ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
その日、島は朝から平和だった。
漁師たちは海へ出ている。
工房では職人たちが作業を続けている。
診療所にも数人の患者が訪れていた。
いつもと変わらない一日。
少なくとも。
見張り台の男が叫ぶまでは。
「船だー!!」
島中に声が響く。
港にいた人々が一斉に振り返る。
見張り台の男は顔面蒼白だった。
「大型船だ!!」
「海賊船だぞ!!」
島民たちがざわつく。
海賊自体は珍しくない。
だが、見張りの様子がおかしい。
次の瞬間、男はさらに叫んだ。
「ロ、ロジャー海賊団だぁぁぁ!!」
島中が凍り付いた。
数秒、完全な沈黙が訪れる。
そして、
「はぁぁぁぁぁ!?」
という悲鳴が島中から上がった。
ロジャー海賊団。
今や世界中にその名が轟く最強クラスの海賊団。
東の海の人間でも知らない者はいない。
そんな連中が、何故こんな小さな島へ来るのか、理由が分からない。
だが。現実だった。
港の向こう。
水平線上に巨大な船影が見える。
その船首には見覚えのある海賊旗。
間違いない。
ロジャー海賊団だった。
長老の家では、
「何じゃと!?」
長老が椅子から転げ落ちた。
慌てて窓へ向かう。
そして実際に船を見て固まった。
「本物じゃ……」
顔色が真っ青になる。
一方。
レイン工房。
「ロジャー海賊団?」
ルークが聞き返す。
報告に来た島民は何度も頷いた。
「間違いない!」
「本物だ!」
ルークの顔から血の気が引いた。
父も固まる。
「何でだ?」
「知らん」
「いや、本当に知らん」
誰にも分からない。
そんな中、一人だけ、レインだけが妙に落ち着いていた。
「へぇ」
ルークが振り返る。
「へぇじゃないですよ!」
「ロジャー海賊団ですよ!?」
「知ってる」
「何でそんなに落ち着いてるんですか!」
レインは肩を竦めた。
「まだ何もされてないだろ」
「それはそうですけど!」
ルークは叫ぶ。
しかしレインの言うことも正しかった。
少なくとも今のところ襲撃はされていない。
その時だった。
港から再び声が響く。
「接岸するぞー!!」
レインは立ち上がった。
「行くか」
「どこへ?」
「港」
ルークと父が固まる。
「社長」
「何だ?」
「正気ですか?」
「多分」
「多分!?」
父が額を押さえた。
だがレインは本気だった。
逃げる理由がない。
相手がロジャー海賊団ならなおさらだ。
下手に隠れる方が怪しい。
結局、三人は港へ向かうことになった。
そして港、
島民たちは遠巻きに様子を見ていた。
誰も近付こうとしない。
そんな中、巨大な船がゆっくりと接岸する。
船員たちが次々と降りてくる。
どいつもこいつも強者の気配を纏っていた。
島民たちは思わず後退する。
そして、最後に一人の男が船から飛び降りた。
ドン!!
地面が揺れる。
黒い髭。
豪快な笑顔。
誰よりも自由そうな男。
ゴール・D・ロジャー。
その本人だった。
島民たちは息を呑む。
圧倒的な存在感だった。
レインも思わず目を細める。
強い。
今まで会った誰よりも。
ガープ以上かもしれない。
そう思えるほどだった。
ロジャーは周囲を見回す。
そして、一人の少年を見つけた。
十三歳。
黒髪。
工房の職人服。
記事で見た顔。
ロジャーの顔に笑みが浮かぶ。
「おう!」
大声が響く。
全員の視線が集まった。
ロジャーは真っ直ぐレインを指差す。
「お前がレインか!」
島民たちが息を呑む。
ルークが固まる。
父も固まる。
だが当の本人は落ち着いていた。
「そうですけど」
レインが答える。
ロジャーはさらに笑う。
「ははははは!!」
「やっぱりお前か!」
豪快な笑い声が響く。
そして、
世界最強クラスの海賊団。
ロジャー海賊団。
東の海の天才少年。
レイン。
運命の出会いは、こうして始まったのだった。