ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百一話「海軍の英雄と伝説の船大工」

 

トムが来島してから三日後。

 

レイン商会はいつも通り忙しく動いていた。

 

造船所では新しい船の建造が進み、鍛冶場では金属を打つ音が響く。

 

採掘場からは鉄鉱石が運び込まれ、港には商船が何隻も停泊していた。

 

十二歳となったレインは執務室で書類に目を通していた。

 

そんな時だった。

 

ふと見聞色に巨大な気配が引っ掛かる。

 

「……またか」

 

思わずため息が漏れる。

 

島の沖合。

 

軍艦。

 

そして異常なまでに強い存在感。

 

数年前に何度も感じた気配だった。

 

「ガープさんか……」

 

レインは額を押さえる。

 

新聞を見て来るだろうとは思っていた。

 

だが予想以上に早かった。

 

相変わらず行動力がおかしい。

 

レインは立ち上がった。

 

「ちょっと港行ってきます」

 

秘書役をしている社員が首を傾げる。

 

「何かあったんですか?」

 

「海軍です」

 

「えっ!?」

 

社員が青ざめる。

 

だがレインは苦笑した。

 

「大丈夫です」

 

「たぶんいつものですから」

 

その言葉を残して港へ向かった。

 

その頃、沖合を進む軍艦の船首では、ガープがせんべいを食べていた。

 

島まであと少し。

 

その時だった。

 

ガープの眉が僅かに動く。

 

「ほう……」

 

周囲の海兵たちが振り返る。

 

「どうかされましたか?」

 

ガープはニヤリと笑った。

 

「面白いことになっとる」

 

そして目を閉じる。

 

感じる。

 

島の中心から伸びる気配。

 

数年前に会った少年のものだ。

 

だが以前とは比べものにならない。

 

「見聞色か」

 

ガープは笑う。

 

「しかも相当鍛えとるな」

 

軍艦はそのまま港へ到着した。

 

巨大な軍艦が接岸すると、島民たちがざわめく。

 

「海軍だ!」

 

「ガープ中将だぞ!」

 

「本当に来た!」

 

ガープは豪快に船から飛び降りた。

 

「わっはっはっは!」

 

「レインのやつはどこじゃ!」

 

その瞬間、港の反対側から声が飛ぶ。

 

「ここです」

 

ガープが振り返る。

 

そこにはレインが立っていた。

 

十二歳になった少年を見た瞬間。

 

ガープの目が細くなる。

 

「なるほどのう」

 

「やはり見聞色じゃったか」

 

レインは苦笑した。

 

「まぁ、一応」

 

「一応じゃと?」

 

ガープは笑う。

 

「ワシが島へ近付いた時には既に気付いておったじゃろう」

 

図星だった。

 

レインは肩を竦める。

 

それを見た海兵たちが驚く。

 

まだ十二歳の子供だ。

 

それなのに海軍の英雄が当然のように覇気の話をしている。

 

ガープはさらにレインを見る。

 

そして次の瞬間。

 

ニヤリと笑った。

 

「武装色も覚えたな?」

 

レインの表情が固まる。

 

「……分かります?」

 

「当たり前じゃ」

 

ガープは豪快に笑った。

 

「むしろ分からん方がおかしいわ!」

 

そのやり取りを聞いていたトムが目を丸くする。

 

「待て待て」

 

「今の話は覇気か?」

 

ガープが頷く。

 

「そうじゃ」

 

トムがレインを見る。

 

「お前さん、覇気まで使えるようになったのか?」

 

「まぁ、少しだけですけど」

 

「少しだけの顔じゃないわい!」

 

トムが思わず突っ込む。

 

するとガープが真顔になった。

 

「どれくらい見える?」

 

レインは少し考える。

 

そして正直に答えた。

 

「集中すれば島全体ですね」

 

その場が静まり返った。

 

海兵たちが固まる。

 

トムも固まる。

 

ガープですら一瞬言葉を失った。

 

「……島全体?」

 

「はい」

 

「全部か?」

 

「だいたいの位置くらいですけど」

 

沈黙。

 

数秒後。

 

ガープは頭を抱えた。

 

「なんじゃその才能は……」

 

十二歳である。

 

しかも本格的な戦闘経験はほとんどない。

 

それにも関わらず島全体を感知できる見聞色。

 

普通ではない。

 

完全に異常だった。

 

トムが感心したように口笛を吹く。

 

「船大工の才能だけじゃなかったんじゃな」

 

「いや、俺としては船大工の方が本業なんですけど」

 

レインがそう言うと、ガープが勢いよく肩を掴んだ。

 

「よし!」

 

嫌な予感がした。

 

「レイン!」

 

「海軍に入らんか!」

 

やっぱりだった。

 

レインは即答する。

 

「断ります」

 

「なんでじゃ!」

 

「社長なんで」

 

「会社は誰かに任せればよかろう!」

 

「嫌です」

 

「給料も出るぞ!」

 

「今の方が稼いでます」

 

ガープが固まる。

 

周囲の海兵たちが吹き出した。

 

トムは腹を抱えて大笑いする。

 

「ガハハハハハ!」

 

「一本取られたのう!」

 

ガープも負けじと笑い出した。

 

「わっはっはっは!」

 

港に二人の豪快な笑い声が響き渡る。

 

海軍の英雄。

 

伝説の船大工。

 

その二人が気に入っている少年。

 

レイン自身は気付いていなかった。

 

だがこの日、港にいた誰もが思った。

 

――あの少年はきっと、とんでもない大物になる。

 

そしてその予感は、決して間違いではなかった。

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