ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百九話「それぞれの成長」

 

ガープとクザンが島へやって来てから二か月。

 

ようやく、その修行の日々にも終わりが訪れようとしていた。

 

港には海軍の軍艦が停泊している。

 

出航準備は既に完了していた。

 

甲板では海兵たちが慌ただしく動き回っている。

 

その様子を見ながら、レインは小さく息を吐いた。

 

「やっと終わったか……」

 

正直な感想だった。

 

楽しくなかったわけではない。

 

むしろ得るものは多かった。

 

しかし、騒がしすぎた。

 

ガープがいるだけで島の平均騒音レベルが上がるのである。

 

「何じゃ、その言い方は」

 

隣で聞いていたガープが不満そうに言った。

 

「いや、事実ですから」

 

「冷たいのう」

 

ガープは笑う。

 

その横ではクザンが苦笑していた。

 

二か月前と比べると、明らかに雰囲気が変わっている。

 

体つきも少し引き締まった。

 

何より目つきが鋭くなっていた。

 

レインは改めてクザンを見る。

 

本当に成長した。

 

軍艦バッグ。

 

組手。

 

体術訓練。

 

走り込み。

 

地獄のような日々だったはずだ。

 

それでもクザンは逃げなかった。

 

その結果、まだ未熟ながらも見聞色の感覚を掴み始めていた。

 

武装色もあと一歩。

 

恐らくあと一か月もあれば習得するだろう。

 

普通なら数年掛かる。

 

異常な成長速度だった。

 

(流石は未来の大将か)

 

レインは内心で苦笑する。

 

本当に化け物である。

 

するとクザンも同じことを考えていたらしい。

 

「いやぁ……」

 

頭を掻きながら言う。

 

「俺からすると、レインさんの方が化け物なんですけどねぇ」

 

「失礼だな」

 

「事実じゃないですか〜」

 

即答だった。

 

その言葉にルークも何度も頷く。

 

「本当にそうです」

 

「お前までか」

 

レインが呆れる。

 

しかし否定できない部分もあった。

 

この二か月。

 

レイン自身も成長していたからだ。

 

特に大きかったのは武装色だった。

 

ある日の組手中。

 

何となく流れを感じた。

 

覇気を纏うのではない。

 

流す。

 

そして内部から破壊する。

 

最初は偶然だった。

 

しかし何度も試し、繰り返すうちに確信へ変わった。

 

流桜。

 

ワノ国で使われる高等武装色。

 

レインはそれを習得していた。

 

もちろんまだ完璧ではない。

 

それでも十二歳で到達する領域ではない。

 

ガープですら驚いていた。

 

そして、その数日後さらに驚く出来事が起きた。

 

「そういえば」

 

ガープが何気なく言った。

 

「お前さん、気付いておらんのか?」

 

「何がです?」

 

「覇王色漏れておるぞ」

 

その瞬間、レインは固まった。

 

「……は?」

 

数秒思考が止まる。

 

「今なんて言いました?」

 

「覇王色じゃ」

 

ガープは当然のように答える。

 

「最近ちょくちょく漏れとるぞ」

 

レインは本気で驚愕した。

 

覇王色。

 

王の資質を持つ者だけが使える力。

 

自分にもあるだろうとは思っていた。

 

祖先の話を考えれば不思議ではない。

 

しかし、既に発現しているとは思わなかった。

 

「いやいやいや……」

 

思わず頭を抱える。

 

ガープは笑った。

 

「まあ安心せい」

 

「安心できる要素あります?」

 

「お前さんならすぐ制御できる」

 

ガープは断言した。

 

「見聞色も武装色も覚えとる」

 

「流桜まで使える」

 

「今更じゃろ」

 

確かに言われてみればそうかもしれない。

 

レインは深く息を吐いた。

 

またやることが増えた。

 

嬉しいような。

 

面倒なような。

 

複雑な気分だった。

 

一方その頃、ルークも成長していた。

 

覇気の習得こそ間に合わなかった。

 

しかし、

 

「見てください!」

 

ルークが叫ぶ。

 

次の瞬間、

 

シュンッ!

 

姿が消える。

 

そして十メートル先へ現れた。

 

六式。

 

その一つ。

 

剃。

 

ガープの地獄の特訓の末、どうにか習得したのである。

 

「おお」

 

クザンが拍手する。

 

「凄いじゃないですか〜」

 

「でしょう!」

 

ルークは珍しく胸を張った。

 

その顔には達成感がある。

 

二か月前とは別人だった。

 

もっとも、

 

「じゃが遅い」

 

ガープの一言で全て台無しになった。

 

「そこは褒めてくださいよ!」

 

ルークが叫ぶ。

 

港に笑い声が響いた。

 

そして出航の時間が訪れる。

 

ガープとクザンは軍艦へ乗り込む。

 

レインとルークは岸壁から見送っていた。

 

するとガープが突然振り返る。

 

「そうじゃ」

 

嫌な予感しかしない。

 

レインは顔をしかめた。

 

ガープは満面の笑みを浮かべる。

 

「今、大将の席が空いとるぞ」

 

「はい?」

 

「元帥に言えば今からでもなれるかもしれん」

 

レインは即答した。

 

「だから行きませんって」

 

「惜しいのう」

 

ガープは本気で残念そうだった。

 

「お前さんなら大将どころか元帥も狙えるぞ」

 

「興味ありません」

 

「即答か」

 

ガープは笑う。

 

その様子を見ていたクザンとルークは同時に遠い目になった。

 

海軍大将へ誘われる男。

 

東の海最大企業の社長。

 

十二歳で流桜習得。

 

見聞色は島全域を感知。

 

さらに覇王色持ち。

 

普通ならあり得ない。

 

「やっぱり化け物ですねぇ……」

 

クザンが呟く。

 

「本当にそう思います」

 

ルークも同意した。

 

レインは不満そうな顔をする。

 

しかし二人は気にしない。

 

事実だからだ。

 

やがて軍艦がゆっくりと港を離れていく。

 

ガープは最後まで手を振っていた。

 

「また来るぞー!」

 

「来なくて良いですー!」

 

レインとルークの声が綺麗に重なる。

 

それを聞いたガープの豪快な笑い声が海へ響いた。

 

こうして二か月に及ぶ騒がしい日々は終わりを迎える。

 

しかし、

 

レインも。

 

クザンも。

 

ルークも。

 

確実に強くなっていた。

 

そして誰も知らない。

 

今日別れた三人が、未来の世界を大きく動かす存在になることを。

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