけど」

 

 そしてまた、新しい獣が本能のままに擦り寄ってくる。

 この二時間だけで、かなりの数の畜生を相手にしてきた。

 だがどれほど言葉を重ねても、彼ら彼女らの本質に違いを見出せず、私が出してきた数ある結論は変わらない。

 弱肉強食は世の常で、弱者は自害すべき下郎である。

 

 本当に……下劣な下心を隠しきれない客の相手をするたびに、私の人嫌いは末期症状へと向かっていく。

 

「ふふ……そうですね。勿論こちらの先輩を――テイクアウトで」

「きゃー!」

 

 この獣なんかも本当に酷い。

 

 聞き齧った話によれば、彼女は2週間から1ヶ月で男を取り替えている遊び人だそうだ。

 最近の彼女は良い出会いがなかった折に、私を発見し、嗜虐的な昂ぶりを覚え、ここに顔を出したという。

 

 そしてこの獣は私を男に見立て、大した金も払わずに公開の自慰行為を楽しんでいるのだ。

 

 人の本質はどこまでも変わらない。

 人間は他の動物より優れていると自負しながら、結局は剥き出しの欲望に従うだけの畜生と変わらないのだ。

 

 あぁほんと……私以外の全員、苦しみながら死んでしまえばいいのに。

 いや、金で飼われて動いている私も本質は変わらないのだから、死ぬべきは私含めた全員だ。

 

「先輩……」

 

 私は先輩の頬に手を添え、唇を近づけていくと同時に、体中の穴という穴から嘔吐したい衝動に駆られる。

 

 もう、限界だった。

 

「藤崎くん……♡」

 

 獣が私に向かって猫撫で声を響かせる。

 

 それがどうしようもなく、あぁぁぁ……あぁ……………………

 

 

 

 

 

 

 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

 

 ――そんな時だった。

 

「お客様!…………飲み物をお持ちしました」

「……え、私頼んでないけど……藤崎くんが頼んだの?」

「……………………………………」

「こちらは私のサービスとなっております。ごゆっくりどうぞ」

 

 私の思考がよくない方向へ完全に侵蝕される寸前、月宮さんが助け舟を出してくれた。

 そして彼女は弦巻さんを引っ張ってどこかに消えていった。

 

「…………」

「藤崎くん、大丈夫? ……ちょっと顔赤いけど」

「あっ……あぁ! あはは……。先輩があまりに可愛い反応するもので、私の方がドキっとしちゃったんです」

「もう!そういうのいいから!!」

「あんまり悪戯はするものじゃないですね。もうすぐお時間ですし、ここら辺にしていきましょう」

「うん…………また明日会いにくるね?」

 

 二度と来るな、首を吊って死ね――。

 そんな言葉が喉まで出かかり、それを強引に飲み込んだ。

 

「はい、お待ちしております」

 

 私は完璧な営業スマイルで、一つ上の先輩を追い出した。

 

「茜っち〜、もう終わっていいよー!」

 

 そこでタイミングよく、ようやく今日のシフトという名の刑期が終了した。

 

 

 

 ---

 

 

 

 時はお昼時。

 

 私は更衣室で元の服に着替える気力もなく、かと言って教室にいると今までの宣伝効果から、私は100%接客に駆り出されるのが目に見えている。

 少しでも現在接客中である月宮さんのそばに居たかったけど、状況がこうなってしまっては他クラスの出し物を眺めるふりをして、廊下を彷徨うしかなかった。

 

 救いなのは、私みたいにふざけた格好をして歩いている人が、少なくないことかもしれない。

 執事服はだいぶ目立つけど、ギリギリ他の人からは見逃してもらえそうな雰囲気だ。

 

「あっ!執事さん!!俺ですよ俺……」

 

 だが、それはあまりに浅はかな考えだったようだ。

 

 不意に横からかかった厚かましい声に、私の心臓が嫌な音を立てて硬直する。

 やっとようやく解放されたと思ったのに、神様はまだ私を自由にしてくれないらしい。

 私は錆びついた機械のような動作で、声の主へ顔を向けた。

 

「どうか……しましたか」

 

 おそらくこの男子は、私が接客した相手のうちの誰かだ。

 でも、今この時に話しかけてこないで欲しかった。

 

「いや〜、もし一人なんだったら俺と一緒に文化祭回って欲しいなー……なんて」

「それは…………ごめんなさい」

 

 ……やばい。

 

 もう、何もかも限界かもしれない。

 

「もしかして待ち合わせ中?」

「はい……友人が今お仕事中で……それを待ってるんです」

「じゃあ、そのお友達が終わるまででいいからさ。お願い!!」

 

 こんなのはすぐ適当に無視してしまえばいいだけ。

 分かっているのに、その一言をひねり出す体力すら底を突いていた。

 

 思考を停止させ、このままコンクリートの床に沈んでしまいたい。

 いっそこの場で首でも吊ってしまえれば、この五月蝿い連中から永遠に逃げられるだろうか。そんな暗い想像が頭をもたげる。

 

「ほら、いこうよ!」

「あっ……」

 

 そう言われ、男子に無理やり腕を引かれそうになった、その時。

 

「ごめんごめん、藤崎さん。待たせちゃったね」

 

 坂本さんが崩れ落ちそうな私の手を取ってくれた。

 

「…………」

「それじゃあ一緒にデートしよっか」

「あぁ……はい」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

次の飼い猫は私?! 幼馴染とはいえ、なんで大嫌いな女のためにこの私が……(作者:顔のない女@人外ものメインで書く人)(オリジナル現代/恋愛)

猫に変身できる人外少女の西園玲香が、とある出来事で酷く落ち込んでいた椎名葵を偶然見かけた。▼玲香はそれを無視することができず、本当に嫌々ながらも白い野良猫として葵に寄り添い、再び縁を結ぶことになってしまう。▼玲香は葵の猫としての側面、そして葵に陰湿な虐めを受けながら生活する、人間としての自身の二つの顔に、すごく頭を悩ませることになるが......▼大嫌いなは…


総合評価:604/評価:8.91/完結:34話/更新日時:2026年05月28日(木) 18:01 小説情報

妖狐の私、人間の社会で稼ぐためVtuberとして百合営業をしていたら相方の化け狸がガチだった件(作者:パッタリ)(オリジナル現代/日常)

 信仰が薄れ、妖怪も自力で稼がねば生きられない現代社会。妖狐のシズクは生き残るため、化け狸のコノハと組んでVtuberとなり、百合営業で日銭を稼いでいた。▼ しかし、画面の向こうで可愛らしく甘える相方の感情は、営業などではなくガチだった。▼ 防犯設備を妖術で容易く突破し、数百年の執念がこもった極上の手料理で胃袋ごと支配しにくる化け狸。▼ これは、平穏な生活を…


総合評価:805/評価:8.5/連載:29話/更新日時:2026年06月20日(土) 12:20 小説情報

添い寝してもらわないと眠れない女の子in百合猛獣だらけの女子寮 〜案の定美味しく食べられてしまうと思いきや、女たらしの才能に目覚めてしまいます!?〜(作者:鐘楼)(オリジナル現代/恋愛)

毎日姉に添い寝をしてもらっている少女、花平希沙音は高校一年の夏、ついに「一人で眠れるようになりなさい」と姉の家を追い出されてしまう。▼一人で眠れる気がしなかった希沙音は、なんとか添い寝を頼めないかと転居先の女子寮で出会った親切な少女、伊咲深白にお願いをする。▼しかし、深白は何人もの少女を手篭めにしてきた悪女だった。▼案の定、希沙音も深白に美味しく頂かれるのか…


総合評価:2378/評価:8.89/連載:25話/更新日時:2026年06月18日(木) 12:05 小説情報

心を閉ざした少女からの激重感情(作者:あさまらたゆかあわ)(原作:東方Project)

人里で甘味処を営む家の娘、雨宮澄。▼少しぼんやりしていて、妙に勘のいい少女である彼女には、“見えないものを見つける”不思議な力があった。▼ある朝、休憩中に食べていた団子が一本消えたことから、誰にも気づかれない少女――古明地こいしと出会う。▼「なんで、貴方には私が見えるの?」▼気まぐれで自由奔放なこいしに振り回されながら、澄のいつも通りの日常は少しずつ変わって…


総合評価:1785/評価:8.78/連載:17話/更新日時:2026年05月16日(土) 20:39 小説情報

全方位脳焼き英雄、停戦条件に身柄を要求される。(作者:鐘楼)(オリジナル現代/冒険・バトル)

一ノ瀬ヒナは英雄である。最強なので二つの世界を救い、誰も殺さずに大体丸く収めることができた。……そのはずが、異世界からの停戦条件はヒナの身柄であった。後輩たちに黙って犠牲になることを選んだヒナを待っていたのは、幾度も戦い、最後には共闘もした女王。女王は、ヒナに屈辱的な扱いを──▼「──結婚しよう、ヒナ」▼なんで????▼みたいな話。▼カクヨム別タイトル投稿(…


総合評価:1641/評価:8.66/完結:5話/更新日時:2026年02月17日(火) 12:05 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>