ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百十七話「ボルサリーノ」

 

サカズキとの会話を終えた後、レインたちは再び海軍本部内を歩いていた。

 

「面白い人でしたね」

 

レインがぽつりと呟く。

 

その隣でルークが苦笑した。

 

「面白いですかね?」

 

「真面目だっただろ」

 

「真面目過ぎるとおもいます」

 

「そうか?」

 

「そうです」

 

ルークは即答した。

 

レインは首を傾げる。

 

そこまで変だっただろうか。

 

確かに少し堅い性格ではあった。

 

だが根は真っ直ぐな人間に見えた。

 

センゴクも苦笑している。

 

「まあ、サカズキは昔からあんな感じだ」

 

「昔からですか」

 

「ああ」

 

センゴクはため息を吐く。

 

「訓練」

 

「鍛錬」

 

「正義」

 

「頭の中は大体それだ」

 

「なるほど」

 

レインは納得した。

 

強くなる理由がはっきりしている人間は強い。

 

サカズキはまさにそういうタイプなのだろう。

 

その時だった。

 

後ろから間延びした声が聞こえた。

 

「怖いねぇ〜」

 

レインたちは振り返る。

 

そこには一人の男が立っていた。

 

長身。

 

サングラス。

 

どこか気の抜けた立ち姿。

 

海軍の制服を着ているのに緊張感がまるでない。

 

まるで休日の散歩でもしているかのようだった。

 

「センゴクさん〜」

 

男が手を振る。

 

センゴクは額を押さえた。

 

「ああ、いたのか」

 

「ひどいねぇ〜」

 

「最初からいたよぉ〜」

 

レインは男を見る。

 

強い。

 

見聞色がそう告げていた。

 

しかし、何かがおかしい。

 

サカズキのような圧力がない。

 

クザンのような鋭さもない。

 

なのに強い。

 

まるで深さの分からない海を見ているような感覚だった。

 

男はレインを見る。

 

「君がレイン君かい〜?」

 

「はい」

 

「レインです」

 

男は顎へ手を当てた。

 

「怖いねぇ〜」

 

「十二歳で商会社長なんて」

 

「怖いよぉ〜」

 

レインは困惑した。

 

褒められているのか。

 

警戒されているのか。

 

よく分からない。

 

ルークも困惑していた。

 

父に至っては何を言えばいいのか分からないらしい。

 

そんな三人を見て、男は笑う。

 

「その顔」

 

「面白いねぇ〜」

 

センゴクが呆れたように口を開く。

 

「ボルサリーノ」

 

「遊ぶな」

 

「遊んでないよぉ〜」

 

全く説得力がなかった。

 

どうやらこの人がボルサリーノらしい。

 

レインは改めて相手を見る。

 

やはり不思議な人物だった。

 

するとボルサリーノが言った。

 

「君、有名だねぇ〜」

 

「そうなんですか?」

 

「東の海じゃ知らない人がいないらしいじゃない〜」

 

「ガープさんが広めたんじゃないですか?」

 

その瞬間、センゴクが吹き出した。

 

ルークも笑いそうになる。

 

ボルサリーノは少し考えた後、

 

「あり得るねぇ〜」

 

と真面目に頷いた。

 

誰も否定できなかった。

 

あのガープならやる。

 

むしろ絶対やる。

 

するとボルサリーノが再び口を開く。

 

「空を飛ぶ船を考えてるんだってぇ〜?」

 

レインが驚く。

 

「何で知ってるんですか?」

 

「ガープさん〜」

 

即答だった。

 

レインは頭を抱えた。

 

本当に何でも話しているらしい。

 

センゴクも呆れている。

 

「まったくあいつは……」

 

ボルサリーノは楽しそうだった。

 

「作れるのかい〜?」

 

「理論上は」

 

レインは答える。

 

「ただ、まだ技術が足りません」

 

「材料も足りません」

 

「なるほどねぇ〜」

 

ボルサリーノは頷く。

 

しかし次の瞬間、

 

「でも君なら作れそうだねぇ〜」

 

そう言った。

 

その言葉にレインは少し驚く。

 

馬鹿にした様子はなかった。

 

本気で言っているように聞こえた。

 

「そう簡単じゃないですよ」

 

「でも諦めてないんだろぉ〜?」

 

「もちろんです」

 

即答だった。

 

ボルサリーノは笑った。

 

「いいねぇ〜」

 

「若いねぇ〜」

 

レインは思う。

 

この人は本当に何を考えているのだろう。

 

掴みどころがない。

 

適当に話しているようにも見える。

 

だが、時折見せる言葉の端々に鋭さがあった。

 

そして何より、強い。

 

それだけは間違いなかった。

 

サカズキの強さは分かりやすい。

 

鍛え上げられた肉体。

 

揺るがない意志。

 

圧倒的な存在感。

 

しかし、ボルサリーノは違う。

 

底が見えない。

 

本気を出した姿が想像できない。

 

だからこそ不気味だった。

 

「レイン君〜」

 

「何ですか?」

 

「海軍に来ないかい〜?」

 

まただった。

 

ルークが吹き出しそうになる。

 

センゴクは頭を抱える。

 

レインは慣れた様子で答えた。

 

「お断りします」

 

「即答だねぇ〜」

 

「商会がありますから」

 

「残念だねぇ〜」

 

全く残念そうには見えなかった。

 

だが、本当にそう思っているのか、そうではないのか、やはり分からない。

 

ボルサリーノは手を振りながら去っていく。

 

「じゃあねぇ〜」

 

「また会おうねぇ〜」

 

そう言って歩いていく姿を見送りながら、レインは小さく息を吐いた。

 

「変な人でしたね」

 

ルークが深く頷く。

 

「凄く分かります」

 

センゴクも苦笑した。

 

「安心しろ」

 

「海軍本部の人間も大体そう思っている」

 

それを聞いてレインたちは少し安心した。

 

どうやら自分たちだけではなかったらしい。

 

だが、レインの見聞色は最後まで警鐘を鳴らしていた。

 

サカズキとは別方向で危険な男。

 

それがボルサリーノという人物だった。

 

そして翌日、いよいよ海軍元帥コングとの面会が予定されていた。

 

海軍本部を訪れた本当の目的が、ようやく始まろうとしていた。

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