ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百十二話「海軍本部への航海」

 

レインたちを乗せた軍艦は東の海を進んでいた。

 

出航から二日。

 

天候は快晴。

 

波も穏やかだった。

 

レインは船首に立ちながら海を眺めている。

 

その隣にはルーク。

 

少し後ろには父の姿もあった。

 

「凄いですね……」

 

ルークが感心したように呟く。

 

「何がだ?」

 

「軍艦ですよ」

 

ルークは船体を見回した。

 

「今まで島へ来る軍艦は何度も見てきましたけど、こうして乗るのは初めてです」

 

それはレインも同じだった。

 

海軍の軍艦。

 

世界中の海を守るために建造された船。

 

技術者として興味がないはずがない。

 

レインは手すりへ手を置きながら船体を観察する。

 

使われている木材。

 

補強材の配置。

 

帆の構造。

 

砲台の配置。

 

船底の設計。

 

どれも興味深い。

 

「流石だな……」

 

思わず感心する。

 

すると後ろから声が聞こえた。

 

「そうかい?」

 

振り返る。

 

そこにはおつる中将が立っていた。

 

相変わらず落ち着いた雰囲気を纏っている。

 

「おつる中将」

 

「船ばかり見ていると思ったら、やはり構造を見ていたんだね」

 

「職業病みたいなものです」

 

レインは苦笑した。

 

おつるも微笑む。

 

「ガープから聞いていた通りだね」

 

「何を聞いたんです?」

 

「船を見ると周りが見えなくなると」

 

レインは黙った。

 

否定できない。

 

ルークが吹き出した。

 

「その通りですね」

 

「お前な」

 

「事実じゃないですか」

 

最近ルークの遠慮が少し減った気がする。

 

恐らくガープの修行の影響だろう。

 

そんな二人のやり取りを見て、おつるは少しだけ笑った。

 

「なるほど」

 

「確かに聞いていた通りだ」

 

レインは少し嫌な予感がした。

 

「ガープさん、他に何を話していたんですか?」

 

「色々だよ」

 

おつるは意味深に微笑む。

 

「十二歳とは思えないとか」

 

「見聞色がおかしいとか」

 

「社長らしくない社長だとか」

 

「余計なことばっかりですね……」

 

レインは頭を抱えた。

 

おつるは楽しそうだった。

 

どうやらガープはかなり詳しく報告していたらしい。

 

そんな話をしているうちに、おつるが海を見ながら口を開く。

 

「あと数日もすればリヴァース・マウンテンだよ」

 

その言葉にルークが反応した。

 

「いよいよですか」

 

東の海で生まれ育った人間にとって、リヴァース・マウンテンは特別な場所だ。

 

四つの海からグランドラインへ入る唯一の入口。

 

誰もが一度は名前を聞く伝説の海域である。

 

レインも少し楽しみだった。

 

前世では当然見たことがない。

 

今世でも初めてだ。

 

「楽しみですね」

 

「そうだね」

 

おつるは頷いた。

 

「初めて見る者は大抵驚くよ」

 

その時だった。

 

ふとレインの表情が変わる。

 

見聞色が何かを捉えたのだ。

 

海の下。

 

かなり遠く。

 

巨大な生命反応。

 

レインは海を見つめた。

 

「どうしたんだい?」

 

おつるが気付く。

 

「何かいます」

 

「何か?」

 

「かなり大きいですね」

 

ルークの顔が引き攣る。

 

「かなり大きいって……」

 

その瞬間、海面が大きく盛り上がった。

 

次の瞬間、巨大な影が姿を現す。

 

海王類だった。

 

しかも東の海では滅多に見られないほど巨大な個体である。

 

海兵たちがざわめく。

 

「海王類だ!」

 

「警戒しろ!」

 

「砲撃準備!」

 

軍艦の上が一気に緊張感へ包まれた。

 

しかしレインは落ち着いていた。

 

この一か月、ガープに言われた通り、覇王色の制御訓練を続けていた。

 

最初は上手くいかなかった。

 

意図せず漏れることもあった。

 

だが今では違う。

 

まだ完璧ではない。

 

それでも狙った相手へ向けて威圧する程度ならできるようになっている。

 

レインは一歩前へ出た。

 

海王類と視線がぶつかる。

 

次の瞬間、目には見えない圧力が海へ広がった。

 

海王類の動きが止まる。

 

巨大な瞳がレインを見つめる。

 

数秒の沈黙...

 

やがて海王類はゆっくりと進路を変えた。

 

そして軍艦から離れるように海の奥へ消えていく。

 

静寂...

 

誰もが呆然としていた。

 

ルークが最初に口を開く。

 

「逃げましたね」

 

「ああ」

 

レインは小さく頷いた。

 

おつるはその様子を静かに見ていた。

 

そして少しだけ感心する。

 

ガープから聞いていた話は本当らしい。

 

十二歳で覇王色を発現。

 

さらに一か月である程度制御できるようになった。

 

普通ではあり得ない。

 

「今のは覇王色かい?」

 

おつるが聞く。

 

レインは頷いた。

 

「はい」

 

「まだ完璧じゃありませんけど」

 

「十分過ぎるよ」

 

おつるは苦笑した。

 

海軍本部でも、覇王色を扱える者などほんの一握りだ。

 

それを十二歳の少年が当然のように使っている。

 

ルークも肩を竦めた。

 

「最初は島の鳥が気絶したりして大変だったんですよ」

 

「ルーク」

 

「事実じゃないですか」

 

レインは反論できなかった。

 

実際そうだったからだ。

 

おつるは思わず笑う。

 

そして改めてレインを見る。

 

十二歳で商会を率いる社長。

 

流桜の使い手。

 

覇王色の覇気まで扱う天才。

 

なるほど、センゴクが興味を持つのも分かる。

 

コング元帥が呼びたがるのも分かる。

 

おつる自身も、この少年がどこまで成長するのか見てみたくなっていた。

 

「レイン君」

 

「何ですか?」

 

「海軍本部へ着いたら驚くと思うよ」

 

「そんなに凄いんですか?」

 

「ああ」

 

おつるは微笑んだ。

 

「世界中の強者と才能が集まる場所だからね」

 

レインも海の向こうを見る。

 

海軍本部。

 

世界の中心。

 

未来の大将たち。

 

数多くの英雄。

 

そして世界最高峰の技術や知識。

 

どんな人物と出会えるのか。

 

どんな景色が待っているのか。

 

期待は膨らむばかりだった。

 

軍艦は今日も進む。

 

東の海を越え。

 

世界の中心へ向かって。

 

レインたちを乗せた航海は、順調に続いていた。

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