ホロウの中で人のGO!を咎めるおじさん 作:究極の出来損ない
虫の騒めきが辺りを優しく包んで、なんとも牧歌的な雰囲気を演出している最中、私は人の気配も思念も、何もない優しい空間の中で寝台に体を横たえて、布団を被りながら思考していた。
不貞腐れているつもりも、悲観もしていないとも言えない気味の悪いザラついた胸中にムカムカして、勢い良く布団を除けて立ち上がる。
灯篭のぼんやりとした明かりが、建物を眩しくない程度に照らし出している。
―――――宛てもなく、彷徨いながら何かに導かれる様に、中庭へと辿り着く。
ぼんやりと辺りが辛うじて、解る程度の明るさの中、中庭の砂利の上に降り立ち、腰を据える。
振り返らない様にしていたが、今独りになったからこそ、強く自覚してしまう。
私が、生まれる前の兄弟を殺した。
胸の中の柔らかい部分が、不快な
バチバチとそんな彼らの痛みと苦しみに共鳴する様に、肩口に広がるまでに伸びて来ていた髪から紅雷が、私を責める様に弾け続ける。
泣けはしなかった。あの時の判断を間違えてしまったとは思わなかった。思ってしまったならどうして、俺はあの子達の未来を決めつけて殺したと、自分自身に問い続けて責めなければならなったからだ。
自分の考えで殺した。他者に迷惑を、いや、厄災を振りまく程の存在に育ってしまうと、あの短時間の共感で確信を持っていた。
正当な理由だと自分に言い聞かせても、そんな道理はあの子達には通じない。死して尚、私を糾弾するこの彼らの想いを、私は振り払う事は出来なかった。
生きられるなら生きたいものな。それは、生まれ育まれた命の特権だものな。だからあの時、簡素に別れとお休みを告げたが、そんなもの死した者には自己満足にしか聞こえぬものだ。
姿なき兄弟達の剝き出しの感情の濁流を叩き付けられながら、私は態勢を変えて膝を抱えて丸まって俯く。
(お前さえいなければ、俺はあの方達の寵愛を授けられる予定であったのに貴様がぁっ!)
(実に下らん)
こうして責められる覚悟は持っていたが、口にするのも
同じ素体から生まれた者だが、こうも好色なだけのどう調整教育を受けていたのか理解して、失笑物の奴等の冷たい眼差しで聞き据える。
大方TOPSの婦人層向けの性玩具としてでも生産調整されていたタイプだろうな。私やオリジナルの能力の発現は見込めなくても、資金調達の名目で肉人形か。強かな方針であるし、合理的ではあるが・・・TOPSの変態共が相手だ。どうせ五体満足には生きれなかっただろうと、私は胸中で勝手に決めつけて思考を打ち切る。
オリジナルとかなり似て美形との発言が、密かに隊内で囁かれていた程度は知っているので、容姿は悪くはないのだろう程度は思っていたが、人の欲望に限りはないらしい。よりにもよって肉人形ね・・・。ゼンゼロの世界ってやっぱ、対魔忍的なアレの嗜好もあるんだなファッ〇。
幼い精神の慟哭を真正面から受け止め、アレな調整を受けたであろう馬鹿共の戯言をマルチタスクで捌きつつ、先程から蹲った私の視界内をふわふわと頼りなく小さな、蛍火の様な儚く優しい紅の燐光が眼前を通り過ぎて、私に寄り添う様に頬を撫でるこの温かな小さな光は、誰なんだ・・・?
(おにいちゃ・・・とめてくれてありがと)
罵詈雑言の喧騒から切り離されて、この蛍火から、一生懸命に拙い幼い口調で私に感謝を伝えてきた。
ちいさな子どもの手が私の頬を撫でて、ニコニコと純粋な笑みを浮かべた半透明な幼子が、私の顔を包んで正面を向かせる。凍り付いた様に動けなくなる私に、彼は困った様に私の頭を撫でて口を開く。
(おにいちゃのおかげで、ぼくはたたかわなくてすんだよ。みんなも)
(・・・違う。私は・・・っ!選んで殺したんだ!お前達を!悪意を刷り込まれたお前達を更生の余地なしと見限って・・・!)
(んーん。おにいちゃ、さいごまでなやんでたの『ぼくら』わかってるから。だからぼくらのことせおわないでね?)
(だがっ・・・!)
(ぼくらのぞまれたいのちだけど、まちがったのぞまれかただっていうのはわかってる。だからほかのにいちゃだってもんくはいうけどわかってるよ。ちゃんと)
罰が悪そうに周囲の姿なき兄弟達が、身じろぎした様に感じられた。それを感覚の端で知覚しながらも、正面でふわふわと何所までも明るい笑顔で語り掛けてくる最も幼い弟の姿から目が離せない。
違うんだ。許さなくていい!感謝もしなくていいんだ!おれが・・・!おまえたちを・・・!!!
(おにいちゃ、どこまでもやさしいから、ぼくらのことわすれないだろうけど、いいんだよ。おにいちゃ・・・であいはえらべなかったけど、おわかれはぼくらでえらべるから)
(まってくれ!たのむ!いかないでくれ!おれをゆるさないで!おいていかないでっ!!!)
眦からどうしようもなく悲しみが溢れて、頬を伝っていく。私に似た考えの子があの中にいたのかとそんな思いがぐるぐると意味もなく頭の中を駆け巡るが、彼はにこにこと笑うだけで、自らの役目を理解している様に立ち振る舞い、俺なんかよりよっぽど立派だった。
溢れる涙が止められずに、目の前の幼子を逃がさない様に抱きしめようと咄嗟に手を動かすが、淡い光を纏わせて立つ彼には触れる事すら出来なかった。手が彼の体を擦り抜け、俺の無様さを際立たせる。
「なんでっ?!いやだっ!おまえをっ!おとうとを失うなんて二度もなんて!!いやだっ!いやだぁぁっ!」
口を突いて出た慟哭が中庭に響き渡るが、俺は必死に手を伸ばして彼を抱きしめようと繰り返す。
(だめだよ。おにいちゃ。ぼくらはしんだひと。ちゃんとおわかれをいえるだけでもぜいたくだから。これいじょうは・・・のこれないよぉ・・・っ!)
ボロボロと泣き笑いながら、名残惜しそうに私の伸ばした手に頬を寄せてすりすりと愛おしそうに頬擦りした弟の姿が薄れていく。消えて行ってしまう。
「頼むっ!おれはっ!ずっとひとりだったんだ!おれは・・・!お”れも”づれ”て”い”って”くれ”ぇっ!!!」
ボロボロと涙と鼻水がみっともなく流れるが、心の奥底から望んだ言葉が放たれる。
(だいじょーぶ。ぼく、あっちにいってもずっとおにいちゃのことみまもってるから・・・。み”ま”も”っでる”がら”っっ!!!)
目を開けない程の明るいナニカの中に弟が飲み込まれて行く。必死に手を伸ばすが、どんどんと遠ざかっていってこの手から離れて行ってしまう。
(じゃーな。馬鹿兄貴、俺達の分も生きろよー?)
(道を違えずに済みました。感謝を。兄様)
(私は未だ貴様を認めた訳ではないが、まぁルールはルールだ。致し方ないってやつだな)
(あー、僕も一回は暴れてみたかったけど仕方ないよねー。バイバイにーちゃん)
俺の手から、弟たちが遠ざかっていく。同じ顔のなのに生意気そうな表情や、生真面目な表情をした顔等で1人1人確かに違う性格なのが解る。そんな弟達が・・・向こう側に逝ってしまう。
(おにいちゃ、もしね。もしうまれかわったら、またおにいちゃのおとうとになりたいなぁ・・・。だから、さよならはいわないよ)
【またねっ!おにいちゃ!だいすきっ!!!】
「待ってる!待ってるぞ!俺はそれまで死なないっ!生き続けるから・・・っ!必ず帰って来いよぉっ!!!」
そうして、天に昇る光の中を弟達が渡って行くのを見送って、俺は中庭の中央で跪いたまま、顔面をゴシゴシと乱暴に拭って、決意する。
「こんな思い、もう沢山だ。死ぬかもしれないとか、リスクがどうとか関係ねぇ。俺は、あっちに行った弟達に恥じない生き様を見せてやる・・・!」
TOPS、防衛軍、讃頌会、だからどうした。お前らが無視できない程の力を!立場を勝ち取って!この世界に人の中には欲望からの罪だけじゃなくて、確かにある人の心の光って奴を魅せ付けてやるっ!!!
俺は負けない!生きてもう一度、生まれ変わる弟達に出会うまで生き延びてやる!!!
そうだ。俺が憧れたガンダムの姿って奴を・・・。この世界に知らしめてやる。
俺が、俺こそがガンダムだ!
◇◇◇◇
「ねえさま・・・」
「きれいなやさしいおとこのこだったね・・・。レガリアさん・・・よかったね。さいごにはなせて・・・」
早く鬼武者やりてぇ(遺言の仮面2026)
気づいたら刹那がアップしてました。好きなパイロット上位なのでポップした感。
頑張って書いたので、そこそこの満足感はあります。ニュータイプ空間的な表し方難しいけど、私は好きです。