ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
同じ頃。
偉大なる航路。
一隻の巨大な海賊船が海を進んでいた。
船首には大きな海賊旗。
その旗を見ただけで多くの海兵が震え上がる。
ロジャー海賊団。
世界中で名を轟かせる最強クラスの海賊団だった。
船上では数人の船員たちが一枚の新聞を囲んでいた。
「おい、本当かこれ」
「十三歳だぞ?」
「十三歳で商会社長?」
「しかも医者?」
船員たちが口々に騒ぐ。
話題の中心は世界経済新聞だった。
そこには大きくレインの記事が掲載されている。
東の海の天才少年。
十三歳の商会社長。
造船技術者。
医者。
五千万ベリーの賞金首を撃破。
普通なら作り話を疑う内容だった。
だが世界経済新聞は裏取りを行う。
つまり、全て事実だった。
「意味が分からねぇな」
船員の一人が呟く。
すると背後から豪快な笑い声が響いた。
「どれどれ!」
新聞をひったくったのは一人の男。
黒い髭。
力強い笑顔。
誰よりも自由そうに笑う男。
ゴール・D・ロジャーだった。
ロジャーは楽しそうに記事を読み始める。
十三歳。
船大工。
商会社長。
医者。
記事を読むたびに笑みが深くなっていく。
そして最後まで読み終えると、大きく笑った。
「面白ぇ!!」
嫌な予感がした。
船員たちは全員同じことを思う。
その顔を見れば分かる。
ロジャーは何かを企んでいる。
そして、その予感は見事に的中した。
「東の海へ行くぞ!」
船上が静まり返る。
数秒後。
大きなため息が聞こえた。
「また始まったか」
シルバーズ・レイリーだった。
額を押さえている。
見慣れた光景だった。
ロジャーが面白そうなものを見つける。
会いに行くと言い出す。
周囲が止める。
止まらない。
いつもの流れである。
「何だレイリー」
ロジャーは楽しそうに笑う。
「面白そうじゃねぇか」
「面白そうだから東の海へ行くのか?」
「面白そうだから東の海へ行くんだ」
即答だった。
レイリーは空を見上げる。
知っていた。
こうなったロジャーは止まらない。
誰にも止められない。
「はぁ……」
深いため息を吐く。
そして諦めた。
今まで何度も経験してきたことだ。
今さら驚きもしない。
レイリーは振り返る。
「ギャバン!」
「おう」
「進路変更だ」
ギャバンも苦笑した。
やはりそうなったか。
誰もが予想していた。
「目的地は東の海」
「了解」
返事はあっさりしていた。
どうせ決定事項である。
船員たちも苦笑しながら作業を始める。
こうしてロジャー海賊団の進路は変更された。
目的地。
東の海。
レイリーは船首へ移動し、改めて新聞へ目を落とす。
十三歳。
造船技術者。
商会社長。
医者。
普通ではない。
それだけは確かだった。
「確かに興味はあるな」
レイリーは小さく呟く。
十三歳でこれだけの実績。
常識では説明できない。
だからこそロジャーが興味を持ったのだろう。
しかし、この時のレイリーは知らなかった。
その少年が、自分の人生に大きく関わる存在になることを。
そして、レインも知らない。
工房で設計図を書きながら、新しい船の構造を考えている少年は。
まさかロジャー海賊団が自分の島へ向かっているなど夢にも思っていなかった。
数週間後。
東の海。
一つの出会いが訪れる。
それはレインにとって運命的な出会いだった。
船大工として。
技術者として。
そして一人の人間として。
その後の人生を大きく変える出会い。
後に海賊王と呼ばれる男。
ゴール・D・ロジャー。
後に冥王と呼ばれる男。
シルバーズ・レイリー。
世界最強の海賊団の中核を担う伝説たちとの邂逅は、もうすぐそこまで迫っていた。