作者は魔法科高校の劣等生は全部読んでますが、数年前だから結構うる覚えですわ。メイジアン・カンパニーとキグナスの乙女たちは読んでないのでほとんど知らないです。
設定とかは多少使うかもですが、その辺に矛盾があっても流してください……。
一応、優等生はセールしてたから全部買いそろえました。
魔法。
それはかつては御伽噺の存在であった。
それが現実の事象として認識されたのはおよそ100年前。
どっかの馬鹿共が核兵器を使ったテロを起こそうとして、それを超能力みたいなスーパーパワーでテロを防いじゃった人が現れたことで、世界は超常現象を人間が起こせることを知ってしまった。
いやまぁ、核兵器を使ったテロで何千何万という人が死ぬよりはマシだったんだんだろうが……もう少しどうにかならなかったのだろうか?
ヒーローになりたかったのか、結果的にヒーローにさせられたのかは知らないが、超能力のことは隠蔽するとか誤魔化すとかして欲しかった。
というか、世間も世間でよく超能力とかわけわかんないもんを認めたよね。マスコミとか政府が煽ったのか?
それから、世界はある意味正しく狂っていった。
地球の寒冷化のせいで起きた食糧難。
食うものが無ければ他から奪えばいいという当たり前の発想から起きた第三次世界大戦。
最終的に80億はいたとされる当時の世界人口を30億程度まで減らし、人が減ったことで結果的に食料を奪い合う必要性がなくなり、戦争の原因だった食糧難が解決されたというのは何たる皮肉か。
ついでに、例の核テロ未遂のせいで第二次大戦の被爆国の日本だけでなく世界中が核兵器アレルギーを発症していたことで第三次大戦中に核兵器は使われることはなかった。
そう、
『核兵器が使えないなら、核兵器に匹敵する破壊力を持った魔法が使える魔法師を造って戦争に送れば解決ですわ!!』
…………どうしてそうなった。
核テロ未遂より各国で秘密裏に研究され、第三次世界大戦で初めて投入された兵器としての役割を背負わされた
遺伝子操作、人体実験、エトセトラエトセトラ。
ありとあらゆる人権を踏みにじり、人道から外れた研究を繰り返し、機能向上を目指し造られてきた魔法師たちのお披露目会はそりゃ上手くいった。
上手くいき過ぎてしまったとも言っていい。
無論、当時は前線に投入出来た魔法師の数も少なく使われた魔法も洗練されていない超能力まがいな魔法も多かったが、現代兵器では起こせない事象を起こす魔法は、戦場での魔法師の有用性を示すには十分過ぎた。
この戦争で勝った国も、負けた国も、世界中が理解してしまった。
『次に戦争が起きた時、勝つのはより多く、より強い
第三次世界大戦が終わってしばらく経つが、世界は時折小競り合いなどを起こしながらも、脆い平和を維持している。
『魔法師は兵器か?それとも人間か?』
世界はその答えを先送りにして、見ないフリをしながらも今日まで続いて来た。
そして、2095年・春、国立魔法大学付属第一高校入学式から世界は動き出す。
先送りにされ続け、見ないフリをし続けた答えが世界に示される日は近い。
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『納得できません!!』
司波深雪は激怒した。必ず、このわからずやの兄を説得してみせると。
深雪にも兄も言い分は理解できる。深雪も兄も世間に隠さねばならぬ事情がある。
けれど、深雪は兄の本当の実力が評価されないことに対しては人一倍に敏感であった。
『俺はいつも深雪のことを
『そんな、いつも
深雪は全てを許し、兄にとびっきりの晴れ姿を見せようと決意した。
先程までの激怒?兄が期待してくれているのだ、そんな物に構っている暇はない。
不機嫌だった気持ちはくるっくると手のひらを回すように瞬時に上機嫌になり、深雪は入学式のリハーサルを行うため、兄と別れ体育館へとるんるん気分で歩き出した。
「…………みたいな感じだったんかな?」
国立魔法大学付属第一高校を無事に合格し、花のついた一科生として入学式を迎えたが、とても暇である。
一科生とはなんぞや?って話だけど、一高は定員200名で入試時の成績で上位100名を優秀な一科生、下位100名を劣等な二科生と区別してるのよ。
優秀な一科生には指導教員が付けられるけど、二科生勝手にやってね?って投げやりで、自分たちだけで与えられた課題をクリアしてかないと魔法科として卒業出来ないよって入学時点で待遇に差を押し付けられる。
入学時に100位と101位の間に僅かな差しかなくて、在学中に成績がひっくり返っても二科生から一科生に上がる事はなく、在学中は「お前はクズ」という評価を受け続ける。
さっきまで長々とどうでもいい話をしていた校長が考えた制度らしいのだけど、教育者として頭おかしいんじゃないかな…。
本当ならそんな差別が蔓延する原作の舞台になんぞ関わりたくないので一校以外の魔法科高校を受験したかったんだが、実家が関東圏にあるのにわざわざ遠い所の高校に受験しなきゃならない理由などなく、親を納得させられる材料が揃えられなかったので、イヤイヤながら一校を受験し、見事に合格。
「出来るなら三校あたりを受験したかったんだけどなぁ」
なんで三校かって?のじゃロリって可愛いよね。
くっそ長い何名かの来賓やら校長やらの話を終え、新入生総代として答辞を読む主席入学の司波深雪さんを眺める。
いつの時代も年寄りの話が長いのは変わらず、あまりに暇だったので、うる覚えになりつつある原作の始まりのシーンを思い浮かべたり、今後の仕事の予定を考えたりして時間を潰していたら入学生の答辞になっていた。
所々に入ってる『平等』を求めるであろうやべーワードチョイスにさえ目をつむればとても素晴らしいと思う内容である。
本人の容姿も良いので、なんというか絵になる。
というか、答辞を読む本人の姿が良すぎて内容まで気にしてる人がいないのではないだろうか?
「内容までちゃんと理解が出来ていたなら、こいつらはこんな表情は浮かべてないか」
周囲を見渡すと、なんというか宗教的なミサを行っている最中に奇跡を目撃した信者とでも言えばいいのか……。
キラキラとしたお目眼で深雪さんを見ている奴から、恍惚とした表情を浮かべている奴もいる。
少しでも内容に気を配っているなら、あんな表情なんて浮かべられないだろうに。
「あ、終わった」
周囲に合わせて拍手をするが、内心はちょっと呆れている。
正直、俺にとっては一科生であろうが二科生であろうがどうでもいい。というか立場上差別とか区別ってのを批判出来ない家の生まれなので、さっきの答辞から何か響く物があったりはしない。
なんで響く物がないかというと、日本の魔法師会の構造のせい。
ざっくり言うと、日本の魔法会は十師族とかっていう特級階級が統べていて、現在の十師族は一条家、二木家、三矢家、四葉家、五輪家、六塚家、七草家、八代家、九島家、十文字家である。1から10までの数字が綺麗に並んでいたりするのは割と珍しいらしい。
その十師族の下に師補十八家があり、そのさらに下に百家があり……十三束家はこの百家の本流に当たる家だ。
まぁ、基本的に名家と呼ばれる魔法師の家の名字には数字が入る
魔法が技術として体系化されてからまだ100年程度しか経ってないのに、名家とかドヤ顔で名乗ってるのは割と謎なんだけどなぁ…。
古式と呼ばれる例外を除けば、どの魔法師の家もだいたい2代目が当主やってて、3代目はまだ若造で4代目がちらちら誕生してる程度の歴史しかない家ばっかりなのにね。
話を戻して、世間的に十師族は民間の「魔法師も人間なので、人間としての権利を守る為の自助組織」を掲げる団体であり、魔法師の家系は政治に介入しないって建前があったりするが……国防や軍事に直結する魔法師を政治家が無視出来るはずもなく、魔法師側も自分達に不利な法律を定められると困るので、一部の魔法師の家は政治家と仲良しだったりする。
ちなみに、何故名字に数字が入った家が名家と呼ばれるかというと、元々日本で国が主体となって魔法に関する研究をしていた研究機関が10ヶ所あって、その研究成果を受け継いだ家がそのまま研究機関の数字の入った姓を名乗り出したので、それに続いたかららしい。
俺の実家である十三束家は百家ではあるが、経済力は百家でも上位で下手をすると十師族をも超える家なので、ぶっちゃけてしまうと色々な事で優遇されている側であり……十三束家の出来損ないやら欠陥品と呼ばれる俺も、その恩恵を多く受けて育ってきた自覚がある。
そして新入生総代である司波深雪さんは世間に隠しているが、十師族の中でも最恐と名高い四葉家の次期当主候補筆頭であり、「平等」やらを訴えるにはちょっと平等から一番から遠い位置にいる家柄だったりする。
「魔法師は平等であるべきね。んな訳ないんだけどなぁ」
魔法師は生まれによる才能の差が強制的に出て来る種族であり、その後の訓練などでもソレは埋められない場合が多い。
例えば、
あと、十師族とか
まだ高校生でこれは学校内のことだからセーフ?割と灰色で微妙な所なんだよね。
例え話になってしまうが、この一高で生徒会長やってる七草家の長女や部活動の頭をしてる十文字家の長男に厳しい意見を出せのるか、十師族である彼等の意見や意思を面と向かって否定出来るかとなれば、どれだけの人が出来るだろう。
本人たちの性格上同じ学生だから大丈夫とか言いそうだけど、周囲がそれを認めるかは別である。
貴族と平民の子供が同じ学校に通ってて、貴族様が「同じ学生なのだ、変に遠慮せずに普通に接して欲しい」とか言われても平民の子供が本当に
まぁ、深雪さんはお兄様が不当に貶められていると感じてるから、お兄様の地位向上を目指してるだけで……そこまで難しく考えてはなさそう。
「一校に必要なのは一科生と二科生の平等なんてもんじゃなくて、手入れされなかった花は枯れ、たゆまぬ努力を重ねた雑草が花を咲かせられる。そんな切磋琢磨出来る
入学式も終わったので、内心でつらつらと適当に考えながらガヤガヤと騒がしい他の生徒に混ざってIDを発行しに行く。
そういえば、原作ではこの辺で女の子2人を連れたお兄様に深雪さんが「さっそく女の子とデートですか?」と冷凍ビームを出そうとしたり、生徒会長に遭遇したりしてたなぁとか思い出しながらID発行の列へ並ぶ。
「……………………うっそやろ」
IDを受け取りクラスを確認すると、俺が配属されたクラスはA組。
原作ではB組だったはずなんだが?いやまぁ、俺っていう不確定要素がいるんだから原作の物語通りに進むとは思ってはいなかったが、A組になるのかよ。
「原作主要キャラがまとめてA組以外になってねぇかなぁ」
何やら嫌な予感がするがなってしまったものは仕方ない。
小さく溜め息を吐き空を見上げる。
俺の沈んだ内心とは違い、入学式という新たな門出に相応しい綺麗な青空がそこにはあった。
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