ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百二十一話「三人の海兵」

 

ゼファーとの組手が終わった後。

 

レインは訓練場の端に腰を下ろしていた。

 

身体はまだ少し痛む。

 

本気の勝負ではなかった。

 

それでも実力差は嫌というほど理解できた。

 

隣ではルークが冷たい水を渡してくる。

 

「お疲れ様です」

 

「ありがとう」

 

レインは水を受け取る。

 

そして苦笑した。

 

「まさか一発も当たらないとは思わなかった」

 

ルークも苦笑する。

 

「俺は逆に社長があそこまでやれることに驚きました」

 

「あのゼファーさんですよ?」

 

確かにそうだった。

 

周囲の海兵たちも驚いていた。

 

十二歳の少年がゼファー相手にあそこまで動けること自体が異常なのだ。

 

その時だった。

 

「よし!」

 

ガープが大声を上げた。

 

全員が嫌な予感を覚える。

 

「飯じゃ!」

 

レインは頭を抱えた。

 

また始まった。

 

「何でですか?」

 

「組手の後は飯じゃろ!」

 

意味が分からない。

 

しかしガープの中では常識らしい。

 

ゼファーがため息を吐く。

 

「お前だけだ」

 

「そうか?」

 

「そうだ」

 

即答だった。

 

数十分後、レインたちは再び海軍本部の食堂へ来ていた。

 

やはり東の海の食堂とは規模が違う。

 

数百人の海兵が食事をしている。

 

活気に満ちていた。

 

レインが周囲を見回していると、ガープが突然手を振った。

 

「おお!」

 

「お前たちもおったか!」

 

視線の先。

 

そこには見覚えのある三人がいた。

 

クザン。

 

サカズキ。

 

ボルサリーノ。

 

未来の海軍を支えることになる三人だった。

 

「来い来い!」

 

ガープが呼ぶ。

 

三人は顔を見合わせた。

 

嫌な予感がしているらしい。

 

しかし断れる相手ではない。

 

結局こちらへやって来た。

 

「お疲れっす」

 

最初に声を掛けたのはクザンだった。

 

レインも笑う。

 

「クザンさんもお疲れ様です」

 

「いやぁ」

 

「ゼファー先生相手によくやるっすね」

 

素直な感想だった。

 

クザン自身もゼファーの強さは知っている。

 

だからこそ驚いていた。

 

続いてサカズキが口を開く。

 

「見事じゃった」

 

短い言葉だった。

 

だが本心だった。

 

サカズキは実力主義である。

 

だからこそ認めた相手には正当な評価をする。

 

「ありがとうございます」

 

レインも頭を下げた。

 

すると横から声が聞こえる。

 

「怖いねぇ〜」

 

ボルサリーノだった。

 

「十二歳でゼファー先生と組手なんて」

 

「僕はやりたくないねぇ〜」

 

レインは苦笑した。

 

この人は相変わらずだった。

 

全員が席へ座る。

 

ガープは既に山のような料理を運んできていた。

 

「食え!」

 

「強くなるぞ!」

 

誰も反論しなかった。

 

というより、するだけ無駄だった。

 

しばらく食事が続く。

 

するとレインはふと気になった。

 

目の前にいる三人。

 

後の海軍を支えることになる男たちだ。

 

今なら聞ける気がした。

 

「皆さん」

 

「何じゃ?」

 

サカズキが顔を上げる。

 

「海軍に入った理由って何なんですか?」

 

三人が少し驚いた。

 

考えたこともなかった質問だったのかもしれない。

 

最初に答えたのはサカズキだった。

 

「正義のためじゃ」

 

迷いがない。

 

即答だった。

 

レインは思わず納得する。

 

この人らしい。

 

サカズキは続ける。

 

「海賊から民を守る」

 

「それが海兵の役目じゃ」

 

その目は真剣だった。

 

レインは頷く。

 

価値観は違う。

 

だが立派な考えだと思った。

 

次はクザンだった。

 

「俺っすか?」

 

少し考える。

 

そして、

 

「何となくっす」

 

全員が固まった。

 

「何となく?」

 

レインが聞き返す。

 

「何となくっす」

 

クザンは真顔だった。

 

どうやら本当にそうらしい。

 

サカズキが頭を抱える。

 

「お前はいつもそうじゃな」

 

「そうっすか?」

 

「そうじゃ」

 

レインは少し笑った。

 

クザンらしい気がする。

 

そして最後。

 

全員の視線がボルサリーノへ向く。

 

「ボルサリーノさんは?」

 

ボルサリーノは味噌汁を飲みながら答えた。

 

「給料かなぁ〜」

 

沈黙。

 

レインが固まる。

 

ルークも固まる。

 

父も固まる。

 

サカズキが頭を抱える。

 

クザンが吹き出した。

 

ガープは大笑いしている。

 

「ぶはははは!」

 

「お前らしいのう!」

 

ボルサリーノは首を傾げる。

 

「だって大事じゃないかぁ〜」

 

「生活があるしねぇ〜」

 

間違ってはいない。

 

間違ってはいないのだが。

 

何とも言えなかった。

 

レインは苦笑する。

 

本当に三人とも違う。

 

正義のため。

 

何となく。

 

給料のため。

 

同じ海兵なのに全く違う。

 

しかし、それが面白かった。

 

ふとレインは思う。

 

人は皆違う。

 

考え方も。

 

夢も。

 

目指す場所も。

 

それでも同じ組織で働ける。

 

昨日コングが言っていた言葉を思い出す。

 

人だ。

 

技術だけではない。

 

人との繋がりこそが大切なのだと。

 

食堂の笑い声を聞きながら、レインは少しだけ理解した気がした。

 

海軍本部で出会った人々。

 

きっとこの縁は、これから先も続いていくのだろう。

 

そんな予感がしていた。

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