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『全校生徒の皆さん!!!!』
うっさ。
耳がおかしくなりそうな爆音が校内にある全てのスピーカーから響き渡る。
本日の授業も全て終わり、これから部活や家へと向かう準備をしていたクラスメイト達が騒ぎ出すのを横目に耳を塞ぐ。
『し、失礼しました。全校生徒の皆さん!我々は――』
今度はきちんと調整された音量ではあったけど、周囲はさっきの爆音の影響が残っているのかちょっとまだ騒がしい。
スピーカーから聞こえて来るクソださネームを名乗った団体は、学内の不当な差別を許さないぞぉーと勇ましく語っているが、その情熱をもっと別の方向に持って行けなかったのかね?
ふと、『世の中に不満があるなら自分を変えろ。それが嫌なら、耳と目を閉じ、口を噤んで孤独に暮らせ』という
何を訴えようが学校側に差別を是正する気がないのは見えているのだから、高校の内は不満を飲み込み自身の能力を淡々と磨いて国立魔法大学なり防衛大学校への進学を目指せばいいのだ。
なにせ、
それは嫌だ、かと言って何もかも諦めるのも嫌だという我が儘さんは、一科生が二科生を差別してる現場を複数撮影してマスコミと教育委員会に持ち込み、ついでにネットの海にでも放流すれば自分たちが差別されているという環境は変えられるだろう。
変わった環境が、この我が儘さんが望む形には多分ならないだろうけど。
『我々はこの要求が』
あ、放送切れた。中途半端な切れ方だったから放送室の電源を無理矢理落としたか、放送室以外から遠隔で放送を切れるような仕組みがあったのかね。
しかし、テロ屋は何を考えてこんな事をやらせたのだろうか。
原作だと一高へ襲撃を仕掛けたのは図書館の特別閲覧室に保管されてる秘匿資料が目当てみたいな感じだったけど、そんな物を手に入れてどうするつもりだったのか。
非合法組織や海外に売っぱらう?資料に高値が付く保証もないし、資料に高値が付くって知っていたなら資料の内容をテロ屋に流せる奴が一高内に潜り込んでるって事になるのだけど。
特別閲覧室って生徒だとそれなりの理由がないと入室許可が降りないから、許可が降りやすい教員が情報を流した事になるが、魔法科高校で教員やってて反魔法師団体の思想に共感するかなぁ……金で釣られたか、弱味を握られたとかかね。
いざ資料を入手したとして、売買する相手との交渉はどうするつもりだったのか。
中華街に何とか出来そうなドブカスみたいな声をしたヤツがいるが……ヤツがテロ屋に指示をしてたならこんな雑な事態の動かし方はしない気がするけど、なんか違和感があるんだよなぁ。
洗脳ミスって洗脳された生徒が要らない熱意を出して突っ走ったのかな?それならありそうだけど。
テロ屋のトップである司何某の拙い洗脳だとコレが限界だったのかね?剣道小町の
1年近く美少女を洗脳しておいてナニもしてないって無能と不能しかいないので?その美少女のパパは元軍人で現在は政府の良ポジにいるから脅しに使うのも最適だったのに、ソレすらもしてないし。
何というか、全部が行き当たりばったりで中途半端なんだよなぁ。
一高の近くに拠点を構えて銃火器やら何やら準備してたくらいだから襲撃をする計画は以前からあったのだろうけど、放送室ジャックから公開討論会まで2日だよ?どう考えても作戦の詳細を練る時間は足りないでしょ。
「もしかして……秘匿資料は実はどうでもよくて、一高を襲撃する事が目的だった?」
うわぁ、ありそう。それなら色々と納得出来る部分が多いわ。
生徒と数少ない教員だけで撃退出来る程度の人数と武装で襲撃を仕掛けた理由も、わざわざ一高から近い廃工場を拠点にして待ち構えた理由も説明が付く。
「これ司何某やブランシュを使い潰す気だな、人の心とかないんか?」
亡霊に付き従って人間半分辞めてるようなドブカスだから人の心がなくても別におかしくはないか。
んー、これ予想が合ってたらめちゃくちゃ面倒な事になるけど、原作知識ありきの予想だから対処が出来そうな人に相談が出来んぞ。
実際に襲撃が起きたらどうにか予想として話す事が出来そうだけど、襲撃が防げないんだよな……詰んでない?
「嫌だなぁ、頼むから外れてて欲しいわ」
とりあえず、色々と情報を知っていそうな人の所に寄ってから帰るか。
あの人には借りが幾つかあるから、お願いすれば副業の情報くらい吐いてくれるでしょ。
「鋼は差別についてどう思う?」
これからの事を考えていたら、雫と光井さんがこちらに来ていた。深雪さんの姿はないから、無許可で放送してた連中を取っ捕まえに行ったのかな?
不安そうな顔をした光井さんと、どうでもよさそうな顔をした雫の対比が凄いね。
しっかし、何故に俺に聞いて来るんですかね……まぁ、いいけど。
「十師族の当主が会議してる所に「同じ魔法師なのに差別は良くないですよね!皆さんもそう思いますよね!!」って数字落ちの魔法師を連れて行って叫べるくらい差別を無くすという覚悟が決まってたなら、感動して賛同してたかもね。学内の差別だけを訴えてるこの放送をしてる連中にそんな覚悟はないだろけど」
十師族が統べてて
国家の行く末を左右する任務に失敗したとか、魔法を使って重犯罪を犯した本人の姓をはく奪するなら理解出来るけど、相応しい研究成果を出せなかったとかって理由だけで家の名誉を落とすのが数字落ちって制度だ。
とある家は「うちの研究では他人を操るのはタブーなのでダメ」、「他人を操れるのは精神干渉系に見えるのでダメ」とかって理由で数字落ちさせられてるし。これについてはマジで理解出来ん。
それ言い出したら精神干渉系の魔法を研究してた四の研究所なんて丸ごとタブーの塊になるし。そこの研究を受け継いでる四葉家は存在自体が許されない家にされるよね。
研究所同士で成果のやり取りとかしなかったのかな?うちの研究所で出た結果からそちらの研究所のが合ってると思うので移籍させたいのですけどー、とか普通はやるでしょ。
やってなさそうだなぁ……三から七に移った
魔法師の家に転生して魔法師として育てられて来たけど、未だに魔法師って存在は本当によくわからん。
「鋼は相変わらずだね」
どういうコメントよ。雫の中での俺は一体どんな人物として認識されているのだろうか。
光井さんは苦笑いというか若干引いていたけど。人がまだいる教室で数字落ちの話題を平然と出したから仕方ないか。
2人はこれから部活に行くとのことなので、また明日と挨拶をして教室から出て行くのを見送る。
さて、んじゃ俺も行きますかね。
「こんにちは、遥さん。ちょっと情報を下さい」
という訳で、やって来ましたカウンセラー室。
俺の前には相変わらずの普通の服装をしているはずのに、何故かスケベにしか見えない魔性の女であるカウンセラーの小野遥先生がジト目を俺に向けていた。
「鋼くんは私の仕事をどっちも知ってるでしょ?どっちも守秘義務があるから教える事は出来ないわよ」
ふむ、相変わらず俺の心にドストライクな声である。
今度「はるかかいじゅうじゃないもん」とか「もちろんよだよ」とか言って貰えないか頼んでみようかな。
「遥さんの副業である、初心な男子高校生の性癖を捻じ曲げる仕事じゃない方の情報を下さい」
「そんな事してないわよっ!鋼くんは私を何だと思ってるの!?」
ハイネックの縦セーターでデカパイ強調して、更に白衣を装備した全身性癖捻じ曲げウーマン以外の何者だというのか。
そんな性癖捻じ曲げデカパイ美人が親しみやすいニッコリ笑顔で真剣に悩みとかを聞いてくれるのだからワンチャンあるんじゃないかって勘違いする奴が出ない訳ないでしょうに。
男子高校生の美人に対する耐性の低さを舐めていらっしゃる?遥さんが胸の下で腕を組むだけで今夜のオカズにされましてよ。
九重さんに「遥くんに荼枳尼天関連の技術だけは絶対に教えられないね」って言われる程度に天然でやばい人だというのに、本人はまるで自覚がないし。
「酒に酔った勢いで中学生を性的に襲おうとしたり、狙ってた男を貧乳の女に奪われてヤケ酒した挙句「30歳までに結婚出来なかったら愛人でいいから私を貰ってぇー」って中学生に泣き付いた人」
「き、きおくにございません」
嘘つけ。酒を飲んだ翌日に二日酔いとやらかした記憶が残っていたせいで頭を抱えてる姿をこっちは何回も見てるんだぞ。
遥さん、酒に弱い訳じゃないんだけど……ある程度酔いが回ると飲む酒の度数を一気に上げる悪癖があるんだよなぁ。
本人もその悪癖は自覚してるから酔い潰れても問題ない面子と飲む時にしかやらないようにしてるとは言っていたが、何故か俺がいると俺に被害が集中するし。
「まぁ、それは置いといて。真面目に言いますが、公安が何処までブランシュを調べているか教えてください」
「それこそ教えられる訳ないでしょ」
知ってた。そりゃ普通は教えてくれる訳ないですよね。
でも、今回は教えて貰わないと困るのですわ。
此処に来るまでの間に七草先輩から「明後日、一科生と二科生の事で学校に不満を持っている生徒たちと公開討論会をする事になったからちょっと手伝って」って連絡が来たからブランシュに襲撃される可能性が高いのよ。
「うちの社員の友人がブランシュで事務の仕事をしてるらしく、つい先日その友人から「帳簿の整理をしていたら結構な金額の使途不明金を見つけてしまった。好奇心からちょっと探ってみたら明らかにヤバい物を大量に仕入れているっぽい。どうしよう助けて」みたいな内容で連絡があったのですが、社長どうにかなりません?って相談されまして」
この間うちの社員から相談された厄ネタがこれである。まさか、ブランシュに知り合いがいるとか予想も付かなかったよ。
ブランシュは公安にマークされ報道規制などで徹底的に存在が隠されているが、表向きは反魔法国際政治団体なので普通に裏の非合法な活動に関わっていない人も所属している。
社員の友人さんは表の業務用に雇われた事務員らしく、本当にたまたま裏帳簿的な物を見つけてしまったらしい。
「既に友人の方はブランシュから逃げさせて信頼出来る筋に保護して貰っていますが……これ逃げる時についでに持ち出して貰ったデータの一部です」
オフライン専用の端末にデータを表示させて遥さんに渡す。わかる人が見ればわかるのだけど、大量に仕入れているヤバい物って銃火器とか爆発物っぽいのよね。
当然ながら遥さんもわかる方の人なので、端末に表示されたデータに一通り目を通すとすっごい渋い顔になった。
「ブランシュの下部組織であるエガリテに所属してる者たちが行動を起こし、公開討論会が開催される結果となった。生徒の多くが講堂に集まり、校内の目が薄くなる絶好の機会に武装を揃えてる親組織が何もしないっていうのは……楽観的な考えですかね」
「一高に襲撃でも仕掛けて来るっていうの?流石に有り得ないわよ」
ところがどっこい、かなりの確率で襲撃に来ちゃうんですわ。
「備えあれば憂いなしって言葉もありますからね。やれることはやっておきたいので」
遥さんは目を伏せてちょっとだけ考えると、鍵のかかったデスクから端末用のデータカードを取り出すと俺に渡してくれた。
先程のオフライン専用端末にデータカードを読み込ませ、入っている情報を大雑把に流し読みしていく。
んー、やっぱりカウンセラーの仕事として一高の生徒であり洗脳を受けているであろうエガリテの構成員の情報が多いか。お、ブランシュが拠点にしてる廃工場の情報もあるやん。
「どうするつもり?」
「流石に軍に伝手はないので、既に相談を入れてる知り合いの刑事さんに頼みます。身内から可愛がられている
流石に証拠としてはまだ弱いけど、あの人も軽度であるがシスコンの類なので何とかしてくれるでしょ。
たまたま一高付近を巡回してたら謎の武装勢力に一高が襲撃されてたので応援呼んで介入しますくらいは軽くやってくれそうだからね。
「鋼くんからの情報に私が報告してる情報を合わせても、
廃工場に突入捜査とか出来たらよかったのだけど、構成員や武器の総数が不明な状況だと動けないよね。
あの廃工場、一応正式な手続きでブランシュに購入されてる私有地だし。
そういうギリギリでグレーみたいな情報操作だけは何故か無駄に上手いんだよなブランシュ。この辺は中華街のドブカスの采配なのかね。
「十師族の生徒会長と部活連会頭に情報は渡すの?」
「俺の方の情報だけは渡す予定です。遥さんの情報まで渡してしまうと、何も気にせず縄張りを荒らしそうなので」
原作だとこの辺が不明なのよね。
テロリストが学校への襲撃して来たのに流石に警察とかに介入させないってのは不可能でしょ。
お兄様が「壬生先輩を家裁送りにしてですか?」と言ってたけど、重要参考人の1人である壬生先輩を校内で生徒と養護教諭がちょっと取り調べしただけで有耶無耶にするのは無理では?
カチコミした廃工場の後片付けは十文字家が担当したのだろうけど、元々ブランシュを担当してた公安に情報共有とかちゃんとしたのかね。
こいつらがブランシュの構成員です。リーダーは抵抗したので腕ぶった斬りましたがちゃんと生きてます。あとよろしく。って感じで警察か公安に引き渡して終わりにしてないよね?してないといいなぁ。
こういう部分に関しては十師族は信用できん。特に七草家と四葉家を筆頭に法律無視して好き勝手やるから、マジで十師族は信用できん。
「まぁ、何もなければソレでいいですよ。俺がやってるのはあくまで備えですから」
備えたの全部無駄でした。何事もなく公開討論会も終わりましたってのが理想なのよ。
実際はあんまり平和には終わらなそうだなぁ……ほんと魔法科世界はクソ。
「あと5年したら私を貰ってもらう予定なんだから、無茶だけはしないでね」
「いや5年もあるなら同年代で彼氏を探しましょうよ」
素直に心配してますって言えばいいのに、何故に神妙そうな顔でとんちきな事を言い出すのさ。
というか、流石に遥さんの攻勢にあと5年も耐えられる気がしないのでマジでさっさと彼氏を見つけてくれませんかね?既成事実が怖いんすよ。
女みたいな顔をしてるけど、俺も健全な高校生なので普通に性欲ってあるんですよ?いや、攻勢を強めれば落ちるって意味ではなくてですね。
ちょ、遠隔で部屋のカギを閉めないでくれますか……ここ学校ですよ、何で白衣を脱いだ!?
頑張って逃げた。めっちゃ舌打ちされた。
小野先生はハゲ(住職)に中学生の時に紹介されてる知り合い。
師匠から紹介された鋼くんを最初は不思議な子だなと思っていたが、関わるうちに脳を焼かれ、この子って将来有望なのでは?9歳差……ギリ行けると暴走した。
別に愛人でも構わないし、年齢差があるから愛人でも十分だし、むしろそっちのが良いのでは?とか考えてる。
中学生となり保護者役なしでも大丈夫と親を説得し、ソロでのキャンプを楽しんでいた鋼くんの前に時々現れては稽古をする対価に肉と酒を奪っていくダメな大人2号。ちなみに1号はハゲ(住職)。
で、鋼くんから奪った肉(割と良いお値段)を肴にすると酒が進むらしく……大体酷いことになる。
(酒を飲み過ぎたせいで)頬を赤く高揚させ、若干目が潤んだ状態で鋼くんをあすなろ抱きし、自慢のデカパイを背中に押し付けながら「いまなら何をされても許してあげるよ」と耳元で囁いた事さえある。
弟子がこの状態になるとハゲ(師匠)は意味深な笑顔を浮かべ、無意味に隠形を本気で使い弟子のポケットに薄いゴム製品を仕込んでからひっそりと帰っている。悪い大人である。
「俺は人生二回目だから耐えられた。人生一回目だったら我慢出来なかった」
鋼くんは、とある人の婚約者が正式に決まるまではよくないよなぁという考えなので……小野先生の攻勢が始まってから現在まで何とか我慢が出来ているので清いままである。
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