ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第百四十二話「宴の夜」

 

ロジャー海賊団が島へ来たその日。

 

日が沈み始める頃には、島中がお祭り騒ぎになっていた。

 

最初こそ島民たちは怯えていた。

 

しかし、実際に接してみればロジャー海賊団は想像していた海賊とはまるで違った。

 

もちろん強い。

 

圧倒的に強い。

 

それは誰の目にも明らかだった。

 

だが、だからといって威張り散らしたり、島民を脅したりすることはない。

 

むしろ気さくで豪快な者ばかりだった。

 

そして何より、船長であるロジャー本人が一番楽しそうだった。

 

「肉だ!」

 

「酒だ!」

 

「宴だ!」

 

ロジャーの大声が広場へ響く。

 

その姿を見て島民たちも少しずつ緊張を解いていった。

 

気付けば広場には長机が並べられ、大量の料理が運ばれてくる。

 

魚料理。

 

肉料理。

 

野菜料理。

 

果物。

 

酒。

 

まるで祭りだった。

 

「こんなことになるとはなぁ」

 

長老が苦笑する。

 

その隣ではレインの父も酒を飲んでいた。

 

「ロジャー海賊団と宴なんて一生に一度でしょうね」

 

「全くじゃ」

 

二人は笑う。

 

少し離れた場所ではルークが船員たちに囲まれていた。

 

「本当に見聞色使えるのか?」

 

「一応」

 

「見せてくれよ」

 

「えぇ……」

 

困りながらも付き合っている。

 

どうやらすっかり打ち解けたらしい。

 

一方。

 

広場の中心ではロジャーが大笑いしていた。

 

「ははははは!!」

 

「レイン!」

 

「何です?」

 

「お前本当に面白いな!」

 

それは今日何度目か分からない言葉だった。

 

レインは苦笑する。

 

「皆さんそれしか言わないんですか?」

 

「だって面白いからな!」

 

ロジャーは即答した。

 

その隣ではレイリーも酒を飲みながら笑っている。

 

昼間は工房を見学した。

 

そして今は宴。

 

ロジャー海賊団の誰もがこの島を気に入っていた。

 

穏やかで。

 

活気があって。

 

人々の笑顔がある。

 

そんな島だった。

 

宴は夜遅くまで続いた。

 

歌声が響く。

 

笑い声が響く。

 

酒が注がれる。

 

そして時間はゆっくりと流れていった。

 

やがて深夜、ほとんどの島民が帰り始める。

 

船員たちも酔い潰れている者が増えていた。

 

広場には静けさが戻り始める。

 

そんな中、レインは一人考えていた。

 

昼間からずっと。

 

話そうか...話すべきではないか...悩んでいた。

 

だが結論は出ている。

 

この二人になら話してもいい。

 

いや、この時代で最も話しても良い相手だと思った。

 

レインは立ち上がる。

 

そしてロジャーとレイリーの元へ向かった。

 

「お二人とも」

 

ロジャーが振り返る。

 

「おう」

 

レイリーも視線を向けた。

 

「少し時間良いですか?」

 

その声は昼間とは違っていた。

 

真面目だった。

 

ロジャーとレイリーは顔を見合わせる。

 

そして頷いた。

 

数分後、三人は広場から少し離れた海岸へ来ていた。

 

夜の海は静かだった。

 

波の音だけが聞こえる。

 

ロジャーは岩へ腰掛ける。

 

レイリーも隣へ座った。

 

そして、レインを見る。

 

「話って何だ?」

 

ロジャーが尋ねる。

 

レインは少しだけ迷う。

 

しかし決意を固めた。

 

「一つ聞いても良いですか?」

 

「おう」

 

「世間ではゴールド・ロジャーと呼ばれてますよね」

 

その瞬間...空気が変わった。

 

レイリーの目が細くなる。

 

ロジャーの笑みが消える。

 

ほんの僅か。

 

だが確実な変化だった。

 

「続けろ」

 

ロジャーが静かに言う。

 

レインは頷いた。

 

「でも、本当は違いますよね」

 

沈黙。

 

波の音だけが響く。

 

レイリーは黙ってレインを見つめていた。

 

その視線は鋭い。

 

普段の穏やかな雰囲気は消えている。

 

だがレインは怯まない。

 

「本当は」

 

「ゴール・D・ロジャー」

 

その名前を口にした。

 

静寂。

 

数秒。

 

誰も喋らない。

 

やがて、ロジャーが笑った。

 

「ははっ」

 

小さな笑いだった。

 

昼間の豪快な笑いではない。

 

「何で知ってる?」

 

当然の疑問だった。

 

レインは少し考えた。

 

そして、

 

「勘です」

 

そう答えた。

 

レイリーが眉を上げる。

 

明らかに信じていない。

 

だがレインは続けた。

 

「そして」

 

「俺も同じだからです」

 

ロジャーとレイリーが同時に目を見開く。

 

空気が変わる。

 

今までとは比べ物にならないほど。

 

重く。

 

真剣なものへ。

 

レインは深く息を吸った。

 

そして、人生で初めて家族以外へ本名を告げる。

 

「ヴェルク・D・レイン」

 

「それが俺の本名です」

 

波の音だけが響く。

 

ロジャーも。

 

レイリーも。

 

言葉を失っていた。

 

それは、運命の歯車が大きく動いた瞬間だった。

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