ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
センゴクから連絡を受けてから一か月。
レインは相変わらず忙しい日々を送っていた。
新しい造船依頼。
商会の拡張計画。
採掘場の管理。
鍛冶場の増設。
そして毎日の鍛錬。
やることは山ほどあった。
しかし、その甲斐あってようやく大きな案件が一段落する。
執務室で最後の書類へ判を押したレインは、大きく伸びをした。
「終わった……」
「終わりましたね」
向かいに座るルークも安堵した表情を浮かべる。
二人ともここ数日はかなり忙しかった。
特にレインは社長業と鍛錬を並行しているため、まとまった休みなどほとんどない。
そんな中で海軍本部へ行く以上、中途半端な状態では出発できなかったのだ。
「それじゃあ連絡するか」
レインは机の上に置かれた電伝虫へ手を伸ばした。
数分後、
『そうか、準備が整ったか』
センゴクの声が聞こえる。
「はい」
『分かった』
『迎えを向かわせよう』
レインは少しだけ緊張した。
そして確認する。
「ちなみに迎えは……」
『安心しろ』
センゴクが即答した。
『ガープではない』
レインは思わず拳を握った。
「よかった!」
心の底からの言葉だった。
隣でルークも大きく頷く。
『そこまで喜ぶか』
センゴクが苦笑する。
「喜びますよ」
「島が無事に済みますから」
『なるほど』
電話の向こうで誰かの怒鳴り声が聞こえた気がした。
『何故ワシでは駄目なんじゃ!』
聞き覚えのある声だった。
レインとルークは顔を見合わせる。
「……ガープさんですよね?」
『ああ』
センゴクがため息を吐く。
『最後まで自分が迎えに行くと言って聞かなかった』
「想像できます」
「凄く想像できます」
二人の意見は完全に一致した。
『安心しろ』
『今回はおつる中将に任せる』
その言葉を聞いた瞬間、レインは本気で安心した。
「よかった……」
「本当によかったですね」
ルークまで感動していた。
電話の向こうでセンゴクが笑う。
『そこまで言われるガープも不憫だな』
『全然不憫じゃないわい!』
またガープの声が聞こえた。
どうやら近くにいるらしい。
『それでは数日後に迎えを向かわせる』
『準備をしておいてくれ』
「分かりました」
電話が切れる。
執務室に静寂が戻った。
レインは椅子へ深くもたれ掛かった。
「本当に海軍本部へ行くんだな」
「ですね」
ルークも少し緊張しているようだった。
海軍本部。
世界中の海兵が憧れる場所。
海軍の中心地。
そこへ行く機会など普通は一生ない。
その数日後、港には巨大な軍艦が停泊していた。
船首には一人の女性が立っている。
長い髪。
鋭い眼差し。
落ち着いた雰囲気。
海軍本部中将、おつるだった。
レインは軍艦を見ながら改めて安心する。
少なくとも島が壊れる心配はない。
その隣ではルークも同じことを考えていたらしい。
「社長」
「何だ?」
「本当におつる中将でよかったですね」
「分かる」
二人は真剣だった。
その時、後ろから声が掛かる。
「おいおい、お前たち」
振り返ると父が苦笑していた。
今回同行する三人目である。
レインの父。
名誉会長となった今でも商会にとって欠かせない存在だ。
「そんなにガープさんが嫌なのか?」
「嫌というか怖いんだよ」
レインが即答する。
「俺はもう空を飛びたくありません」
ルークも真顔で頷いた。
父は苦笑するしかなかった。
今回海軍本部へ向かうのは三人。
レイン。
ルーク。
そして父。
流石に十二歳の子供だけで海軍本部へ行かせるわけにはいかない。
また、この機会に父も世界を見ておきたいと考えていた。
そのため商会はしばらく休業である。
既に社員たちへは説明済みだった。
職人たちからは、
「社長、楽しんできてください!」
「海軍本部の話を聞かせてください!」
と送り出されている。
「それじゃあ行ってくるか」
レインが呟く。
父も頷く。
ルークは少し緊張した表情を浮かべながらも前を向いた。
その先には巨大な軍艦。
そしてグランドライン。
さらにその向こうには海軍本部が待っている。
東の海で生まれ育った少年たちは、今まさに世界の中心へ足を踏み入れようとしていた。
レインは海を見つめる。
前世でも経験したことのない冒険が始まろうとしている。
その胸には期待と好奇心が溢れていた。
そして誰も知らない。
この海軍本部への訪問が、後の世界へ大きな影響を与える出会いへ繋がることを。