ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
クザンが島へ来てから一週間が経った。
その間、レインとクザンは毎日組手を繰り返していた。
朝。
昼。
そして夕方。
暇さえあれば鍛錬である。
最初こそ一発で気絶したクザンだったが、流石は後の海軍大将候補だった。
成長速度がおかしい。
最初の日はレインの動きすら見えていなかった。
二日目には何とか反応できるようになった。
三日目には攻撃の軌道を読めるようになった。
五日目には数発なら防げるようになった。
そして七日目。
クザンは額の汗を拭いながら肩で息をしていた。
「はぁ……はぁ……」
対するレインは平然としている。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないですよ〜」
クザンはその場へ寝転がった。
「一週間ですよ?」
「はい」
「一発も当たらないんですけど〜」
その通りだった。
一週間。
毎日何十回も組手をしている。
それなのに、クザンは未だにレインへ一発も攻撃を当てられていなかった。
レインの見聞色が厄介すぎるのである。
攻撃しようと思った瞬間には避けられる。
フェイントも通じない。
奇襲も意味がない。
クザンは空を見上げた。
「これ本当に人間ですか〜?」
「失礼ですね」
レインは苦笑する。
するとクザンが起き上がった。
「でも確かに強くはなってる気がするんですよねぇ」
「それは良かったです」
実際、レインもそう思っていた。
たった一週間。
それだけでクザンは別人のように成長している。
今なら東の海の海賊程度なら普通に倒せるだろう。
やはり才能は本物だった。
そんな時だった。
どこからか声が聞こえてくる。
「助けてくださーい!!」
レインとクザンが同時に顔を上げる。
「ん?」
「何ですかねぇ?」
再び声が響いた。
「誰かぁぁぁぁぁ!!」
今度ははっきり聞こえた。
空からである。
二人は上を見上げた。
そして固まった。
「……」
「……」
空高く。
何かが飛んでいる。
いや...人だった。
さらによく見る。
風船だ。
大量の風船。
そしてその下に人がぶら下がっている。
「助けてくださぁぁぁい!!」
聞き覚えのある声だった。
レインは頭を抱える。
クザンは目を丸くする。
「ルークさん?」
その通りだった。
ルークだった。
大量の風船に括り付けられ、空を飛んでいた。
正確には飛ばされていた。
「なんであんなことになってるんですか?」
クザンが真顔で聞く。
レインも知りたい。
むしろ教えてほしい。
そんな時、後ろから豪快な笑い声が聞こえた。
「わっはっはっはっは!」
振り返る。
ガープだった。
レインは嫌な予感しかしなかった。
「ガープさん」
「なんじゃ?」
「何したんですか?」
ガープは悪びれもせず答える。
「度胸試しじゃ」
「度胸試し?」
「高い所に慣れさせようと思ってのう!」
「意味が分からない」
レインは即答した。
クザンも頷く。
「意味分からないですねぇ」
二人の意見は一致した。
その間にも...
「死ぬぅぅぅぅぅ!!」
ルークが空で叫んでいる。
島民たちは面白がって見上げていた。
誰も助けようとしない。
完全に日常になりつつあった。
「社長ぉぉぉぉ!!」
ルークが泣きそうな声で叫ぶ。
「助けてくださぁぁぁい!!」
レインはため息を吐いた。
「クザンさん」
「はい〜?」
「助けに行きましょう」
「ですよねぇ」
二人は走り出した。
空ではルークが必死に暴れている。
その度に風船が揺れる。
見ているだけで危険だった。
「ガープさん!」
レインが振り返る。
「何じゃ?」
「本当に死なない程度にしてくださいよ!」
ガープは豪快に笑った。
「わっはっはっは!」
「たぶん大丈夫じゃ!」
「たぶんって言いましたね!?」
レインの叫びが響く。
クザンは笑いを堪えていた。
そして思う...
この男、思っていたよりずっとおかしい。
そんな中、空から再び悲鳴が降ってきた。
「助けてくださぁぁぁぁい!!」
どうやらルークの受難は、まだまだ終わりそうになかった。