鋼は錬金術師   作:むつきばな

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問.なんで深雪さん警戒しながら出て来たの?

解.お兄様が気にしてた鋼くんが予想以上の残虐ファイトしたから。

問.仮に警戒せず普通に出て来てたらどうなってたの?

解.鋼くんが大分嫌味を言っただろうけど、多分普通に会話して終わってた。


鋼を相手に特大のバッドコミュニケーションを引いた結果がこうなった。



入学編らしいよ Ⅷ

 

「もう一度だけ聞く。何が目的だ、司波深雪」

 

何故か警戒の色を一切薄めない深雪さんと対峙中なう。

 

このあと会社に行く用事もあるから話があるならさっさとして欲しいのだけど。

 

「何が目的と言われましても、友人たちを助けてくれたお礼を言いたいだけですよ。雫たちを助けていただいてありがとうございます十三束くん」

 

「礼はいいから質問に答えなよ。他の2人はともかく雫は昔からの知り合いだ。()()()()()()と違って、友人の危機を見過ごしたり躊躇ったりはしない」

 

全部が終わるまで隠れて眺めてたお前とは違うんだよって皮肉も加えてあげるよ。

 

「それとも、司波達也の目的は達成出来たか?とでも聞けばいいのか」

 

「――何の、ことでしょうか?」

 

へぇ、警戒の中に殺気が混ざったな。やっぱり兄に触れられると簡単に雰囲気や態度が変わるのね。

 

この程度で感情を動かすとかわかりやすくて何より。いやはや、取り繕うの下手くそ過ぎでしょ……四葉家は次期当主教育に失敗してませんかねコレ。

 

「君が此処に着いたのは俺よりも先だった事に気付いてないと思ったの?飛び出したのは俺のが先だったのかも知れないけど、それならそれで後から出て来て援護するなりアンティナイトでダウンした3人を救護するなり出来たはずだよね。だけど、君は何もせず様子を伺うだけだった」

 

隠れて見ていたなら最後まで出て来なければ良かったのに何故にわざわざ出て来たのだろう、この場での最適解は隠れたままひっそりと立ち去る事だったと思うのだけど。

 

実は私も居たけど十三束くんだけで十分でしたね、と誉めに来たのか?こんな警戒心バリバリな状態で?流石にないか。

 

「以前から君たち兄妹は何故か俺を警戒していたようだったから、「十三束鋼の実力がわかる機会があれば確認して欲しい」とでも言われているのかと思ってね」

 

おい、殺気を強くしてないで否定くらいしろや。

 

適当に誤魔化してくれれば「そーなのかー(棒読み)」で誤魔化されてあげてもよかったのに。

 

無言でパキパキ空気を冷やすだけとか冷凍庫の仲間であらせられる?

 

そうやって気に入らない事が起きる度に威嚇すれば全部何とかなるとか甘い考えをお持ちなのでございますか?

 

「友人の命の危機より俺への警戒を優先するとか……司波兄妹にとって友人とは自分の目的の為に利用出来る相手でしかない訳ね」

 

「それは違いますっ!雫もほのかも……私の大切な、大切にしたいと思える友人です!!」

 

説得力って言葉はご存知で?

 

大切な友人と言うのであれば、もっとやりようがあっただろうに。

 

 

――あまり、ふざけた事を言わないで欲しいよね。

 

 

ちょっとだけ、感情が昂っているのを自覚する。

 

普段ならこの程度頑張って抑えを効かせられるのだが、それすら面倒に感じて来た。

 

よろしくはないよね。魔法師ってのは感情を制御し冷静に物事を見据える必要があるのにさ。

 

もう、知った事ではないが。

 

「俺からすれば君は兄の指示で友人の命よりも自分たちの都合を優先させたクズでしかないよ」

 

周囲の気温が下がっていく。気絶し拘束されてる不審者たちに霜のような白い結晶が広がっていくのを視界の端で捉えた。

 

クズと言われたことがそれほど腹立たしかったのかな?こっちも君に腹が立ってるけどね。

 

いい加減に、こちらも我慢の限界が近いのよ。

 

制御出来ずに漏れ出している魔法のせいで此処だけ気温が下がってるから凄く寒いし。

 

「違うと言うなら言葉で否定をしろ。それとも、都合が悪くなる度にその恵まれた魔法力で相手を委縮させ有耶無耶にするなど、獣と同等かそれ以下の存在でしかないのか貴様は?」

 

 

「貴方に、貴方なんかに――私とお兄様の何がわかるというのですか」

 

 

はっ、そう来たか。

 

本当にこちらをイラつかせる言動ばかりするな、司波深雪。

 

「知らない。興味もない。理解してやる気すらない。そもそも――何故、貴様たち兄妹を理解する(わかってやる)必要がある」

 

俺は君ら兄妹を友人と呼べるほど仲を深めた覚えはない。友人でもない他人をわざわざ理解してあげなきゃならん程俺は優しくないよ。

 

原作知識で事情を知ってしまっている身ではあるけど、それでも魔法科高校に同期で入学した学友として警戒心を隠して接してくれれば、普通に友人としての関係を結べた可能性はいくらでもあったんだ。

 

俺と司波兄妹とは共通の友人に雫だっているのだからね。

 

それを初手から俺を警戒して、不審にしか思われない行動を繰り返し起こし続けたのはそちらだろうに。

 

「まさか、自分たちには他者には語れぬ特殊な事情があり、特殊な事情を持つ自分たちは全てにおいて優遇されるべきで、何をしても許される存在であるなどと本気で考えているのではあるまいな?」

 

実際に思ってそうだな……本家の事を嫌ってるはずなのに、思考と行動は四葉家そのものだし。

 

兄にとっては妹だけが特別で、妹の安寧ことが全てであり、何よりも優先される。自分たちに害を成すモノがいないか調査するのは当たり前で、その為なら法や倫理を無視しても構わない。

 

妹にとっては兄こそが特別で、兄を否定する世界、兄の素晴らしさを理解出来ない世界、兄を賞賛する事が出来ないヒトなんぞ必要ない。

 

そんな風に考えていたとしても、全く不思議ではないよね。

 

四葉家は次期当主の教育に失敗したとか思ったのは謝罪しなきゃ。

 

こいつら兄妹は立派に四葉家の在り方を受け継いでいるよ。

 

「そんな事は思っていません!!」

 

「なら、何故こちらを警戒する必要がある?数字付きでもない()()()()()()()である兄妹が」

 

忘れがちだけど、司波兄妹って一般家庭出身の魔法師という名目で一校へ入学してるはずなんだよね。

 

乳デカ眼鏡(柴田美月)を見習え、この時期のあの娘がある意味希少な一般家庭出身の魔法師としての姿だから。

 

高校卒業後は男の家(しかも実家)に転がり込んで有無を言わさず同棲生活を始めた猛者ではあるけど、この時期はまだ一般家庭出身者としての初々しさもあった……はずだから、たぶん。

 

「魔法師という人種はその成り立ちからして他者に知られたくない事情を持つモノがやたら多い。貴様たち兄妹も隠しておきたい事情とやらを持つ側なのだろう」

 

同期の原作主要メンバーにはこっちから近寄ったりしてないのに、学内で流れて来る噂話だけで司波兄妹の異常性みたいなのがポンポン出て来てるのは本当に何なのさ。

 

面倒くさいから学校での付き合いとかも最小限にしてるボッチの俺の耳にも届くとか相当やぞ。

 

「十師族並みの魔法を扱える技能を持ち魔法科高校へ主席入学を果たした容姿端麗な妹に、高い戦闘技能と豊富な魔法に関する知識を持ち魔法理論トップで入学した兄。ここまで目立つ存在でありながら過去は一切不明であり、探ろうとすれば大仰に拒否をする……貴様ら、本当に自分たちの事情を隠す気があるのか?」

 

魔法師という種族は魔法力が高く、優秀であればあるほど容姿が整っていく傾向にある。

 

魔法師開発初期に遺伝子操作や生存率が低い強化措置に受け、生き残れた個体のみが次世代へ繋いだコーディネイターの亜種のような存在が現代の魔法師であり、魔法力を高めるついでに病気などに強い丈夫な肉体と容姿が整うように弄られてきた結果でもある。

 

人間主義や反魔法師団体が『青き清浄なる世界のために』を考えちゃうのも仕方がない存在だね。

 

だけど、某人の業が語っていたように極上の才能を持っていたとしても技術を習得し高める為には訓練というのは必須であり、魔法もそれに当てはまる。

 

司波兄妹が持つ魔法や戦闘に関する技能の高さも長年の訓練で培われたモノであり、一般家庭出身者では教師や訓練の場所を用意する事さえまず不可能だってのに。

 

一般家庭を名乗るなら、もう少し一般家庭について学べよボンボン出身。

 

「貴様ら兄妹にどんな事情があるのかは知らない。知りたくもない。知るつもりもない。だが、隠しておきたい事情があるにしては全てが杜撰過ぎる。正直に言えば、貴様ら兄妹がわざと目立つことで他の何かから目を逸らす為の撒き餌ではないかと考えたくらいだ」

 

前世の二次創作でよく見た設定であるイレギュラー(四葉真夜の実子)が秘密裏に名前と魔法力を誤魔化して入学しているんじゃないかって本気で悩んだんだぞ。

 

本当にさぁ、四葉家って何を考えてこの兄妹の2人暮らしと高校入学を許可したのさ。

 

パッと見る限りなら優秀な兄妹だけど、優秀な部分が学業とか魔法だけで精神的な部分は割と年相応か一部はそれ以下なのよ。

 

「隠す気があるならもっと上手く取り繕え。貴様らが何処の家の紐付きかなど微塵も興味がない。自分勝手な誇大妄想で他人でしかないこちらを巻き込むな――目障りだ」

 

四葉家が外部からどういう存在として扱われてるのか。

 

アンタッチャブルというブランドイメージを守る為に何をしてきたのか。四葉家の機密に不用意に触れてしまった存在が一体どういう顛末を迎えてるのかって事くらい少しは考えて欲しい。

 

特に司波兄妹は四葉家現当主の双子の姉の子供なので、遺伝子的には直系みたいな感じだし。触れたくもない地雷としては規模がヤバいのよ。

 

なお、現実は本人たちが地雷を無作為に埋めた上で他人と一緒なってタップダンスをしているもよう。くそわよ。

 

「随分と……好き勝手言ってくれますね」

 

そりゃ好き勝手言うさ。全部事実で、不利益を被ってるのはこっちだからね。

 

さて、コレ雰囲気的に殺し合いは避けられないな。

 

魔法力だけが取り得の小娘なぞ相手にするのも面倒だな……後から激オコでやって来る兄の方がもっと面倒か。

 

この時期の司波達也に、俺に有効な魔法はほぼない。

 

借りを作りたくない四葉家に救援を求める暇があるなら妹の無事を確かめる為にかっ飛んで来るだろうし、妹を生かしてさえおけば初手マテバもないだろうから……装備さえ揃えとけば問題ないな。

 

頭を砕いても再生って使えるのかな?原作で頭を狙撃されなかったのを安堵してたよな。

 

再生も一応は魔法だし、俺が接触型術式解体を発動しながら頭を砕いたら殺せないかなぁ。

 

まぁいいや。とりあえずは先に妹の方を…………。

 

 

 

「もうその辺にしてあげてよ。鋼くん」

 

 

 

互いの視線と雰囲気に含まれる殺意が段々と濃くなり、気温もマイナスに突入しようかという一触即発な空気の中で、ふいに飄々とした声が響いた。

 

その声が届くとともに、今まで誰もいないと思っていた所に作務衣を着た禿頭の男が姿を見せる。

 

いやはや、この人の隠形本当に半端ないわ。

 

いくら怒りで感情が昂っていたとはいえ、声を掛けられるまで全く気づかなかったよ。

 

「八雲、先生?」

 

「そうだよ深雪くん。町中でこんな物騒な空気を出していたら、達也くんも心配してしまうから落ち着きなさい」

 

飄々として雰囲気を崩さず、真意の読めない笑顔で話を続ける九重八雲の姿に充満していた殺気も霧散していく。

 

寒さからも解放されるっぽいのだけは素直にありがたいね。

 

しかし、だ。

 

「おいこらハゲ。いきなり現れて何のつもりだ。その様子だとかなり最初から見ていただろ」

 

「ハハ、僕に八つ当たりするのは止めてくれるかな鋼くん。その状態の君は君らしくないよ?」

 

うっせぇわハゲが。アンタが司波兄妹に俺の調査を依頼された時に知り合いだと伝えてればここまで拗れなかったかも知れないのに、半分くらい自分が楽しむ為に黙ってただろ。

 

出て来るタイミングも俺への言葉のチョイスもばっちりだよ本当に。もう何かヤル気も萎えたわ。

 

「そろそろ止めないと流石にマズい事になると思ったからね。君たちが殺し合いをしたら達也くんが怒って大変な事になってしまうよ」

 

冗談めかして言っているが、この距離での殺し合いじゃ深雪さんに勝ち目はないって断言してるよソレ。まぁ、正しいけど。

 

深雪さんもハゲが言いたい事に気付いたのか悔しそうにしてるね。ざまぁ。

 

「まぁ、司波兄妹と鋼くんの共通の知り合いとして和解というか相互理解の場を提供したくてね」

 

和解、相互理解ね。いままで見過ごしてきたのに、どういうつもりなんだか。

 

「先生、どういう事です?」

 

「んー、言ってなかったけど実は十三束鋼くんとは知り合いでね。付き合いだけなら君たち兄妹よりも古いんだ」

 

そうですね。「そのお肉を分けてくれたら君に稽古をつけてあげよう」とかキャンプ中に肉を焼いてた所に不審者ムーブで現れた時からの知り合いですからね。

 

あれ、小学生の時じゃなかったか?即座に通報しなかった俺を褒めて欲しいわ。

 

実際、ハゲの行動を後ろにから見ていたじぃさんがすげぇ呆れた目をしてたからなぁ……。

 

「でしたら、何故っ!?」

 

俺の方を睨んで言葉を途中で止めていたが、「何故、お兄様が十三束くんの調査をお願いした時に伝えてくれなかったのですか?」とかかね。

 

「はぁ…………それで、どういう意味ですかね九重さん」

 

「お、やっと落ち着いてくれたね鋼くん。言葉通りだよ。達也くんは武術の方の弟子で、深雪くんも簡単なモノを僕から習っている。そんな彼らが馴染みである君と仲違いしているのは僕も心苦しくてね」

 

嘘つけ。心苦しいとかそんな健気な性格してないでしょうに。

 

ハゲ(胡散臭い作務衣)とハゲ(四葉家の後ろ盾)が俺と司波兄妹を利用するのに不仲だと利用し辛くて、いざという時に不利益がありそうとかそんな感じでしょ?

 

まぁ、俺とそちらは必要な時に協力や利用をし合うって関係なので別に構いせんけどね。

 

「僕も一応釘は刺したんだよ?鋼くんは君たちの敵にはならない。気難しい所はあるけど、ちゃんと向き合えば君たちに足りない部分を教えてくれる友人になってくれるよってね」

 

その結果がコレってのは珍しくハゲ……九重さんも司波兄妹を読み違えたのかね。マジでいい迷惑だよ。

 

だからこそ、こうして信条を曲げてまで仲介に来たのだろうけどさ。

 

九重さんには世話になってるし、深雪さんだけならともかく九重さん込みだと殺し合いをしても無駄死にするだけか。

 

お兄様の再生さえなければ後遺症が残せる程度までは持っていける気もするけど、再生されたら無意味だし。

 

九重さんの顔を立てる意味もあるから……仕方ない。

 

「もう色々と面倒になったので、こいつらの処理はお願いします。アンティナイトは報酬代わりに好きにして頂いて構いませんが、引き出した情報の受け渡しは念の為に下さい。あと、司波兄妹との話は日程が決まったら連絡を……では、また」

 

深雪さんと九重さんに雑な挨拶だけして此処から去るべく歩き出す。

 

何か、最後の最後でどっと疲れたなぁ。

 

もういいや、帰ろ……あぁ、会社に行かなきゃいけないから帰れないんだったわ。

 

会社に行くの明日以降じゃダメかな?でも社員の人が至急とか言ってたから結構大事な内容っぽいし。

 

メールや電話ではなく直接だもんなぁ。面倒事じゃなきゃいいけど、淡い期待になりそう。

 

あぁ、本当に面倒くさいですわ。

 

 

 





ブチ切れ鋼くん。最初はオコだったのに、妹様の態度でブチ切れた。

鋼くんは怒り具合で口調が変わる。天井まで突き抜けると何も言わないし、何も聞かずに淡々と処理を始める。

「四葉を嫌ってる癖に、都合のいい時だけ四葉の権力で好き勝手してんじゃねーよ」と原作知識でしか知り得ない事を言わない程度には理性は残していた。

一度死んで転生している身なので死に対する忌避感が薄く、お兄様や四葉に消されても別にいいやって考えを持ってたりする。

なお、実際に消された場合には報復として鋼くんが覚えている範囲の原作知識が世間にバラ撒かれる手筈を組んでいるので……世界中が大混乱を起こすし、日本の魔法師社会はシャレにならない損害を受ける。


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