ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百三話「新しい弟子候補」

ガープが来島してから数日後。

 

海軍の英雄はなぜかまだ島に居座っていた。

 

「なんでまだ帰らないんですか?」

 

執務室で書類仕事をしていたレインは、目の前でせんべいを食べている老人を見て呆れた。

 

「暇だからじゃ」

 

「帰ってください」

 

「冷たいのう」

 

ガープは全く気にした様子もない。

 

まるで自分の家である。

 

レインは深いため息を吐いた。

 

そんな時だった。

 

ガープが何かを思い出したように口を開く。

 

「そういえばじゃ」

 

「何ですか?」

 

「二年前に海軍へ入隊した若いのがおる」

 

レインは書類から目を離さず返事をした。

 

「へぇ」

 

「クザンという男じゃ」

 

その名前を聞いた瞬間。

 

レインの手が止まった。

 

もちろん知っている。

 

将来、海軍大将『青キジ』と呼ばれる男だ。

 

だが表情には出さない。

 

「それが?」

 

「なかなか筋が良い」

 

ガープは楽しそうに笑う。

 

「ワシの弟子にしようと思っとる」

 

レインは頷いた。

 

ガープが弟子を取ること自体は不思議ではない。

 

むしろ当然だろう。

 

「良いんじゃないですか?」

 

「じゃろ?」

 

ガープは満足そうだった。

 

しかし次の言葉で全てが崩れた。

 

「だからここで育てようと思う」

 

「は?」

 

レインは顔を上げた。

 

「今なんて言いました?」

 

「ここで育てる」

 

「海軍でやってくださいよ!」

 

思わず机を叩く。

 

ガープは不思議そうな顔をした。

 

「何故じゃ?」

 

「何故じゃじゃないですよ!」

 

レインは頭を抱えた。

 

ガープは真面目な顔で指を折り始める。

 

「軍艦がある」

 

「ありますね」

 

「海がある」

 

「ありますね」

 

「広い」

 

「広いですね」

 

「廃船もたくさんある」

 

「ありますね」

 

「完璧じゃろ?」

 

「全然完璧じゃないです!」

 

ガープは納得していない。

 

むしろ名案を思い付いた顔をしている。

 

そして追い打ちをかけるように言った。

 

「それにお前さんもおる」

 

レインは嫌な予感しかしなかった。

 

「まさか」

 

「クザンに覇気を教えてやってくれ」

 

執務室が静まり返る。

 

レインは天井を見上げた。

 

「なんでだよ……」

 

思わず本音が漏れる。

 

ガープは豪快に笑った。

 

「見聞色ならお前さんの方が上手そうじゃからな!」

 

「勝手に決めないでください」

 

「頼んだぞ」

 

「だから聞いてください」

 

話にならない。

 

するとその時、

 

コンコン。

 

執務室の扉が叩かれた。

 

「失礼します」

 

入ってきたのはルークだった。

 

十五歳となった今ではレイン商会の中核を担う存在である。

 

書類整理、現場管理、職人たちとの調整。

 

レインの右腕として十分すぎるほど成長していた。

 

その姿を見た瞬間、レインの脳内に名案が浮かぶ。

 

「ガープさん」

 

「なんじゃ?」

 

「その話、受けても良いですよ」

 

ガープの顔が明るくなる。

 

「本当か!?」

 

「その代わり」

 

レインはルークの肩を掴んだ。

 

「こいつもお願いします」

 

ルークが固まる。

 

「……はい?」

 

ガープがルークを見る。

 

レインは満面の笑みだった。

 

「ルークです」

 

「将来の俺の右腕です」

 

「鍛えてください」

 

数秒の沈黙。

 

そして、

 

「嫌です」

 

ルークは即答だった。

 

レインは首を傾げる。

 

「嫌か?」

 

「嫌に決まってるじゃないですか!」

 

ルークは思わず声を上げた。

 

相手は海軍の英雄である。

 

嫌な予感しかしない。

 

「右腕になりたいんだろ?」

 

「なりたいですけど!」

 

「じゃあ強くならないとな」

 

「話が飛躍してます!」

 

ルークは必死だった。

 

レインは真顔で続ける。

 

「強くなりたくないのか?」

 

「なりたいです!」

 

「なら決まりだな」

 

「決まってません!」

 

ルークは全力で首を横に振った。

 

しかしガープは面白そうに笑っている。

 

「ほう」

 

「なかなか元気な小僧じゃな」

 

「嫌な予感しかしません!」

 

ルークは後退る。

 

だがレインは逃がさない。

 

肩をしっかり掴んでいた。

 

「社長!」

 

「何だ?」

 

「俺、事務仕事なら頑張ります!」

 

「知ってる」

 

「営業も頑張ります!」

 

「知ってる」

 

「だから鍛錬は勘弁してください!」

 

「駄目だ」

 

即答だった。

 

ルークの顔から血の気が引く。

 

ガープは豪快に笑った。

 

「わっはっはっは!」

 

「安心せい!」

 

「死なん程度には加減してやる!」

 

「死にかける前提じゃないですか!」

 

ルークは絶叫した。

 

レインは満足そうに頷く。

 

これで自分だけ面倒事を押し付けられずに済む。

 

素晴らしい解決策だった。

 

たぶん...

 

「鬼畜ですー!!」

 

ルークの悲鳴が執務室に響き渡る。

 

その様子を見ながらガープは上機嫌でせんべいを齧った。

 

そして数週間後、未来の海軍大将クザンが、この島へやって来る。

 

それがレインとクザン。

 

二人の天才が出会う瞬間になることを、まだ誰も知らなかった。

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