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難産やった……誰だよ鋼くんの性格をこんな面倒くさい設定にした奴。
今回で話し合いを終わらせる予定だったのに、書いてたら8000文字を超えたので分割を決意。
進みが遅くて申し訳ない、次回で話し合いは終わらせますわ。
――司波兄妹は自分たちが隠している事情をどこまで明かす事が出来る?
俺の問いに達也は何も答えなかった。
多分だけど脳内ではどう答えるべきか、本当に話していいのか、話すとしたら何処まで話してもいいのかっていうシミュレーションを高速で回しているのだろう。
深雪さんの方は「なんっう質問してんだてめぇ」と言いたげな厳しい視線を一度こちらに投げてきたが、すぐに俺から視線を外し真剣に悩んでいる様子の兄を心配そうに伺っていたよ。
しばしの静寂。4人の呼吸音だけが僅かに響く中で、九重さんが焦れたのか頭を掻きながら助け船を出して来た。
「ふむ。ちなみに鋼くんは2人の事情はどんな感じだと予想しているんだい?」
その質問本当に助け船のつもりで出しました?火薬満載の特攻船を俺にぶつけに来てませんかね。
「いや話しませんよ。俺が出した予想から返答する内容を決められても困りますし」
「まあまあ、そう言わずにさ」
ニヤニヤ笑うこのハゲうぜぇ。
原作知識が全部合っているかはわからないけど、司波兄妹は四葉家の次期当主筆頭とその守護者。兄は分解と再生を使える非公式戦略級魔法師。妹は兄の為だけに製造された兄の子供さえ問題なく産める完全調整体ってハゲが知ってそうな事と知らなそうな事まで全部を語るぞ。
困る時は一緒だよって自爆特攻してやりたい。絶対にやらないけど。
「はぁ……………仕方ないですね」
話すのは原作知識からの抜粋ではなく、夕方に会社へ行った際に推理物が大好物なうちの社員さんに「新作TRPGのネタとして考えてるんだけど、どう思う?」と司波兄妹の名前等は隠し、バレないように諸々細工をして聞いてみたら「こんな感じですかねぇ」と返答された内容である。
その社員さん。うちに来る前はサイコメトリーちっくなBS魔法を使って非合法の探偵紛いな事をしてたらしいけど、よくもまぁアレだけ絞った情報からここまで導き出せたなと感心したよ。
「まず、大前提として一般家庭の出身というのはあり得ない」
「2人の実力からして間違いなく何処かの家の紐付き。それも数字落ちじゃなくて数字付き」
「達也の魔法に関する深い知識と、深雪さんの魔法力の高さを考えると百家ではちょっと厳しいので、十師族か師補十八家の血筋かなと」
「隠さなきゃいけない事情ってのが庶子か不貞の子かとも思いましたが、それにしては2人が受けて来た教育や訓練がやたら多種多様で高等そうに感じるので、少なくても金銭面で不当な扱いは受けていない」
「なので、当主かそれに近い人物が溺愛してる愛人の子か、姓を明かす事が危険に直結する家の系譜。そんな予想ですね」
まぁ、愛人の子じゃなかったらそんな面倒くさそうな事情を持つ家って四葉家しかないんですけどね。
はっきりと明言してないだけで、ほぼ断定しているようなモノですわ。
ほらみろ。俺の話を聞いた3人とも口元が引き攣ってるじゃないか。お兄様のドン引き顔とかある意味貴重やぞ。
まぁ、俺も社員さんがペンをくるくる回しながら「現実に近い設定で十師族に限定するなら四か九ですかねぇ。他にやりそうなのは七ですが、あそこの当主は過去の女に執着してるフィクサー気取りの半端物ですしぃ」って言い放った時には「原作知識が無くてもわかる人にはわかるんだな」と思わず遠い目になったからね。
というか九重さん。自分から聞いておいてその反応はちょっと酷くないですかね?司波兄妹の状況がそこまでヤベェとは思ってなかったのかな。
「うーん、達也くんと深雪の事だから僕の口からは何も言えないけど……そこまで色々と予想出来ちゃうくらいアレなの?」
「アレで上手く隠せていると思えるなら、俺は
人里離れた山奥で裏ボスしてる若作り黒髪ドリルが「準備は一任するわ」をした結果がコレだよ。間違いなくリザルトで
いや俺を睨んで来ないでよ深雪さん。そういう反応をされたら俺が話した予想が当たってるって認めるようなモノだよ?
達也が頭痛を抑えるようにコメカミを手を当ててるの、多分半分くらいは深雪さんが原因だと思うのだけど。
「鋼が語った予想が間違っているか、それとも正解なのか答える事は出来ないが……」
あ、何やら達也が覚悟を決めたっぽい。もうヤケになってたりしないよね?帰りに「お前は知り過ぎた」って展開になるのはイヤだよ。
「俺と深雪が他人に明かせない事情を持っている事は事実だ。それ故に鋼を過剰に警戒してしまった」
「そこだよ。何故に俺をそこまで過剰に警戒したのさ?百家の人間ではあるけど、俺は別に危険人物でもなければ、日本の魔法社会に影響がある訳でもないぞ」
俺が覚えている限り司波兄妹とのファーストコンタクトは森崎がテンパってやらかした校門のはず。
あの場では深く絡んでないし、実は過去にどっかで遭遇したとかって覚えもない。
「………………ここだけの話にして欲しいんだが」
そう言われても内容によるとしか言えないだろう。何を話す気でいるのさ、深雪さんも心配そうに見てるぞ。
「俺は過去に魔法事故に遭い情動のほとんどが削られた。残されたのは妹を……深雪に関係する場合だけで、それ以外ではほぼ感情が動かなくなった」
原作だと似たような事を告白して来た光井ほのかに話していたな。
本当は事故ではなく母親に人工魔法演算領域を植え付けられたのと、衝動的にマテバをブッパしないように兄妹愛以外の強い情動を消したんだっけ?正直、お兄様のその辺りの設定って割と不思議なんだよね。
人工魔法演算領域ってのは正直理解の範疇を越えてるから除くとして、兄妹愛以外の情動を消したってのはどうなの?消したんじゃなくて深雪さんに集中させてるって方が正しくないかな。
施術したのお兄様が6歳の時でしょ?しかも普通の6歳の子供じゃなく、四葉家らしく戦闘訓練とかを受けてて家族愛すらちゃんと受けていたか怪しい環境にいたお兄様に普通の感情ってのが理解出来てると思えないし、自覚も理解もしてない情動を消し去るとか無理では?いくら四葉家が精神に特化してる家だとしても。
お兄様ちょっと光井ほのかに裸で押し倒されてみない?それでムラっと来たら性欲っていう二次性徴以降に明確に現れる情動が残ってる証拠になりそうだし。
「俺にとって深雪が全てなんだ。だからこそ、深雪に危険が及ぶかも知れない可能性を見過ごせなかった」
情動を削り衝動的に世界を滅ぼさないようにした結果が、妹に何かあると衝動的にヤッてしまうシスコンが爆誕するとは、流石の深夜ママを始めとした四葉家も面々も想定外だったんじゃないかね。
「いきなり重い話をぶち込まれた訳だが、俺を警戒する理由にはなってないぞ?」
ほら、深雪さんを見なよ。さっきまで心配そうな顔してたのに「深雪が全てなんだ」って言葉を聞いた瞬間に目をキラッキラにして達也をうっとりした表情で見てんぞ。
「『
「…………は?」
あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
やっべぇ、普通にソレの存在を忘れてた。
というか消したい過去過ぎて達也の口から出て来る可能性すら無意識に排除してたよ。
なんだよ『
どうしてこう魔法師って連中は中二病染みた二つ名が大好きなのかね。名付けられた本人が喜ぶと思っているのか?恥ずかしさしかないぞ。
「しかし、よく俺だってわかったな。どこぞの馬鹿は声変り前だったとはいえ、女装した俺を最後まで本当に女だと勘違いしてたくらいなのに」
あの馬鹿は素で「君のような幼い少女が頑張っていたというのに、遅くなって本当にすまない」とか謝罪して来たからな。多分、いまでも俺が年下の女の子って勘違いしてると思う。
現地の生き残りから俺に辿り着けるとは思えないから画像か映像が残ってたのかな?
流石にあの混沌とした戦場でカメラが生きてるかどうかまで確認なんて出来なかったから生きてるカメラがあってもおかしくはないけどさ。
敵にも味方にも顔を覚えられたくなかったから嫌々ながら女装したというのに。何たる不覚。
「とある伝手で現場の映像を見る機会があってな、接触型術式解体を使う近接戦闘主体の魔法師だったから印象に残っていたんだ。鋼の事を調べるうちにもしやと思い映像を見直した結果、正体が鋼だと気付いた」
その伝手って、独立魔装大隊って名前じゃないですかね?軍に女装癖のある危険人物ってマークされたりするのすげぇ嫌なんだけど。
「その映像がどんな内容だったのかは知らないけど、そりゃあの時の映像を見たなら俺を警戒する理由は十分だわ」
接触型術式解体で敵の直接的な魔法を無効化しつつ、時には敵の武装を奪ったりして義勇軍が到着するまでひたすら遅延戦闘をしてたからな。
生き残る為に必死だったし、あるのかは知らないけど戦時国際法をガン無視するような手段も幾つか平然と行ったし。
軍とか警察みたいな規律のある組織が絶対に見習ってはいけない性格が悪い戦い方のお手本みたいな映像に仕上がっていたはず。
「師匠から鋼を警戒する必要はないと言われたが、あの映像の相手が鋼だとわかったらどうしてもな」
ある時期からやたらと警戒が増したのは気付いたけど、まさか佐渡侵攻事件が原因だったとは。
さらっとスルーしそうになったけど、九重さんから大丈夫って言われてんのに無視して追加で調べようとするなよ。
「で、結局どうするのさ?昼間に深雪さんへ言ったけど、俺は君ら兄妹の事情とか何処の家の関係者とかまるで興味ないんだけど」
なんか、やっとこさ達也が何で俺を過剰に警戒していたのかとかわかった気がするけど、こっからどうしようね。
もう日付変わりそうな時間なんですけどぉー。
達也はまだまだ元気っぽい。九重さんもかなり楽しそうだ。
なんでこの2人はこんなに元気なのだろうか?俺は帰って寝たいよ。
深雪さん?兄の意見に追従するだけの人の意見なんて知らないよ。達也に任せているのか何も言わないし。何も言わないなら、いてもいなくても一緒でしょ。
「鋼の事を調べるうちに鋼が経営する会社の事も当然知った」
ふむ。そりゃ俺を調べるならうちの会社の事も当然知るだろうね。
別に隠してないし。雫あたりに聞けば「鋼は会社を経営する社長さんだよ」と普通に答えそうだ。
「推測だが、俺と鋼は叶えたい目標の方向性が近いと考えている」
過保護なシスコンと目標の方向性が近いって言われても、喜べばいいのか困るんだけどなぁ。
というか、達也の目標って何さ?深雪さんが平穏無事に日々を過ごす事とかになるんかね。
この時期の達也なら深雪さんが結婚してガーディアンの任を解かれたら四葉家と交渉して静かな環境でゆっくり魔法の研究をしたいとか考えてそうだな。
原作みたく深雪さんの婚約者になって世界を振り回すよりよっぽど似合ってる気がしてしまうのはどうなんだろう……。
「俺は『重力制御型熱核融合炉』を実現させ、魔法師を兵器という役割から解き放ちたい。魔法という技術は軍事の為だけにあるのでなく、平和の為に使うことが出来るという事を証明したいんだ」
俺の目標と近いって掲げられたモノの高さがおかしくないですかねぇ。
達也には俺がそんな高尚な目標を掲げる奴に見えてんの?色々あって疲れから考え方がバグったりしてるだろ。
魔法師の地位向上の為に加重系魔法の技術的三大難問の1つである重力制御型熱核融合炉の実現を目指している奴と、小さい会社をひぃひぃ経営してる奴の目標が近いとか、どういう事だよ。
いや本当に、どうしてそうなった?
『
佐渡侵攻事件の際、真っ先に狙われた研究施設で侵攻軍と守備隊が激しい戦闘を行っている所に現れた謎の美少女()。
人形のような無機質な表情、糸で吊られているかのような不可解な動きで侵攻軍を翻弄し、一条家が中心となって結成された義勇軍が研究施設に到着するまでの時間を見事に稼いだ。
生き残っていた研究施設のカメラに少女の戦闘時の様子が記録されていたが、あまりの凄惨さから日本軍が全て回収……現在は日本軍の魔法師ゲリラ対策の教材として使用されている。
鋼くんがたまたま佐渡にいたのはハゲ(黒幕妖怪)からの推薦。
近接戦闘が主体になる鋼くんには元第一研の研究内容が役に立つだろうという完全なる善意であった。
正確な日付までは覚えてないけど、原作通りなら佐渡侵攻があるんじゃなかったっけ?何とか理由を付けて断りたいけど、じぃさんがわざわざ推薦してくれたのを断れる理由なんてないわ。鋼くんは泣いた。
出来る限りの準備を終え、金沢にある元第一研などを巡り……最終日に佐渡の研究施設を訪れた際にドンピシャで新ソ連の侵攻を受けた。鋼くんは発狂した。
研究者だけじゃなくて民間人も多くないですかね!?ここが避難先?避難がまだ間に合ってないのに敵がもう目の前まで迫ってる!?は?敵は積極的に女子供を狙ってる??やろぉぉおぶっくらっしゃぁぁぁ!!
結果、原作より日本人の死者は減りましたとさ。
後日、傷は多くあれど五体満足で無事に帰って来た鋼くんの姿に「鋼はワシが育てた」と後方支援者面をしていたハゲがいたらしい。
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