ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第九十九話「トムとの再会」

 

レイン商会設立の発表から二週間ほどが過ぎた頃だった。

 

港は朝から慌ただしかった。

 

東の海から来た商船の荷下ろし。

 

レイン商会へ納品される木材や鉄鉱石の確認。

 

そして新たな船の建造依頼の打ち合わせ。

 

かつて静かだった島は、今や東の海でも有数の活気を持つ島へと変わっていた。

 

そんな中、レインは商会の執務室で書類と格闘していた。

 

「……前世でも思ったけど、経営者って書類仕事多すぎないか?」

 

思わず愚痴が漏れる。

 

机の上には契約書や発注書が山積みになっている。

 

船を作るのは好きだ。

 

設計するのも楽しい。

 

だが書類だけはどうしても好きになれなかった。

 

その時だった。

 

ふと見聞色が何かを捉える。

 

港。

 

見慣れない船。

 

そして一つだけ異様に大きな気配。

 

レインは手を止めた。

 

「……ん?」

 

もう一度集中する。

 

巨大な体。

 

力強い生命力。

 

どこか懐かしい気配。

 

次の瞬間、レインは勢いよく立ち上がった。

 

「まさか……!」

 

椅子を倒しそうになりながら執務室を飛び出す。

 

廊下を駆け抜け、階段を下り、港へ向かう。

 

周囲の社員たちは突然走り出した社長に驚いていた。

 

「社長!?」

 

「どうしたんですか!?」

 

しかしレインは止まらない。

 

そして港へ辿り着いた。

 

停泊した船から、一人の巨大な魚人が降りてくる。

 

青い肌。

 

大きな体。

 

そして見覚えのある笑顔。

 

「ガハハハハハ!」

 

「久しぶりじゃな、レイン!」

 

その声を聞いた瞬間、レインの顔に笑みが浮かんだ。

 

「トムさん!」

 

数年ぶりの再会だった。

 

レインは駆け寄る。

 

トムも豪快に笑いながら近付いてくる。

 

そして次の瞬間、巨大な腕がレインを持ち上げた。

 

「うおっ!?」

 

「ガハハハハ!」

 

「大きくなったのう!」

 

「いや、トムさんが大きすぎるんですよ!」

 

港に集まっていた人々が笑う。

 

しばらく再会を喜んだ後、トムは改めてレインを見た。

 

十二歳になった少年。

 

背も伸びている。

 

目つきにも自信が宿っていた。

 

以前会った時とは別人のようだ。

 

「社長になったそうじゃな」

 

「新聞で見ました?」

 

「見たどころじゃないわい!」

 

トムは大笑いする。

 

「世界最年少社長じゃと!」

 

「ウォーターセブンでも話題になっとったぞ!」

 

レインは思わず頭を掻いた。

 

正直、少し恥ずかしい。

 

するとトムは周囲を見渡した。

 

そして固まった。

 

「……おい」

 

「はい?」

 

「ここ、本当にあの島か?」

 

レインは笑った。

 

無理もない。

 

数年前にトムが訪れた時は、小さな工房が一つあるだけだった。

 

だが今は違う。

 

巨大な倉庫。

 

整備された港。

 

建造中の船。

 

滑車を利用した運搬設備。

 

採掘場へ続く輸送路。

 

そして忙しく働く大勢の職人たち。

 

もはや別の島と言ってもいい。

 

トムはしばらく無言だった。

 

そしてぽつりと呟く。

 

「本当に作りおったんじゃな……」

 

その声には感心が滲んでいた。

 

レインは少し照れながら答える。

 

「皆のおかげですよ」

 

「俺一人じゃ無理でした」

 

トムは豪快に笑った。

 

「違うな」

 

「最初の一歩を踏み出したのはお前さんじゃ」

 

レインは何も言えなかった。

 

確かに最初に動いたのは自分だ。

 

だが周囲の協力がなければここまで来ることはできなかった。

 

二人はそのまま商会を見て回る。

 

鍛冶場。

 

木工場。

 

倉庫。

 

造船所。

 

どこへ行ってもトムは驚いていた。

 

そして最後に巨大な造船ドックへ辿り着く。

 

そこでは新しい船の建造が進んでいた。

 

トムは完成途中の船を見上げた。

 

しばらく何も言わない。

 

職人として船を見ているのだろう。

 

やがて満足そうに頷いた。

 

「良い船じゃ」

 

レインは少し嬉しくなった。

 

世界有数の船大工であるトムからの評価だ。

 

だが次の言葉は予想外だった。

 

「じゃが」

 

レインは顔を上げる。

 

トムは真っ直ぐ船を見つめていた。

 

「まだ足りん」

 

「……え?」

 

「良い船じゃ」

 

「だが、世界を変える船ではない」

 

風が吹く。

 

港の潮の香りが流れていく。

 

トムは静かに続けた。

 

「レイン」

 

「お前さんの夢は何じゃ?」

 

レインは少し考えた。

 

そして答える。

 

「世界一の船大工になることです」

 

トムは首を横に振った。

 

「違う」

 

レインは目を見開く。

 

トムは笑っていた。

 

だがその目は本気だった。

 

「世界一なんぞ目指すな」

 

「そんなものは通過点じゃ」

 

そして巨大な手で建造中の船を指差した。

 

「目指すなら世界を変える船を作れ」

 

その言葉は雷のようにレインの胸へ突き刺さった。

 

世界一ではなく。

 

世界を変える船。

 

その瞬間、レインの中で何かが動き出した気がした。

 

そしてそれこそが、後に世界中を巻き込む壮大な夢の始まりだった。

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