ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
ロジャー海賊団はレインの案内で工房へ向かっていた。
島民たちは遠巻きにその様子を見守っている。
世界最強クラスの海賊団と島の天才少年。
誰も予想できなかった組み合わせだった。
ルークは未だに落ち着かない。
父も同じだった。
「社長」
「何だ?」
「本当に工房見せるんですか?」
「見せるって言っただろ」
「相手はロジャー海賊団ですよ?」
「知ってる」
レインは平然としていた。
むしろ少し楽しそうですらある。
その姿を見てルークはため息を吐いた。
この人は本当に大物なのか。
それとも感覚が麻痺しているだけなのか。
たまに分からなくなる。
やがて工房の正門が見えてきた。
レインは足を止める。
ロジャーたちも自然と立ち止まった。
「どうした?」
ロジャーが尋ねる。
レインは振り返った。
そして笑う。
「一つだけ言っておきます」
「何だ?」
「工房で余計なことしたら海軍呼びますからね」
沈黙。
島民たちが固まる。
ルークが顔を覆う。
父は空を見上げた。
また言った。
よりにもよってロジャー本人に。
普通なら絶対に言わない。
だが、レインは本気だった。
工房は島の財産だ。
壊される訳にはいかない。
そして、その言葉と同時だった。
空気が震えた。
ほんの一瞬。
黒い稲妻がレインの周囲で弾ける。
誰も気付かなかった。
いや、二人だけは違った。
ロジャー。
そしてレイリー。
二人の目が同時に細くなる。
「ほぉ……」
ロジャーが小さく笑う。
レイリーは黙ってレインを見つめていた。
今のは見間違いではない。
間違いなく覇王色。
しかも、質が異常だった。
十三歳。
その年齢でここまでの覇王色を持つ人間をレイリーは知らない。
ロジャーも同じだった。
「海軍か」
ロジャーが笑う。
「それは困るな」
「でしょう?」
レインも笑った。
本人は気付いていない。
今のやり取りだけで、二人の伝説がどれほど驚いているのか。
「社長」
ルークが小声で話しかける。
「今何かしました?」
「何も」
「本当ですか?」
「本当だ」
レインは首を傾げた。
自覚はない。
覇王色を漏らしたつもりもなかった。
しかし、ロジャーとレイリーは確信していた。
この少年は間違いなく覇王色の持ち主。
しかも、将来とんでもない場所まで辿り着く。
そんな予感がしていた。
工房へ向かって再び歩き始める。
ロジャーは隣を歩くレイリーへ小声で話しかけた。
「どう思う?」
レイリーは苦笑した。
「思った以上だ」
「だろ?」
「新聞を読んだ時点で普通ではないと思っていた」
レイリーの視線がレインへ向く。
「だが予想を超えてきた」
ロジャーは楽しそうに笑う。
まるで宝物を見つけた子供のような顔だった。
「面白ぇな」
「本当に面白ぇ」
レイリーも否定しなかった。
船大工。
技術者。
商会社長。
医者。
そして覇王色。
十三歳の少年に詰め込まれる要素ではない。
むしろ一つでも十分だった。
そんなことを考えていると。
工房の前へ到着した。
ロジャーは建物を見上げる。
その瞬間。
表情が変わった。
今までの陽気な顔ではない。
真剣な顔だった。
レイリーも同じだった。
二人は一目見ただけで理解した。
この工房は普通ではない。
配置。
設備。
導線。
建築構造。
どれも異常なほど合理的だった。
レインは気付いていない。
だが海を渡り、多くの島を見てきた二人だからこそ分かる。
これは天才の仕事だ。
「おいおい……」
ロジャーが呟く。
「本当に十三歳か?」
「そこから疑います?」
レインが苦笑した。
ロジャーは答えない。
代わりに大きく笑った。
「ははははは!!」
「ますます面白くなってきた!」
そして、レイリーは静かに確信する。
この出会いは偶然ではない。
何故かは分からない。
だが、この少年とは、もっと話をしなければならない。
そんな予感がしていた。
後に冥王と呼ばれる男。
シルバーズ・レイリー。
そして後に海賊王と呼ばれる男。
ゴール・D・ロジャー。
二人の伝説はまだ知らない。
この島での出会いが、自分たちの記憶に深く刻まれることになるのを。
そして、レインの人生もまた。
ここから大きく動き始めるのだった。