私の最推しがクラスメイト?! ガチ恋なのをいいことに好き放題やられてるんですが、この超性格の悪いVTuberからどうやって逃げればいいですか.....?   作:顔のない女@人外ものしか書けない人

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第三章 期待の新星、VTuber灯アカリの電撃デビュー 東京編
第71話 東京に到着


 時刻は深夜二時。

 私たちは深夜の毒々しい極彩色に彩られた渋谷の街を走っていた。

 赤信号で停車した刹那、弦巻さんが軽やかに口を開く。

 

「金原さーん!ここで降りるけどいいよね〜?」

「……本当なら絶対に却下なんだけど。まぁ、私以外にもう一人大人が付いているし、好きにしなさい」

 

 何故ここで降りる必要があるのだろうか?

 普通に目的地まで直で行ってほしいと思ったりもしたけど、もう私は流れに身を任せることにした。

 

「あなたたちが何をしに行くのか知らないしどうでもいいんだけど、とりあえず朝の9時になったら連絡頂戴。私はそれまで車の中で寝てるから」

「はいよ〜」

 

 そして信号が青に変わり、金原さんの車は夜の闇へと滑り去っていった。

 

 車を降りた私は凝り固まった体をほぐすように回し、眠らない東京の街並みを一瞥した。

 かつて一度だけ、シオンちゃんのライブを観るために訪れた場所。

 でも、あの時の高揚感はもうどこにもない。

 

 今の私を支配しているのは、重く、鈍い贖罪の意識だけだ。

 

「どうかな茜っち。久しぶりに東京へ来た感想は?」

「深夜帯だというのに人が多すぎです。…………半分くらい減ってくれないでしょうか」

「手厳しい感想だ! だけど今は土曜の3時でおまけにクリスマス前ときた。残念ながらここから数日は人は増えることがあっても、減りはしないよ〜」

 

 聞いているだけで鬱になりそうな補足を無視し、私は本題を切り出した。

 

「それより、何でこんなところで降りたんですか? 面接時間である13時まで、ゆっくりと休みたいんですけど」

「ふむ、そうだねぇ」

 

 彼女は私の手を強引に掴むと、夜の雑踏へと歩き出した。

 

「一旦、服でも買ってクラブでも行っちゃう?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、私は全力で彼女の手を振り払った。

 

「……冗談はそのイかれた髪色だけにしておいて下さいよ。こっちは真剣な気持ちでここにいるんです。というかクラブなんかに行ったらストレスで死んじゃいますよ、私」

「いやいや、こっちも真面目だよ?」

「クラブに真面目に行く人って……」

「――だって茜っちは精神を削ってた方が、その後に出るパフォーマンスが、ぐっと跳ね上がるタイプだと思うんだよね」

「はぁ?」

 

 理解不能な理屈に溜息を漏らすと、彼女は手品のようにどこからか一枚のカードを取り出した。

 

 私の顔写真が載った運転免許証。

 だが、生年月日から算出される年齢は21歳となっている。

 

 これは所謂、偽造された身分証明書か。

 おそらくクラブに入るために用意したのだろうけど、私の分もあるなんて用意周到なことだ。

 いつかこういう機会があるだろうと、彼女に予想されていた事が、だいぶ気持ち悪くも感じた。

 

「思いだしてみてよ。文化祭の時の茜っちは殆ど眠れなかったし、体調最悪だったでしょ〜?」

「そうですね。……プラスでそこら辺の事情を把握してながら、文化祭を楽しみきった貴女が一番最悪で最低ですね」

 

 私はそう皮肉を込めて返すが、彼女はそれを無視して言葉を続けた。

 

「だったら今回も、少しくらいは精神を削ってから行くべきだと思うんだよね。今日は絶対にミスれないガチの本番なんだから!」

「…………貴女って本当にクズですよね」

「あんまり褒めないでよ。……照れる」

「……何で神様は貴女みたいな人を作ったのか、小一時間問い詰めたくなりますよ」

 

 確かに彼女の言う通り今日は絶対にミスれない。

 そして文化祭のあの瞬間、私は間違いなく平常時では到達できない領域にいた。

 

 今あるべき姿は隠キャで誰からも興味を持たれない私ではなく、あの時のように人を騙し、突き動かす私。

 いや、それでだけでは足りない。

 

 今回に限っては万人を惹きつけ魅了し『この人だからこそその振る舞いが許され、正当化される』という、傲岸不遜といっていい態度で、自身以外の全員を下に叩き堕とす、ある種の理想を体現した自分。

 その理想の果てに、今起きている大炎上のソレを完全に鎮火しなければならないのだ。

 

 そういう私になるために、過去に通った自分の軌跡の更に上を行くのも、またアリだったりするのかもしれない。

 勿論心情だけで言えば、嫌で仕方ないのだが。

 

「ふふっ……っていうか神様がいないから、私みたいなのが存在できるんじゃな〜い?」

「神様はいますよ。いてくれないと困ります」

「いや、いない」

「います」

「い〜な〜い!」

「いますっ!!!」

 

 私は弦巻さんとくだらないことで問答を繰り広げながら、偽造された免許証をひったくるように奪い取った。

 

「あぁ、これで今日から私もれっきとした犯罪に……」

「知らないの〜? 茜っち。バレなきゃ犯罪じゃないんだよ?」

「はいはい。…………ついでに服を買いに行く理由は?」

 

 今から買いに行くにしても、絶対にまともな店は空いてないだろうに。

 

「そんなの答えるまでもないっしょ〜?」

 

 ……なるほど。

 そこの意見は完全に私と一致するのか。

 

「ふふっ、確かにそうですね。人を騙すのにハッタリは大事です」

「そういうこと!」

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