ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百三十四話「世界へ」

 

ガレスが島を去ってから数週間後。

 

その日、港へ一隻の大型船が入港した。

 

島民たちは思わず足を止める。

 

見慣れない船だった。

 

東の海では滅多に見かけない造り。

 

船体には大きく鳥のマークが描かれている。

 

「あれは……」

 

「新聞社の船じゃないか?」

 

島民たちがざわめく。

 

船から降りてきたのは三十代ほどの男だった。

 

肩には大きな鞄。

 

首にはカメラ。

 

手には分厚いメモ帳。

 

男は周囲を見回しながら満足そうに頷いた。

 

「やっと着いたか」

 

男の名はマルコス。

 

世界経済新聞社の記者だった。

 

グランドライン本社所属。

 

東の海までわざわざやって来た理由は一つ。

 

レイン商会である。

 

最近、東の海を訪れた商人たちの間で妙な噂が流れていた。

 

十三歳の商会社長。

 

天才造船技師。

 

独自技術による工具開発。

 

海軍本部からの招待。

 

五千万ベリーの賞金首を撃退。

 

流石に誇張だと思った。

 

しかし調べれば調べるほど裏付けが取れてしまう。

 

結果、本社が動いた。

 

「実際に見てこい」

 

そう命じられたのである。

 

「さて、どんな天才坊主なんだか」

 

マルコスは苦笑しながら工房へ向かった。

 

数十分後、彼はレイン工房へ到着する。

 

その瞬間だった。

 

「これは……」

 

思わず目を見開く。

 

広大な工房。

 

効率的に配置された設備。

 

整然と働く職人たち。

 

十三歳の少年が作った会社とは思えない。

 

下手なグランドラインの工房より完成度が高い。

 

「なるほど」

 

「これは確かに面白い」

 

そう呟きながら周囲を観察していると、工房の隣にある建物が目に入った。

 

『レイン診療所』

 

マルコスが固まる。

 

数秒。

 

もう一度看板を見る。

 

やはり診療所と書いてある。

 

「何だこれは?」

 

意味が分からない。

 

造船会社を取材しに来たのである。

 

なぜ診療所がある。

 

しかも名前が同じだ。

 

近くにいた島民へ声を掛ける。

 

「すみません」

 

「はい?」

 

「この診療所は何ですか?」

 

島民は不思議そうな顔をした。

 

「レイン君の診療所ですよ」

 

「……はい?」

 

マルコスは固まった。

 

そして十分後、彼は島民たちから事情を聞いていた。

 

半年で医者になった。

 

エイムズに認められた。

 

工房の横に診療所を建てた。

 

胸に刃物が刺さった船大工の手術を成功させた。

 

全て聞き終わった頃には頭が痛くなっていた。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

「十三歳だよな?」

 

「そうですよ」

 

「半年だよな?」

 

「そうですよ」

 

「医者だよな?」

 

「そうですよ」

 

島民たちは当たり前のように答える。

 

マルコスは天を仰いだ。

 

意味が分からない。

 

しかし、記者としての勘が叫んでいた。

 

大当たりだと。

 

記事になるどころの話ではない。

 

特大記事だ。

 

世界中が驚く...そう確信できた。

 

そして数時間後、マルコスはレイン本人への取材を開始する。

 

造船技術。

 

工具開発。

 

経営方針。

 

将来の夢。

 

海軍本部訪問。

 

医術。

 

手術。

 

質問が尽きない。

 

そして取材を進めるほど、マルコスは何度も同じ言葉を口にすることになった。

 

「十三歳で?」

 

「え?」

 

「本当に?」

 

「いや、待て」

 

レインは不思議そうに首を傾げるだけだった。

 

数日後、グランドライン世界経済新聞社本社編集部では一人の編集長が記事を読んでいた。

 

そして、机を叩く。

 

「最高だ!」

 

編集部が静まり返る。

 

「この記事を一面に載せろ!」

 

「特集を組め!」

 

「世界中へ配れ!」

 

記者たちが慌ただしく動き始めた。

 

翌朝、世界中へ新聞が配られる。

 

一面には大きくこう書かれていた。

 

『東の海の天才少年』

 

『十三歳にして造船会社社長』

 

『半年で医者となった少年技術者』

 

記事にはレイン工房の写真。

 

診療所の写真。

 

そして白衣姿のレインまで掲載されていた。

 

その新聞は東の海だけでなく、グランドラインや新世界にも配られる。

 

そして当然、海軍本部にも届いた。

 

海軍本部。

 

元帥室。

 

センゴクは新聞を読んだ瞬間、頭を抱えた。

 

「……何をやっているんだ、あいつは」

 

記事を読む。

 

造船会社社長。

 

知っている。

 

医者。

 

知らなかった。

 

半年で習得。

 

意味が分からない。

 

そして最後に掲載されていた白衣姿の写真を見る。

 

「何故だ……」

 

思わず呟いた。

 

隣にいた副官も同じ顔をしている。

 

一方その頃、ガープは新聞を見た瞬間、大爆笑していた。

 

「ぶはははははは!!」

 

「やりおった!!」

 

周囲の海兵たちが振り返る。

 

ガープは腹を抱えながら新聞を掲げた。

 

「見ろ!」

 

「白衣じゃ!」

 

「本当に医者になっとる!」

 

クザンは新聞を受け取る。

 

そして数秒後、

 

「あー……」

 

苦笑した。

 

「相変わらずっすね」

 

サカズキは腕を組む。

 

「訳の分からん奴じゃ」

 

ボルサリーノは新聞を見ながら呟いた。

 

「怖いねぇ〜」

 

海軍本部にいる誰もが思った。

 

あの少年は普通ではない。

 

そしてその噂は海軍だけでは終わらなかった。

 

グランドライン。

 

新世界。

 

世界政府。

 

ドラム王国。

 

ウォーターセブン。

 

各地で同じ新聞が読まれていた。

 

世界はまだ知らない。

 

その十三歳の少年が、これからさらに常識を壊していくことを。

 

だが確かなことが一つだけあった。

 

この日、レインという名前は初めて世界へ知れ渡ったのである。

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