ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
――もし、それを再び動かそうとする者がいたなら。
空白の100年、Dの一族、ジョイボーイ、古代技術――。
ONE PIECEという作品には、まだ描かれていない“歴史”や“未来”が数多く存在していると思っています。
これは、そんな世界へ転生した一人の男が、
“失われた未来”へ辿り着くまでの物語です。
かなり長い話になると思いますが、
原作への敬意を込めて、じっくり書いていければと思っています。
雨が降っていた。
都会の夜景は滲み、アスファルトに反射した光が揺れている。
後に“船大工レイン”と呼ばれ、
世界政府すらその全貌を掴めなかった男――
男は、コンビニの袋を片手に夜道を歩いていた。
「……やっと買えた……」
小さく息を吐きながら、ネクタイを緩める。
袋の中には、一冊の漫画。
『ONE PIECE』最新巻。
「社長が大型契約の帰りに漫画買って帰るってどうなんだよ……」
誰に言うでもなく呟く。
つい数時間前まで、大企業との大型契約を終えていた。
営業から起業。
小さな会社から始まり、数年で業界トップクラスへ。
誰もが認める成功者。
金も、地位も、名誉も手に入れた。
だが――。
「……まあ、結局ONE PIECE読む時間が一番楽しいんだけど」
男は苦笑する。
子供の頃から変わらなかった。
どれだけ忙しくなっても。
どれだけ成功しても。
『ONE PIECE』だけは読み続けていた。
空白の100年。
Dの一族。
古代兵器。
ジョイボーイ。
世界中の誰よりも考察してきた自信がある。
「……いやマジで、
ONE PIECE世界行ってみてぇな」
横断歩道の赤信号の前で立ち止まり、空を見上げる。
雨が少し強くなった。
その時だった。
キキィィィィ――ッ!!
激しいブレーキ音。
反射的に振り返る。
大型トラック。
横転。
制御不能。
「――は?」
避けられない。
そう理解した瞬間には、視界が白く弾け飛んでいた。
轟音。
衝撃。
身体が浮く感覚。
そして。
急激に音が遠ざかっていく。
(あー……)
(終わったか)
不思議と恐怖はなかった。
むしろ、
(新刊読んでねぇ……)
そんなことを考えている自分に呆れる。
意識が沈む。
深く、深く。
――そして。
男はゆっくり目を開けた。
真っ白な空間。
果てが見えない。
その中心に、一人の老人が胡坐をかいていた。
長い髭。
妙にラフな服装。
だが、その瞳だけが異様だった。
世界そのものを見ているような目。
男はしばらく黙る。
そして口を開いた。
「……誰です?」
老人は呆れたように笑った。
「お前ら人間、
まずそこ聞くよな」
「神じゃよ」
数秒沈黙。
「……へぇ」
「薄くないか…反応…」
「いや、まあ……
神様なら神様で納得というか……」
男は頭を掻く。
神は楽しそうに笑った。
「お前、
面白いのォ」
「普通もっと慌てるぞ」
「いや、
トラックで轢かれた時点で現実感なくて」
「あと、
白い空間って本当にあるんだなって」
神は吹き出した。
「ハハハ!!
お前、変わっとるわ!!」
男は周囲を見る。
「……で、
俺、死んだんですよね?」
「ああ」
神はあっさり頷く。
「不運じゃったな」
「せっかく面白い人生歩いとったのに」
男は肩を竦めた。
「まあ、
人生なんてそんなもんでしょ」
「ゼロからここまで来れただけでも、
十分楽しかったですよ」
その言葉に、神は少しだけ目を細めた。
「ほォ……」
「普通はもっと未練を吐く者が多いが…」
男は少し考える。
そして笑った。
「……まぁONE PIECEの最終回は見たかったですけど」
神は数秒黙った後、
腹を抱えて笑い出した。
「ハーーーーッハッハッハ!!」
「お前ほんとに好きなんじゃな!!」
男は苦笑する。
「人生の半分以上、
追いかけてましたからね」
神は笑いながら言った。
「気に入った」
「褒美をやろう」
男が眉を上げる。
「褒美?」
「次の人生じゃ」
「好きな世界へ送ってやる」
男は即答した。
「ONE PIECEで」
神はまた笑う。
「迷わんのか」
「迷う理由あります?」
「ほっほっほ!!」
神は楽しそうに頷く。
「よかろう」
「どの時代にする?」
男は少しも悩まなかった。
「原作の40年前」
今度は神が驚く番だった。
「……ほォ?」
「本編開始じゃなくていいのか?」
男はニヤリと笑う。
「40年あれば、
力も人脈も技術も全部揃えられる」
「本編開始時に完成してた方が面白いでしょ」
神は呆れたように笑う。
「お前、
最初から世界動かす気満々じゃな」
男は肩を竦めた。
「どうせなら、
本気で遊びたいんで」
神は愉快そうに目を細めた。
「悪魔の実は?」
「いりません」
「ほォ?」
「泳げないの普通に不便です」
「飛行機もない世界ですし」
「いっそ自分で作ろうかなって」
数秒。
沈黙。
そして神は吹き出した。
「飛行機!!?」
「お前、
海賊王じゃなく文明革命する気か!?」
男は笑う。
「面白そうじゃないですか」
神は笑いながら立ち上がった。
「気に入った!!」
「なら特権をくれてやる!!」
白い空間が光に包まれる。
その瞬間。
男はまだ知らない。
自分が800年前から続く“意思”へ、
辿り着くことを。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
まだプロローグ段階ですが、
ようやくこの物語の始まりを書けた気がしています。
レインという男が、
なぜ“船大工レイン”と呼ばれるようになるのか。
そして、
800年前に止められた未来とは何だったのか。
長い航海になると思いますが、
ゆっくり見守っていただけると嬉しいです。