鋼は錬金術師   作:むつきばな

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何回か書き直したからちゃんと書きたい内容になってるか不安だけど、これ以上書き直すのしんどいので投稿。



入学編らしいよ Ⅺ

 

「随分とまぁ壮大な理想だな」

 

「鋼は違うのか?BS魔法師や魔法力が低い魔法師を積極的に雇用している会社を経営しているんだ。俺と同じで魔法の平和利用や魔法師の兵器からの解放を目指していると考えたのだが」

 

そこまで立派な目標なんて持ってねぇよ。

 

最初はただ、魔法が使えるのに魔法師として生きられない連中がどうなるかを聞いて、それに腹が立ったから動いただけだからな。

 

実際、両親とじぃさんが協力してくれてなければ会社を設立するなんて出来てなかっただろう。当時の俺は世間的にはただの中学生のクソガキで魔法師社会では百家・十三束家という一応は名家の嫡男ではあるが、そんなの一般社会では関係ない。

 

社長をやってはいるけど、普段会社を上手に回してくれているのは社員の皆だ。幸い社員の皆は慕ってくれているし支えてもくれるが、取引先とか財界のパーティーに社交で出るとお飾りの学生社長だと侮られる事のが多いからな。

 

「それで、その立派な目標を俺に告げてどうしたいのさ?まさか、似たような目標を掲げているはずだからこれまでの禍根は全て水に流して仲良く協力していきましょうとか世迷言でも吐く気か?」

 

「そんな事を言える立場ではないのは俺も理解している。鋼へのこれまでの態度、特に雫たちへの件は俺も深雪も猛省し、二度と繰り返す事はしない」

 

本当かな?まぁ、基本的に達也も深雪さんも真面目だし信じてもいい気はするけど。

 

それに、本来の被害者は雫たちだから俺がいつまでも言うべきことではないか。雫と友達だと言ったにも関わらず、もう一度見捨てたら絶対に許さんけど。

 

「いつかで構わない。鋼から俺たちへの信用や信頼が一切ないのはわかっている。だが、これからの俺たち兄妹を見て鋼が俺の目標に協力してもいいと判断した時には協力してくれないか?」

 

「達也なら普通に重力制御型熱核融合炉を実現出来そうだけど?俺の協力とか別に必要ないだろう」

 

親父さんの再婚相手が魔法式を保存可能なレリックを持って来るって運の良さがあったのだろうが、レリックが無くても達也なら10年以内に実現可能な所まで持っていきそう。

 

「師匠が、この場を相互理解の為に整えてくれた理由が理解出来たんだ。鋼と直接言葉を交わした事でわかった。俺や深雪には鋼のようなヤツが必要だ」

 

あらやだ、なにこれ俺って口説かれてんの?いくら俺が女みたいな顔してるからって男の相手はNGだし、ブラコンを極めてる妹の相手はもっとNGだぞ。

 

バカな事を考えてないで、とりあえず最後まで聞いてみよう。

 

「俺と深雪は家の事情もあって、これまで同世代の人間と自由に友人関係を結ぶことすら難しかった。それもあって、俺もまだレオたちと友人としての距離感を掴めない時がある」

 

そういえば、君らって家から飛び出たばかりの一般人初心者でしたね。中学校時代はどうしてたんだろうか?たしか、普通の中学校に通っていたみたいな描写が原作にあった気がするが……流石に覚えてねぇな。

 

「そして、俺は直して欲しいんだが深雪は俺に否定的な意見を出さない。深雪も、容姿と実力から他者に感情的な言葉を出されることはあっても、真っ向から理論的に否定をされることはなかった」

 

……それ直して欲しかったんだ。真面目な話をしているはずなのにちょっと笑いそうになったわ。

 

「だからこそ、俺たち兄妹に筋が通った意見をハッキリ口にしてくれる鋼の存在がありがたいんだ」

 

うぅん、達也の言いたいことはわかる。

 

なろう原作の主人公なのに、何してもちやほやされるテンプレなろう系主人公にはなりたくないってことだな。

 

それだと俺主人公に何かある度に嚙みつくかませ犬ポジになりそうだけどなぁ……まぁ冗談はさておき。

 

しっかし、達也って本当に高校1年生か?人生二周目(転生者)の俺よりしっかりした考え方してるよね。

 

今更ながら年齢だけなら達也も深雪さんも子供なのよな……達也たちが俺に求めているポジションって、本来なら親がやらなきゃいけないポジションでは?ってツッコミを入れたかったけど、我慢しよう。

 

「でも、それ俺にメリットがなくね?友人でもない奴のお目付け役をやってくれと言われて、対価もなく了承する奴はいないぞ」

 

お兄様と愉快な仲間たちだとまだ友人として距離を測り切れてないし、何でも言い合える仲になれるか不明だから俺という口の悪いメスガキ的な存在を貴重に考えているのはいいが、俺がわざわざ付き合う必要はないのよ。

 

俺に頼らず友情を積み上げ、何でも言い合える親友という関係性になれるよう頑張って欲しい。

 

「俺がFLT(フォア・リーブス・テクノロジー)に所属しているトーラス・シルバーだと言ってもか?」

 

ちょ、おまっ!?

 

それ流石に他人に言ってもいい情報じゃないですよね!?深雪さんも九重さんも愕然とした顔してるぞ!!

 

シルバーの情報って四葉家でがっつりガードしてるんじゃなかったか?それを俺に話すとか流石に頭おかしくなってませんかねぇ。

 

「トーラス・シルバーって正体不明なCADの天才様か?冗談も程々にしろと言いたいが、達也がこの場で嘘を話す訳もないか……というか、ソレって俺みたいな他人にバラしていいのか?」

 

「ダメだろうな。バレたら確実に色々言われるが、バレなければいい。鋼も誰かに言うつもりはないだろう?」

 

確かに言うつもりはない、まだCAD関連で異常さを見せつけてないから誰かに言っても信じて貰えないってのもあるが、俺がソレを知ってるって四葉家にバレたら黒羽姉弟辺りが夜道で「こんばんは、死ね」されてもおかしくない情報をぶちまけて来るな。

 

黒羽姉弟だけなら返り討ちにするが、四葉家に本格的に狙われるようになったら「はがねはもうおしまいです」って罠に入っちゃったタヌキみたいな顔になりそうだわ。

 

「自分で言うのもアレだが、俺には利用出来る価値がヒトより多くあると思っている」

 

そうですね。謎のCAD職人トーラス・シルバーってだけでも利用価値は半端ないですからね。俺もFLTというか達也が飛行魔法発表するの原作知識で知ってるからFLTの株持ってるくらいだし。

 

「だから、まず俺を利用してくれないか?友誼を結べるかは、それから判断して欲しい」

 

いやさぁ、何で達也から俺への好感度というか信頼度が高いんだろうか。

 

でも絶妙に上手い提案ではあるんだよなぁ。

 

やらかした事もあるからいきなり仲良くするのは無理。であれば利用相手として自分たちを理解させ、問題がないなら利用相手から協力相手にさせ信頼関係を構築していく。

 

長い目で見れば互いに利益が出るし、本当に悪い手ではないんだけど。

 

「嫌、というか無理。いまの考えのままの達也に協力とか絶っっっっっ対に無理」

 

だが、断る。断固として答えはNOなのですわ。

 

「それは何故ですか、十三束くん?」

 

お兄様がここまで譲歩してるのに、何故断るのですか?って副音声が聞こえてきそうな顔だね。深雪さん、さっきまでの達也の話聞いてました?まぁ、いいけど。

 

「だって、達也は背負う気がないでしょ?」

 

んー、よくよく考えるとこういう部分が達也に気に入られたのかね。

 

探せば俺以外にもいそうだけどなぁ……いなさそうだから信頼度が高いのか。これほどいらないフラグもねぇわ、さっさと折れろ。

 

「達也の目標は立派だと思う。これについては否定はしないし、是非とも頑張って欲しいと素直に思うよ」

 

これは本音。重力制御型熱核融合炉の実現を目指すなら諦めずに頑張って欲しい。

 

「例えばだけど、達也が責任者をしている研究チームが重力制御型熱核融合炉を見事に完成させ、後は世間に発表をするだけの段階まで持って行けたとしよう」

 

例え話にしてるけど、現実でもその状況まで下手すると数年以内に辿り着けるってなると、本当に達也の才能と努力と運は恐ろしいよね。主人公補正とか言ってはいけない。

 

「準備も順調に進み、もうすぐ式典が行われる。式典の当日には政界、経済界、魔法師界、それぞれの重鎮も来賓として参加してくれる事となった」

 

実際に重力制御型熱核融合炉が完成したら経済への影響だけでも広範囲に多大な影響が出るから、各界の重鎮は無視なんて出来ないし、式典にも間違いなく参加するだろう。

 

「ところが、式典の直前に深雪さんが重力制御型熱核融合炉を発表されると困る勢力に襲撃され誘拐されました。そうなったら、達也はどうするよ?」

 

聞くまでもない。間違いなく全部を投げ出して自分で助けに行くだろうな。

 

周囲がどれだけ精鋭部隊を整えても、何よりも優先して捜索し救出に当たる。いまから行われる式典に達也の存在は必須であり、この式典の次第で魔法師の未来も国も明日も変わる。

 

だから、研究チームの責任者である達也は式典を優先してくれと言われても達也は振り切って深雪さんの元へ行くだろう。

 

「背負う気がないって言葉の意味を理解出来た?」

 

理解してくれてると嬉しいけど、どうだろうな。

 

「立派で素晴らしいキラキラした目標ってのはさ、誰かの人生を容易く左右するんだよ。達也の計画に賛同した魔法師、研究・開発資金を提供してくれたパトロン、国策として利用出来るからと計画を許可してくれた政治家の面々」

 

他にも、関係者の家族や大切な人。夢に理想に信念、利用価値なんかも追加していい。

 

「各々が抱える事情や思惑は違えど、司波達也の計画に賛同し賭けてくれた人々の過去と現在と未来をまとめてゴミ箱に叩き込む事になるとしても達也は躊躇わないでしょ?深雪さんだけが全てだと言ったのは達也なんだから」

 

10000人の他人より1人の身内が大切だってのは理解出来る。俺も同じようなタイプだからね。

 

深雪さんを兵器扱いされたくないから世界を変えたいと言わず、魔法師を兵器という役割から解放したいとカッコいい事だけ言ったのだから、背負うべき責任を投げ捨てるのは許されないんだ。

 

建前なぞ使わずに、深雪さんが兵器として扱われるのは嫌だし、俺も兵器として扱われたくないって言えば……俺も少しだけ対応を変えてたかもね。

 

達也はもっと我が儘になってもいいと思うのだけどね。本人を取りまく環境と、本人の性格上きっと言ってもいい場面でも言わなそうだけど。

 

誰かの人生を背負う責任ってのは、俺も会社を経営してから理解させられた部分だから。俺も出来ているとは胸を張っては言えないけどさ。

 

「世界を変えたいなら個人は切り捨てろ。個人を優先したいなら変えるべきは世界ではないよ」

 

というか、達也はいちいち考え方が大仰なんだよね。

 

四葉家から抜け出す為とはいえ、何でこんな世界規模で影響が出ることを考え付くのさ。

 

ここまでの事を考えないと抜け出せない四葉家の沼が深すぎるのかね……達也ってマテバの件もあるから、結局は自由の身にはなれない気がするが。

 

さて、もういいでしょ。

 

頭使ったから疲れたし、眠いんですわ。

 

俺の言葉はちゃんと届いていたようで、深雪さんは俯いて悩んでるっぽいし、達也はゲンドウポーズで考え始めちゃったから終わりにしましょう。

 

九重さんが何も口を挟まなかったって事は、ハゲたちの思惑からズレなかったって判断していいよね。

 

「何度も言ったけど、俺は君ら兄妹の事情についてはどうでもいい。達也がトーラス・シルバーってのも、世間に公表されるまで俺は誰かに話す気はない。謝罪も受けたし、同じ学校に通う同期としてなら対応はするけど……達也の個人的な目標やら何やらに付き合う気はないよ」

 

ちゃんと謝罪もされたのだから、あくまで同じ学校に同い年で入学した同期としてなら、相手をするのも全然構わないかな。色々と引きずって相手をするのは疲れるからね。そこはきっぱりと割り切ろう。

 

これで家の事情抜きに敵対する事を選ぶなら九重さんの顔に泥を塗る事になるから、流石にそれはないと信じよう。

 

「九重さん、流石に今から帰るの怠いんで泊めてくれません?」

 

もう1時過ぎちゃったから夜が明けるまでの数時間だけ仮眠が取れる場所を貸してくれませんかね?

 

司波兄妹が帰ったらこの部屋でよければ使っていい?シャワーも貸してくれる??

 

それはマジありがてぇですわ。

 

 

 

⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎

 

 

 

『して、首尾は?』

 

「概ねこちらの思惑通り、ですかね」

 

『四葉の兄妹に楔は打てたということか』

 

「鋼くんは同年代の子供にとっては中々強烈ですからね。一時はどうなるかと思いましたが、何とか修正出来ましたよ」

 

『国土を守護する力は必要ではあるが、制御出来ずに国土を焼く力など不要であるからな』

 

「その点は同意しますよ。達也くんの楔が深雪くんだけというのは厳しい。あの兄妹はもっと他者を見て、知るべきですから」

 

『四葉が知れば納得せんだろうがな』

 

「そこは仕方ありませんよ。彼らなりに制御出来ていると考えているのでしょう」

 

『鋼は察していると思うか?』

 

「兄妹が四葉家だという事は間違いなく。こちらの思惑については不明ですが」

 

『ふむ。まあよかろう』

 

「兄妹が四葉家だと気付かれたのはよろしいので?」

 

『四葉の事情だ、我々には関係ない』

 

「そうですか。しかし、閣下は鋼くんを随分と気にかけますね」

 

『鋼には鋼の利用価値がある。あやつの面白い所は利用されている事を把握した上で自分の要求を通す所だ。見ていて飽きぬ』

 

「左様で。まぁ、面白い子なのは同意しますが」

 

『四葉の兄妹については任せる。管理可能な範囲から外れぬなら好きにさせて構わん』

 

「承知。また報告を致します」

 

 





すげぇ身も蓋もない言い方をすれば、鋼くんはお兄様から乙女ゲームでいう所の「俺に意見するなんて面白れぇ女(顔)だ」って扱いをされてる(嘘)


実際は、まともな家庭環境ではなかったお兄様にとって、自分と妹を(お兄様基準で)真っ直ぐに叱ってくれる人なので鋼くんの信頼度が無駄に高い。
実は桜井穂波と鋼くんを重ねて見ているのだが、お兄様は全く気付いていないし、自覚もしてない。
桜井穂波の存在はお兄様にとってある種のトラウマなので、同級生の見た目女子な男に亡くした姉代わりの人を求めるなとか言ってはいけない。

鋼くんは「学生として学業の範囲なら相手をしてやる」、「魔法師って主語を大きくするなら、妹以外の事も考えられるようになってから出直してこい」と突き放した訳だが、そういう風にちゃんと相手をしているから更に気に入られている事にはあんまり気付いていない。

最後のハゲたちの会話。

『「計画通り」』



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