ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
海軍本部を出発してから数日。
レインたちを乗せた船は、ようやく故郷の島へと戻ってきた。
甲板の上に立つルークが大きく伸びをする。
「やっと帰ってきましたね」
「そうだな」
レインも懐かしい島影を見ながら頷いた。
海軍本部での経験は貴重だった。
強者たちとの出会い。
ゼファーとの組手。
コングの助言。
どれも今後の人生に大きな影響を与えるだろう。
しかし、やはり自分の島が一番落ち着く。
レインはそう思っていた。
ところが、島へ近づくにつれて違和感を覚えた。
「社長」
ルークが眉をひそめる。
「何か騒がしくないですか?」
レインも気付いていた。
港の周辺に人が集まっている。
何かが起きている。
そして、薄く煙が上がっていた。
「……嫌な予感が」
父が呟く。
レインも同感だった。
船が港へ近づく。
すると島民の一人がこちらへ気付いた。
「レインだ!!」
その声が響く。
次の瞬間。
港にいた人々が一斉に振り返った。
「レイン君だ!」
「帰ってきたぞ!」
「助かった!」
ただならぬ様子だった。
レインは船が接岸するより早く飛び降りた。
「何があったんですか!?」
島民たちが駆け寄ってくる。
その中には見知った職人たちもいた。
「海賊だ!」
「海賊が来たんだ!」
「海賊?」
レインの表情が変わる。
島にはガープの看板がある。
普通の海賊なら近付こうともしないはずだ。
すると職人の一人が言った。
「賞金首だ!」
「五千万ベリーの海賊だ!」
レインは思わず目を見開いた。
五千万。
東の海なら間違いなく最上位クラスである。
ルフィがアーロンを倒した時で二千万。
五千万ともなれば異常だ。
「どこですか?」
「レイン商会だ!」
レインとルークは顔を見合わせた。
嫌な予感がした。
そして次の瞬間。
二人は全力で駆け出した。
商会へ向かう。
途中。
壊れた柵。
倒れた荷車。
逃げ惑う島民。
被害は決して小さくなかった。
やがて、レイン商会が見えてくる。
そして、そこには巨大な男が立っていた。
身長三メートル近い大男。
筋骨隆々の身体。
腰には巨大な斧。
周囲には手下らしき海賊たち。
商会の入口を占拠していた。
「船長!」
「誰か来ました!」
海賊の一人が叫ぶ。
大男が振り返る。
「何だ?」
そして、レインを見た。
数秒の沈黙。
大男が笑い出す。
「ガキじゃねぇか!」
周囲の海賊たちも笑う。
「ははは!」
「子供だ!」
「逃げて帰れ!」
レインはため息を吐いた。
どこへ行っても言われる。
本当にどこへ行っても。
「社長」
ルークが横へ並ぶ。
「やりますか?」
「やるしかないだろ」
レインは前へ出た。
海賊船長が鼻で笑う。
「おいガキ」
「死にたくなければ引っ込んでろ」
レインは少し考える。
そして、苦笑した。
「それ」
「よく言われるんですよね」
次の瞬間だった。
ドンッ!!
地面が砕けた。
海賊たちの笑みが消える。
レインの姿が消えたからだ。
「なっ――」
海賊船長が目を見開く。
見えなかった。
完全に。
そして、レインの拳が船長の腹へ触れた。
流桜。
内部へ叩き込まれる衝撃。
ズドォォォン!!
船長の身体が吹き飛ぶ。
背後の木箱を何十個も貫通し、そのまま地面へ激突した。
静寂。
誰も理解できなかった。
海賊船長は白目を剥いていた。
完全に気絶している。
一撃だった。
周囲の海賊たちが震え始める。
「う、嘘だろ……」
「船長が……」
「一撃で……」
ルークが苦笑する。
「相変わらずですね」
「加減したぞ」
「それでですか?」
「それでだ」
海賊たちは一斉に後退する。
完全に戦意を失っていた。
レインは呆れたように言う。
「まだやりますか?」
全員が首を横に振った。
もの凄い勢いで。
十分だった。
数十分後、海賊団は全員縛り上げられていた。
島民たちから歓声が上がる。
「ありがとう!」
「助かった!」
「流石レイン君だ!」
レインは苦笑する。
そして海賊船長を見た。
賞金首。
五千万ベリー。
そこで、あることを思い出した。
「ルーク」
「何ですか?」
「海軍呼びましょう」
「はい?」
レインは真顔だった。
「賞金首ですよ」
「五千万ベリーです」
ルークが固まる。
そして、
「あぁ……」
納得した。
確かにそうだ。
海賊を倒した。
終わりではない。
賞金首なのだ。
換金しなければ損である。
実にレインらしい発想だった。
その日のうちに電伝虫が用意された。
プルルルルルル。
プルルルルルル。
やがて繋がる。
『こちら海軍支部』
レインは口を開いた。
「レイン商会のレインです」
『はい』
「賞金首を捕まえました」
『はい?』
海兵が聞き返した。
レインは続ける。
「賞金五千万ベリーです」
沈黙...
『はい???』
海兵の声が裏返った。
ルークが思わず吹き出す。
島民たちも笑いを堪えていた。
海軍支部は大混乱となる。
そして、その報告は後に東の海支部を経由し、さらに海軍本部へと届けられることになる。
その時、ガープがどんな顔をするのか、レインたちはまだ知らなかった。