私の最推しがクラスメイト?! ガチ恋なのをいいことに好き放題やられてるんですが、この超性格の悪いVTuberからどうやって逃げればいいですか.....?   作:顔のない女@人外ものしか書けない人

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第72話 VTuberが活動名だしてナンパしてくるな

 場違いなほど高価で尖った服に着替え、私たちは重低音が地響きを立てるナイトクラブへと足を踏み入れた。

 

 私はフロアの片隅、最も目立たない場所に座り、周囲の視線を拒絶するようにスマホを弄り続けた。

 

「はぁ……」

 

 ナイトクラブなどというものに、私が行く羽目になるとは予想だにしなかったが……なるほど。

 この場所は本当に嫌な意味で()()()()

 

 例えるならば、絶え間なく頭の中を直接殴られているような気分である。

 それくらい最悪な場所だ。

 

 まずこのナイトクラブという施設そのもの雰囲気が気持ち悪い。

 私が居ていい場所ではないのが一目瞭然だ。

 

「ちょっとお兄さんその程度〜?? それは弱いって、私をお持ち帰りなんてできないってっっ!!!」

「畜生……」

 

 視線を投げれば、弦巻さんが男たちに囲まれながら、完璧な夜の蝶を演じている。

 あぁ……ほんと気持ち悪い。

 

 こっちはこっちで私が一人なのが見え見えなので、蛆のように湧いてくるナンパをさっきから叩き返してるし、その作業でありえないくらい疲労とストレスが溜まる。

 どうでもいい男にキショい眼で見られるというのは、何とも心にくるものである。

 ここにいる男も女も全員死んでしまえばいい――と、来てから小一時間ずっと私は考えていた。

 

「わぁ! お姉さんすっごく可愛いね〜。ずっと一人で座ってるみたいだけど、何してるの?」

 

 スッと横を一瞥すると、茶髪で少しパーマが掛かっているセンターパートのチャラそうなイケメンが横にいた。

 見た目年齢はおよそ大学生と言ったくらいだろう。

 

 というかこれで何人に話しかけられただろうか。

 たぶん10人目とかな気がする。

 服を着替えたのはやっぱり間違えだった。

 

「……心を削る修行をしてるんですよ。ここはいるだけで自殺したくなるので、丁度いい修行場所なんです」

 

 私は目も合わせないままそう答えた。

 三人くらいはこの一言で消えてくれたのだが……

 

「凄いじゃん!かっけぇ!!」

 

 この一言では消えてくれないらしい。

 

「…………」

「死にたくなるついでにさ、俺と一緒に飲もうよ。お酒いっぱい奢るよ〜?」

「遠慮します」

「遠慮しないで!」

 

 そう……こういうキショいノリをしてくる男が、普通にいる場なのだ。

 文化祭の時と違って私が受け身な分、更にダイレクトにダメージがある。

 

 だがこれも、今現在詩音さんが受け続けている痛みに比べれば、とても温いものなのだろう。

 私はここで更に、自分の心を研がなければならない。

 

「おっ、天野シオンちゃんの炎上ツイートを見てるんだ。随分とタイムリーだね」

 

 気づけば彼は隣に座り込み、私のスマホ画面に顔を寄せていた。

 

「勝手に覗いてこないでください。気色悪い」

「もしかして君、シオンちゃんのファン? 実は俺もなんだよね!」

 

 彼は屈託のない笑みを浮かべる。

 

 私は追い払うのも億劫になり、適当な相槌を打つことにした。

 

「そうですね、大ファンと言っても良いでしょう」

「大ファンときた!?」

「ですが私はついさっき、シオンちゃん本人に凄く怒られちゃいました」

「本人に言われちゃったか〜、それは悲しいねぇ。それでそれで?」

「でもしょうがないですよね、私はこの大炎上の一端を担ってるので」

「へえ、面白いこと言うね。……ちなみに君の名前は?」

「藤崎茜です」

「良い名前だ! 俺は宮本(みやもと)流星(りゅうせい)。よろしく!!」

「…………」

 

 こっちは別によろしくしたいわけでは無いのだが。

 気づいたら彼は今までナンパしてきた男の中では、だいぶ話してしまった方かもしれない。

 すぐ振り切れると思ったのに、ちょっと手強いな。

 

「天野シオンを知ってるってことは、勿論ぶいれいん!のメンバーも他に知ってるよね?」

「知りません」

「知らないのぉ?! 例えばシオンと同時にデビューしたシスター・サニーや猫宮ちせりとか、あと最近登録者が爆増中の道明寺 レンも!!?」

「知らないですし興味もありません」

 

 私が突き放すと、彼は大仰に指を振って見せた。

 

「ううん、ダメだよダメダメ。ここは他のメンバーも一旦推してみようよ!」

「他のメンバーとは?」

「例えば――俺とか」

 

 そのセリフのあまりのシュールさに、ちょっとだけ私は笑ってしまった。

 

「それは面白い冗談です。ご自分をライバーだとでも仰るんですか?」

「そうそう、俺はライバーなんだよ。ちなみにVとしての名前は道明寺 レンだ。検索してみれば一発でるからな!」

「へ〜」

 

 私は懐疑的なまま、その名前を検索し、流れてきた配信アーカイブをイヤホンで聞いた。

 すると確かに本人と言ってもいいくらい声が同一のものだった。

 

「なっ、本人だったろ?」

「みたいですね」

 

 この男、面白いかもしれない。

 私が多少なりとも彼に心を動かされたのは、もしかしたら私の未来の職だったから、という可能性もある。

 こういう偶然の出会いは中々に面白いものだ。

 

 ……ライバーがナイトクラブで女の子をナンパしてる点だけは、本当にゲロキショいし自分の中身を晒してまでそういうことをしたいのかと、問いたくもなってしまうが。

 

「っていうかさ、ここマジでうるさいよな。俺も友達に誘われなかったら、絶対に来てねえもん」

「……なるほど?」

「だからさ一緒に家に――」

「――なんしとんじゃおんどりゃああああッッッ!!!!」

 

 誘いの言葉が完結する直前、背後から聞いたこともない、獣のような咆哮が響いた。

 その直後――

 

「ぶべらぁっ?!」

 

 ピコピコハンマーという、その場の空気にはあまりにも不釣り合いな凶器の一撃によって、彼の顔面は勢いよくテーブルへと叩きつけられた。

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