ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第六章
第百三十六話「半年後」


 

世界経済新聞の騒動から半年が経過した。

 

もっとも、レインの日常はほとんど変わっていない。

 

相変わらず工房へ行き、

 

診療所へ顔を出し、

 

設計図を書き、

 

新しい技術を研究し、

 

覇気の修行を続けている。

 

違うことがあるとすれば、島での立場だった。

 

船大工として、

 

技術者として、

 

そして医者として、

 

もはや島でレインに敵う者はいなかった。

 

造船技術は父を超えた。

 

医術はエイムズのお墨付き。

 

発明や研究に至っては、島民の大半が理解を諦めている。

 

何か問題が起きればレインへ相談が来る。

 

港の整備。

 

新しい船の建造。

 

診療所の運営。

 

農具の改良。

 

気付けば長老以上に島へ影響を与える存在になっていた。

 

もっとも、本人にその自覚はない。

 

「社長」

 

「何だ?」

 

「多分この島で一番影響力あるの社長ですよ」

 

ルークがそう言う。

 

レインは即座に首を振った。

 

「そんな訳ないだろ」

 

「ありますよ」

 

「ない」

 

「あります」

 

珍しく意見が割れた。

 

すると横で聞いていた父が口を開く。

 

「俺はルークに一票だな」

 

「父さんまで」

 

「事実だろ」

 

レインは納得できない顔をしていた。

 

しかし島民たちに聞けば、ほぼ全員がルーク側につくだろう。

 

そんなある日、レインは港の外れへ来ていた。

 

使われなくなった廃船が並ぶ場所である。

 

同行しているのはルークと父。

 

理由は修行だった。

 

この半年、レインはずっと覇王色のコントロール鍛錬を続けていた。

 

そしてついに、覇王色を纏えるようになった。

 

「……多分できた」

 

レインが拳を見る。

 

拳の周囲で黒い雷が弾けていた。

 

空気が微かに震えている。

 

ただ、比較対象がいない。

 

島に覇王色持ちはいない。

 

だから正しいのかどうかも分からなかった。

 

「社長」

 

「何だ?」

 

「嫌な予感しかしません」

 

ルークが真顔で言う。

 

父も頷いた。

 

「奇遇だな」

 

「俺もだ」

 

レインは苦笑した。

 

そして目の前の廃船を見る。

 

「とりあえず試してみる」

 

「壊す気満々ですね」

 

「廃船だから大丈夫だろ」

 

確かにその通りだった。

 

レインは深く息を吐く。

 

拳に覇王色を纏う。

 

黒い稲妻が激しく弾けた。

 

ルークと父が思わず数歩下がる。

 

「行くぞ」

 

次の瞬間、レインは拳を振り抜いた。

 

ドォォォォォン!!

 

轟音が響いた。

 

海面が揺れる。

 

突風が吹き荒れる。

 

そして...沈黙...

 

三人とも固まった。

 

目の前にあったはずの廃船が。

 

消えていた。

 

いや、正確には違う。

 

粉々になっていた。

 

船の形は残っていない。

 

木片すらまともに残っていない。

 

まるで巨大な爆発が起きたかのようだった。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

誰も喋らない。

 

十秒ほど経った後。

 

ルークが口を開く。

 

「何が起きたんですか?」

 

「分からん」

 

父が即答した。

 

「俺も分からん」

 

レインも固まっていた。

 

「いや待て」

 

思わず後退する。

 

「俺も待ってほしいです」

 

ルークが真顔で言った。

 

「船消えましたよ」

 

「消えたな」

 

父も頷く。

 

「船って殴ったら消えるんですか?」

 

「消えない」

 

「ですよね」

 

三人とも遠い目になる。

 

しばらく沈黙が続いた後。

 

レインは真面目な顔になった。

 

「これは人に向けちゃ駄目だな」

 

「今更ですか!?」

 

ルークが叫ぶ。

 

そんなの見れば分かる。

 

その日の夕方、工房へ戻った三人は修行について話していた。

 

その流れで、ルークが何気なく言う。

 

「そういえば俺も見聞色使えるようになりました」

 

「へぇ」

 

レインが頷く。

 

そして...

 

数秒後...

 

「は?」

 

固まった。

 

「何て?」

 

「見聞色です」

 

「いつ?」

 

「結構前です」

 

「何で言わなかった!?」

 

「聞かれなかったので」

 

レインは頭を抱えた。

 

ルークはさらに続ける。

 

「武装色も少しだけなら」

 

「え?」

 

「まだ未熟ですけど」

 

「え?」

 

レインが完全に混乱する。

 

覇王色が纏えた時より驚いていた。

 

「どうやって覚えた?」

 

当然の疑問だった。

 

ルークは少し考える。

 

そして答える。

 

「社長探してたらですかね」

 

「は?」

 

「社長どこ行ったんだろうって」

 

「うん」

 

「診療所かな」

 

「うん」

 

「工房かな」

 

「うん」

 

「研究室かな」

 

「うん」

 

「港かな」

 

「うん」

 

「集中して探してたら見えるようになりました」

 

沈黙。

 

父も固まる。

 

レインも固まる。

 

数秒後...

 

「何その開花の仕方!?」

 

レインが叫んだ。

 

意味が分からない。

 

聞いたこともない。

 

ルークは肩を竦めた。

 

「いや、俺も分かりません」

 

「意味不明だろ!」

 

「船を殴って消した人に言われたくありません」

 

即答だった。

 

父が吹き出す。

 

レインが黙る。

 

反論できない。

 

完全な正論だった。

 

「というか社長」

 

ルークが続ける。

 

「さっきの何なんですか?」

 

「俺も知りたい」

 

父も頷く。

 

三人で廃船があった場所を見る。

 

そこには何も残っていない。

 

本当に何もなかった。

 

「覇王色……だと思う」

 

レインが答える。

 

「思う?」

 

「比較対象がないんだよ」

 

「なるほど」

 

「納得できません」

 

ルークは即答した。

 

その後、工房には父の笑い声がしばらく響き続けた。

 

覇王色を纏い、船を一撃で消し飛ばす十三歳。

 

社長を探していたら見聞色に目覚めた十六歳の青年。

 

どうやらレイン商会には、少しずつ普通ではない人間が増え始めているらしかった。

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