ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百十四話「巨大ドック」

 

海軍本部へ到着した翌日。

 

レインたちは、本部内に用意された宿舎で朝を迎えていた。

 

窓の外からは、既に海兵たちの訓練する声が聞こえてくる。

 

まだ朝早い時間だというのに、海軍本部は活気に満ちていた。

 

東の海では見られない光景である。

 

ルークは窓際に立ちながら外を眺めていた。

 

「流石は海軍本部ですね」

 

感心したように呟く。

 

「朝からあんなに人が動いてるなんて……」

 

父も窓の外を見ながら頷いた。

 

「世界中から海兵が集まる場所だからな」

 

「東の海とは規模が違う」

 

一方、その頃のレインはというと、既に机へ向かっていた。

 

紙と鉛筆を広げ、何やら図面を書いている。

 

ルークが呆れたような視線を向けた。

 

「社長」

 

「何だ?」

 

「旅行先でも仕事ですか?」

 

「違う」

 

レインは顔を上げる。

 

「昨日見た軍艦の構造を思い出してる」

 

「やっぱり仕事じゃないですか」

 

「違う」

 

「違いません」

 

そんなやり取りをしていると、部屋の扉がノックされた。

 

コンコン。

 

「入るぞ」

 

聞き覚えのある声だった。

 

扉が開く。

 

そこに立っていたのはセンゴクだった。

 

「おはようございます」

 

レインたちは立ち上がる。

 

センゴクは軽く手を上げた。

 

「そんなに固くならなくて良い」

 

「よく眠れたか?」

 

「はい」

 

レインが答える。

 

センゴクは満足そうに頷いた。

 

「それなら良かった」

 

そして少し笑みを浮かべる。

 

「今日は海軍本部を案内しようと思う」

 

その言葉にルークの目が輝いた。

 

父も興味深そうな表情を浮かべる。

 

海軍本部見学。

 

普通なら一生経験できないことだ。

 

しかし、

 

「ドックはありますか?」

 

レインだけ反応が違った。

 

センゴクが一瞬固まる。

 

「……あるぞ」

 

「見たいです」

 

即答だった。

 

ルークが頭を抱える。

 

「社長」

 

「何だ?」

 

「普通は訓練場とか本部施設じゃないんですか?」

 

「軍艦の方が気になる」

 

「でしょうね!」

 

ルークはため息を吐いた。

 

父も苦笑する。

 

センゴクは肩を震わせながら笑った。

 

「ガープの言う通りだな」

 

「何て言ってたんです?」

 

レインが聞く。

 

センゴクは即答した。

 

「船を見せれば機嫌が良くなる」

 

レインは否定できなかった。

 

結局、最初の目的地は巨大ドックになった。

 

海軍本部の港を抜ける。

 

途中ですれ違う海兵たちは、皆忙しそうに動いていた。

 

補給品を運ぶ者。

 

訓練へ向かう者。

 

会議へ向かう将校。

 

東の海では見たことのない規模で人が動いている。

 

そして数分後、目的地へ到着した。

 

レインは思わず立ち止まる。

 

言葉が出なかった。

 

広い...とにかく広い。

 

目の前には巨大なドックが広がっていた。

 

何十隻もの軍艦が並んでいる。

 

修理中の船。

 

補給中の船。

 

建造途中の船。

 

どこを見ても軍艦ばかりだった。

 

「でか……」

 

レインが呟く。

 

ルークも同じだった。

 

「これは凄いですね……」

 

父も圧倒されている。

 

センゴクはその様子を見て満足そうだった。

 

「海軍本部最大のドックだ」

 

「常時数十隻の軍艦を整備している」

 

レインは既に歩き出していた。

 

吸い寄せられるように軍艦へ近付いていく。

 

そして船体を見上げる。

 

厚い船板。

 

補強材の配置。

 

砲門の数。

 

帆の構造。

 

船首の形状。

 

その全てを目で追う。

 

「なるほど……」

 

思わず声が漏れる。

 

「東の海の軍艦より船体が厚い」

 

センゴクが眉を上げた。

 

「分かるのか?」

 

「分かります」

 

レインは船体を軽く叩いた。

 

「補強も多いですね」

 

「グランドライン仕様だな」

 

「その通りだ」

 

センゴクは感心する。

 

レインはさらに観察を続ける。

 

「航続距離も長そうだ」

 

「補給量が違う」

 

「長期航海前提ですね」

 

「その通りだ」

 

再び正解。

 

センゴクは苦笑した。

 

僅か数分見ただけでここまで見抜く者は少ない。

 

やはりガープの報告は間違っていなかった。

 

一方、その頃、周囲の整備兵たちはざわついていた。

 

「あれがレイン商会の社長か?」

 

「本当に子供じゃないか」

 

「十二歳らしいぞ」

 

「クザンを鍛えたって聞いた」

 

「ガープ中将が絶賛してた奴だろ?」

 

噂は既に広がっている。

 

しかし本人は全く気付いていなかった。

 

軍艦しか見ていないからだ。

 

ルークが苦笑する。

 

「社長」

 

「何だ?」

 

「見られてますよ」

 

「そうか」

 

興味がないらしい。

 

再び軍艦へ視線を向ける。

 

ルークは呆れた。

 

父も苦笑するしかない。

 

そんな時だった。

 

レインの足が止まる。

 

視線の先には建造途中の軍艦があった。

 

他の船とは少し構造が違う。

 

まだ骨組みの段階だ。

 

しかしレインはじっと見つめている。

 

センゴクが気付いた。

 

「どうした?」

 

レインは建造中の船を指差した。

 

「あの船」

 

「うむ」

 

「設計した人、かなり優秀ですね」

 

センゴクが驚く。

 

まだ骨組みしか完成していない。

 

普通なら何も分からない。

 

しかしレインは続けた。

 

「重量配分が綺麗です」

 

「速度も出したい」

 

「でも安定性も捨てたくない」

 

「そんな設計ですね」

 

センゴクは黙る。

 

レインはさらに続けた。

 

「恐らく以前の設計で問題があったんでしょう」

 

「だから船尾側を改良している」

 

数秒の沈黙...

 

そして、

 

「正解だ」

 

センゴクは苦笑した。

 

レインの予想はほぼ当たっていた。

 

ルークと父が驚いた顔になる。

 

「骨組みだけで分かるんですか?」

 

ルークが聞く。

 

「分かるだろ」

 

レインは当然のように答えた。

 

「分かりませんよ」

 

即座に否定された。

 

センゴクも同意だった。

 

そんな人間は普通いない。

 

するとレインの目が輝いた。

 

「その人に会えますか?」

 

「設計者か?」

 

「ぜひ」

 

完全に技術者の顔だった。

 

その様子を見てルークが呟く。

 

「本当に船が好きなんですね……」

 

父も頷く。

 

「昔からこうなんだ」

 

センゴクは少し考えた。

 

そして静かに口を開く。

 

「面白いな」

 

「何がです?」

 

レインが首を傾げる。

 

「海軍本部へ来た人間は、大抵強い海兵や将校へ興味を持つ」

 

センゴクはレインを見る。

 

「だがお前は違う」

 

「そうですか?」

 

「軍艦しか見ていない」

 

レインは少し考えた。

 

そして真面目な顔で答える。

 

「強い人は鍛えれば増やせますが...」

 

センゴクが目を細める。

 

「ほう」

 

「でも良い船を作れる人は少ないです」

 

レインは建造中の軍艦を見る。

 

「船は人を運ぶ」

 

「物を運ぶ」

 

「世界を繋ぐ」

 

「だから良い船を作れる人は凄いと思うんです」

 

センゴクはしばらく何も言わなかった。

 

なるほど...この少年は根本から違う。

 

強さを求める人間ではない。

 

何かを作る人間だ。

 

だからこそ十二歳で会社を興した。

 

だからこそガープも気に入ったのだろう。

 

センゴクは小さく笑った。

 

「コング元帥が喜びそうな話だな」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ」

 

センゴクは意味深に頷いた。

 

レインはまだ知らない。

 

近いうちに行われる元帥との対談が、自分の将来について考えるきっかけになることを。

 

そして海軍本部には、まだまだ多くの出会いが待っていた。

 

未来の大将たち。

 

世界を動かす英雄たち。

 

そして後に歴史へ名を刻む者たち。

 

海軍本部編は、まだ始まったばかりだった。

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