鋼は錬金術師   作:むつきばな

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九校戦編スタートですわ。

九校戦は長いので重要じゃない所はあっさりさっくりと進めていきたい。

念の為タグに優等生とキグナスを追加しました。



九校戦編ですって 1

 

7月に入り夏らしい気候になりつつある中で、一学期の期末試験が行われた。

 

魔法科高校では中間試験はなくて期末試験のみ実施されるので、試験の回数が少ないと喜ぶべきか一回の試験で出題される問題の範囲が広いと嘆くべきかは人それぞれだろう。

 

ちなみに、試験は筆記である理論と魔法を実際に使う実技で評価される。

 

結果はまぁ……こんな感じ。

 

総合順位が1位深雪さん、2位が光井さん、3位が俺、4位が雫、5位が森崎といった面々。

 

俺は勉強が出来る方なのです。まぁ、実技試験の内容が今回は当たりだっただけなのだけどね。

 

自分から5m離れた位置にある対象に魔法を使え、みたいな内容だったら一年生200人中で200位になるからなぁ……こればっかりは実技試験の内容次第なのですわ。

 

そういえば、遥さんから聞いたのだけど総合順位で1位~5位をA組が独占したことで教員連中が頭を抱えたらしい。ざまぁ。

 

入試の成績で各クラスが平均的な実力になるように組んでいたはずが、ここまで偏ったのが予想外だったらしい。

 

雫とか総合順位が発表されたとき、俺より総合順位が下だったのをめっちゃ悔しがってたな。

 

実技の結果は俺より上だったのだけど、雫は割と大雑把というか興味がない事は最低限しか覚えないので理論が俺より下の順位となり、その影響が総合順位の結果として現れていた。

 

俺は実技の内容で成績がかなり左右されるので、理論で点数が確実に取れるようにしてるのですわ。

 

「鋼のクセに生意気」とか「次は負けない」とか言われたけど、もう少し魔法工学とかの苦手分野にも興味を持てと返しておいた。

 

雫に甘々な親父さんが雇ったプロにCADの調整とか丸投げしてるから、魔法工学に関する知識が薄いんやぞ。

 

んで、こっちも遥さんから聞いた話なのだけど。

 

原作通り理論の方で2位をぶっちぎって1位を獲得したお兄様は「君不正とかしてない?してないのかぁ。四校のが合ってる感じがするけど、転校する気とかある?」って感じで教員に呼び出されたらしい。

 

プライバシーの範囲内なのに何故話してくれるのかな?と思ったが、どうやら遥さんは司波兄妹の事情というか異常性がちょっと気になってる感じで、俺に探りを入れてたっぽい。

 

なので、達也も九重さんから教えを受けているから聞いてみたら?とだけ言っておいた。

 

四葉家という一線を越える情報に辿り着きそうなら消される危険があるので止めるけど、まだそこまで深入りはしてなさそうだから九重さんに丸投げですわ。

 

「で、今日は何の呼び出しで?最近は大人しくしてると思うのですが」

 

七草先輩に昼休みに生徒会室に来るようにって呼び出しをされたので来てみたのだけど、何の用事だろう?

 

生徒会室にいたのは七草先輩に渡辺先輩、市原先輩にあーちゃん先輩。

 

そして、深雪さんと女子ばかりの空間でも平然としている達也であった。

 

副会長の服部先輩が生徒会室に寄り付かないのって女子ばかりの空間がキツイって理由な気がするんだけど、達也はよく平気だよね。

 

「えっとね。鋼くんが九校戦で選手と技術スタッフの兼任とか出来ないかなって」

 

内容は九校戦の話題でした、と。

 

あぁ、テストも終わったからそんな時期になるのか。

 

九校戦とは夏休みに行われる全国に九校ある魔法科高校のインターハイみたいな大会で、正式名称が『全国魔法科高校親善魔法競技大会』という長い名前だったりする。

 

富士にある軍の施設で10日間ほど行われ、10日間で約10万人の来場者が訪れたり、ネットなどで競技の映像が配信されたりもする魔法関係では割と人気なイベントとなっている。

 

しかし、10日間で約10万が多いのか少ないのか判断に困るよね。

 

世界的に人口が減ってるとはいえ、前世で年2回行われていた有明の戦場が1日で10万人越える参加者がいたのを知ってる身からすれば少ないなぁと感じてしまう。

 

一応開催される場所が軍の施設だから入場制限とかかけてる感じなのかね?たしか入場にチケットとか必要だった気がするし。

 

「割と無茶な事を言ってきますね。というか、選手と技術スタッフって兼任していいんですか?」

 

「技術スタッフが全然見つからないのよぉ」

 

ぐてぇとテーブルに倒れ込んでシナシナモップと化す七草先輩。

 

俺に規定を読むに一応兼任は可能と説明してくれた市原先輩に、藁にも縋る勢いで頼み込むが即座に断られている姿を見ると実際悩ましい問題なのだろう。

 

「というか、選手として出るの確定なんです?」

 

「十三束の成績で出さない訳には行かないだろう」

 

まだぐてぇとしている七草先輩に変わり渡辺先輩からツッコミが入った。

 

それはそう。総合順位が上から数えた方が早い生徒を出さないとか学校側から何言われるかわからんよね。

 

「新人戦のクラウド・ボールかバトル・ボードのどっちか。それか両方ですかね?」

 

「モノリス・コードという選択肢はないのか?十三束は問題なく戦えるだろ」

 

春の一件もあってそう思えてしまうのは仕方ないのですが、残念ながら戦える事とルールの範囲内でって事は同居しないのですよ渡辺先輩。

 

「俺は基本的にクロスレンジが主戦場ですよ?直接攻撃が禁止されてるモノリス・コードでは役立たずになりますね。あと、俺の戦い方はアホ程仲間との共闘に向いてないので」

 

ついでに言えばルールに守られた戦場には滅法弱い。ルール無用でゲリラ上等な戦場で独り自由に動ける戦いに慣れ過ぎている俺では、所詮模擬戦であるモノリス・コードは辛いのです。

 

頑張れば出来なくはないのだろうけど……接戦になったら反射的に手か足が出て失格になる気がする。

 

殺しなしの戦闘は苦手、殺しありの戦争は得意という歪な成長を遂げてしまったのが俺である。

 

十文字先輩の『ファランクス』だって正面から突破出来るからね。お兄様?マテバされなければ勝てるよ、たぶん。

 

天敵は七草先輩。本人が徹底的に俺との距離を保ちながらマルチスコープからのドライブリザードとか実弾系の魔法を全方位から撃たれ続けたら流石にきつい。

 

「技術スタッフに誘われるって事は、鋼はCADの調整が出来るのか?」

 

おや、この話題に入ってきていいのか達也?技術スタッフの話が出てから深雪さんがソワソワしてる事に気付いてないのか?生贄に捧げられても知らんぞ。

 

「真っ白な素人よりマシで機械任せなら出来なくはない程度だよ。専門的に学んでるのは刻印の方だし」

 

「そっちを専門にしてるとは珍しいな」

 

うちの学校だと二年に五十里先輩っていう家単位で専門にしてる人もいるけど、たしかに達也が言うように刻印を専門にするのは珍しいんだよね。

 

俺の場合は必要になったから学んでいる感じではあるのだけどさ。

 

「精密機械であるCADを気遣える様なお淑やかな戦い方が出来ないからね。あと、戦ってる最中に毎回魔法を使う度に手が塞がるのがイヤ」

 

CADも衝撃に弱くはないのだけど、分類としては精密機械なので戦ってる最中に壊れましたとか、もしもの時に調子が悪くなって魔法が不発になりましたとかになられると困るのよ。

 

なので、多少は使い勝手が悪くても雑な扱いが出来る刻印の方を重視して使ってるんですわ。

 

「というか、そんなに技術スタッフって足りてないんです?」

 

聞いてみたら三年生から3人、二年生はあーちゃん先輩が確定しているが、逆に言えばその4人しか決まってないらしい。

 

うちの学校ちょっと魔法工学の分野がよわよわでは?戦闘民族が多いだけかも知れないけど。

 

あー、仕方ない。深雪さんがずっとソワソワしてるし、助け船を出すか。

 

「二年の五十里先輩と、そこの達也を技術スタッフに追加すればいいのでは?五十里先輩には以前刻印魔法について教えて貰ったことがありますが、普通のCADを弄れるスキルは持ってそうな感じでしたよ」

 

五十里先輩はともかく達也の名前が出た時にほぼ全員が「その手があったか!!」っていう表情になったの面白いな。

 

「深雪さんのCADって達也が整備してるんでしょ?他人が調整したCADで深雪さんに何か起きたらシスコンがキレそうなので、それなら最初から達也にやらせておけばいいんですよ」

 

達也に何故俺を巻き込んだって驚愕した顔されたよ。シスコンなのも他も全部事実やろうに。

 

横見てみ?お兄様に担当して貰えるんですか!ってウッキウキな雰囲気を出してるよ。どうせ深雪さんに頼まれたら断れないんだから潔く諦めてもろて。

 

「これでも技術スタッフの枠が余るなら一年生か二年生で一科二科問わずに魔法工学に強い生徒も数合わせで登録しておきません?今年は間に合わなくても、来年の九校戦で技術スタッフとして不足なく動けるように現場を経験させられるので」

 

技術スタッフってたしか8人まで登録出来たはずだからね。空いてる枠があるなら来年以降に向け有効活用しておくのも悪くないでしょ。

 

「んー、それもいいわね。採用しましょう」

 

はい、七草先輩からの了承が出ましたわ。

 

まぁ選定とかは俺の仕事じゃないので意見だけ出して任せる形になるが、仕方ないね。

 

達也以外の二科生が選ばれるとは思ってないけど、一科二科問わずという文言をわざわざ付けたので頑張って優秀になりそうな人を探して欲しい。

 

「あの、俺の意思は?」

 

えっ、ないよ。

 

女性陣が盛り上がっている場では、男の意思は無視され存在しない扱いにされるのは古からの常識である。

 

「大切な妹を他の人間に任せられるなら断れば?」

 

「……他人事だと思って」

 

実際他人事なのでケラケラと満面の笑みで頷いてあげたら、あんまり達也くんを困らせないって七草先輩に叱られてしまった。

 

困らせたのは俺じゃなくて今日までに技術スタッフが用意出来なかった先輩方だと思うのになぁ。解せぬ。

 

 

 

⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎

 

 

 

生徒会室へ呼び出しをされてから数日が経ち、九校戦代表チームの発足式を迎えた。

 

講堂に全校生徒が集められ、九校戦に出場するメンバーに技術スタッフと作戦スタッフの合わせて50名以上が壇上へと並ばされる。

 

三年生から順番に名前が呼ばれ、一高の代表としての証であるリボンが着けられていくのだけど、ぶっちゃけ時間の無駄では?

 

いや、発足式だから儀礼的な意味があるのはわかるのだけどさ……出場者の名前を順番にアナウンスして、この場では代表者のみにリボンを着けるで良かったでしょうに。

 

生徒全員が集められている場なので端末を取り出して暇をつぶす訳にもいかないので暇で仕方ない。

 

三年生、二年生と紹介が続いていき、ようやく自分の名前が呼ばれたので軽く一礼をして深雪さんからリボンを着けられるのを待つ。

 

「……お兄様を推薦していただき、ありがとうございます」

 

「どういたしまして、でいいのかな?」

 

リボンを着けられる際に深雪さんから微妙に複雑そうな顔で礼を言われたけど、俺が言わなくてもあの場にいた誰かは達也がエンジニアとして働けるって気付いたと思うよ。

 

それに、俺は推薦しただけで実際にその席に座れたのは達也のこれまでの努力の成果だろうに。

 

俺の隣でガッチガチに緊張している森崎にリボンを着けている深雪さんを眺めながら小さく溜め息をつく。

 

そういえば、二科生である達也の技術スタッフ入りを認めるか否かという謎な会議は原作通りに行われたらしい。

 

とはいえ、揉める事とかは全然なかったみたいだけどね。

 

俺は会社に行く用事があり出れなかったので、会議に出ていたという雫から様子を聞いたら。

 

「私と渡辺が推薦し、市原、中条、服部、そして十文字が承認した人物に何の不満があると?私を含め先に挙げた全員を納得させられるだけの技能を持ったエンジニアをいま此処で推薦いただけるのであれば、その不満を聞きますが」

 

ニッコニコの黒い圧のある笑顔をした七草先輩が降臨したらしい。うん、そりゃ誰も文句言えないわ。

 

その面子を並べられても否を唱えられる人がいたら逆に尊敬するよ。

 

苦労してようやく見つけた技術スタッフを苦労を知らん奴から二科生だからって理由だけで文句を付けられたら、そりゃ七草先輩もキレますわ。

 

「どうせ達也が二科生ってだけでいちゃもんを付ける人が出てくると思うので、此処にいない服部先輩と十文字先輩辺りに先に話を通しておけば会議も楽じゃないです?」って言っておいた甲斐があったね。

 

先に内定が決まっていた技術スタッフの方から、互いに協力する場合も出て来るだろうから念の為に達也の実力を知っておきたいと提案をされたりはしたらしいけど、その場で何かすげぇ専門的な事をやってのけて技術スタッフが絶賛したとか何とか。

 

原作でやった高性能機器から競技用機器という性能が異なるCADに起動式をまるっとコピーするとかじゃなくて良かったよ。アレ、実際は結構危ないんだよね。

 

お兄様の腕が良かったから何とかなってたけど、本来なら七草先輩や十文字先輩が課題を提示するのではなく専門的知識を持つ技術スタッフが課題を提示しなきゃいけない場面だったと思うのよ。

 

――1-E、司波達也。

 

ぽけぇとしていたら何時の間にか檀上の端に並んでいた達也の名前が呼ばれ、嬉しさを隠し切れない微笑みを浮かべた深雪さんがリボンを着けていた。

 

講堂の前を陣取っていた達也のクラスメイトたちが大きく拍手をし、学年を問わず二科生の生徒たちが同調。

 

達也で最後だったこともあってか、講堂内に大きな拍手の音が響いていく。

 

うむ、原作知識の通りになると九校戦も結構面倒な事が多いのだけど……どうしたものか。

 

変に知識を持っているのも考えものだよね。事故が起きるかもって知ってるのに、出来る事のが少ないんだもの。

 

原作知識なしで渡辺先輩の事故とか防ぐのまず無理でしょ。

 

仮に防いだら「何故事故が起きると知っていた?」ってなるだけだよ。適切な言い訳を用意する方が難しいよ。

 

新人戦のモノリス・コードも厳しいし、小早川先輩だけなら何とか出来るかなぁ。

 

自分の競技もあるし、やれることをやれるだけすればいいかな。

 

実は九校戦で賭け事なんてやってなくて、平穏無事に終わる可能性もあるんだしさ。

 

…………平穏無事に、終わるといいなぁ。

 

 

 





入学編が終わってから司波兄妹と話す機会が何度かあったのと、もう警戒されたりしてないので鋼くんは前に言った通り学友としての付き合いをしている。

なので、トゲトゲした雰囲気はなく普通に話せる程度の仲になってたりする。(鋼くんからすれば)友人ではない。

深雪さんが発足式で複雑そうな顔をしてたのは「お兄様を否定した人だけど、同時にお兄様を認めている人でもある」っていう気持ちだったから。

司波兄妹の成長とかも書きたいのだけどなぁ……私の技量が追い付かないよ。


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