ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
海軍本部造船部を後にしたレインたちは、センゴクの案内で本部内を歩いていた。
技術者たちとの会話は非常に有意義だった。
レイン自身も刺激を受けたし、海軍側も十二歳の少年の技術力に驚いていた。
「楽しかったです」
レインが素直に言う。
「そうか」
センゴクは笑った。
「造船部の連中も驚いていたぞ」
「図面を見ただけで問題点を指摘されたからな」
ルークが苦笑する。
「俺には何が書いてあるのかも分かりませんでしたけどね」
「勉強しろ」
「社長基準で言わないでください」
そんなやり取りをしながら歩いていると、再び遠くから轟音が響いた。
ドォォォン!!
地面が微かに震える。
先程、造船部でも聞こえた音だ。
ルークが肩を震わせる。
「またですか」
「元気だなぁ」
センゴクが呆れたように呟いた。
レインは見聞色を広げる。
先程感じた気配。
やはり強い。
しかも途切れない。
ずっと戦い続けているらしい。
「訓練場ですか?」
「ああ」
センゴクが頷く。
「少し寄っていくか」
数分後、レイン達一行は海軍本部の訓練場へ到着した。
広い。
とにかく広かった。
何百人もの海兵が訓練している。
剣術。
体術。
射撃。
様々な訓練が行われていた。
そして、その中心。
周囲より一段大きな訓練場がある。
そこへ人だかりができていた。
「またサカズキか」
「強いな……」
「何連勝だ?」
そんな声が聞こえてくる。
レインたちも近付く。
そして見た。
一人の若い海兵が立っている。
短く切った黒髪。
鋭い目つき。
全身から漂う緊張感。
まだ若い。
しかし、既に只者ではなかった。
その足元には訓練用の木刀を持った海兵が倒れている。
「参りました……」
海兵が悔しそうに言った。
サカズキは無言で頷く。
そして周囲を見渡した。
「次」
低い声だった。
周囲の海兵たちが顔を見合わせる。
しかし誰も前へ出ない。
それほど実力差があるらしい。
レインは静かに見ていた。
(強いな)
純粋な感想だった。
武装色はまだ感じない。
だが肉体が異常に鍛えられている。
毎日限界まで鍛えているのだろう。
その時だった。
サカズキの視線が動く。
真っ直ぐレインを見た。
数秒。
視線がぶつかる。
周囲の海兵たちも気付いた。
「あれ?」
「レイン商会の社長じゃないか?」
「本当に来てたのか」
ざわめきが広がる。
サカズキはゆっくりと歩いてくる。
そしてレインの前で止まった。
ルークが少し緊張する。
父も様子を見守る。
センゴクだけが苦笑していた。
何となくこうなる気がしていたのだ。
サカズキが口を開く。
「お前がレインか」
第一声がそれだった。
「はい」
レインも普通に答える。
「レインです」
サカズキは数秒黙る。
そして言った。
「思ったより小さいな」
「よく言われます」
レインは慣れた様子だった。
するとサカズキが続ける。
「クザンを鍛えたそうじゃな」
「少しだけです」
「少し、か」
サカズキはレインを見つめる。
そして聞いた。
「何故海軍へ入らん」
予想外ではなかった。
ガープにも。
センゴクにも。
何度も言われている。
レインは即答した。
「商会がありますから」
当然の理由だった。
サカズキも否定しない。
むしろ納得しているようだった。
しかし、
「勿体ない」
そう呟いた。
レインは少し首を傾げる。
サカズキは真っ直ぐ前を見る。
「その力があれば多くの人を守れる」
「海軍には強い人間が必要じゃ」
レインは少し考えた。
そして答える。
「船でも守れますよ」
サカズキが眉を動かした。
「何?」
「良い船は人を運びます」
「物も運びます」
「島と島を繋ぎます」
レインは真面目な顔だった。
「だから俺は船を作りたいんです」
サカズキは黙る。
しばらく沈黙が続いた。
価値観が違う。
それは互いに理解していた。
サカズキは力で守る男だ。
レインは技術で支える男だ。
どちらも間違っていない。
だからこそ議論にならない。
センゴクは横で腕を組んでいた。
(面白いな)
そう思う。
似ていない。
全く似ていない。
しかし二人とも本気で人を守ろうとしている。
そこだけは同じだった。
やがてサカズキが口を開く。
「なるほど」
短い言葉だった。
しかし先程までの警戒心は少し薄れていた。
レインもそれを感じる。
するとサカズキが言った。
「海軍へ入る気が変わったら来い」
ルークが苦笑する。
また勧誘だった。
レインは即答する。
「ないです」
周囲が静かになった。
海兵たちが固まる。
センゴクが額を押さえる。
ルークは笑いを堪えていた。
サカズキの額に青筋が浮かぶ。
だが怒りはしない。
ただ一言だけ言った。
「そうか」
その声は少しだけ残念そうだった。
レインはそんなサカズキを見て思う。
(真面目な人だな)
一方のサカズキも思っていた。
(変わった奴じゃ)
第一印象は決して良くない。
しかし、互いに実力だけは認めていた。
海軍本部。
そこにはまだまだ多くの出会いが待っている。
そして次にレインが出会う人物もまた、後の世界を大きく動かす男だった。