ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

140 / 143
第百三十九話「面白い奴だな」

 

港には重い緊張感が漂っていた。

 

島民たちは誰も近付こうとしない。

 

相手はロジャー海賊団。

 

世界でも最強クラスと呼ばれる海賊たちである。

 

そんな連中が今、目の前にいる。

 

普通なら逃げ出してもおかしくない。

 

だが、当のロジャー本人は豪快に笑っていた。

 

「ははははは!!」

 

「やっぱりお前か!」

 

レインは少し苦笑する。

 

「新聞で顔載ってましたからね」

 

「そうだったな!」

 

ロジャーは再び笑った。

 

緊張感など欠片もない。

 

その様子を見ていた島民たちは逆に混乱していた。

 

本当に海賊なのか。

 

いや、海賊なのだろう。

 

だが想像していた凶悪な海賊とは違った。

 

もっとも、それはロジャー本人に限った話である。

 

ロジャーの後ろに並ぶ船員たちからは、とんでもない威圧感が放たれていた。

 

百戦錬磨。

 

そんな言葉がよく似合う。

 

その中でも特に目を引く男がいた。

 

金髪。

 

眼鏡。

 

落ち着いた雰囲気。

 

シルバーズ・レイリー。

 

レインは自然と視線を向けていた。

 

強い。

 

ロジャーほどではない。

 

しかし異常なほど強い。

 

今まで出会った誰よりも。

 

ガープに近い。

 

いや、もしかすると同格かもしれない。

 

そんな予感がしていた。

 

一方のレイリーもレインを観察していた。

 

十三歳。

 

まだ少年と呼ぶべき年齢。

 

だが何かがおかしい。

 

気配が異質だった。

 

「それで?」

 

レインが尋ねる。

 

「何の用です?」

 

ルークと父が固まる。

 

相手はロジャーである。

 

普通そんな聞き方をするだろうか。

 

だがロジャーは気にした様子もなかった。

 

「会いに来た!」

 

「それだけですか?」

 

「それだけだ!」

 

即答だった。

 

今度はレインが固まる。

 

数秒後、

 

「暇なんですか?」

 

港が静まり返った。

 

ルークが頭を抱える。

 

父が空を見上げる。

 

島民たちも顔を覆った。

 

言ってしまった。

 

よりにもよってロジャー本人に。

 

しかしロジャーは大笑いした。

 

「ははははは!!」

 

「面白ぇなお前!」

 

気に入ったらしい。

 

レイリーが額を押さえた。

 

「ロジャー」

 

「何だ?」

 

「普通の人間はお前にそんなこと言わんぞ」

 

「そうなのか?」

 

「そうだ」

 

レイリーはため息を吐く。

 

その様子を見ていた船員たちも苦笑していた。

 

「副船長」

 

「また始まりましたね」

 

「ああ」

 

「この前は三日かけて滝を見に行きましたよね」

 

「あったな」

 

「その前は珍しい魚を見たいとか」

 

「あったな」

 

レインは思わず聞き返した。

 

「そんな理由で進路変えるんですか?」

 

今度はロジャーが答えた。

 

「面白そうだったからな!」

 

「なるほど」

 

「納得するのか?」

 

ルークが思わず突っ込んだ。

 

しかしレインは真面目だった。

 

「俺も面白そうならやるし」

 

ルークと父が同時に黙った。

 

確かにそうだった。

 

工房を作ったのも。

 

商会を作ったのも。

 

鍛冶を学んだのも。

 

医者になったのも。

 

全部興味を持ったからである。

 

「似た者同士かもしれんな」

 

レイリーが小さく呟いた。

 

その言葉にロジャーが大きく頷く。

 

「だろう!」

 

「初めて会った気がしねぇ!」

 

「俺は初めて会いましたけどね」

 

レインが返す。

 

ロジャーはまた笑った。

 

そして話題は自然と新聞の記事へ移る。

 

「お前、本当に医者なのか?」

 

「そうですよ」

 

「本当に船作ってるのか?」

 

「作ってます」

 

「商会の社長なんだよな?」

 

「そうですね」

 

「十三歳だよな?」

 

「十三歳です」

 

ロジャーは腕を組む。

 

数秒考える。

 

そして、

 

「意味分からんな!」

 

大声でそう言った。

 

船員たちが頷く。

 

レイリーも頷く。

 

島民たちも頷く。

 

ルークは特に強く頷いた。

 

「でしょう?」

 

思わず口から出る。

 

ロジャーは大笑いした。

 

「ははははは!!」

 

「やっぱりそう思うよな!」

 

「毎日思ってます」

 

ルークが真顔で答える。

 

すると父も頷いた。

 

「俺もだ」

 

レインだけが不満そうだった。

 

「何でだ」

 

「何でじゃない」

 

ルークが即答する。

 

「社長、自分がおかしい自覚あります?」

 

「ない」

 

「でしょうね」

 

ルークは諦めた。

 

その時だった。

 

ロジャーの視線が工房へ向く。

 

大きな建物。

 

並ぶ設備。

 

整備された敷地。

 

十三歳の少年が作ったとは思えない。

 

「見てもいいか?」

 

ロジャーが尋ねた。

 

「別に構いませんよ」

 

レインはあっさり答える。

 

「社長!?」

 

ルークが驚く。

 

「ロジャー海賊団ですよ!?」

 

「見られて困るものはないだろ」

 

「ありますよ!」

 

「例えば?」

 

「えーと……」

 

ルークは詰まった。

 

確かにない。

 

研究資料は地下だ。

 

表向きの工房は見られても問題ない。

 

「ないですね」

 

「だろ?」

 

納得してしまった。

 

ロジャーは楽しそうに笑う。

 

「よし!」

 

「見せてもらうぞ!」

 

その言葉に船員たちも続く。

 

ロジャー海賊団が工房へ向かい始める。

 

島民たちは唖然としていた。

 

世界最強クラスの海賊団が。

 

まるで友人の家へ遊びに行くような雰囲気で歩いている。

 

そんな光景は誰も想像していなかった。

 

最後尾を歩いていたレイリーは、ふと足を止める。

 

そしてレインを見る。

 

今度は見間違いではなかった。

 

感じる。

 

武装色。

 

見聞色。

 

そして、その奥に眠る圧倒的な資質。

 

レイリーの目が細くなる。

 

十三歳でここまでか。

 

もし自分の予想が正しいなら。

 

この少年は将来、とんでもない存在になる。

 

そんな確信に近いものを感じていた。

 

そしてレイリー自身もまだ知らない。

 

この出会いが、レインだけでなく、ロジャー海賊団にとっても忘れられない出会いになることを。

 

運命は静かに動き始めていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。