私の最推しがクラスメイト?! ガチ恋なのをいいことに好き放題やられてるんですが、この超性格の悪いVTuberからどうやって逃げればいいですか.....?   作:顔のない女@人外ものメインで書く人

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第62話 大好きな人に尊厳をズタズタにされたんだけど、なんでこうなった......?

 窓の外から響く鳥の嗤い声で、意識が浮上した。

 隣では昨夜の出来事が嘘であったかのように、詩音さんが安らかな寝息を立てている。

 

「すー………すー…………」

「あ〜…………体が痛い」

 

 泥のように眠っていたらしい私は、覚醒していく意識の中で、昨夜の出来事を鮮明に思い出していった。

 心身に刻まれた生々しい記憶が、熱を帯びて蘇る。

 

「んんっ、……!!!?」

 

 その時、隣で無防備に眠りこける彼女の横顔を見ていると、ふつふつと、猛烈な怒りが込み上げてきた。

 

 私は勢いに任せ、一糸纏わぬ姿のまま飛び上がる。

 

「とお――りゃっ!」

 

 そして彼女の脇腹を思いっきり蹴飛ばし、ベッドから床へと蹴り落とした。

 

「痛ッッッッッッッッッったああ!!!!」

 

 重い音とともに床で悶絶する裸の彼女を冷ややかに見下ろし、私はベッドの縁で悠々と足を組む。

 

「なんですか昨日のアレは。……私がその……する必要ありましたか?」

 

 口にするのがあまりに羞恥を伴うため、私は顔を背けながら吐き捨てた。

 

「な、何可愛い子ぶってるの!? 寝てるところに蹴りを入れるとか、普通にありえないんだけど! 何考えてるわけ!?」

「そっちこそ人様の手首縛りあげて、レイプするとか何考えてるんですか?! 頭おかしいですよ!!!!」

「それは………………………………ごめん」

「えぇ?」

 

 そこであっさりと素直に謝られてしまうと、こちらの毒気が抜かれてしまう。

 

「……確認するんですけど、詩音さんって女の子と付き合うの否定派ですよね?」

「まぁ……そう、うん」

「じゃあこれを機に、私とお付き合いしたりは……」

「しな――」

 

 その言葉を最後まで聞き届ける前に、私は枕を掴み、彼女の顔面に向かって力いっぱいぶん投げた。

 

「ちょっと!!暴力反対!!!!」

「貴女、言ってることとやってることが、どれだけヤバいのか分かってますか?! ゴミですよゴミ!!」

「うるさい、負け犬! 結局は欲に負けて、私の言いなりになる事を選んだ癖に、調子に乗るな隠キャ!!」

「…………それは言い過ぎですよ」

「ごめん。でも茜も昨日私にいっぱい色々言ってきたし。……アレ結構効いたから、ずっと引きずるかも」

 

 そう言われて私が営み最中に何を口走ったのか思い出す。

 

『貴女って本当に酷い人ですよね。我儘で暴力的で品性の欠片も無い。感情のまま私を拘束してるところとか、特にそう』

『この猿ッ!』

 

 あっ……酷い。

 二言くらい私、結構ガチで本音を口走っている。

 口から出す言葉にほとんど制限を掛けずに物を言っていたようだ。

 

 私は目元を隠しながら、言葉をかけた。

 

「すみません…………本当にすみませんでした。何か代わりになることがあれば、それで謝罪させてください」

「なら一緒に3年間学校に通い続けようね」

「貴女は口を開けばそれなんですね。答えはノーです」

「じゃあ、昨日の私の非道をなかったことにするのと引き換えってことで。お互い様だったってことにして、仲直りしよう?」

「……詩音さんがそれでいいなら、別にいいですけど」

 

 ……結果、嬉しくはないけど私だけ得してる気がする。

 レイプされた形になった上に私が醜態を晒す側になったとはいえ、こっちは最初から詩音さんのことが好きだったし。

 これはもはや恋をしている相手でもない人に奉仕してる、詩音さん側の損ではないかとさえ思ってしまう。

 

 でも結局、得をした側とはいえ、私は詩音さんと肉体的に結ばれておきながら、それにあまり満足できていない。

 肉体だけじゃなくて、やっぱり心も私と同じくらい向き合って欲しいんだと思う。

 そこら辺詩音さんは、夜を共に過ごした相手だというのにドライな感覚なのが、もはやウザいとまで思ってしまうかもしれない。

 

 考え込む私の隣に、詩音さんが這い上がり、ぽつりと口を開いた。

 

「ふふっ。なんだかんだ言って、もしかしたら私の方が茜のことが好きで。茜の方が私に興味無いのかもね」

「あははっ――面白くない冗談です」

 

 私は乾いた笑いを返し、そのままベッドへと倒れ込んだ。

 

「そんなに否定することかな? だって茜の方から私を切ろうとしてて、私の方は必死に関係を繋ぎ止めてるんだよ。だったら単純に考えてそう思わない?」

「……世の中はそんなに単純にできていないんです。特に私の頭は壊れているので、物事が素直に運んでくれないんですよ」

「ふ〜ん」

「私は私に関わってくれた人全てが羨ましくて、同時に同じくらい憎いんだと思います。……本当に嫌な問題ですね」

 

 今回のことを通して自分の価値観が変わったりは、きっとしない。

 

 人なんてみんな気持ち悪いし本能に従順だし、欠陥生物で小汚い獣である。

 私の頭の根底にはずっと昔からそれが根付いてるし、ここ最近ぐっと人と関わる機会が増えてから、それが更に悪化している。

 

 ネガティブになった時に出る『全人類に苦しみながら死んで欲しい』という願いも本物なのだ。

 そしてそれには欲求に忠実な自分自身も勿論含んでるし、あんまり言いたくないけど、対象には詩音さんも含まれている。

 

 何度でも言えるけど、やっぱり私は生まれ出るべきじゃなかったし、社会に生きるのには絶望的に向いていない。

 

「……茜の頭は難しいことばかり考えてるんだ? もっと簡単に人生を楽しめたらいいのに」

「貴女の頭は簡単すぎる故に、弦巻さんなんかに説教されるんでしょうね――痛ッッッたすぎッ……!」

 

 私がぼやくと、お腹に拳の鉄槌を喰らわされた。

 裸のせいで直に衝撃がきて、凄く痛い。

 

「今のでその言葉はなかった事にしてあげる。茜って繊細なメンタルのくせに、無神経なところあるの本当に何?……って感じだよね」

「……そうですね。きっと豆腐メンタルだからこそ、他人を見下して毒を吐くことで、壊れそうな自己を辛うじて肯定しているのかもしれません」

 

 自嘲気味に呟いた後、私は起き上がり、不意を突いて詩音さんの身体を抱き寄せた。

 

「わっ――」

 

 そのまま彼女を組み伏せ、再びベッドへと倒れ込む。

 

「難しいことを考えるのはここで一旦おしまいです。今から私は自身の人生を簡単にするために、ある言葉を言おうと思います」

「え、急に何? 怖いんだけど――んむ?!」

 

 私は自由な片手で、詩音さんの口を強引に塞いだ。

 

「ですが貴女は何も反応せず、黙ったまま聞き流してください。そしてこの事を後から追求するのも絶対ダメです。――分かったらゆっくり頷いてください」

 

 詩音さんは困惑に瞳を揺らした後、観念したように小さく頷いた。

 

「ふふっ。では行きますね。――好きです、大好きです」

 

 一瞬身じろいだ彼女を腕で固定し、拘束をさらに強める。

 

「まずは、私が貴女を好きなポイント一つ目から話していきます。それはですね、なんと言ってもその積極性です。詩音さんに話しかけてもらえなければ、今の私は存在しませんでしたから――」

 

 それから一時間以上。私は彼女を拘束したまま、詩音さんの好きなところを延々と、呪詛のように語り続けた。

 これは彼女を喜ばせるための告白ではない。

 ただ、私自身が溜め込んだ感情を吐き出し、楽になりたかっただけだ。

 だから相手の共感も反応も必要ない。

 

 ただ詩音さんは、私が放ち続けるパンチを、都合の良いサンドバッグとして受け続けてればそれで良い。

 彼女が私に都合の良い関係を強制するように、私は私でささやかなる仕返しをしてやるのだ。

 

 

 

 

 

 まぁでも正直言って今回のは、ハサミで刺されそうになった時の比にならないくらい酷い。

 詩音さんが感情のままに動くと、私の予想の範疇を越えたことをしてくるし、彼女も他の人の例に漏れず、ちゃんと人間なのだと再認識させられた。

 

 それにしても旅行の時私はギリギリで止まってあげたのに、彼女は全力でアクセルを踏んで轢き殺しにくるとは…………

 自分はやってよくて、相手はそれをしてはいけないという思考は、如何なものかとも思う。

 

 きっとああいうブレーキがぶっ壊れているところが、人を惹きつける魅力になってるんだろうなって思ったりもしたりしなかったり……

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