ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
クザンが島へやって来た翌日。
朝早くからレインは造船所の裏にある空き地へ来ていた。
元々は廃船を解体するための場所だったが、今では鍛錬場としても使われている。
その中央にはレインとクザン。
少し離れた場所にはガープとルークがいた。
「それじゃあ始めますか」
レインは軽く肩を回した。
クザンも首を鳴らす。
「何をやるんですか〜?」
「まずは実力確認です」
レインは真面目な顔で答えた。
「どの程度できるか分からないと教えようがありませんから」
クザンは納得したように頷く。
確かにその通りだ。
ガープも腕を組みながら見ている。
「遠慮せんで良いぞ」
「はい」
レインは頷いた。
ただ一つ問題がある。
クザンの実力を知らない。
将来強くなることは知っている。
だが今はまだ入隊二年目。
どれくらい強いのか全く分からなかった。
「じゃあ軽く組手で」
「了解です〜」
クザンはのんびり構えた。
その姿を見てレインは少し安心する。
覇気は感じない。
まだ使えないのだろう。
なら本当に軽くで良い。
そう判断した。
「いきますよ」
「どうぞ〜」
次の瞬間、レインは踏み込んだ。
地面が弾ける。
そして拳を放つ。
本当に軽く。
本人としてはそのつもりだった。
だが...
バゴォンッ!!
凄まじい音が響いた。
クザンの身体が宙を舞う。
十メートル。
二十メートル。
三十メートル。
そのまま地面を転がり、ようやく停止した。
沈黙。
誰も動かない。
レインも固まった。
「……え?」
恐る恐るクザンを見る。
動かない。
ピクリとも動かない。
嫌な予感しかしなかった。
レインは全力で駆け寄る。
「クザンさん!?」
返事がない。
「クザンさん!?」
肩を揺する。
すると、
「すぅ……」
寝息が聞こえた。
いや違う。
気絶している。
完全に。
綺麗に。
一発だった。
レインの顔から血の気が引く。
「やっちまったぁぁぁぁ!」
頭を抱える。
その様子を見てルークも青ざめた。
「社長!?」
「大丈夫なんですか!?」
「分からん!」
レインは慌てていた。
本気ではない。
本当に軽く殴っただけだ。
だが相手の実力を完全に見誤っていた。
すると、後ろから豪快な笑い声が響く。
「わっはっはっはっは!!」
ガープだった。
腹を抱えて笑っている。
「笑い事じゃないですよ!」
レインが叫ぶ。
ガープは涙を拭きながら言った。
「お前さん、自分の強さ分かっとらんのか?」
「え?」
「見聞色も武装色も鍛えとる」
「毎日鍛錬しとる」
「その辺の海兵とは比べ物にならんぞ」
レインは固まった。
言われてみればその通りだった。
自分の基準がおかしくなっている。
普段比較する相手がガープやトムだからだ。
結果として、一般的な海兵の強さが分からなくなっていた。
ルークが呆れたように言う。
「社長……」
「何だ?」
「自覚してください」
ぐうの音も出ない。
そんな時だった。
「うぅ……」
クザンが目を覚ました。
レインは飛び上がる。
「大丈夫ですか!?」
クザンはぼんやり空を見上げていた。
そして、
「強すぎません〜?」
第一声がそれだった。
レインは申し訳なくなる。
「すみません!」
「いやぁ……」
クザンは苦笑した。
「まさか十二歳の少年に一発でやられるとは思いませんでしたよ〜」
その言葉にルークが頷く。
「俺もです」
「お前は黙ってろ」
レインが即座に突っ込んだ。
ガープは満足そうに笑う。
「よし!」
「実力差は分かったな!」
レインは嫌な予感しかしなかった。
そして予感は当たる。
「クザン!」
「はい〜?」
「まずはレインへ一発当てるところから始めるぞ!」
「難易度高すぎません〜?」
クザンが真顔になった。
ルークも激しく頷く。
レインは空を見上げる。
どうやら前途多難な修行になりそうだった。
そして未来の海軍大将クザンは、この日初めて理解する。
十二歳の天才発明家レインが、想像以上の化け物だったことを。