ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
海軍本部へ来てから数日。
レインたちは元帥室へ案内されていた。
今日はいよいよ海軍元帥コングとの面会である。
ルークは少し緊張していた。
父も流石に落ち着かない様子だった。
海軍元帥。
海軍最高責任者。
東の海で生きてきた人間にとっては、ほとんど伝説上の存在である。
しかし、
「社長」
「何だ?」
「緊張してないんですか?」
「してるぞ」
レインは答えた。
だが表情は普段通りだった。
ルークは納得できない。
絶対に緊張しているようには見えなかった。
そんな話をしていると、扉が開いた。
「入れ」
低く重い声。
レインたちは部屋へ入る。
室内には既に二人の男がいた。
一人はセンゴク。
そしてもう一人はコング元帥だった。
改めて見ると圧倒される。
ガープとも違う。
センゴクとも違う。
まるで巨大な山がそこに座っているような存在感だった。
レインたちは席へ案内される。
しばらく静寂が流れた。
そして最初に口を開いたのはコングだった。
「まずは礼を言わせてくれ」
レインたちは少し驚く。
元帥から礼を言われるとは思っていなかった。
コングは真っ直ぐレインを見る。
「クザンの件だ」
「ガープから報告は受けている」
「短期間であそこまで成長したのは、お前のお陰でもある」
レインは少し照れ臭そうに頭を掻いた。
「俺だけじゃありません」
「本人の努力です」
その言葉にコングは頷く。
「それでも感謝している」
海軍の未来を担う若者。
その成長は海軍全体にとって重要なことだった。
そして、コングは少しだけ表情を変えた。
「それともう一つ」
何となく嫌な予感がした。
コングは静かに言った。
「ガープの無茶ぶりについて謝罪しよう」
沈黙。
次の瞬間、
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
三人同時だった。
レイン。
ルーク。
父。
全員が即答だった。
コングが固まる。
センゴクが吹き出した。
「お前たち……」
レインは真顔だった。
「いえ、本当に大変だったんです」
ルークも勢いよく頷く。
「空飛ばされましたからね」
「助けてくださいって叫んだ記憶しかありません」
父も苦笑する。
「廃船場も半分くらい無くなりました」
コングはゆっくりと目を閉じた。
そして深いため息を吐く。
「やはりか……」
センゴクも額を押さえる。
「報告書を見た時から嫌な予感はしていた」
「いや、本当に酷かったですよ」
レインが言う。
「軍艦バッグって廃船を殴る訓練じゃないんですか?」
「そうだが」
「何故かガープさんが廃船を壊してました」
「……」
コングが黙る。
誰も反論できなかった。
ガープならやる。
むしろ想像できてしまう。
「まあ」
コングは咳払いをした。
「色々あったようだが、結果としてクザンは大きく成長した」
その言葉にレインも頷く。
事実だった。
クザンの才能は本物だった。
あと一歩...あと少し経験を積めば、覇気も扱えるようになるだろう。
「あれは凄いですよ」
レインは素直に言う。
「成長速度がおかしいです」
「俺も驚きました」
コングは満足そうに頷いた。
どうやら元帥としても期待しているらしい。
そして本題へ入る。
コングは腕を組んだ。
「さて」
室内の空気が少し変わる。
「レイン君」
「はい」
「レイン商会をどこまで大きくするつもりだ?」
レインは少しだけ考えた。
しかし答えは決まっている。
「世界一です」
即答だった。
コングの眉が僅かに上がる。
センゴクも面白そうに笑う。
父とルークは驚かない。
むしろ、
(やっぱりそう言うよな)
という顔だった。
コングは続きを促す。
「造船会社としてか?」
「いえ」
レインは首を横に振った。
「技術会社としてです」
コングは黙って聞いている。
レインは続けた。
「船も作りたい」
「鍛冶も続けたい」
「新しい機械も作りたい」
「もっと便利なものも作りたい」
「島と島を繋ぎたい」
「人の移動を楽にしたい」
「世界を今より少しでも便利にしたいんです」
ルークは苦笑した。
何度も聞いた夢だ。
父も静かに頷いている。
コングはしばらく黙っていた。
そして静かに口を開く。
「面白い」
短い言葉だった。
しかし本心だった。
十二歳の少年が語る夢としてはあまりにも大きい。
だが、不思議と笑う気にはならなかった。
レインには実績がある。
口だけではない。
実際に会社を作り。
職人を雇い。
島を変え始めている。
だからこそ説得力があった。
するとコングが言う。
「一つ助言をやろう」
「何ですか?」
「お前が今、一番必要だと思うものは何だ?」
レインは返答する。
「技術ですか?」
コングは首を横に振った。
「違う」
レインが少し驚く。
技術ではないのか。
「人だ」
コングの声は重かった。
「どれだけ優れた技術があっても、一人では限界がある」
「どれだけ優秀でも、一人で世界は変えられん」
レインは黙る。
確かにそうだった。
ルークがいた。
父がいた。
職人たちがいた。
だからレイン商会は成り立っている。
コングは続ける。
「信頼できる仲間を増やせ」
「それがお前の財産になる」
レインは静かに頷いた。
その言葉は妙に胸へ残った。
そして最後に。
コングは少し笑った。
「海軍へ入れとは言わん」
レインが少し驚く。
ここまで来て勧誘されないとは思わなかった。
「ただし」
コングは真っ直ぐレインを見る。
「困った時は海軍を頼れ」
「お前のような人間は世界に必要だ」
レインは思わず目を見開いた。
元帥からそこまで言われるとは思っていなかった。
しばらくして、レインはゆっくりと頭を下げる。
「ありがとうございます」
その姿を見ながら、コングは静かに笑った。
この少年はきっと大きくなる。
海軍ではない。
海賊でもない。
全く別の道で。
世界へ影響を与える存在になる。
そんな予感がしていた。
そしてレインもまた。
今日の言葉を胸に刻み込む。
海軍本部で得たものは、想像していた以上に大きかった。