ハッピーエンドの、道のあと 作:駒井亀丸
――ゴールが、見えてきた。
ここまではゴツゴツとした山道を、二人して、杖を突きながら歩いてきた。
しかし先に進んでいた彼女が、そのことを知ると、杖を放り出して、
「いやーっは!」
などと奇声をあげて飛び上がった。
「え、あ! ちょっと! 転ばないでよ!?」
という私の忠告も聞かず、駆け出して鳥居をくぐり抜けてから、いくらかの呼吸の後、ようやく落ち着きを取り戻してから、
「やっと、ここまで来れたね」
雲海と朝日を背に、こちらを顧みつつ、しみじみと言った。
真っすぐな眼差し。あどけない笑顔。切りそろえられた灰色の髪を、冷風が撫で上げる。
凍結防止のフィルターの中に入れられた端末の中で、もう一人の『彼女』も、感慨深げに目を細めていた。
あの頃から変わらないそのすべてを取り戻すまで、どれほどの時間を必要としたか。
「ほい、
感慨に耽る間もなく、追いついた私に、シャベルを差しだした。
大きく息を吐く私に、
「ほらほら、ここからが本番だよ」
と促し、半ば無理矢理に握らせる。
その切っ先を、足下に叩き込む。掘り下げていく。
覚悟は、していたけど。
溶岩が冷えて固まって出来上がった岩肌だ、さすがに二人の細腕だけでは、相当の労力を必要した。
……なお、この行為は、事前に関係各所に頭を下げまくり、現代における最新鋭の技術の掘削道具と原始的な力を掛け合わせて行っております。良い登山者も聖地の巡礼者も、絶対にマネしないでください。
ということで、日が完全に登り切った時に、ようやく手頃な深さを掘り抜くことが出来た。
相当に切り詰めた登山道具をまさぐって、リュックの中から新聞紙にくるまれていたそれを繙き、外気にさらす。
山形に折りたたまれた金属の集合体のようなそれは、大きさといい形状といい、どこからどう見てもタケノコなのだが、私たちにとっては因縁の深い代物だった。
それを、植えるように、そっと穴の中に置いた。
その節々の輪郭が、なおどこかに何かを伝えるかのように、自ら光を放っているかのように見えた。
――けど、きっともう大丈夫だから。
「お疲れさまでしたっ」
「はい、お疲れ様でした」
穴を挟んで額を突き合わされるように、手を合わせて拝む。
赤褐色にくすんだ地肌が、鈍く陽光を照り返す。
それでも、彼女と共に過ごした年月を想えば、相当に状態の良い状態といえるだろう。
……私たちの数奇な運命と生涯の、一体どこを始まりとするかは悩ましいところだけれども。
その数ある始まりのひとつ。輪廻の象徴が、この先の未来の月から落ちてきた、このタケノコ――『もと光る竹』だった。
思い起こす。想いを馳せる。
これまでのこと。これからのこと。その間のこと。そこに関わってきた、人たちのこと。
一つ、一つ。拾い上げるように。