ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
ロジャー海賊団が島へ来たその日。
日が沈み始める頃には、島中がお祭り騒ぎになっていた。
最初こそ島民たちは怯えていた。
しかし、実際に接してみればロジャー海賊団は想像していた海賊とはまるで違った。
もちろん強い。
圧倒的に強い。
それは誰の目にも明らかだった。
だが、だからといって威張り散らしたり、島民を脅したりすることはない。
むしろ気さくで豪快な者ばかりだった。
そして何より、船長であるロジャー本人が一番楽しそうだった。
「肉だ!」
「酒だ!」
「宴だ!」
ロジャーの大声が広場へ響く。
その姿を見て島民たちも少しずつ緊張を解いていった。
気付けば広場には長机が並べられ、大量の料理が運ばれてくる。
魚料理。
肉料理。
野菜料理。
果物。
酒。
まるで祭りだった。
「こんなことになるとはなぁ」
長老が苦笑する。
その隣ではレインの父も酒を飲んでいた。
「ロジャー海賊団と宴なんて一生に一度でしょうね」
「全くじゃ」
二人は笑う。
少し離れた場所ではルークが船員たちに囲まれていた。
「本当に見聞色使えるのか?」
「一応」
「見せてくれよ」
「えぇ……」
困りながらも付き合っている。
どうやらすっかり打ち解けたらしい。
一方。
広場の中心ではロジャーが大笑いしていた。
「ははははは!!」
「レイン!」
「何です?」
「お前本当に面白いな!」
それは今日何度目か分からない言葉だった。
レインは苦笑する。
「皆さんそれしか言わないんですか?」
「だって面白いからな!」
ロジャーは即答した。
その隣ではレイリーも酒を飲みながら笑っている。
昼間は工房を見学した。
そして今は宴。
ロジャー海賊団の誰もがこの島を気に入っていた。
穏やかで。
活気があって。
人々の笑顔がある。
そんな島だった。
宴は夜遅くまで続いた。
歌声が響く。
笑い声が響く。
酒が注がれる。
そして時間はゆっくりと流れていった。
やがて深夜、ほとんどの島民が帰り始める。
船員たちも酔い潰れている者が増えていた。
広場には静けさが戻り始める。
そんな中、レインは一人考えていた。
昼間からずっと。
話そうか...話すべきではないか...悩んでいた。
だが結論は出ている。
この二人になら話してもいい。
いや、この時代で最も話しても良い相手だと思った。
レインは立ち上がる。
そしてロジャーとレイリーの元へ向かった。
「お二人とも」
ロジャーが振り返る。
「おう」
レイリーも視線を向けた。
「少し時間良いですか?」
その声は昼間とは違っていた。
真面目だった。
ロジャーとレイリーは顔を見合わせる。
そして頷いた。
数分後、三人は広場から少し離れた海岸へ来ていた。
夜の海は静かだった。
波の音だけが聞こえる。
ロジャーは岩へ腰掛ける。
レイリーも隣へ座った。
そして、レインを見る。
「話って何だ?」
ロジャーが尋ねる。
レインは少しだけ迷う。
しかし決意を固めた。
「一つ聞いても良いですか?」
「おう」
「世間ではゴールド・ロジャーと呼ばれてますよね」
その瞬間...空気が変わった。
レイリーの目が細くなる。
ロジャーの笑みが消える。
ほんの僅か。
だが確実な変化だった。
「続けろ」
ロジャーが静かに言う。
レインは頷いた。
「でも、本当は違いますよね」
沈黙。
波の音だけが響く。
レイリーは黙ってレインを見つめていた。
その視線は鋭い。
普段の穏やかな雰囲気は消えている。
だがレインは怯まない。
「本当は」
「ゴール・D・ロジャー」
その名前を口にした。
静寂。
数秒。
誰も喋らない。
やがて、ロジャーが笑った。
「ははっ」
小さな笑いだった。
昼間の豪快な笑いではない。
「何で知ってる?」
当然の疑問だった。
レインは少し考えた。
そして、
「勘です」
そう答えた。
レイリーが眉を上げる。
明らかに信じていない。
だがレインは続けた。
「そして」
「俺も同じだからです」
ロジャーとレイリーが同時に目を見開く。
空気が変わる。
今までとは比べ物にならないほど。
重く。
真剣なものへ。
レインは深く息を吸った。
そして、人生で初めて家族以外へ本名を告げる。
「ヴェルク・D・レイン」
「それが俺の本名です」
波の音だけが響く。
ロジャーも。
レイリーも。
言葉を失っていた。
それは、運命の歯車が大きく動いた瞬間だった。