ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百話「レインの構想」

 

その日の夜。

 

レイン商会では盛大な歓迎会が開かれていた。

 

トムの来訪を知った島民たちは大喜びし、広場には料理や酒が並べられている。

 

職人たちの笑い声が響き、楽器の演奏まで始まっていた。

 

その賑わいから少し離れた場所。

 

港の防波堤にレインとトムは並んで座っていた。

 

夜風が心地よい。

 

空には無数の星が輝いている。

 

波の音だけが静かに聞こえていた。

 

「宴の主役が抜け出して大丈夫なのかのう?」

 

トムが笑いながら言う。

 

レインも苦笑した。

 

「主役って言われても苦手なんですよ」

 

「ああいうのは見る側の方が好きで」

 

「ガハハハハ!」

 

トムは豪快に笑う。

 

そして視線を海へ向けた。

 

「しかし驚いたわい」

 

「数年でここまで発展させるとはな」

 

「俺も正直、自分で驚いてます」

 

レインはそう答えながら夜の海を眺める。

 

港にはレイン商会が建造した船が何隻も停泊していた。

 

漁船。

 

貨物船。

 

小型帆船。

 

どれも優秀な船だ。

 

しかし――

 

「トムさん」

 

「ん?」

 

「俺、今作っている船には満足してないんです」

 

トムは少しだけ目を細めた。

 

職人がそんな顔をする時は決まっている。

 

何かを考えている時だ。

 

「ほう?」

 

「どういうことじゃ?」

 

レインは少しだけ笑った。

 

「今作っている船は仕事です」

 

「商会として利益を出すための船です」

 

「もちろん良い船ですよ」

 

「でも俺が本当に作りたい船じゃない」

 

トムは黙って聞いていた。

 

レインは続ける。

 

「将来、俺が乗る船を作りたいんです」

 

「ほう」

 

「どんな船じゃ?」

 

レインは少しだけ考える。

 

そして誰にも話したことのない構想を口にした。

 

「潜水艦です」

 

一瞬だけ沈黙が流れた。

 

トムの目が大きくなる。

 

「潜水艦じゃと?」

 

「はい」

 

「海の中を航行する船です」

 

トムは腕を組む。

 

驚いてはいるが、否定はしない。

 

むしろ興味津々だった。

 

「続けろ」

 

「その船は海王類にも見つからない」

 

「海賊にも見つからない」

 

「海軍にも見つからない」

 

「そんな船にしたいんです」

 

トムの眉が上がる。

 

「見つからん船?」

 

「ステルス船です」

 

聞き慣れない言葉にトムは首を傾げた。

 

レインは説明する。

 

「簡単に言うと隠れる船ですね」

 

「姿を見つけられにくくする」

 

「音もできるだけ消す」

 

「敵に気付かれないまま移動する」

 

トムはしばらく黙った。

 

そして、

 

「ガハハハハハ!」

 

突然笑い出した。

 

「相変わらずじゃな!」

 

「普通の船大工なら速い船を考える!」

 

「強い船を考える!」

 

「お前さんは見つからない船か!」

 

レインも笑った。

 

「だって危ないじゃないですか」

 

「俺、海賊と戦いたくないんですよ」

 

「見つからなければ戦わなくて済みます」

 

「ガハハハハ!」

 

トムは腹を抱えて笑う。

 

実にレインらしい発想だった。

 

強くなりたいとは思っている。

 

だが根本的には戦闘狂ではない。

 

できれば危険を避けたい。

 

その考え方が船にも出ている。

 

しかしレインの話は終わらなかった。

 

「それだけじゃありません」

 

「まだあるのか?」

 

「あります」

 

レインは真剣な表情になる。

 

そして夜空を見上げた。

 

「その潜水艦の中に」

 

「もう一隻船を収納します」

 

トムが固まった。

 

「……は?」

 

「飛ぶ船です」

 

再び沈黙。

 

波の音だけが響く。

 

数秒後。

 

「ガハハハハハハハハハハ!!」

 

トムの大爆笑が夜の港に響いた。

 

「飛ぶ船じゃと!?」

 

「本気か!?」

 

「本気です」

 

レインは真面目な顔で答える。

 

「空を飛べれば海流も関係ない」

 

「天候の影響も受けにくい」

 

「海王類も関係ない」

 

「そして世界中どこへでも行ける」

 

トムはしばらく笑い続けていた。

 

やがて笑いが収まる。

 

そして静かに空を見上げた。

 

「普通なら馬鹿げていると言うところじゃな」

 

「ですよね」

 

「じゃが」

 

トムはニヤリと笑った。

 

「お前さんなら作るかもしれん」

 

レインも笑う。

 

それが嬉しかった。

 

否定されると思っていた。

 

だがトムは違った。

 

誰よりも船を愛する男だからこそ、その夢の価値が分かるのだろう。

 

「レイン」

 

「はい」

 

「絶対に忘れるな」

 

トムは真剣な表情になった。

 

「船は夢じゃ」

 

「船大工は人の夢を形にする職業じゃ」

 

「だから笑われるくらいの夢で丁度いい」

 

レインは黙って聞いていた。

 

トムは巨大な手で夜空を指差す。

 

「世界一の船を目指すな」

 

「世界一の船大工も目指すな」

 

「目指すなら」

 

その言葉を区切り。

 

ゆっくりと続けた。

 

「誰も見たことがない船を作れ」

 

夜空の星が輝いている。

 

潜水艦。

 

ステルス技術。

 

空飛ぶ船。

 

今はまだ夢物語だ。

 

だがレインには分かっていた。

 

前世の知識と、この世界の技術。

 

そして仲間たちがいれば、不可能ではない。

 

その夜、誰にも知られぬまま、未来の世界を変える構想が、一人の少年と一人の船大工の間で語られたのだった。

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